特集「生きてるからにはやっておきたいこと」 2016年5月2日

タバコ屋のおばちゃんになりたい

こんな笑顔で接客するタバコ屋さんは逆にこわいかもしれない
こんな笑顔で接客するタバコ屋さんは逆にこわいかもしれない
タバコ屋さんが気になる。

あの小さな空間の中っていったいどうなってるんだろう。喫煙者には風当たりのきびしい昨今、1日中ヒマじゃないのかな? そしてなによりも、小窓から町の風景を見てみたい。

そう、タバコ屋のおばちゃんに、なってみたい!

(この記事はとくべつ企画「生きてるからにはやっておきたいこと」シリーズのうちの1本です。)
イカとタコが大好きで、食べたり被ったり本まで出版しました。
でもサイコーに好きなのはアワビだったりします。世間に対する謙虚です。

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店番をやらせてくれるタバコ屋さんをさがそう

そうたやすくはなかった。
そりゃそうだろう。なんせ金銭が絡んでくるのだ。どこの馬の骨かもわからない人間に、店番をまかせる寛容なお方はそうそういない。

こりゃ苦戦するぞ……。
そう思っていた矢先に、吉報が舞いこんできた。
見覚えありませんか? かつて「川柳を発表し続けるタバコ屋さん」で登場したあの店だ。
見覚えありませんか? かつて「川柳を発表し続けるタバコ屋さん」で登場したあの店だ。
ライタースミさんが、仲介してくれたのだ。

いよいよ実現する日がやってきた。
スミさん、夢をありがとう!
タバコ屋をやるからにはタバコを吸わなくては始まらない。店前に置かれた灰皿の前で一服。そもそもわたしは禁煙中ではなかったか。ぷはぁ~。
タバコ屋をやるからにはタバコを吸わなくては始まらない。店前に置かれた灰皿の前で一服。そもそもわたしは禁煙中ではなかったか。ぷはぁ~。

店内へ入ろう

開業は昭和30年。定年後にお父さまから引き継いだという安藤さんに案内され、いよいよ店内へ。

人ひとり座れるほどの小さなスペースに座布団がある。
これこれ、これだよ、わたしが描いていたタバコ屋さんのイメージは。

レクチャーを受けよう

どこになにがあるか、あるていどは把握しておかなければならない。安藤さんからお金が入っている引き出しやオマケの品などのレクチャーをおおまかに受ける。

キレイに仕分けられた10円や500円玉を見たとき、はじめてピリリと緊張感が走った。
それまで、ヨロコビのあまり浮かれていただけだったのだ。
「だいたいここらがアメスピ(アメリカンスピリット)で、だいたいこのあたりがマルボロね」すべてがだいたいなのだが、安藤さんの頭の中ではキッチリ仕分けできている様子だった。
「だいたいここらがアメスピ(アメリカンスピリット)で、だいたいこのあたりがマルボロね」すべてがだいたいなのだが、安藤さんの頭の中ではキッチリ仕分けできている様子だった。
店先に貼ってあったオマケの告知。(おつりはきれいなお札です)に目が釘付けとなった。わたし、ちゃんと手を洗ってきてたっけ……。
店先に貼ってあったオマケの告知。(おつりはきれいなお札です)に目が釘付けとなった。わたし、ちゃんと手を洗ってきてたっけ……。

店番をやってタバコを売ろう

……とはいえ、そうカンタンにお客さんが来るわけではないのがタバコ屋さん。いや、だからこそのタバコ屋さんである。
そこで、スミマサノリライターとシミュレーション……ではなくリアルにご購入いただいてるので記念すべきお客さま第1号だ。こんなにニヤけているとは知らなかった。
そこで、スミマサノリライターとシミュレーション……ではなくリアルにご購入いただいてるので記念すべきお客さま第1号だ。こんなにニヤけているとは知らなかった。
本当の意味でのはじめてのお客さま。こんなにすぐに接客できるのは意外だったが無事販売することが出来た。あいかわらず顔はニヤけている。
本当の意味でのはじめてのお客さま。こんなにすぐに接客できるのは意外だったが無事販売することが出来た。あいかわらず顔はニヤけている。
ちょっとコーフンがおさまらない。こんな顔して店番していたら誰も近寄ってこなさそうだ。
ちょっとコーフンがおさまらない。こんな顔して店番していたら誰も近寄ってこなさそうだ。
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銘柄とその置き場を覚えよう

1人目のお客さんで少し焦っていた。

タバコは今、すごい数と種類がある。マイルドセブンから名称変更したメビウスだけでも、タールやニコチン、長さ、ボックスタイプなど細分化されて35種類も販売されているのだ。

お待たせしないために、少しでも場所を覚えなければ……と思っていたのだが。
直後にお2人めで余裕はまったくなかった。
直後にお2人めで余裕はまったくなかった。
「特別に店番をさせていただいてまして……」と、訊かれてもいないのに説明してしまう。
「特別に店番をさせていただいてまして……」と、訊かれてもいないのに説明してしまう。
視界は窓だけなので、横道からフイに現れるお客さんに慌てふためく。
視界は窓だけなので、横道からフイに現れるお客さんに慌てふためく。
近隣に住む友人。ハッキリ言おう。この画像はヤラセだ。わたしのタバコを購入してもらった。
近隣に住む友人。ハッキリ言おう。この画像はヤラセだ。わたしのタバコを購入してもらった。

窓から見える町をながめよう

これですよ、わたしが見たかった景色は。

住宅街だからそれほど多くはないものの、日曜ということもあってか家族連れ、カップル、子供たち、買い物帰りの主婦らが行き交うこの光景。それぞれの生活を抱えながら歩いていくサマを、わたしはこの窓からスクリーンのようにして眺めたかったのだ。

車窓というコトバがあるように、タバコ屋窓を提案したい。
撮影をお願いしたデイリーマスター林さん(この後授賞式を控えているためめずらしくスーツ)と、いかにもタバコを買いにきた近所のおっさん風いでたちのスミさん。
撮影をお願いしたデイリーマスター林さん(この後授賞式を控えているためめずらしくスーツ)と、いかにもタバコを買いにきた近所のおっさん風いでたちのスミさん。

番外編:犬に不思議がられよう

小1時間ほどした頃、安藤さんの奥様がご帰宅。
お散歩にでた愛犬が、ふしぎそうにわたしを凝視して、見つめあうかたちとなった。
全体的にカールがかった毛並みがかわいらしい。チワワとダックスフンドのミックスだそうだ。
全体的にカールがかった毛並みがかわいらしい。チワワとダックスフンドのミックスだそうだ。
「はじめまして」「え。だ、誰この人……知らない……」という瞳でガン見された。
「はじめまして」「え。だ、誰この人……知らない……」という瞳でガン見された。

生きてるからにはやっておきたかったこと

夢は、叶った。
……と同時に、プロの洗礼もガツンと受けた。

1時間半の間に、6名(スミさん友人除く)のお客さんにご来店いただいたが、けっきょく安藤さんなしではまともな接客はできなかった。

わたしがオロオロしだすと、お客さんの顔を見て一発でタバコに手を伸ばし金額を告げる安藤さん。
なかには封を開け、中袋も捨ててお客さんに手渡しすることもある。呑気に客待ちしているわけではなかったのだ。
呑気の塊か。ぶっ通しでニヤけていた気がする。
呑気の塊か。ぶっ通しでニヤけていた気がする。
わたしは甘いものが大好きだが、自分の甘さも痛感した時間を過ごした。なのに終始ニヤけていたのはやはりうれしかったからだろう。

そしてこれから先も、タバコの需要は減少する一方だろうが、1分足らずの小さな会話(コミュニケーション)でも楽しいものだと思った。そんな些細なコトが栄養分となって、ニヤける元になったのだろう。

餅は餅屋。まったく意味がないようでいてそんなことはない、タバコだってタバコ屋だ!

生きているからにはやっておきたかったことリストを挙げたら、わたしの場合は法に反するムチャなことばかり。例外がタバコ屋さん店番でした。違法はもちろん、タバコ屋さんもやっぱりムリだろうなあ…と思っていた矢先の朗報。

関係者のみなさん、そしてなにより、この無謀な依頼に快諾してくださった安藤さん、本当にありがとうございました。
理想のご夫婦~。
理想のご夫婦~。
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