一度意識し始めると、街にあるいろんなものがパンチカードに見えてくる。たとえば、歩道のタイルなんかはまさにパンチカード。他にもタイル張りの建物とか、いろんなところに応用できそうなので、今後も散歩がてらパンチカード化の題材を探してみたいと思う。
ビルの窓ってドットだ
ビルの窓は面白い。きっちり碁盤目状に並んでるうえ、窓明かりによって「0(消灯)」と「1(点灯)」の2つの状態が表現できる。つまり、ビルの窓はドットなのだ。
ビルの窓を1つのドットと考えると、ビル全体がドット絵のキャンパスになる。このビルの場合は8x8ドットが描ける
雑な合成だけど、窓を塗りつぶすとこのようにドット絵が描けてしまう(!?と書いた)
この考え方自体は別に新しいものではなくて、都会の高層ビルでは窓明かりを使ったドット絵がたまに披露されている(いわゆる窓文字)。実際にやるとなると、各階・各部屋の蛍光灯やブラインドを調整しないといけないわけで、結構大変な作業だろうなとは思う。
しかし、そんな大層なことをしなくても、ビルの窓は毎日自然とドット絵を描いてるではないか。ちょっと観察してみよう。
しかし、そんな大層なことをしなくても、ビルの窓は毎日自然とドット絵を描いてるではないか。ちょっと観察してみよう。
なんてことはないビルの写真だけど、これもドット絵といえばドット絵だ。薄目で見ると、何かのキャラクターに見えなくもない
こちらはかなり大きめのドット絵。こういう横に筋がたくさん入った画像は、表示がバグったときに見かける気がする
こんなのは「絵」じゃないと思うかもしれない。結局のところ、そのドットの集合に意味を見出すかどうかで印象が決まる。なので無理に「ドット絵」と呼ばず、ひとまず「ドットの集合」と呼んだ方がしっくりくるかもしれない。
ドットの集合が意味するものは
一見すると無意味そうな「ドットの集合」だけど、なんかこういうのに既視感がないだろうか。私はバリバリあったので、しばらくこれが何なのか考えてた。
あるビルが作り出す、一見無意味にも思えるドットの集合
それがあるとき、「パンチカード」と重なった(パンチカードの画像は、Wikipediaより引用)
そう、「パンチカード」! ビルの窓明かりって、パンチカードとそっくりなのだ。
思わず「エウレカー」って叫びながら街を駆け抜けたい気分だが、ここは冷静に「ビルの窓明かり」と「パンチカード」の類似点について考えてみたい。
思わず「エウレカー」って叫びながら街を駆け抜けたい気分だが、ここは冷静に「ビルの窓明かり」と「パンチカード」の類似点について考えてみたい。
ビルの窓明かりって、パンチカードだ
パンチカードは、HDDやフラッシュメモリなんてものがなかった頃の、データの記憶手段である。紙に穴を開けて、穴の「ある or なし」で、「1 or 0」を表現する、超アナログな仕組み。たくさん空いた穴は、人間にとっては意味のない穴に見えるけど、解読してみると意味のあるデータになっている、というわけである。
パンチカードの一例(Wikipediaより)
ビルの窓明かりって、これに通ずるものがあると思ったのだ。
ドット絵にもなってない、ただの「ドットの集合」のようなビルの窓明かり。人間には理解できないけど、それってパンチカードと同じで、実は何らかのデータになってると考えることはできないだろうか。
ビルで仕事をする人間の営みが、窓明かりを通じて生み出す無意識のデータ列。街にそんな見えないデータが隠されてるかと思うと、何だかわくわくしてくる。
この「パンチカード」を、なんとか人間が理解できる形に解読してみたいと、そんなことをぼんやり考えた。
ドット絵にもなってない、ただの「ドットの集合」のようなビルの窓明かり。人間には理解できないけど、それってパンチカードと同じで、実は何らかのデータになってると考えることはできないだろうか。
ビルで仕事をする人間の営みが、窓明かりを通じて生み出す無意識のデータ列。街にそんな見えないデータが隠されてるかと思うと、何だかわくわくしてくる。
この「パンチカード」を、なんとか人間が理解できる形に解読してみたいと、そんなことをぼんやり考えた。
ここで取り出したるは、オルガニート
絶滅危惧種のパンチカードだが、いまだ現役で使われている装置がある。それが「オルガニート」だ。
オルガニートはオルゴールの一種で、演奏する音楽を自由に変えられる点が普通のオルゴールとは違う。
オルガニートはオルゴールの一種で、演奏する音楽を自由に変えられる点が普通のオルゴールとは違う。
これがオルガニート。安いやつを買ったので箱が付いてなくて、手元にあった桐箱の上に固定してみた
演奏する曲を決めるのが、このパンチカードである。出た、パンチカード! パンチカードの穴の位置が音符に対応していて、それをオルガニートに通すと対応した音が鳴るという仕組み
パンチカードはこんな風に読み込ませる。そしてハンドルをぐるぐると手回しすると、紙が送られてオルゴールの音色が聞こえる
このオルガニートを使って、ビルの窓明かり――それはビルで仕事するサラリーマンが生み出す、無意識の集合意思であるともいえる――を音楽に変換していきたい。
ビルの窓明かりを音楽にする
パンチカード化するビルは高層ビルがよい。小さいビルだと、どうしても窓明かりに偏りがあって、あんまり面白そうな感じにならないことが分かった。
小さいビルだと、窓明かりが一列につながってる場合が多くて魅力減(一階まるまるワンフロアなのだ)
みんな帰ってしまって明かりが付いてない場合も多かった。もっと窓明かりを!
一方、高層ビルはというと……。そうそう、このばらつき加減を求めていた。まさにパンチカード
なかでも、楽譜に落としやすそうだったこのビルを、まずはパンチカード化してみたい。なんだかすでに音ゲーの画面(上からバーが降ってきてタイミングよくボタンを押すやつ)みたいに見えてしまう
ビルの写真を平たんに加工して、そこからドットを抽出する。持っているオルガニートが15和音なので、横15ドットになるよう両端の窓を少しカットした
それを左に90度回転させれば、楽譜が完成。バグったドット絵にしかみえないが、これは楽譜である
楽譜を見ながら、あとは手作業……そう、窓明かりに対応する箇所に、パンチを使って穴を開けるのだ。アナログ! 最初のうちは慣れなくて、パンチ穴がかなりずれている
パチパチすること10分ほどで、一個目のパンチカードが完成した。お世辞にもきれいに空いたとは言いがたい穴だが、果たして音は鳴るのか
さっそく演奏してみた。
……なんというか、不協和音?
梅田の夜景を聴く
一発目から不穏な音楽を奏でてしまったが、めげずに2曲目。
今度は、いろんなビルの窓明かりをつなげて長めの曲にしてみたい。ビル以外にも、ホテルの窓明かりがパンチカードに合う感じがしたので採用してみる。
今度は、いろんなビルの窓明かりをつなげて長めの曲にしてみたい。ビル以外にも、ホテルの窓明かりがパンチカードに合う感じがしたので採用してみる。
ホテルは窓が1つの部屋が多いので、窓明かりのばらつきがほどよい感じになっている
4つの建物の窓明かりを元に、それらをひとつに連結した楽譜を作成。かなり難解な楽譜なので、最初に穴の位置をマーキングしてからパンチングすることに
作業すること約1時間、完成したパンチカードがこちら。今度は長いぞ
それでは聞いて下さい、梅田の夜景から作った曲、「UMEDA NightView」。
最初の曲よりは、ぐっと音楽っぽくなった気がする。特に最後のAPAホテルが意外とよい感じだ。やはりホテルは相性が良いのかもしれない。
今回はオルガニートを使って、パンチカード化した窓明かりを音楽に変換してみた。その日、その時間にしか現れない刹那の音楽だと思うと、何でもない曲でも味わい深く思える。そのうち傑作が生まれる可能性もなきにしもあらずなので、今後も定期的に作曲(?)していきたい。
今回はオルガニートを使って、パンチカード化した窓明かりを音楽に変換してみた。その日、その時間にしか現れない刹那の音楽だと思うと、何でもない曲でも味わい深く思える。そのうち傑作が生まれる可能性もなきにしもあらずなので、今後も定期的に作曲(?)していきたい。
タイル状の壁は、間違いなくパンチカード