特集 2016年3月25日

難しい毛皮のコートをなんとかしたい

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1年前、義母に毛皮のコートをもらった。
ゴージャスな毛皮のコートである。
義母も人からもらったのだが自分では着ないからということで、僕にくれたのだ。
「すごくいいですね。チャレンジしてみますよ!」
と言ったもののやっぱりあわせる服がない。というか何をあわせていいのかさっぱりわからない。難問である。

プロの知恵を仰ぐことにした。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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絵に描いたような毛皮のコート

これがもらったコートである。
出発進行!
出発進行!
今はこういう長い毛皮のコートはショート丈にリメイクして着たりするそうだ。しかしそれはもったいない。このゴージャスな感じのまま着られないだろうか。

上の写真はもらってきた帰りに着てみたがどうしていいかわからずに駅員の真似をしてみたところである。駅員さんはこんな格好してない。辻褄の合ってないポージングから戸惑いを感じていただければ幸いである。

お願いしたのはおしゃれ番長

この毛皮のコートを使ったコーディネートをおしゃれな人に頼みたい。僕が知っている限りいちばんおしゃれな人に頼んでみた。

ビームス創造研究所 クリエイティブディレクター青野さんである
ビームス創造研究所 クリエイティブディレクター青野さんである
上の写真のみどころは青野さんと僕の顔の遠近感である。同じ所に立っているのにこの遠近感。期せずしてトリックアートが生まれた瞬間である。

今回は青野さんが連れてきた猛者がコーディネートしてくれる。
スタイリングディレクター 和田さんと丸山さん
スタイリングディレクター 和田さんと丸山さん
お店のスタッフにスタイリングを教えているふたりである。スタッフではなく、スタッフに教えている人だ。まずいぞ。為末大にパン食い競走やってくださいってお願いしているみたいな状況になった。
勇気を出して言ってみる「これなんですけど、どうしたらいいっすかね」
勇気を出して言ってみる「これなんですけど、どうしたらいいっすかね」
和田さんのアドバイスは、コートは前を開けて、中から見える部分をワントーンにおさえたほうがいいとのこと。「なるほど、なかをワン・トーン…」と言ってみたがまったくピンときていない。

わりとカジュアルな感じでお願いします、この毛皮持ってきてそれはないだろという方向性を伝えて服を選んでもらう。

あとから写真を見てみると、和田さんと一緒に服を選んでいる自分の猫背具合に驚く。毛皮のコートで猫背だなんてまるで猫である。
にゃー
にゃー
なー
なー
僕が猫になっているあいだに和田さんの迷いのない動きで僕のコーディネートができあがっていく。

コーディネート1

まずは明るいトーンでまとめたコーディネート。
ほほう、自分では選ばないタイプのシャツだ。
ほほう、自分では選ばないタイプのシャツだ。
そして意外なカーディガンに白いデニム、白い革のスニーカー。
そして意外なカーディガンに白いデニム、白い革のスニーカー。
僕は白い服をあまり選ばない。なぜなら食べているものをすぐにこぼすからだ。飲み会がある日はたいてい色の濃い服を着ている。そんなレベルの服の選び方ではない。

これで毛皮のコートをあわせてみると…。
じゃーん
じゃーん
シャツ <ヴェイパライズ>¥19,000
カーディガン <バフィ>¥29,000
パンツ <アントレ アミ>¥29,000
スニーカー <ジャーマントレーナー>¥14,800
あれ、ちょっとこれいけてるんじゃない?
僕はものすごく派手なシャツとか飛び道具に頼りがちだが、ふつうのものを組み合わせてかっこいいのがかっこいいぞ。ループした表現になってるがそんなこと気にしない。

比較のために着てきた服の上にコートを着ている写真をもういちど載せたい。
青野さんも首をかしげるコロポックル感
青野さんも首をかしげるコロポックル感
コーディネート前はコートに着られている感じがあるのに対して、コーディネート後はコートを着ている感じになっている。

ようやく人間になれた。

コーディネート2 黒で

次になかを黒いトーンでまとめたパターンも選んでもらった。
まずは毛皮を着る前のようす。
まずは毛皮を着る前のようす。
このカットソーの首が伸びづらくて着るのに1分ぐらいかかった。和田さんと話をしているが、頭のなかの半分は脱ぐときに破いてしまうのではないかという不安である。(実際にタートルネックを脱ぐときに襟を破いてしまったことがある)。

そんな不安を感じながらコートを着てみたのがこれ。

どーん
どーん
カットソー <カラー>
パンツ <N.ハリウッド×マウンテンハードウェア>
ズボンはジャージ素材である。
ジャージ素材に毛皮だ。うなぎに梅干しレベルの組み合わせである。でも、これで「よう!」なんて言ってやってきたら、この人はこういう人なんだなと思うしかない。

おしゃれな人に共通しているのは自信だと思う。背筋が伸びてることだ。
そしてこの写真が妙に國村隼っぽい(わからない人は國村隼で検索してください)。

女性コーディネート

今さらの発言だが、この毛皮のコートは女性ものである。
女性向けにコーディネートするとどうなるだろう。モデルは木曜日ライターのべつやくさんである。
あら、しっくりきている
あら、しっくりきている
義母はこのコートを娘にあげたほうが良かったのではないか。ここまでやってきた企画が台なしである。

ちなみにシャツをインするとまた印象が変わる(きれいにインしてないのはスルーして下さい!)。
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ブラウス<J.W.アンダーソン>¥78,000
スカート<アキラ ナカ>¥39,000
パンプス<マノロ ブラニク>¥110,000
こちらはラグジュアリー感を出したコーディネートということであった。もっと意外なパターンはないだろうかと思っていたらすごいのを選んできた。
パジャマ風である
パジャマ風である
これ、パジャマじゃないですか?と聞いてみると「パジャマ感出してみた」とのこと。そんな感があるでごわすか。思わず九州男児になる。
これに毛皮を着たら、冬の朝、とりあえず目についたところにある上着を着てゴミを捨てに出てきた人みたいにならないだろうか。

ならないんだな
ならないんだな
ブラウス<ジュープ バイ ジャッキー>¥49,000
パンツ<ティー マット マサキ パリ>¥28,000
なんでならないのか。猛者は組み合わせて着た状態が見えているのだろう。
僕は自慢ではないがまったく見えてない。

この後、べつやくさんは毛皮じゃないコートをあわせはじめて、さすがにそれは企画の趣旨から外れすぎてるのでやめてくださいとお願いした。
この後、べつやくさんは毛皮じゃないコートをあわせはじめて、さすがにそれは企画の趣旨から外れすぎてるのでやめてくださいとお願いした。

ジャージを着るおれに

今回、選んでもらった服のなかでいちばん驚いたジャージを買うことにした。ジャージを普段着で着こなす人に憧れていたのだ。背筋を伸ばして堂々とジャージを着よう。

後日仕事にジャージを着ていったのだが、足元がジャージだとすっかり部屋着気分になって眠くなることがわかった。ジャージをかっこ良く着ている人もこの眠気と戦っているのだろうか。

熱心にメモをとる毛皮の人
熱心にメモをとる毛皮の人

協力:
インターナショナルギャラリー ビームス
東京都渋谷区神宮前3-25-15
営業時間:11:00~20:00
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