特集 2016年3月24日

温泉を宅配してくれるサービスでお母さん大喜び

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現在の日本で最高の娯楽と言ったらただ一つ、温泉であることは間違いない。温泉は旅行と絡めて遠いところに行くのがふつうだろう。しかし、温泉を一般家庭に運んでくれるサービスがあるという。さっそく業者の人に来てもらった。
本業は指圧師です。自分で企画した「ふしぎ指圧」で施術しています。webで記事を書くことをどうしてもやめられない。(動画インタビュー)


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軽トラで温泉を持ってきてくれる

今回お願いしたのは埼玉県鶴ヶ島市の「豊美園」。本業は造園業だが温泉のデリバリーもやってくれる。
時間通りに持ってきてくれた
時間通りに持ってきてくれた
今回200リットルほど持ってきてくれた
今回200リットルほど持ってきてくれた
一つ20リットルのポリタンクを慣れた手つきで運ぶ
一つ20リットルのポリタンクを慣れた手つきで運ぶ
今回取材に応じてくれたのは豊美園の営業主任である小川さん。ポリタンクを運ぶのを手伝おうとすると「腰痛めるんで、ぼくがやりますよ」といってくれた。小川さんの腰は大丈夫なのだろうか。

何もしないで家が温泉に

浴室にポリタンクを運んで
浴室にポリタンクを運んで
布で蓋をする。温泉水は天然物なのでどうしても小さなゴミが混じるそうだ
布で蓋をする。温泉水は天然物なのでどうしても小さなゴミが混じるそうだ
おお……
おお……
注がれてゆく……
注がれてゆく……
この間ぼくは完全に「見てるだけ」だった。見てるだけで家のお風呂がどんどん温泉になってゆく。バチが当たってもおかしくないな、これは……。
さらにタンクの温泉水をポリタンクに移してもう一往復
さらにタンクの温泉水をポリタンクに移してもう一往復
一般家庭のお風呂は160リットルくらいで十分だという
一般家庭のお風呂は160リットルくらいで十分だという

成分は弱め、常温

デリバリーしてくれる温泉は「アルカリ性単純温泉」だ。成分はそれほど強くないので浴槽を傷める心配もない。循環式の24時間風呂などでも対応できるという。匂いはない。色は基本的には無色だけどその時々で少し変わるそうだ。今日のはちょっと緑がかっている。
追い炊きスイッチをオン!
追い炊きスイッチをオン!
運搬は常温になる。追い炊きができるタイプのお風呂でないと、温かい温泉には入れない。しかし、こんなに心躍る追い炊き機能の使い方は他にちょっとないんじゃないかと思う。

*なお、今回の宅配温泉のためにネットで他の業者も調べてみた。業者によって温泉の質はまちまちのようだ。温水を持ってきてくれるところもある。温泉の質が強すぎるために追い炊きのできる釜は不可(釜を傷めてしまうため)なんていうところもあった。
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鶴ヶ島市から品川区まで運んでもらって13,327円

この温泉デリバリー、豊美園がある埼玉県鶴ヶ島市からの距離によって値段が変わる。今日は品川区の一般家庭に配送してもらって13,327円だった。温泉代と運搬代込みの値段である。なんか安すぎないか。往復の高速代だけでも5,000円は超えるはずだ。
支払いついでに小川さんに話を聞いてみる
支払いついでに小川さんに話を聞いてみる
「安くないですか?」と小川さんに聞いたら「あんまり儲からないですよね」といっていた。みんな、小川さんが適切な値段に気づく前に早く頼んだ方が良いと思うよ……。

さて、いろいろ説明を聞いた。豊美園のHPには写真たくさん載っているので、それを使わせてもらいながらの解説にしよう。

群馬からタンクローリーで持ってくる

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温泉は群馬県の沼田市にある「吹割り温泉センター」でくみ上げて、鶴ヶ島市で一時的に保管しているそうだ。これ、群馬の温泉だったのか! よけいに安く感じるぜ。

イベントでの足湯

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このサービスを始めた1991年は高齢者施設への配送が多かったが、介護制度の変更があり、需要は減ってしまう。多くなってきたのはこんな風にイベントでの足湯設置だそうだ。写真は地域の産業祭りの様子。名古屋や大阪まで出張することもあるという。人間にそんな労働をせしめる「お湯」の魔力に感服せざるを得ない。

大容量タンクを用意している家庭も

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温泉好きが高じて、大きなタンクを設置している一般家庭もあるという。このタンクローリーが停まって給水している家を発見したら、絶対に遊びに行ったほうがいい。

……さて、話を聞いている間に追い炊きも完了した。それではこの温泉を実際に試してみよう。
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急に知らない人が出てきます

古賀さんと古賀さんのお母さん
古賀さんと古賀さんのお母さん
温泉を入れてもらっていたこのお宅、実はデイリーポータルZ編集部の古賀さんのご両親のお家だった。これから古賀さんのお母さんに温泉に入ってもらう。
この実家感がたまらん
この実家感がたまらん
この日は古賀さんの親族がたまたまこの家に集まっている。子どもたちがアニメを観てはしゃでいて実家感がすごい。5歳児に「私の抜けた乳歯を見て~」といわれて「本当だ~。歯だね~」などと適当な返答をしていたらなぜかなつかれてしまった。ぼくは撮影に来ているんだけどな。

知らない人に親孝行する

親をお風呂にうながす古賀さん
親をお風呂にうながす古賀さん
話を戻そう。ぼくは親孝行をしてみたかったのだ。しかし自分の親に親孝行サービスなんて、なんか恥ずかしい。

そこで、縁もゆかりもない古賀さんのお母さんに、温泉で親孝行させてもらおうと思ったのである。
「今から入ります」と脱衣所からちょっと顔を出してくれたお母さん
「今から入ります」と脱衣所からちょっと顔を出してくれたお母さん
お母さん「これはふつうに入れば良いんですよね?」
ぼく「はい、ふつうに入ってください!お願いします」

というわけで首尾よく入浴してもらえた。
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30分後。
ガラッ
ガラッ
お母さん「スベスベになりますよ」
お母さん「スベスベになりますよ」
お母さん「違いますよ、これ。いつものお風呂と全然違う」
お母さん「違いますよ、これ。いつものお風呂と全然違う」
お母さん「いやもう、すごい温まりますね。汗がでちゃってしょうがない」
お母さん「いやもう、すごい温まりますね。汗がでちゃってしょうがない」
古賀さん「どうだった?」 お母さん「違う、全然違う」
古賀さん「どうだった?」 お母さん「違う、全然違う」
お母さんは「いつものお風呂と全然違うよ」と興奮気味に何度も繰り返えしている。温め直しの温泉だが、かなりよかったらしい。

温泉の後はマッサージ

肩こりには首の指圧が有効です
肩こりには首の指圧が有効です
温泉の後といえば、マッサージである。親孝行タイムと言うことで、今一番人気がある最高のマッサージ師の施術を受けていただく。

なお「今一番人気がある最高のマッサージ師」とは僕のことである。本当に下北沢でマッサージの仕事をしていますのでどうぞよろしくお願いします(下北沢ふしぎ指圧)。
地面に接触する足指を施術することで立位と歩行の制御が格段にやりやすくなります
地面に接触する足指を施術することで立位と歩行の制御が格段にやりやすくなります
お母さん「すっごい、すっごい軽くなった」
お母さん「すっごい、すっごい軽くなった」
動きがだいぶよくなった。うれしいよ。知らない人だけど……。

いや、よく考えたら、知らない人に施術するというのはいつも仕事でやっていることと同じだ。なんの感動もないな、これ。
湯上がりニヤニヤ
湯上がりニヤニヤ
最後にぼくも温泉に入ってみた。入ってみると一発でわかる。これ良い温泉だわ。身体中の力が抜けてけだるい感じ。

ぼくも誰かにマッサージして欲しくなる。……でもぼくがそういうことを求めるとしたら、本当の温泉地に行かなくちゃダメなんだなー。

まあ「知らない人に親孝行する」なんてのは、ネットのネタ記事の企画に過ぎない。しかし、ネタ記事でしか表現できない、自分の本当の気持ちというのもあるのではないだろうか。

つまり僕はこの年になって「自分の両親」への感謝の気持ちが芽生えてきたということだ。それを知らない人への親孝行で表現していみたのだ。これ、わかってもらえますかね?

取材協力
豊美園
埼玉県鶴ヶ島市高倉301番地
TEL:049-285-6110
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