我々は豚に辛辣すぎやしないか
そもそも、ヒトは豚に対して辛辣である。「豚に真珠」「豚もおだてりゃ木に登る」などのことわざ・慣用句や、“愚息的”な意味合いで使われる「豚児」、あるいは「ブタ野郎」といった罵倒まで、まあひどい言われようだ。牛や鶏と同じ食肉なのに、豚に対してだけ明らかに敬意が足りないのはなぜなのか?
そんなに太ってますかね?
それはひとえに豚=太っているという固定観念によるものだと思う。そもそも太っているから馬鹿にしていいという世の風潮に私は異を唱えたいが、それはさておき、食肉として育てられている豚はむしろ身が引き締まっていて、スレンダーな印象がある。
一説によると、豚の体脂肪率は約14~15%なのだそうだ。完全にアスリート体型である。それなのに豚をブタ扱いするのは、かわいそうではないか。
これなんか、むしろガリガリといっていい
なお、身長と体重の関係からヒトの肥満度を割り出すボディマス指数(BMI)というものがある。
参考までに、動物図鑑に載っている地上生物のBMIをそれぞれの平均体長、平均体重から算出してみたところ、豚のそれは82.64だった(体長100~110cm、体重90~100kg)。ちなみにBMIは25を超えると肥満とされる。82.64は全盛期の小錦(BMI78.64)を上回るおでぶちゃんだが、その他の動物に比べると飛びぬけて高い数値というわけでもないようだ。
むしろパンダの方が太ってないか?
もちろん骨格や筋肉量、表皮、内臓の重さなどは動物の種類によって大きく異なるため、BMIというヒト基準の指標によって肥満か否かを決めつけるのは早計すぎる。
そこで動物園に足を運び、見た目のふとましさも考慮して豚以上にファットな動物を探すことにした。
まず、動物園にいる生き物の中で数値上の「肥満度」が最も高かったのは彼であった。
カバである
カバのBMIは180(体長3~5m、体重1~4.5トン)。地上生物の中では群を抜いて数値が高いのだが、改めて観察してみると、なるほど確かにわがままなボディをしている。胴回りはイカめしみたいにパンパンで、しりの肉付きもでっぷりと重量感がある。その油断しきった肉体は今のところ優勝候補筆頭だ。なお、カバは食べ物をあまり噛まないらしく、そんなところもでぶかわいい。
体重およそ軽トラ数台分。豚なんかより遥かにでぶい
カバに次いでBMIが高かったのはゾウ。オスの体長は5~6.4m、体重は5.4t、BMIは131.84であった。実際、ゾウの体脂肪率はかなり低くエグザイル級であるとする(ヒトケタ台)文献もあった。
この他にも、胴回りを重点的にチェックしてみると、お腹がぽっちゃりしている動物はけっこういる。
クロサイ。ガッシリ締まった身体に騙されがちだけど、お腹はぽっこりしているぞ
存外、下半身ぽっちゃりなアルパカ
でっぷりした腹をゆらして歩くパンダ。かわいいからって甘えてるな
しゅっとしたイメージのオカピも意外と隠れ肥満である
なお、それぞれの動物のBMIは以下の通り。アルパカ以外はさほど豚(82.64)と変わらない数値であることがおわかりいただけると思う。
■クロサイ 96.95
■アルパカ 16.25
■パンダ 71.11
■オカピ 61.98
豚にあいさつして帰ろう
ご覧の通り、一見しゅっとしてる風の動物も、よく見ればけっこう腹が出ている。豚ばかりがだらしない肉体の代名詞のようにやり玉に挙げられるのは気の毒だ。金輪際、太っている人を安易に豚などと呼ぶのはやめてもらいたい。
さて、豚の汚名をすすぐことができたので、最後に豚に挨拶して帰ろう。
いた、豚
ん・・・
太ってんな
太ってるね
べつにオチをつけようとしたわけでもないのだが、動物園の豚はどの動物よりも太っており、そのブタっぷりは群を抜いていた。
すんごくだらしないボディ
性格:食いしん坊
思うに、食肉用の豚は適量の餌と適度な運動により脂肪過多にならないよう計算して育てられるのだろう。だが一方で、動物園で怠惰に育った豚は普通に太っていた。誤解を晴らすつもりできたのに、結果的に腐すような結果になってしまってごめん、豚。
だからって豚とか言うな
というわけで仮説と真逆の結果になってしまったが、だからといって人に対して豚とか言うのはよくないのでやめてもらいたい。
でも、個人的には人も動物もちょいぽちゃくらいのほうがかわいいと思いますよ。
なお、BMIが最も低いのはフラミンゴで、驚きの12.31