特集 2016年2月15日

牛丼や中華丼、親子丼を「おにぎり化」する

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先日、北関東を旅した際、セブン-イレブンに珍しいおにぎりが売られていた。それは、かつ丼をそのまんま!おにぎりにした、その名も「そのまんま!かつ丼」おにぎり。かつ丼をおにぎりにするという、ありそうでなかったその発想に感心すると同時に、これは他の丼でも応用できるのではないかと考えた。きっと牛丼や親子丼、中華丼も、それは素晴らしいおにぎりになるに違いない。
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。

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> 個人サイト Twitter (@noriyukienami)

かつ丼以上に「かつ丼!」なおにぎり

かつ丼おにぎり。こちら北関東限定品ということで、なるほど東京在住の僕の目に触れることはなかったわけだ。カロリーの権化みたいな、こんなにも胸躍るおにぎり。もっと早く出合いたかったよ。
かつ丼をもっと手軽に食べたい。そうだ、おにぎりにしてしまえ! とばかり、ストレートな欲望をそのまま形にした素晴らしい発明
かつ丼をもっと手軽に食べたい。そうだ、おにぎりにしてしまえ! とばかり、ストレートな欲望をそのまま形にした素晴らしい発明
ちなみに味は驚くほどに「そのまんま!」かつ丼だ。いや、むしろ普通のかつ丼以上にかつ丼であると感じた。丼としてのかつ丼の場合、かつと卵、ご飯が口の中でちょうどよいバランスになるよう箸でつかむ技量が必要だが、おにぎりにすることで“どこをどうかじっても”かつ丼なのである。ひと口ごとのかつ丼感が強い。かつ丼ではなく「かつ丼!」という食べ応えだった。
おれはかつ丼だ!という強い主張を感じるおにぎりだった
おれはかつ丼だ!という強い主張を感じるおにぎりだった
最初に発見したときはセブン-イレブンさんのおたわむれが生み出したネタ商品かと正直見くびっていたが、とんでもない。丼の具を固めた米の上にのっけただけではなく、これはむしろ丼を最高においしく味わう方法なのではないか。

そこで、僕が特に好きな5大どんぶりを「そのまんま!」おにぎりにしてみることにした。
さっそく丼の具をこしらえる
さっそく丼の具をこしらえる
なお、No.1フェイバリット丼は、特売品の安い鶏ひき肉を醤油で炒めラー油をたらした、「そぼろ丼」。シンプルかつ貧乏くさいこの味が子どもの頃から大好きなのだ
なお、No.1フェイバリット丼は、特売品の安い鶏ひき肉を醤油で炒めラー油をたらした、「そぼろ丼」。シンプルかつ貧乏くさいこの味が子どもの頃から大好きなのだ
丼をおにぎりにする場合、「つゆやダシの分量」は大事なポイントのひとつ。牛丼はつゆだく派、米にしみ込んだつゆをしっかり味わいたいタイプの僕だが、おにぎりの場合は汁気が多すぎるとぐずぐずになってしまう。おにぎりとしての形状を保ちつつ、適度につゆを米に染み渡らせたいのだ。そんな、丼おにぎりの最適解を探りながら試行錯誤を重ねていく。
親子丼の卵は半熟ではなく固めに焼くとおにぎりにのっけやすい
親子丼の卵は半熟ではなく固めに焼くとおにぎりにのっけやすい
具の次はおにぎり。こちらも普通ににぎるのではなく、具をたっぷりのせられるよう平べったく成形するのがポイントである。
具をのせやすいよう、なるべくフラットに成形しよう
具をのせやすいよう、なるべくフラットに成形しよう
なお、円柱の器に米をギュッギュッと詰めて型をとると、丼おにぎりに適したおにぎりを作りやすい。その上に丼の具を、こぼれないよう慎重に、かつ大胆に敷き詰めていく。
いい具合につゆも染みている。こいつはうまそうだ。うまいに決まってる
いい具合につゆも染みている。こいつはうまそうだ。うまいに決まってる

5種類の丼をおにぎり化

さて、そんなこんなで5種類のポピュラーな丼をおにぎり化してみた。以下のラインナップである。

・牛丼
・親子丼
・中華丼
・二色丼(鳥そぼろと炒り卵)
・ねぎとろ丼

いずれ劣らぬスター丼だが、おにぎりとしてのポテンシャルは未知数である。はてさて。
天気も良いので近くの公園で食べる。ぽかぽか陽気のおにぎり日和だった
天気も良いので近くの公園で食べる。ぽかぽか陽気のおにぎり日和だった
外に丼5杯を持っていくのはたいへんだが、おにぎり化すれば造作もない。また、そんな携帯性においしさも兼ね備えているのが丼おにぎりの魅力である。

検証結果を発表する前に結果から言ってしまうとぜんぶ旨かったのだが、今回はおにぎりとして最低限備えるべき要素「食べやすいか否か」「時間が経って冷えてもおいしいか否か」「お茶に合うか否か」も厳しく審査していきたい。
まずは「牛丼」おにぎり
まずは「牛丼」おにぎり

■牛丼おにぎり

いきなり第1位を紹介してしまうが、最も好みだったのがこちら。牛丼おにぎりである。
ギュっと押し固めた米に細かく切った牛肉がたっぷりのったそれは全ての密度が濃く、おにぎりというより「牛丼の塊」を食らっている感覚。食べるというより、「食らう」という感じだ。

かといって「肉巻きおにぎり」ほど肉々しくなく、どこをかじっても牛肉、ネギ、米のバランスが常にベストな配合で舌に届く。濃い味付けのためお茶との相性も抜群で、時間が経ってもちゃんとおいしかった。
【牛丼おにぎり】※満点は★5つ
味:★★★★★
食べやすい:★★★
冷えても旨い:★★★★★
お茶に合う:★★★★★
ハトも寄ってくるうまさ
ハトも寄ってくるうまさ
親子丼おにぎり
親子丼おにぎり

■親子丼おにぎり

ビジュアル的には「そのまんま!かつ丼」によく似た親子丼おにぎり。かつ丼が「有り」なら親子丼も「有り」なはずである。

それまで広い部屋(丼)に暮らしていた親子が四畳半(おにぎり)に転居。窮屈にはなったが、そのぶん親子で寄り添い絆は深まった感じだ。何が言いたいかというと、ようするにうまい。親子丼の要素が圧縮されているぶん、卵、鶏肉、米、それぞれの存在感がより強く感じられる。互いに引き立て合うのではなく個性と個性をぶつけて高め合う、そんな親子丼である。

そんななか、脇役のゴボウもシャキシャキと非常に良い仕事をしている。
【親子丼おにぎり】※満点は★5つ
味:★★★★
食べやすい:★★★
冷えても旨い:★★★★
お茶に合う:★★★★
中華丼おにぎり
中華丼おにぎり

■中華丼おにぎり

中華丼の魅力は、やはり具沢山なことだと思う。ごはんの上で八宝菜という財宝が煌めく、まさに食の宝石箱なのである。そんな中華丼をおにぎり化すると、宝石のキラキラ感がさらに増す。小さな宝石箱の中に色とりどりの海鮮がひしめき合う、ダイヤモンドよりも美しい食べ物になった。
色んな具をまんべんなくのせてもいいし、好きな具だけを多めにのせてもいい。中華丼の主役級であるうずらを中央に埋め、最後にたどりつくよう周囲から攻め落とすのも楽しい。

ただ、中華丼としては汁気がもう少し欲しいところ。米がくずれない程度の汁気だとやや物足りないため、味的にはおにぎり化のメリットは薄い。
【中華丼おにぎり】※満点は★5つ
味:★★
食べやすい:★★
冷えても旨い:★★
お茶に合う:★★★
二色丼おにぎり
二色丼おにぎり

■二色丼おにぎり

子どもの頃、母がよく作ってくれた三色丼。そこから一色をぬいた二色丼は、20代前半の貧乏な時代によく食べていたメニューだ。今はそこまで貧乏ではないが、たまに作って思い出の味を懐かしんでいる。

いつかこの丼を思い出して泣いてしまう―、そんな個人的には思い入れの深い丼なのだが、これに関してはおにぎり化することで味が変わったりすることは特になかった。ぽろぽろこぼれて食べづらいこともあり、今回唯一、あえておにぎりにする意味を見出しづらい丼であった。
【二色丼おにぎり】※満点は★5つ
味:★★
食べやすい:★
冷えても旨い:★★
お茶に合う:★★★
ねぎとろ丼おにぎり
ねぎとろ丼おにぎり

■ねぎとろ丼おにぎり


■ねぎとろ丼おにぎり

ねぎとろの軍艦や巻き寿司は普通にあるし、おにぎりの中に入れる具材としてはすでにメニュー化されているが、ねぎとろをここまで贅沢にのせた、というかむしろ「塗った」おにぎりはそうないだろう。最後までねぎとろが尽きることなくご飯とのハーモニーを楽しめるお得感ある一品だ。

ただ、味にパンチがなく若干ぼんやりしている点が残念。
【ねぎとろ丼おにぎり】※満点は★5つ
味:★★
食べやすい:★★★
冷えても旨い:★★
お茶に合う:★★★

おにぎり化で満足感がアップ

というわけで、かつ丼に続く丼のおにぎり化。なかには適さないものもあったが、個人的には丼として食べるよりもおいしく感じられたものが多かった。特に牛丼は、濃厚な味わいがコンパクトに圧縮され、「カロリーを食っている」という強い満足感が得られた。牛丼チェーン各社には即、おにぎりの商品化を検討いただきたい。
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