狛動物の魅力
干支の狛動物めぐりがプチ趣味だ。
年が明けたらその年の干支の狛動物がいる神社に行き、今年の干支は何年だなぁ~と実感する…と大げさな事を言うほどの信念はないが、気づけば最近はここ数年ずっと続けている。
今年は狛猿。(京都七条・新日吉(いまひえ)神社) この猿は夜な夜な動き出すので囲いがされている、とのこと。
はじめは珍しい狛犬、じゃない動物の像があるんだって!
と興味本位で行っただけだったのが、実際に訪れてみると神社によってデザインが大きく違って、見ていて飽きない。
躍動感のある狛馬 (京都伏見・田中神社)
お賽銭シーンをまじまじと見られる感じ
躍動感あるポーズでこそあるが、神社の雰囲気もありなかなか厳かな雰囲気だ。
かと思えば、かなりポップな(そしてでかい)ウサギがいたりする。(京都宇治・三室戸寺)
おじいさんの顔が乗った、…蛇?(半笑いの写真ですみません)
この二体は一緒の場所にいた。
蛇の顔はおじさんだし、うさぎはめちゃくちゃでかいしで、いちいちすごいインパクトだった。
確かうさぎの持つ玉の中に入っている卵を上手く建てられれば運がつく、みたいな話だった。設定が盛り盛りだ。
駒牛。これは割と本物の牛に忠実っぽい。がテカテカだ。(京都・高台寺)
こんな具合で、正確にはそのすべてが狛犬と同じ意味合いで祀られているわけはないかもしれないが、広義の狛動物(※)として見るといろんな神社に祀られている。
※神使と呼ばれるらしい
はじめは軽い気持ちで行ったはずだったが、神社によって堂々とした出で立ちのものから厳しい表情をしたもの、ポップなものまで様々で見ていて楽しくなってきて、今ではすっかり毎年の恒例行事となっている。
そんな干支狛動物が、わざわざいろんな場所に行かなくても一同に会している場所がある。
場所はあの有名な京都・伏見稲荷大社もある稲荷山だ。
そもそもが狛狐のメッカ
京都はJR奈良線、稲荷駅へやってきた。
ホームを降りていきなり、巨大な鳥居と多くの外国人観光客に迎えられる。
後者は迎えてはいないかもしれないが、どう見ても日本人より外国人の方が多い。
朱色が映えるでかい鳥居
そもそも伏見稲荷自体、狛犬でなく狐だ。あまりに有名すぎて忘れていた
かなり思い切ったアクロバットもみせてくれる
さて、件の干支詰め込み神社はこの大きい本殿や千本鳥居のあるエリアではない(ここには狐しかいない)。
正確には稲荷大社とはまた別であるらしく、稲荷山の途中で参道を外れて歩いたところにある、間力大神の八霊社(はちれいのやしろ)という神社である。
稲荷山のメインルートからどんどんわき道へ逸れていく
どんどん人んちっぽさが出てくる。不安になってきた
神社っぽいのが遠くに見えますがあれはまた違います
入り口の鳥居のところから歩くこと約15分、なにやらひときわ密集度の高いエリアが見えてきた。
そこはまさに、狛動物のパラダイス
なによりもまず全貌からご覧頂きたい。ギュウギュウ詰めである。
この密度!鳥居がなかったら石材屋だと思いかねない
神社全体の横幅はこれぐらい。奥ゆきもちらっと見えている建物が最奥
祀られているのは干支に沿った動物たちがほとんど。
なのだがよく見ると、何だか若干デフォルメされていて愛嬌があるのだ。(冒頭でおじいさんと蛇のキメラを載せておいて言うのも何ですが)
とにかくどれも個性的でかわいい。せっかくなので十二支全部見ていただきたい。
狛ねずみ。
狛牛。ぽてっとした印象をうける
狛虎。わざわざ虎っぽい模様の石を使っていてこだわりを感じる
狛うさぎ。でかくないし玉も持っていない
狛龍。龍はデフォルメとかじゃないか
狛へび。他にも蛇はえらくたくさんいた
狛馬。雲に乗っている…のだろうか
狛羊。ふっくらしたデザインでかなり愛嬌がある
狛猿。このキャラクターっぽさよ。
狛鶏。しっぽがふさふさ
ちゃんと狛犬も。完全に「かわいい側の犬」のデザインだ
そして狛イノシシ。
どうだろうか。
どれも手のひらサイズだったら雑貨屋でそこそこ売れそうな親しみやすいデザインだ。
特に猿とか羊はかなりアニメチックな見た目になっている。
僕の横で見てた子どもが猿をいたく気に入ったらしく食い入るように見ていた。
冒頭に載せた「逃げ出すので檻に閉じ込められている猿」とはすごい違いである。
同じ猿でも神社によってこれだけ違うから狛動物めぐりは楽しい。
きっとまた違うベクトルでデフォルメされてる動物もどこかにいるだろうから、いろんな所に行きたくなるのだ。
今にも喋りだしそうだ
全方位対応型のご利益
しかしデザインもそうだが、どうしてこんな祀れるだけ祀ったみたいなことになったのだろう。
管理されている方に話を聞いた。
おみくじを買いながら
ここ八霊社ではちょうど今くらいの時期、厄年の方を対象に「厄除け特別祈祷」なるものを行っている。
過去、その中で参加者の方に募って、干支に対応する像をそれぞれご奉納頂くことになったのだという。
そしてその際に、奉納頂く方やデザインは指定しなかったのだそう。
牛や蛇など、動物によってはデザイン違いで複数いるのはそのため
それら集まった狛動物たちを宇迦之御魂神像を中心とし、ぐるりと一周囲むように各方角に守り干支として配置したとのこと。
つまりその土地に縁のある動物とか、そういった意味で祀られる狛動物たちとはちょっと違うそうだ。
虎の柄も奉納された方のセンスだという
そもそもここは稲荷山の中なので、縁ある動物でいくと狐になるのかもしれない。
狐は狐で干支とは関係なくいた
なに年に来ても大丈夫
狛動物詰め込み神社には、意味合いは違えど確かに全干支が勢ぞろいしていた。デザインも個性的で、見ているだけでも楽しい。
お参りの仕方も自由で、自分の干支を拝むもよし、その年の干支を拝むもよし、その年の恵方を拝むもよし、だそう。
なんとも合理的だ。これからの干支で近場に狛動物たちがいなかったら頼ろうかなと思った。
迫力のあるおみくじを引いて帰った。人の悪口を言わないように、とのこと。
伏見稲荷本教 間力協会 八霊社
〒612-0805
京都府京都市伏見区深草開土口町5-3