特集 2016年1月25日

くさやのくさみをとる方法

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味はいいが、においが個性的すぎて敬遠される食べ物。その代表格が「くさや」だろう。好きな人にとってはそれも醍醐味のひとつなのだろうが、初心者にはなかなかハードルが高い。

パンチの効いたそのにおいを、どうにかして封じ込めることはできないものだろうか?
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。

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> 個人サイト Twitter (@noriyukienami)

うわさ通りのくささ

くさやは青むろあじ、とびうおなどを使った干物。伊豆諸島の特産品として知られている。
購入はインターネットほか、東京都心なら竹芝桟橋にある伊豆諸島のアンテナショップでも買える
購入はインターネットほか、東京都心なら竹芝桟橋にある伊豆諸島のアンテナショップでも買える
だが、それ以上に知られているのが、独特のにおいであろう。ストレートに言うと、超くさい。くさや液と呼ばれる発酵液に最長20時間程度浸け込むことで、うまみと同時に臭気をたっぷりまとったくさやが完成するという。

買ってきたくさやが厳重に真空パックされているところからも、そのにおいの強烈さがうかがえる。おそるおそるパックから取り出すと、期待に違わぬ強烈な刺激が部屋中に立ち込めた。うむ、なかなかのもんだね。
外装は二重になっているなど、かなり厳重。外側の包装を開けると、封じ込められていた臭気が一気に広がる
外装は二重になっているなど、かなり厳重。外側の包装を開けると、封じ込められていた臭気が一気に広がる
くさや液は古いほど味が深く、そのにおいもまた強烈なものとなる。本場・伊豆諸島には300年以上熟成させたくさや液を使用しているところもあるそうだ。

つまり、くさやの世界ではくさいほど上等なのだ。うまいくさやを味わいたいなら、そのくささも含めて愛するべきなのかもしれないが、そこまでの器のデカさは持ち合わせていない。
うまそうだけど、たいへんやばいにおいを醸し出しています
うまそうだけど、たいへんやばいにおいを醸し出しています
そこで、今回はくさみを消して旨みだけを残すことにトライしてみたいと思う。

用意したのは以下5種類の調味料など。いずれもくさみを消すことには定評があるつわものたちだ。これらにくさやをひと晩浸け込んでみた。
果たして、くさや本来の味をなるべく変えずに、かつ、最もにおいを消し去ってくれるのはどれなのか?
エントリーNO.1 「料理酒」
エントリーNO.1 「料理酒」
魚の生臭さを抑える料理酒だが果たして
魚の生臭さを抑える料理酒だが果たして
エントリーNO.2 「酢」
エントリーNO.2 「酢」
酸味と臭みの攻防。どちらが勝つか
酸味と臭みの攻防。どちらが勝つか
エントリーNO.3 「しょうゆ」
エントリーNO.3 「しょうゆ」
漬けマグロならぬ、漬けくさや。醤油の味がつき過ぎないか不安
漬けマグロならぬ、漬けくさや。醤油の味がつき過ぎないか不安
エントリーNO.4 「焼酎」
エントリーNO.4 「焼酎」
強烈なアルコール臭はくさやを制するか
強烈なアルコール臭はくさやを制するか
エントリーNO.5 「牛乳」
エントリーNO.5 「牛乳」
牛乳に含まれる成分は、におい物質を吸着する特徴があるそう
牛乳に含まれる成分は、におい物質を吸着する特徴があるそう
これらはいずれも魚の生臭さを消すために用いられる一般的なやり方であるが、長年かけて熟成されたくさや液にどこまで対抗できるのか。

また、このほかに、くさやと同じ発酵仲間であるこんな食材もエントリーさせてみた。
納豆
納豆
くさやに納豆を塗りこみ、ひと晩置く
くさやに納豆を塗りこみ、ひと晩置く
くさやほどではないが、その個性的なにおいが魅力の納豆。毒を以て毒を制す荒療治だ。
それぞれ、ひと晩浸け込む
それぞれ、ひと晩浸け込む

そして翌朝

そして8時間が経過。昨晩は部屋にくさやのにおいが充満していてなかなか寝付けなかったが、目覚めたらあまり気にならなくなっていた。脱臭に成功したのか、鼻がなれてしまっただけなのか。
とりあえず、部屋中に充満するほどの臭気は消えていた
とりあえず、部屋中に充満するほどの臭気は消えていた
では、さっそく一つずつ食していこう。まずは料理酒に浸けたくさやである。
見た目的にはザ・日本の朝ごはん。うまそうだ
見た目的にはザ・日本の朝ごはん。うまそうだ
しかしながら皿に移すと、やはり強烈な臭気がたちのぼってきた。忘れかけていたあのにおいだ。やあひさしぶり、あいかわらずくさいね。
くさや自体のにおいはあまり消えていないが、料理酒にはくさやのにおいが染み込んでいた
くさや自体のにおいはあまり消えていないが、料理酒にはくさやのにおいが染み込んでいた
朝のさわやかな気分が吹き飛ぶにおい
朝のさわやかな気分が吹き飛ぶにおい
しかし食べてみると、これがうまい。うまみと甘みが凝縮された、濃厚な魚の味わいが感じられてご飯が進む。でも、くさい。なのに箸が止まらない。悔しい。

思わず完食してしまったが、とてもくさかった。というわけで、くさやVS料理酒はくさやの圧勝である。
うまいくさい
うまいくさい
これは、どれも対して変わりませんでしたのパターンだろうか。くさやのパワーはそれほどまでに強大なのか。

続いては酢である。
照りがいい感じ
照りがいい感じ
近くでにおうと「あっ!」となるが、くささはまあまあ軽減されている
近くでにおうと「あっ!」となるが、くささはまあまあ軽減されている
お酢の美肌効果でくさやがツヤツヤになっている。また、においもまあまあ抑えられているようだ。
また、味もほんのり酸味をまとっていて、なかなかおもしろい。ほどよい酸味の向こうにくさやの甘みも感じられ、違いに引き立て合っている。これ、好きだ。
次はしょうゆ。不安になるほど真っ黒になったが
次はしょうゆ。不安になるほど真っ黒になったが
くさくなーい!
くさくなーい!
今回最もにおいが気にならなかったのがしょうゆ。においを消すというよりも、上からガッチリ押さえこんでいる感じだ。くさやのにおいも残っているのだが、しょうゆの風味の存在感が強いのであまり気にならないレベルになっている。相手の力を十分に引き出させた上でねじ伏せる横綱相撲とでもいうべきか。

味もしょっぱくなく、むしろ塩味をやわらげてマイルドになっている。食べやすさでは今回ナンバーワンだ。
おいしゅうございました
おいしゅうございました
続いて焼酎
続いて焼酎
くさくない! でもこれは…
くさくない! でもこれは…
今回くさやの臭気を最も打ち消したのが焼酎だ。あれほどくさかったその面影はほとんど感じられず、むしろ寂しいくらいであった。
だが、その代わりに焼酎の酒くささが台頭している。一尾ぜんぶ食べたら酔っぱらいそうなにおいである。味にはこれといった変化はなかったが、朝の食卓には不向きかもしれない。
次に牛乳
次に牛乳
うーん
うーん
こちらは、においはさほど変わらず。料理酒と酢の中間くらいの撃退度。味はやや塩気がマイルドになり、身の食感が少しやわらかくなった気がする。ただ、全体的にちょっと変化が中途半端かな。
ちなみに納豆はというと
ちなみに納豆はというと
なんか土っぽいにおいがした
なんか土っぽいにおいがした
納豆でもないし、くさやでもない、不思議な感覚。あえて言うなら土っぽいような、懐かしいにおいがした。決してイヤな感じはしない、心休まるにおいだ。納豆とくさや、激しい攻防の果てに行き着いた平和がそこにはあった。
納豆はそのままご飯にかけて食べた。うまかった
納豆はそのままご飯にかけて食べた。うまかった

くさいからって食べないのはもったいない

くささゆえ敬遠されてしまうどころか、罰ゲームで使用されるなど不当な扱いを受けがちなくさや。だが、そのくさいベールを剥がしてみたら、どんな干物にも負けない味わい深さに驚いた。くさいというハードルを越えくさやの世界に一歩踏み込んでみる手段として、今回の試みを多くの人におすすめしたい。

なお、個人的な見解に基づく、くさやを楽しむためのランキングは以下の通りです。

【くさやのにおいが消えた順】
1位 焼酎、2位 しょうゆ、3位 納豆、4位 酢、5位 牛乳、6位 料理酒

【おいしかった順】
1位 酢、2位 しょうゆ、3位 納豆、4位 料理酒、5位 牛乳、6位 焼酎
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