特集 2016年2月5日

この「エアコン配管」がすごい!

この「エアコン配管」がすごい!
この「エアコン配管」がすごい!
私、プロフィールに「エアコン配管観察家」と書いておきながら、今までその話題にふれていなかった。一体何を観察しているのか、疑問に思う方がほとんどであろう。

今回は、誰も知らない「エアコン配管」のディープな世界をお届けしたい。
1983年徳島県生まれ。大阪在住。散歩が趣味の組込エンジニア。エアコンの配管や室外機のある風景など、普段着の街を見るのが好き。日常的すぎて誰も気にしないようなモノに気付いていきたい。(動画インタビュー)

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「エアコン配管」って何だ

「エアコン配管」というのは、文字通りエアコンの配管であり、屋内にあるエアコン(室内機)と、屋外にある室外機とを結ぶ配管である。
室外機から上に伸びている白い管、これが一般的なエアコン配管
室外機から上に伸びている白い管、これが一般的なエアコン配管
カバー付きのエアコン配管もある。どちらもよく見る光景だと思う
カバー付きのエアコン配管もある。どちらもよく見る光景だと思う
おそらく大半の方は、自宅のエアコン配管くらいしか見たことがないだろう。あるいは、エアコン配管なんて気に留めたこともないかもしれない。

しかし街を見渡してみると、エアコン配管って、実はこんなに面白いことになっているのだ。いきなりラスボス級のを2つお見せしよう。
幾重にも折り重なり、生命力すら感じる謎の束……これ、紛れもなくエアコン配管である。「ラピュタは本当にあったんだ!」って叫びたくなる
幾重にも折り重なり、生命力すら感じる謎の束……これ、紛れもなくエアコン配管である。「ラピュタは本当にあったんだ!」って叫びたくなる
弧を描き、吸い込まれるように窓へ入っていくエアコン配管。もう窓は閉められないし、関係ない一階の窓も大胆に横切ってるし……細かいことは気にしない潔さを感じる
弧を描き、吸い込まれるように窓へ入っていくエアコン配管。もう窓は閉められないし、関係ない一階の窓も大胆に横切ってるし……細かいことは気にしない潔さを感じる
もう、何が何やらという感じだと思うが、こんなエアコン配管が街中いたるところにある。そう、いたるところにあるのだ。ウソではない。

日常にひそむ闇、「エアコン配管」

エアコン配管は基本的に裏方の存在であるため、ほとんどの人には見えていないし、意識されていない。
そのうえ、工事は基本的に業者任せである。一般の方はその仕上がりを確認することもないだろうし、良し悪しを判断する基準も持っていないことが多い。

幸か不幸か、その辺の事情がエアコン配管に驚くべき多様性をもたらしている。
エアコン配管観察初心者にオススメなのは、雑居ビルの裏側。あまり人目にさらされない部分のためか、大胆な配管が多い。特に、解体されたビルに隣接していた壁面なんてのは、最高の観察ポイントだ
エアコン配管観察初心者にオススメなのは、雑居ビルの裏側。あまり人目にさらされない部分のためか、大胆な配管が多い。特に、解体されたビルに隣接していた壁面なんてのは、最高の観察ポイントだ
かと思うと、こんなに気持ちのいい配管もあったりする。そう、エアコン配管の魅力は「汚さ」だけではない
かと思うと、こんなに気持ちのいい配管もあったりする。そう、エアコン配管の魅力は「汚さ」だけではない
もはや配管うんぬんの話ではない場合も。どうだろう、だんだんとエアコン配管に可能性を感じてこないだろうか
もはや配管うんぬんの話ではない場合も。どうだろう、だんだんとエアコン配管に可能性を感じてこないだろうか
と、こんな風にいろんなエアコン配管の写真を見るだけでも面白いのだけど、観察家としては、もう一歩踏み込んだところまで解説しておきたい。
それは、「なぜこんな妙な配管が生まれるのか?」という点である。

そのためには、エアコン配管の設置工事にまで立ち返る必要がある。

「エアコン配管」の美しさと雑さ

まずは分かりやすい例として、次の2枚の写真を見比べてみて欲しい。
まず1枚目。屋根の部分に室外機があって、家を回り込むように配管が設置されている
まず1枚目。屋根の部分に室外機があって、家を回り込むように配管が設置されている
2枚目。同じく屋根の部分に室外機があって、配管の様子も似ているのだが……
2枚目。同じく屋根の部分に室外機があって、配管の様子も似ているのだが……
同じようなロケーションのエアコン配管だが、印象はだいぶ違って見えないだろうか。
直線的な1枚目に対して、2枚目のふにゃふにゃ感たるや。しかも最短経路を結ばずに、微妙に行ったり来たりしている。どちらが美しいかは一目瞭然であろう。

この違いこそが、まさにエアコン配管の面白さの核心部分である。つまり、
1) ふにゃふにゃ感
2) 雑な経路を通ってもいい
これらが、エアコン配管を特徴づける重要な要素にもなっているのだ! 順に説明しよう。

特徴1)「ふにゃふにゃ感」

一言に「配管」と言えば、多くの人はパイプ状の管を想像するかもしれない。よく目にするのは「ガス管」だろう。その他にも、「給水管」や「電気配管」など、いろんな管がある。
街で目を引くのは、キレイに揃った直線的な配管が多い。正直、これはかっこいいと認めざるをえない
街で目を引くのは、キレイに揃った直線的な配管が多い。正直、これはかっこいいと認めざるをえない
一方のエアコン配管はというと……ふにゃふにゃ~
一方のエアコン配管はというと……ふにゃふにゃ~
ちなみに、エアコン配管の構造はこうなっている。一本の管として見えているが、実は複数の管やケーブルがひとまとめにテーピングされている
ちなみに、エアコン配管の構造はこうなっている。一本の管として見えているが、実は複数の管やケーブルがひとまとめにテーピングされている
エアコン配管を構成する管のうち、全体の形状を決めているのは、主に銅管だ。この銅管、力を加えると自由に曲げられる。しかしかなりの固さがあるので、曲がった銅管を真っ直ぐに戻すのは、曲げるときよりも難しかったりする。

そんな配管の特性が、あの独特なふにゃふにゃ感を生んでいるのである。

特徴2)「雑な経路を通ってもいい」

エアコンを設置するときは、まず「この部屋に設置したい」というお客さんからの要望がある。それを聞いた工事担当者は、なるべく設置する部屋に近く、かつ置きやすいなどの、一定の条件を満たした屋外に室外機を据え置く。
エアコン(室内機)と室外機の場所が決まった。あとは配管をどんな経路で結ぶかだが……
エアコン(室内機)と室外機の場所が決まった。あとは配管をどんな経路で結ぶかだが……
さて、ここから先が運命の分かれ道。

配管はエアコンと室外機を結ぶのだけれど、どんな風に結ぶのかは担当者任せである。
もちろん定石というか、効率のいい結び方はあるのだけれど、実際にはもっといろんなパラメータ(工事時間、工賃、部材費など……)が加味されて、最終的に私たちが目にするエアコン配管となる。
全体的にだらしないが、これくらいのエアコン配管はごく普通。私は勝手に『ダブルドラゴン』って呼んでる
全体的にだらしないが、これくらいのエアコン配管はごく普通。私は勝手に『ダブルドラゴン』って呼んでる
一方では、こんな素晴らしい配管にもなりうる。この配管、左右で障害物(窓とか通気口)の位置が違っているのだが、配管の折れ曲がり方が同じになるよう考えて配置されているのだ。素晴らしすぎる!
一方では、こんな素晴らしい配管にもなりうる。この配管、左右で障害物(窓とか通気口)の位置が違っているのだが、配管の折れ曲がり方が同じになるよう考えて配置されているのだ。素晴らしすぎる!
つまりエアコン配管は、工事担当者のやり方次第で、無限通りの経路が存在するのである。なので、一つとして同じ配管はないし、ものすごく変な配管が生まれる可能性だって秘めているわけだ。
ああ、なんて魅力的な観察物なんだ! エアコン配管!

さて、これで何となくエアコン配管の成り立ちが分かってもらえたかと思う。ここからは実践編として、いろんなエアコン配管を観察していこう。

ここが人生の分かれ道、分岐系

さすまた状に分岐する横方向の配管と、縦方向の配管がクロスするのもポイント。路線図のようでもある
さすまた状に分岐する横方向の配管と、縦方向の配管がクロスするのもポイント。路線図のようでもある
私が「エアコン配管は面白い!」ということを確信したのが、この配管を見つけた時だった。まさに人生の分かれ道。いろんな配管を見てきたが、「分岐」が付いたエアコン配管はかなりレアである。
壁の廃れ具合も相まって、無駄にフォトジェニックな雰囲気があり気に入っている。

ちなみに紹介するエアコン配管は、ほとんどが大阪市内で撮影したもの。エアコン配管には地域差がないので、どこにいても素敵な配管に出会うことができる。

くるくる回る、ループ系

空中で一回転する様は、まさに『ムーンサルト』
空中で一回転する様は、まさに『ムーンサルト』
派手な配管ばかりではない。地味な配管にも味があることを示してくれたのが、このループ系エアコン配管。この短距離で、あえてループを作ったところに男気を感じる。
あと室外機を乗せてる台が相当に趣深いところにも注目したい。本記事では省略するが、「室外機観察」も面白いので、いずれ紹介したい。
ループがワンポイントになっていて、逆にお洒落に見えなくもない
ループがワンポイントになっていて、逆にお洒落に見えなくもない
グルグル巻いて、上の方は一気に舞い上がっているこの感じは、まさに『トルネード』。配管が長い点でユーザにメリットはないが、工事的には配管をカットする時間が短縮できる
グルグル巻いて、上の方は一気に舞い上がっているこの感じは、まさに『トルネード』。配管が長い点でユーザにメリットはないが、工事的には配管をカットする時間が短縮できる

どこに向かうのか、とまどい系

戸惑ってるなぁ
戸惑ってるなぁ
もはや戸惑いを超越して、書家の筆使いみたいになってる
もはや戸惑いを超越して、書家の筆使いみたいになってる
どの方向に行けばいいのか、迷ってうろうろしているのが、とまどい系のエアコン配管。
初めて見たとき、これはとても正気の沙汰ではないなと思った。何せこの戸惑いっぷりである。

しかし、詳しい方に見立ててもらったところ、最初からこんな変な形なのではなく、配管をつないだまま室外機を移動させたせいでこうなってるらしい。たしかに、配管のねじれ方を見ると納得。うーむ、奥が深いな。

遠回りを強いられる、迂回系

装飾テントに行く手を阻まれ、迂回して穴に向かうエアコン配管
装飾テントに行く手を阻まれ、迂回して穴に向かうエアコン配管
エアコン配管の行く道は、決して平たんな道ばかりではない。室外機から壁の穴に至るまで、いくつもの障害物が待ち受けている。その障害物を迂回するため、エアコン配管の経路は捻じ曲げられる。

古い建物ほど、建築当時にはエアコンが設置されてなかったという場合が多い。そんな建物に後付けされたエアコン配管の地位は低く、無理を強いられるのは大抵エアコン配管の方である。
ガス管とガスメータがあって、迂回を強いられるエアコン配管。ちゃんと迂回できてないのは、ガス管に対する抵抗心の表れだろうか
ガス管とガスメータがあって、迂回を強いられるエアコン配管。ちゃんと迂回できてないのは、ガス管に対する抵抗心の表れだろうか
この家では、エアコン配管より郵便ポストのほうが地位が高い
この家では、エアコン配管より郵便ポストのほうが地位が高い

見た目に美しい、端正系

ライン取りが美しくて惚れ惚れしてしまう。排気口を避けるため、一部だけ曲線のカバーを使ってる部分が特に素晴らしい
ライン取りが美しくて惚れ惚れしてしまう。排気口を避けるため、一部だけ曲線のカバーを使ってる部分が特に素晴らしい
前述したとおり、決して汚い配管ばかりではない。ピシッと揃った配管を見ると、背筋が伸びる思いがする。
個人的に美しく感じるエアコン配管は、「直線的」で「無駄のない経路」を取っていることが多い。あとは、カバーを上手く組み合わせたりするとポイント高し。
流線型のエアコン配管。階段の斜めラインに配管を揃える辺りに、強いこだわりを感じる
流線型のエアコン配管。階段の斜めラインに配管を揃える辺りに、強いこだわりを感じる

闇に隠れて生きる、忍び系

突如トタンから現れる謎の白いやつ。右上に室外機が見えることから分かるように、これもエアコン配管だ
突如トタンから現れる謎の白いやつ。右上に室外機が見えることから分かるように、これもエアコン配管だ
京都祇園では、いかにも京都らしい佇まい。エアコン配管は、垂直に伸びる竹の中を通っている
京都祇園では、いかにも京都らしい佇まい。エアコン配管は、垂直に伸びる竹の中を通っている
エアコン配管は裏の存在なので、努めて目立たないよう隠している場合も多い。しかし長いことエアコン配管観察を続けていると、だんだんと嗅覚が研ぎ澄まされてきて、何でもない風景の中にもエアコン配管を見つけてしまうのであった。

ん? 何か引っかかる系

パッと見は普通のエアコン配管でも、何か引っかかるものがある。そんな時はよーく見てみると、あっ! という新鮮な驚きがあったりする。自分の直感を信じて観察したい。
通称『シャッター殺し』。もうシャッターは開けられない……
通称『シャッター殺し』。もうシャッターは開けられない……
オッドアイのようなエアコン配管。左の配管は茶色に塗られているのに、右の配管は白いまま。こだわってるのか、こだわってないのか、どっちなんだい
オッドアイのようなエアコン配管。左の配管は茶色に塗られているのに、右の配管は白いまま。こだわってるのか、こだわってないのか、どっちなんだい
しめ縄……ではない。どうしてこんなに捻じれているのか、じっくり見直してもよく分からなかった
しめ縄……ではない。どうしてこんなに捻じれているのか、じっくり見直してもよく分からなかった

混沌を極める、複雑系

長らくのお付き合いありがとうございました。最後は大物、複雑系である。これはもう、写真を見てくれとしか言いようがない。
これは何ていう生物の触手なんだろう。屋上がどうなってるのか、気になりすぎる
これは何ていう生物の触手なんだろう。屋上がどうなってるのか、気になりすぎる
配管のボロさとか、枯れた植物が絡んでる様子とか……幾多の戦場を乗り越えてきたかのような貫禄がある。こういう大物を見つけると一人で小躍りして、これだからエアコン配管観察はやめられねえな、って思うのであった
配管のボロさとか、枯れた植物が絡んでる様子とか……幾多の戦場を乗り越えてきたかのような貫禄がある。こういう大物を見つけると一人で小躍りして、これだからエアコン配管観察はやめられねえな、って思うのであった

おわりに

私がエアコン配管に目を付け始めたのは、いまから約9年前のこと。真夏の電器屋にて、エアコンの設置工事を手伝っていた時にまでさかのぼる。
約1ヶ月という短い期間だったけれど、実際にエアコン配管が生まれる様子を体感し、その可能性を感じずにはいられなかった。(ちなみに行ってたお店の施工する配管は全て「端正系」だった)

これまでコミケや個展等で写真を発表してきたところ、エアコン工事を本業にしている方とも何度かお話することできた。本業の方からすると、この記事で紹介しているような配管は概ね「あー……(察し)」って感じらしい。詳しくは書かないが、まあいろいろあるようだ。

エアコン配管に興味を持った方は、Twitterのハッシュタグ #エアコン配管 を見ると幸せになれるかも。

下の写真は、2年前に作った「室外機パネル」と「本物のエアコン配管」を使ったモニュメント。配管を思い通りに曲げるのは意外と難しい……というのは、このとき思い知った。何事も試してみるのが吉。

あと同人誌やトレカも出してるので、よかったらご覧下さい→ 紹介ページ

観光地にある顔出し看板の雰囲気で、エアコン配管と記念撮影
観光地にある顔出し看板の雰囲気で、エアコン配管と記念撮影
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