特集 2016年1月20日

歴史に名を残せエスカルゴ牧場

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エスカルゴ牧場というものが三重県にあると知った。牧場…?エスカルゴは牧場で育つものなのか…?

興味本位で行ってみたらば壮大な夢を目の当たりにした。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

前の記事:本場名古屋のコメダ珈琲の奥深さ

> 個人サイト owariyoshiaki.com

不安覚えるエスカルゴ牧場

車でないと少しアクセスがムズカシイところにあったので、レンタカーでエスカルゴ牧場に向かう。カーナビのとおりに向かうとドンドンと住宅地に進んでいく。住宅街に牧場が…?
牧場感ある。
牧場感ある。
心配していたが、牧場っぽさが全開な施設が現れた。この牧場でエスカルゴ達がノビノビと(ウニョウニョと)動き回っているかと思うと言い表しづらい気持ちになる。
顔ハメ
顔ハメ
基本的に人はいません。
基本的に人はいません。
いざ、牧場!と思ったが中に人がおらず、電話して呼ぶシステム。にわかに盛り上がる珍スポット感…。経験的にこのシステムの場合は強敵が多いぞ…。

警戒しながら電話をしたらばすぐにおじさんが現れて中に入れてくれた。

妙ちくりんなレベルじゃねぇ

中に入ると、まずは社長からエスカルゴについてのレクチャーがある。これがなんかまた凄いのだ(社長のキャラが)。
エスカルゴ牧場の高瀬社長
エスカルゴ牧場の高瀬社長
巻き貝の仲間
巻き貝の仲間
エスカルゴもカタツムリも昔は貝だったのが、地殻変動で無理やり陸地に上げられちゃって進化したものらしい。貝、貝か。言われてみれば確かにそうっぽい。でんでん虫とかいうし、ちょっと虫かと思っていた。

社長「だから私は漁業をしているんですね」

僕「おっ、おう」
不死身の超人…?「不死身なんですか?」って聞いたら「色々ありましてな…」って返された。不死身なのかもしれない。
不死身の超人…?「不死身なんですか?」って聞いたら「色々ありましてな…」って返された。不死身なのかもしれない。
社長「日本ではカタツムリも含めて十把一からげにしてエスカルゴっていいますけど、フランスで食用にされているエスカルゴは種類も限定されていてものすごく貴重なんですよ」

僕「へぇー、凄いんですね、カタツムリ」

社長「エスカルゴね」

社長はエスカルゴをカタツムリって言うとムッとしちゃう。

社長「ここで養殖に成功したエスカルゴは一番美味しいと言われている種類なんですがウナギみたいに食べ過ぎちゃって国の保護種に指定されてフランスからは持ち出せないの」

僕「えっ、じゃあなんでここにいるんですか!?密輸!?」

社長「それも話すんで、段取りあるんで最後まで聞きなさい」

レクチャーというかほぼ講義である。僕は最後まで聞けって注意を何度も受けた。そして話は徐々に社長の半生記のようになっていく。
日本のカタツムリとエスカルゴの違いを説明する社長。カタツムリは食べられるんですか?って聞いたら「私は食べませんが、食べたいならどうぞ」って言われた。教えてくれないのか。(帰ってから検索したらカタツムリには寄生虫がいて危険だって書いてた。ヤバイ。)
日本のカタツムリとエスカルゴの違いを説明する社長。カタツムリは食べられるんですか?って聞いたら「私は食べませんが、食べたいならどうぞ」って言われた。教えてくれないのか。(帰ってから検索したらカタツムリには寄生虫がいて危険だって書いてた。ヤバイ。)
社長「輸入しようとしたらフランスの保護指定や国内法の関係で出来ないんですけど、輸入しようと思えば色々と方法はあってね」

僕(密輸や…。密輸を言っていいのか…)

社長「何度も何度もフランスや日本の国に掛けあって、学者さんにも協力してもらったりして、許可を得ました」

僕「正攻法!いろんな方法もなにも正攻法!」

社長「許可を得るまでに7年、今までにエスカルゴに6億円はかけました」

僕「なんですかその熱意!?なんでそこまでしてエスカルゴなんですか!?」

社長「それも話すんで、段取りあるんで最後まで聞きなさい」
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エスカルゴを食べたことある人はほとんどいない

いろんなことを毎日記録したノート
いろんなことを毎日記録したノート
社長「そんなこんなで輸入は出来た、出来たけれども繁殖に成功した人はいないので何もかも手探りでね」

そう言って出てきた資料は事細かな記録がぎっしりと詰まっていて努力の量が見て取れる。おもしろカタツムリおじさんくらいに思っていたのに予想以上に凄いのかもしれないぞ…。

社長「色々やるうちに三十年でようやっと安定した養殖に成功したんですわ」

僕(その熱意の根源を…)

と、思っていたら奥で調理されていたエスカルゴが出来上がったようだ。
殻に入って出てきた。僕が今まで食べたのは穴に身だけ入ってた。
殻に入って出てきた。僕が今まで食べたのは穴に身だけ入ってた。
わかりづらいけど、身がデカい。
わかりづらいけど、身がデカい。
殻に入って出てきたエスカルゴは予想以上に大きくて貝感が強い。食べてみると身が厚くてプリッとシコシコとした食感が強く、トマトで煮こまれた酸味が油やニンニクの味に負けていない。

僕「すごい!今まで食べたことがあるものと全然違います!エスカルゴ自体の味が凄い」

社長「エスカルゴ料理というとソースと油を食べると思っている人が多いんですが、それは水煮の缶詰で輸入されてくるものは臭みがあって、強い味で消さないと食べられないからそうなっちゃうんです」

社長「エスカルゴは貝なので、本当にいいエスカルゴであれば、わさび醤油で食べるのが一番美味しいですよ。貝なので」

貝なのでを強調してるけれど、貝なんだったら貝を食べればいいだけになっちゃわないか…?。
エスカルゴというエスカルゴじゃない缶。
エスカルゴというエスカルゴじゃない缶。
そしてフランス産エスカルゴと代替品であるアフリカマイマイの水煮缶を見せてくれた。

社長「同じ水煮の缶でもエスカルゴと代替品では何倍もの値段の差があるんですよ。だから、殆どの人が食べたことがあるのはエスカルゴじゃないかもしれない」

僕「じゃっ、じゃあ、あの大手イタリアンチェーンとかは…?」

社長「(自主規制)」
いろんな人達からのオファーメールをプリントアウトして保管してる。
いろんな人達からのオファーメールをプリントアウトして保管してる。
社長「それほどエスカルゴっていうのは希少なので、殻だけでも売ってくれませんか?って言ってくるのもたくさんいて」

僕「あっ、殻に入れて出す用にの殻ですね」

社長「その殻に何を入れて出すんだ。って話ですわ。他にも色んなオファーがあって、これは某大企業、これは某レジャー施設から」

僕「おぉ、すごい!そんな所にも卸してるんですね」

社長「いや、無視。全部無視」

僕「えっ!?無視なんですか!?(なのに全部保管してるの!?)」

社長「ビジネス云々じゃなく、この価値をわかっているところじゃないと」
アラブの石油王の名刺
アラブの石油王の名刺
社長「一番すごいところでは、アラブの石油王がリゾートを作るから、そこで施設を全部準備するから来てくれって言われたりしてね」

僕「石油王!?」

社長「金融の会社とか、車の会社とか色々持ってるような凄い所らしいんだけど」

僕「お金を、すべてを持っているのに唯一持ってないのがカタツムリ!」

社長「エスカルゴ!エスカルゴな!そうやって、日本人は何もかもを分かったようにカタツムリって言うけれども…」

しまった!と思った瞬間に奥さんが生きたエスカルゴを持ってきてくれた!ナイスタイミング!!

エスカルゴかわいい…。

カタツムリ感薄い…。
カタツムリ感薄い…。
なにこれ、かわいい。ちっちゃいのとか超かわいい。エスカルゴは想像と違って、本当に貝のよう。殻の質感もそうだし身体部分もまるで貝。

日本のカタツムリとかナメクジはちょっとニガテだけれど、こいつ、かわいいぞ…!

僕「おおっ、実物見ると本当に貝みたいですね!予想よりもかわいい…」

社長「そうやろう!」

というと、むんずと掴みあげて僕の手のひらの上に置こうとする。や、ちゃっ、それは、さ、流石に!って思うも社長の力強い腕に為す術はありませんでした。
あっ、かわいいわ。大丈夫だわ。殻もめっちゃ硬い。人の力では割れないくらいらしいよ。
あっ、かわいいわ。大丈夫だわ。殻もめっちゃ硬い。人の力では割れないくらいらしいよ。
と、置かれてみると意外と大丈夫。というか可愛く見えてきた。感触もカタツムリよりもスルスルした感じで悪くない(小学生の時はカタツムリとか平気だったことを思い出した)。
でも、流石にこのヌルヌルはちょっとな…。
でも、流石にこのヌルヌルはちょっとな…。
って、思っていたらエスカルゴの粘液は肌にエエんやぞ!って言って社長に塗りこまれた!ギャッ!!!
って、思っていたらエスカルゴの粘液は肌にエエんやぞ!って言って社長に塗りこまれた!ギャッ!!!
塗りこまれて、ううぅ…。って思っていたが、実際スベスベになった感がして微妙である。

ここで一旦室内パートは終わり。実際に牧場に見学に行くことに。こいつらが20万匹いるそうだ。一体どんな状態だよ…。
逃げ出そうとするエスカルゴかわいい。
逃げ出そうとするエスカルゴかわいい。
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考えつくされたエスカルゴ牧場

先ほどの食堂のような所から少し離れた所に牧場はあるらしい。
牧場…?
牧場…?
着いて行くと工場のような建物に入っていく。牧場、というよりも工業のようだ。

牧場内は完全に管理されていて温度や湿度、餌や土、その環境を整えるまでの設備がシステム化されていて、どれだけの試行錯誤を重ねればこれが出来上がるんだろうかと想像を絶する。

お金ならいくらでもある石油王でもノウハウがなければこれは作れないわ…。と実感する。時間と知識はお金では買えないんだな。
牧場内は写真撮影が禁止とのことなのでイラストでお送りいたします。エスカルゴ達は三食飯付き温度管理が完璧な環境で暮らしている。
牧場内は写真撮影が禁止とのことなのでイラストでお送りいたします。エスカルゴ達は三食飯付き温度管理が完璧な環境で暮らしている。
僕「これは凄いですね…。全部一人で考えたわけでしょう」

社長「そうや、私が死んだら全部パァ」

僕「えっ、そんな、後継者とかは…」

社長「それも話すんで、段取りあるんで(以下省略」
エスカルゴ看板デカい。
エスカルゴ看板デカい。
僕「いやぁ、ここまでするなんて、社長相当エスカルゴが好きなんですね」

社長「そんなことないよ。好きとか嫌いじゃなくてやるだけ」

僕「えっ、好きじゃないんですか!?じゃあ、儲かるから!?」

社長「好きとか儲かるとかではなくてやるべき事なんやよ。周りはおもしろカタツムリおじさんと思ってるかもしれんけど」

僕(図星や…)
さっきのが産卵室で、こっちが飼育室。この飼育室が凄い。
さっきのが産卵室で、こっちが飼育室。この飼育室が凄い。
社長「30年前に私が1ミクロンを計測できる機械を作ったんだけれど、周りにはそんなもの必要あるかと笑われたんです。それが今じゃ機械にはそれくらいの精度が必要となるので凄く需要がある。」


社長「私は昔、松阪市の長者番付で上の方に載ったことがあるんですが、それでも17万人のウチの上の方です。世界の人口を考えてみなさい。70億人でトップ取ろうとしたらどうすべきか。誰もやったことのないことをやらなきゃいけないんです」

壮大!興味本位で来て凄いことになってきたぞ。

社長「お父さんはね、歴史に名を残したいんだよ!」

お父さん!テンション上がってきて、一人称が私からお父さんになった!歴史に名を残したいってこんなに真面目に本気で言う人初めて会った!

お父さん「真珠といえばミキモトって言われるように、エスカルゴといえば高瀬って言われるようになりたいの」

※ミキモトとは、真珠の養殖に世界で初めて成功して真珠王と呼ばれた三重の英雄、御木本幸吉のことである。
建物の中に入ると木とか無いけれど匂い、湿度、空気が完全に森。目をつぶるとヨーロッパの初夏の朝の森みたいになる。研究の賜物感が凄い。
建物の中に入ると木とか無いけれど匂い、湿度、空気が完全に森。目をつぶるとヨーロッパの初夏の朝の森みたいになる。研究の賜物感が凄い。
お父さん「だからこれはお父さんがやらなきゃいけない事だし、研究や維持費にものすごくお金がかかる。今まで八億円はかかってる。それだけを払っていける人はいないでしょう。お父さんが死ぬのが先か、世界が認めるのが先かの勝負なんですよ」

さっきは六億円って言ってた気がしたが、凄いことである…。

僕「お父さん!頑張って!頑張って!!」

お父さん「お父さんはね、世界が認めてくれるまでやることをやるだけですよ」

そう言ってお父さんは予定があると言ってエスカルゴ牧場見学ツアーは終了した。

と思ったら次のお客さんがいきなり来て、電話で呼びだされていた。
と思ったら次のお客さんがいきなり来て、電話で呼びだされていた。

これだけ壮大な話を聞き、貴重なエスカルゴを食べて大体1時間で900円である。

一時間つきっきりで900円なんて完全に割に合わないが周知や広告、文化として育てて行くことが歴史に名を残すのに必要なのだと言っていた。

ですので、これを読んだ皆様方に於かれましては何かわかりませんが、お父さんが歴史に名を残せるようどうにかしてくだされば幸いでございます。以上、よろしくお願いいたします。

イラスト提供 ぽんさん
https://twitter.com/hiho0o
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