そんな展示会もあるのか
知人に「そういうのやってるらしいよ」と聞いて、まずホームページを確認した。
背景画像が、墓!
美坊主(びぼうず)という語感がすごい。イケメン坊主、とかじゃ駄目なのか。
ちなみに僕はまさにこの最終日にお邪魔したのだが、初日には遺体を棺に収める技術を競う『納棺士コンテスト』が、二日目には僧侶の日本一を決める『美坊主コンテスト』が開催されていたらしい。
どちらも、非常に見たかった。
いま、あの霊柩車は少ない
さて、会場に入ると、いきなり真正面に巨大な車がどーん、と置かれている。
自動車メーカーの光岡自動車のブースに展示されていた、最新の霊柩車『ミツオカリムジン タイプV』である。
普通に高級なリムジンだ。
後ろが棺を収納するスペース。
このタイプVは光岡自動車の霊柩車におけるフラグシップモデルで、職人さんが一台ずつ手作りしているとのこと。お値段は955万円から。
こちらは低燃費なハイブリッド霊柩車。
霊柩車というよりも単にゴージャスなリムジンじゃないか、と思わなくもないが、実はこれが今の一般的な霊柩車(洋型霊柩車)の形なのだという。
レアになりつつある、宮型霊柩車。
そういや最近あのお神輿が上に乗ったような霊柩車(宮型霊柩車)を見ないなと思っていた。
実はこのタイプ、「いかにも霊柩車」という見た目が嫌われて、どんどん数が減っているのだ。
地域によっては「斎場に宮型霊柩車は立ち入り禁止」という厳しいところもあるらしい。
これまでは「親の死に目に会えないから、霊柩車を見たら親指を隠せ」と教えられてきたが、今後はリムジンを見ても親指を隠すことになりそうだ。
お金持ちとか外タレセレブが乗った車と区別が付かなそうだが、とにかくリムジン見たら親指だ。
お仏壇も棺も進化している
最近は「扉を閉めたらタンスにしか見えない」「プラスチック製」などバリエーションが増えているお仏壇。
もちろんエンデックス会場でもいろいろと最新のものが展示されていた。
高級仏壇。金箔貼りや塗りを施してないので、木目や細工のクオリティがダイレクトに出るらしい。
お仏壇メーカーのずヾやブースで展示されていたのは、ハイクラス仏壇『輪王Ⅲ』。
お値段なんと529万円だ。
いま価格コムで調べたら、同じぐらいのサイズのお仏壇がだいたい50万円ぐらい。高くても100万円に届かないぐらいだったので、飛び抜けて高級である。
あと、価格コムで仏壇の価格検索ができたのも驚いた。
福祉仏壇という初めて聞くカテゴリ。
こちらは、最新の福祉仏壇『優』。
なにが福祉かというと、お仏壇のふちに収納式の手すりがついているのだ。
手をついて体重をかけてもグラグラしない。安心。
「仏壇に手をかける場所があれば立ちやすいのに…」というお年寄りの声から生まれたそうだ。
確かに、拝んだ後はここに手をかけると立ち上がるのがラク。
いろんなところに需要があるものだ。
一方、最新の棺桶は
逆に、絶対に需要の声が無かったところからの新製品も展示されていた。
なんと、寝心地の良いお棺である。
三和物産の、お棺の寝心地を体験できるコーナー。
これまでのお棺は基本的に板を箱形に組んで布を貼った、ぐらいのものなのだが、この寝心地の良いお棺はなんと内側がふかふかのクッション貼り。
ふかふかと柔らかい、お棺。
寝心地体験中。狭くてかなり怖い。
実際に寝てみてもいいということなので、お棺の中に入れてもらった。
初めてのお棺の中は圧迫感というか閉塞感すごいけど、でも確かに柔らかい。ふかふか。
死んだら「板張り、硬くて痛い」とか文句は言えないが、でも、できればふかふかの方が嬉しい。
こちらは、一見ふつうの布団。
パタパタとたたむと、お棺に早変わり。トランスフォーム。
あと、寝かされていたお布団がお棺に変形するものも展示されていた。
お葬式まではお布団フォームで、いざ出棺する時に素早くお棺に変形させて霊柩車に乗せるのだ。
やはり身内がお棺に収められているのはなかなかショッキングなもの。ぎりぎりまではお布団に寝ているような自然な姿でいてもらおう、ということだそうだ。
お棺の中に敷く専用の畳も。
どうやら、お棺の寝心地は最近の棺桶トレンドらしい。
葬祭用たたみメーカーの極東産機ブースでは、お棺の中に敷く専用の畳『おくりたたみ』も展示されていた。
こちらも板張りでは亡くなった人も痛かろう、という気遣いなのか。
お葬式テクノロジーの進化
どーんとブース内で棺桶が展示してあるから、ここもお棺メーカーかと思って見たら、なんか妙にメカメカしい。
機械的な棺桶か。
なんとこれ、葬式の間に遺体がいたまないように棺桶ごと冷却しておく『葬儀用ご遺体冷蔵機』だった。
大きな斎場でやるような大規模なお葬式は、参列者も多いので時間がかかる。夏場とか、エアコンが効いていても色々と大変らしい。
見たこともない文字列の組み合わせ。葬儀用で、ご遺体の、冷蔵機。
従来であればドライアイスや蓄冷材を使っていたが、それが葬儀業者さんにとっては結構なコストなのだ。
この冷蔵機にすっぽりとお棺を収めておけば、電気の力でマイナス20℃まで冷却してくれる仕組みである。
電動で棺桶を上げ下げしてくれるリフトも装備。
それにしても、こういう機械を専門に作ってるメーカーさんというのもあるものなのだなぁ、と驚いてたら、こちらのヤマザキ・シー・エーの方に否定された。
「いや、うちは葬式関係じゃなくて冷蔵機械のメーカーなんです。こういう感じの冷蔵庫、他でも見たことありませんか?」
「……?」
「スーパーなんかで冷凍食品やアイスを置いてるケースあるでしょう。アレを作ってます」
なるほど!言われてみれば確かにそれっぽい。
アイスとか冷凍うどんを冷やす技術でご遺体も保存しているのか。
中を触らせてもらう。うわ本当に冷たい!
ちなみに今回展示している新製品は何がどう新しいのかと訊ねたところ「電源が従来の200Vじゃなくて100Vが使えるようになりました!」とのこと。
なるほど、200Vの電源使えるところってそうそう無いし、普通のコンセント(100V)なら一般の家庭でも使えるだろう。地味だけどこういう機械も進化しているのだ。
他にもいろいろと最新葬儀トレンド
会場内では、他にも、普通に生活していたら関わりの少ない業界の「へー」という展示があれこれ見られた。
こちらは再利用可能な蓄冷材のブース。
先ほどの冷蔵機ブースでも話を聞いたが、やはり葬式業界のドライアイスコストは問題らしい。
ここ以外にも「ドライアイスだとお金かかって大変じゃん?」という旨のコピーがいくつか見られた。
名前が格好いい、檀家管理ソフト。
アプリ開発会社のブースでは、檀家/門徒管理用のデータベース『一如』がイチ推しされていた。
「発売から12年、全国の寺院様にてご愛用いただいております」とあるから、もしかしたら僕らが知らないだけで、お寺関係者の間では「はいはい、一如ね。そういやバージョンアップのお知らせ来てたから今夜にでもアプデかけとくか」とかいうぐらい身近なものなのかもしれない。
あと、『戒名外字』とかも必須なんだと思う。
位牌もあっというまに完成する。
これは、何も書かれていない、いわゆるブランクの位牌に戒名をドリルで彫り入れるマシン。全自動一刀彫りシステム『スーパー櫓壇(ろだん)』だ。
以前にテレビで「卒塔婆専用のプリンター」というのを見たことがあったが、今は位牌まで。
イオンのお葬式ブースで、まさかサービス。
スーパーなどでお馴染みイオンは『イオンのお葬式』という葬式のセットプランも提供しているのだ。
で、そのイオンブースでは、プロカメラマンによる遺影の撮影を行っていた。
しかも、WAONカードに加入すると撮影無料、というサービスである。
カードの加入でなにか特典が付くというのはよくあるが、遺影撮影はちょっと斬新過ぎないか。
前の方、なんかローソクじゃないものが展示されてるような。
焼酎は芋と麦が別になってるのが細かい。ローソクなのに。
カメヤマローソクは、故人が好きだったものに火をともしてお供えできる『好物キャンドル』を展示。
ワンカップやお寿司がローソクになっているというのは、なかなかに不気味な感じだ。
ちなみに飲み物系ローソクは、火をともすと中の液体の部分だけが減っていくので、本当に故人が飲んでいるような感じになる。やはり不気味だ。
掘りかけの仏像と「次回14時より実演します」の紙。
展示会で実演展示をする…というのはよくあることだが、さすがエンデックス、仏像を彫る実演と来た。
今回はタイミングが悪く実演を見ることはできなかったが、仏師さんがリアルタイムで仏像彫るの、楽しそうだ。
段ボールのお墓はなかなかリアル
見て回っている途中、なにかスケール感のおかしいものが視界に入って、おもわず二度見した。
普通の長机に置けるお墓。
あきらかにお墓が小さい。スケールモデルか。
あと、遠目には違和感なかったのだが、近くに寄ってみると光沢がありすぎるような気がする。
フチをよく見たら、段ボールだった。
ケンロウ本舗ブースに展示されていた『はこぼ』は、自宅にお墓が作れる段ボール墓石。
自宅内で供養したい場合や、とりあえずお墓を建てるお金がないので一時的にこれで…みたいな使い方をするらしい。
骨壺をこうやって納める。
触らせてもらったが、かなり頑丈な段ボールを使っている。
自宅の廊下に置いといて、うっかり足を引っかけて壊しちゃった、みたいなことは無さそうだ。
ただし水気と火には弱いので、花は造花、お線香はLEDライトを使って欲しい。
薔薇とか星とか印刷も自由に。
あと、段ボールなので表面に印刷ができるのはメリット。薔薇や星、花火などいろんな表面デザインが選べる。
もちろん注文次第でオリジナル墓も作成可能とのこと。
自分の墓にどんなプリントをするか考えるのはなかなか楽しそうだ。
超ニッチ用途の筆ペン
僕は普段は文房具ライターと名乗って新製品のレビュー記事などを書いているのだが、会場内で驚くような文房具を発見した。
東山工業(呉竹の筆ペンを生産している会社)のブース。
超ニッチな筆ペン。
『墓石筆ペン』と『卒塔婆筆ペン』だ。
卒塔婆は、文字通り卒塔婆など白木に書く専用の筆ペン。墓石用は、墓石に彫り込まれた文字が薄くなった時に塗り直して補修する専用。どちらも耐水性・耐光性の高い顔料インクを使用している。
さらに、まだ亡くなってない方のお墓を補修する用の朱筆や、上から重ね塗りして保護するトップコートもあった。
専用試し書き用紙もすごいが、試し書きしてる方もあきらかにプロっぽい。
まさかここまで畑違いの展示会で知らない文房具を見つけるとは思っていなかったので、なにかすごく得をした気分である。
文房具探す目的で、また知らない展示会を見に行ってみよう。
知らない展示会や見本市に行くと楽しいのは、とにかく何を見ても知らないことばかりなので面白いということだ。
春先にはビッグサイトで『高機能プラスチック展』があるらしいので、それを見に行く予定だ。
なにが展示されているのかまったく見当がつかないので楽しみである。
時間が合わなくて見られなかったけど、この組み合わせも知らないやつだ。