特集 2015年10月2日

家にあるものぜんぶまぜそば

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最近いろんなラーメン屋に「まぜそば」というメニューがあるだろう。スープがなくて、麺の上にいろいろな具がのっているやつだ。

うちの近所の家族経営の中華料理屋でも、最近になって「台湾まぜそば」というメニューが出てきた。店の冷蔵庫にあったものをぜんぶ刻んでのせたみたいなやつだ。

でもたしかに、あれ、どんな具をのせてもうまそうである。

とりあえずあるものぜんぶ入れておけばうまいまぜそばができる、という説は正しいのだろうか。
1994年愛知生まれ。大学であいまいな学部に入ったらあいまいな人間になった。いまわかっていることは、自分はけっこうひげが伸びるタイプだということ。

前の記事:ぼくはのらマスター


麺以外は家にあるもの

家にあるものぜんぶを具にして作る、その名も「家にあるものぜんぶまぜそば」を4つの家で作って、まぜそばの可能性を探ってきた。
麺だけは買います
麺だけは買います
まぜそばは基本的に挽肉がのっているが、それ以外はさまざまである。そしてぐちゃぐちゃにまぜて食べるので、結局なにが入っているのかわからないし、「なんかうまいぞ」という味しかしない。でもそれがうまい。

まぜそばは具材に関係なくおいしいんじゃないかと思う。

家にあるものぜんぶのっけて、まぜてやろう。
江坂プロフィール
・21歳
・実家暮らし
・好きなアイス:チョコモナカジャンボ
昨日の晩ごはんの残り
昨日の晩ごはんの残り
昨日の晩ごはんの残りのお好み焼があったからこれをのせよう。

まぜそばの具はたいていさいの目に切ってあるか、細かく刻んである。だからお好み焼もさいの目に切ればまぜそばの具になるのだ。
畑でとれたモロヘイヤがあった。これ好きなのだ。茹でてのせよう。
畑でとれたモロヘイヤがあった。これ好きなのだ。茹でてのせよう。
今回はこんな感じのノリである。冷蔵庫をのぞいて、見えたものを切ってまぜそばの具にしてしまう。
これだけの具がそろった
これだけの具がそろった
ぜんぶ家にあるものだというのが見てわかると思う。

きんぴらは前々日の晩ごはんの残り。チーズは一度袋があけてあって、危険な状態で冷蔵庫に潜んでいたもの。

ただ、「家にあるものぜんぶまぜそば」と言っておきながら「これだけか?」と言われると、まだ缶詰とか豆腐とか、家にはいろんなものがある。ぜんぜん全部ではない。

でも次々に具を用意していると、だんだん自分はこんな贅沢なことをしていいのかという罪悪感が募ってくる。今、自分は家にあるすべての食材を使ってただ一度の食事を済まそうとしているのだ。王様みたいなことをしている。

あまりにも背負うものが大きすぎるので、今回はこの程度の具の種類にしておいた。一人暮らしの冷蔵庫だと考えれば十分ぜんぶっぽいのでよしとしよう。

まぜそばは、具を増やしすぎてしまうと自分が王だと錯覚してしまう危険な食べ物であることがわかった。


さて、それではどんぶりを用意しよう。
丼にタレをいれる
丼にタレをいれる
これはちゃんとクックパッドをみて作った。めんつゆと醤油とごま油をそれぞれ大さじ1杯ずつ混ぜたもの。すこしなめてみたけど、これがまあうまい。
麺をゆでる
麺をゆでる
太めの麺を1.5玉分ゆでてどんぶりに入れる。1玉だと見た目が寂しかったので、ちょっと増やしてみたらちょうどよさそうな量になった。
用意した具をのせる
用意した具をのせる
まぜそばというよりは冷やし中華みたいだけど、なんとなくうまそうな感じになってきた。ここからさらに具や液体を追加していく。
納豆
納豆
冷蔵庫の奥で眠っていた納豆をライド・オン。冷暗所で日を経ることでカリカリになっており、ややネバリが弱いが、そんなことはまぜそばには関係ないのだ。
紅ショウガ
紅ショウガ
紅ショウガは昨日のお好み焼に使ったものだから、具としてはお好み焼きに含まれているのだけど、僕が冷蔵庫で見つけてしまったのでのせちゃう。
生たまご
生たまご
ラーメン屋は黄身のみを用いるけど、もったいないから全部使う。へたくそなので黄身が割れた。
クミン
クミン
割れた黄身がみすぼらしいので、クミンを振りかけてごまかしておこう。
家にあるチューブのものもぜんぶ入れちゃおう
家にあるチューブのものもぜんぶ入れちゃおう
写真はないけど、その他に鮭フレーク、はちみつ、ラー油、こしょう、マヨネーズ、味の素を入れた。
できた
できた
なにも考えずに具をのせただけだけど、なんだかうまそうになった。ラーメン屋で女子がまぜそばを頼んでこれが出てきたら、インスタグラムにのせそうなビジュアルである。そして「かわいい!」とかいうコメントが付く。
ぐちゃぐちゃにまぜて、いただきます
ぐちゃぐちゃにまぜて、いただきます
うめぇ~
うめぇ~
感想
・まぜそばっぽい
・ネバネバ感がマッチする
・「ジャンクを食っている」という味がする。概念の味がする
・クミンだけは主張してくる。「クミン、おまえいるな」となる

タレがうまかったので、そのおかげで味がジャンクらしくまとまったのかもしれない(あとは具のめちゃくちゃさのため)。まぜそば、もといジャンクとして申し分ない出来となった。

あと当然のようにどんな具が入っているのかは認知できない。モロヘイヤやオクラはネバネバ感のみを残して存在がないみたいだ。だけど問題はない。まぜそばってそういう食べ物だ。うまけりゃいいのだ。

まぜそばにはまぜそばのための具が必要なんてことはぜんぜんなかった。家にあるてきとうな具だけでまぜそばの味を再現できる。しかもうまい。
ちょっと麺を多く茹ですぎてしまったけれど(この時点でもうお腹いっぱい)
ちょっと麺を多く茹ですぎてしまったけれど(この時点でもうお腹いっぱい)
次に、人んちの冷蔵庫でぜんぶまぜそばを作ってみた。冷蔵庫の中身は一緒じゃないので、完成するぜんぶまぜそばも違ってくるはずだ。

他の家でぜんぶまぜそばを作ってまずかったら、僕の家の冷蔵庫がたまたまラーメン屋と一緒だっただけだ。
僕の家のぜんぶまぜそばはこんな具材が入っていた
僕の家のぜんぶまぜそばはこんな具材が入っていた
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しょっぱいまぜそば(20歳・一人暮らし・男性宅)

僕の家にはたくさんの食材があって、困ってしまった(王になるから)。だからできるだけ冷蔵庫の中身の少なそうな友人、服田君のお宅を訪問した。彼はめったに自炊をしない。
服田君プロフィール
・20歳
・一人暮らし(自炊をしない)
・好きな食べ物:ひつまぶし
・腕が太め
タレの材料、丼、麺を持って、突撃させていただいた。もちろん冷蔵庫には手をつけないでと頼んである
タレの材料、丼、麺を持って、突撃させていただいた。もちろん冷蔵庫には手をつけないでと頼んである
そしてできたものがこちら。
またうまそうになった
またうまそうになった
なんだかんだでいろんな具が用意できて、いいかんじのまぜそばになった。

心の中で、「具がなにもなくて、ほぼ麺だけになるかも」とすこしわくわくしていたが、そんなことはなかった。

人んちの食材を使わせてもらっておきながら、文句を言っているみたいになってしまった。
冷蔵庫は酒とタレ系ばかりだったが、冷凍庫にそれなりに具材があった
冷蔵庫は酒とタレ系ばかりだったが、冷凍庫にそれなりに具材があった
冷蔵庫と冷凍庫を好き放題あさって、できるかぎり使えそうな具材を探した。今思えばどろぼうみたいなことをしている。
たこ焼きの具が残っていた。サイズ的にまぜそば向き
たこ焼きの具が残っていた。サイズ的にまぜそば向き
使いかけのカレールーを発見
使いかけのカレールーを発見
さいの目に切ってそのままのせた。「やばいかな」
さいの目に切ってそのままのせた。「やばいかな」
レシピはこうなった。歯ごたえのあるものがすこし多め
レシピはこうなった。歯ごたえのあるものがすこし多め
食べてみると、やっぱりうまい。とくにカレーの味がまぜそばによく合う。
おいしくて笑っちゃう
おいしくて笑っちゃう
「おっ、うまいねこれ」
「おっ、うまいねこれ」
服田君にもおいしいとよろこんでもらえた。

人んちの食材で作ったものだけど、喜んでもらえると作ったかいがあってうれしい。

ただ、カレールーをさいの目に切ってそのまま入れたのは失敗だった。
いくらまぜでも、かたまりのまま
いくらまぜでも、かたまりのまま
これは味が濃すぎて、とうてい食べられる代物ではなかった。僕は頑張れば食べられそうだったけど、タニタ食堂に好んで行くような人間にはぜったいにむり。
最後まで上手にのこして、お湯を入れてスープにしていただいた(これはこれでうまい)
最後まで上手にのこして、お湯を入れてスープにしていただいた(これはこれでうまい)

イタリアンまぜそば(21歳・一人暮らし・女性宅)

次は、うってかわって普段自炊している友人の林さん。自宅にガスマスク(本物)がある。なんでだ。
林さんプロフィール
・21歳
・一人暮らし(自炊をする)
・好きな動物:豚
完成したぜんぶまぜそばはこちら。
ちょっと具は少な目
ちょっと具は少な目
いままでのぜんぶまぜそばと比べて、具は少ない。具と呼べるものはブロッコリー、えび、ホウレンソウくらいか。パスタみたいだ。
冷蔵庫はがらがらだった
冷蔵庫はがらがらだった
普段自炊をしていても、たまたま冷蔵庫がこうなる日もあるだろう。

ぜんぶまぜそばの場合は普通の料理のときとは違って、冷蔵庫の中身が少ないほうが考えることが少なくてすむので、むしろすがすがしくていい。

なにも考えずに、あるものを乗せればいいのだ。
ペースト状のものばかりある
ペースト状のものばかりある
「これは?」「ココナッツオイル、油だよ」「よくわかんないけど、入れよう」
「これは?」「ココナッツオイル、油だよ」「よくわかんないけど、入れよう」
これだけ見たらパスタが完成しそうだ
これだけ見たらパスタが完成しそうだ
味はどうだ。
うまっ!
うまっ!
これもうまい。口に入れた瞬間、イタリア国旗が見えた。

ちょっとジャンク感が薄いけど、逆に上品さが増していて食べやすい。胸やけしなさそうな、しゃれた味になった。皇室がはじめてまぜそばを食べるなら、これだろう。(でも本当に食べてもらいたいのは、僕んちで作ったジャンク感でベチョベチョのやつ。)

ところが林さんの様子は違った。
「ココナッツオイルがマズイ!」
「ココナッツオイルがマズイ!」
たしかに、言われてみるとトロピカルな後味がする。そのココナッツオイルの味だけ完全に浮いていて、それに気づくと口の中で「まずい」が生まれる。これはちょっと不快だ。

でもまた麺をすするとうまい。ココナッツオイルがちらつくとまずい。でも総合的にはうまい。

まずさは、ぜんぶまぜそばのうまさとは調和していないのだ。べつべつに存在している。

むかし、細胞のなかにミトコンドリアがとりこまれて、それらがどちらも融合しないまま生きて現在の動物の細胞ができたという。20億年くらい前の話だ。まぜそばでもそれと同じことが起こっているのである。
うまいかまずいかのどちらか、ということではない。もっと高度なことが起こっている
うまいかまずいかのどちらか、ということではない。もっと高度なことが起こっている
「うん、まずいね。ココナッツオイルだけ」
「うん、まずいね。ココナッツオイルだけ」
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フルーツ入りまぜそば(おばあちゃん宅)

これまで下宿している友人を2人たずねたので、最後は実家暮らしの友人宅を訪問しようとしたのだが、家庭の許可を得られなかったので突撃することができなかった。なのでおばあちゃんちで作った。
おばあちゃんプロフィール
・僕のおばあちゃん
・70歳くらい
・趣味:社交ダンス
冷蔵庫はぎっしり
冷蔵庫はぎっしり
こんなまぜそばになった
こんなまぜそばになった
おばあちゃんはまぜそば作りにやたら乗り気だった。どんなにまずいものができても、食べるのは僕だからだ。人にへんなものを食べさせて横でゲラゲラ笑おうとしているのが僕には分かる。

自分だけなら絶対に入れないような具もどんどん勧められた。この企画をよくわかっている。
「それ、ゴーヤの佃煮。おいしいからぜひ入れてみて」「大丈夫か、この色」
「それ、ゴーヤの佃煮。おいしいからぜひ入れてみて」「大丈夫か、この色」
「知り合いにたくさんブドウもらったから、いれなさい」
「知り合いにたくさんブドウもらったから、いれなさい」
このあともカステラを、お茶を、となんでも入れようとしてくる。僕もさすがにお茶のところでちょっとまて、となって具を追加するのをやめた。おばあちゃんが暴走している。危険だ、この企画。
「(笑いながら)このブドウ、刺身みたいに見えるね」
「(笑いながら)このブドウ、刺身みたいに見えるね」
具は多めになった。チューブものはなんと脅威の7種類
具は多めになった。チューブものはなんと脅威の7種類
もうぼくはわかったぞ。なにを入れても結局はうまいのだ。
もう何回作ってもうまい
もう何回作ってもうまい
やっぱり、人んちのぜんぶまぜそばもうまかった。とりあえずあるものぜんぶ入れておけばうまいまぜそばができる、という説は正しいのだ。

まぜそばは、具材によらずおいしい料理だったのだ。つまり、まぜそばはワールドワイドなコスモポリタンなのである。

きっと今ぼくがマケドニア人の家にいっていきなりまぜそばを作っても、おいしいまぜそばが完成する。

まぜそばはグローバルなので、今後世界的な料理として海、山、そして国境を越えることは間違いない。まさか僕の近所の中華料理屋もこんなことになるなんて考えてなかっただろう。僕も考えてなかった。すごいぞ、ぜんぶまぜそば。

まぜそば・イズ・ワンダフル

ただし、ぜんぶまぜそばは入れてもおいしくない具があるので、その点だけ気をつけなければならない。途中なにも考えなくていいといったけど、少しは考えたほうがいい。

だからサルのものまねをしながらぜんぶまぜそばを作ることはおすすめできない。

次は「日本列島にあるものぜんぶまぜそば」を作って、世界一具材の多い料理としてギネスブックにのせたい(まぜそばを)。
さいごのまぜそばに入れたブドウ、激マズでした
さいごのまぜそばに入れたブドウ、激マズでした
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