みんな、お待たせ! そして、あの編集が…脱いだ!
夏といえばプール! そしてハマっ子のプールといえば、水が冷たいと評判の元町公園プール!日々、送られてくるキニナル投稿のなかにも、元町公園プールに関する疑問がたくさん。
投稿にある歌詞はCKBのアルバム『goldfish bowl』の『昼下がり』に!
…というわけで今回、元町公園プールにまつわるキニナルを一気に解決しましょうよ、と。
唯一の障害はオレ(細野)が先日、四十肩になったということ(腕を肩より上に挙げると痛い。そして患部は冷やさないこと、絶対)。
この問題を担当編集の山岸(以下、ヤマギシ)に告げると…。
オレ:「すいません、四十肩になってプール入れないんですけど」
ヤマギシ:「…分かりました! ここは編集がひと肌、脱ぎますから」
えっ!? ヤマギシ、水着!? どうなる、今回のキニナル
…というわけで取材日の2015(平成27)年8月6日早朝。キニナルの舞台、元町公園プールに到着。
“ぱねぇ”暑さの元町公園プール前。すると…
ふら~っと登場、編集長・吉田
吉田登場ですべてを悟るオレ(あっ、吉田脱ぐな…)。
オレ:「今日、何か聞いてます?」
吉田:「ヤマギシが水着持って集合! って」
…よし、気持ち切り替えて行こう。さっそく施設内へ。
着替えを激写! 嫌がると思ったがガンガン脱ぐ吉田
そして完成、仕上がってる吉田
元町公園のプールが今季もオープンしましたが、入口に昔の水泳大会の写真が飾ってあります。いつ頃のどんな写真なのか知りたいです。またこのプールの水温ですが、とても冷たい所と温かい所があり、泳いでいるとキニナリます。ぜひ調べてみて下さい。(keinakatさんのキニナル)
こちらが入ってすぐに掲げられている元町公園プールを写した古写真
さらにもう1枚。飛込み台が確認できる
さて、いつごろのものなのか? 施設の方に聞いてみよう。
施設責任者の遠藤寛之(えんどう・ひろゆき)さん
この疑問、遠藤さんにぶつけてみるが「いつごろのものなのか?」「いつから飾られているのか」分からないそうだ(撮影者も不明)。
写真の謎は後ほど迫ってみよう。
さらに質問。「なぜ元町公園プールの水は冷たいのか?」 が…!
「今は冷たくはありません。昔は井戸水を利用していたために冷たかったそうですが…」との回答。
元町公園プールの水は昔、井戸水を使用していた。だが現在は水道水を使用しているそうだ。
そして今は冷たくはない?
みんな、お待たせ! そして、あの編集が…脱いだ!(つづき)
確認をしよう。編集長、出番ですよ!
今週の名場面「俺の夏」
森に囲まれた50メートルプール(いいなぁ、このロケーション)
横浜の喧騒からちょっとだけ離れた小高い丘に、こんなプール。ひょっとしたらCKBの名曲『タオル』の舞台もここなんじゃ…。(あの娘が~忘れていったタオル~♪)
スタンバイ完了な土星人。さっそく行ってみよう
入水! 吉田:「細野さん、温くて快適ですっ!」
この日の午前9時、水温は31.5度をマーク
絶好の日和に水温を確認。冷たくはない。では場所による違いはあるのか?
編集長、GO!
スイ~~~っと
吉田:「細野さん、若干ですが建物の近く、手前側の水温が低い気がしますっ」
この差、施設の遠藤さんによると2つの理由があるそうだ。
「注水口がプールの5メートルの位置(手前側の位置)にあるため」と「(ほかの場所が)日差しによって水が温められたこと」によるという。
いずれも誤差の範囲内とのこと。
元町公園プールで一番冷たいのはこの場所、5メートルの位置(誤差内ですが)
実地による検証を終了する。残るキニナルはプールの歴史と、市内で最も冷たいプール探しだ。
仕事前にプールでひと泳ぎ。エグゼクティブな吉田(お疲れ様でした!)
案の定、吉田がアイスを食う。次回のSASUKEまで1年切ってるぞっ!
井戸の名残りと昔の姿(証言)
さて、かつての元町公園プールは井戸水を使っていたという証言。これを裏付ける碑が同じ敷地にある。
公園入口に掲げられたプレート
幕末期に来日したフランス人実業家・ジェラールが明治初頭にこの地を手に入れ、敷地内に湧く水を横浜港に出入りする船に水を供給していたという。この湧水が後年、プールの水としても使用されていた、というワケ(諸説あり)。
公園に隣接するジェラール水屋敷貯水槽。国登録の有形文化財だ
元町公園プールの水が冷たかったのは、いつまでだろう? そして冷たかった当時のプールを知る人は、どんなことを語るだろう?
元町から中村川を越えて中華街へ。ここに細野が頼る、横浜の事情通がいる。
2度目の登場、上海路の喫茶店「比韻豆(ビーンズ)」
お店の馬(マー)さんに聞いてみよう。今から50年前の元町公園プールの話
「(元町公園プールは)井戸水だもの、そりゃ冷たかったわよ。意を決して入るの。しばらくすると唇が紫になるほどだもん。真夏でもよ?」
そんなに冷たかったのか…。
「あと、昔はプールの底が傾斜になっててね。飛び込み台の方は足がつかないんだから」
横浜市史資料室で見つけた、かつての姿(撮影年不明) 横浜市資料室提供・米国国立公文書館所蔵
「プールの周りは木々の枝が茂っててプールの上を覆っていたの」とも
「昔から大人が多かったね。日焼け目的で」
「ビキニ着た、近くの私立の女の子たちがたくさんいてさ。その子たち目当ての男の子でいっぱいだったんだから!」
おぉ、そうなのか!(このなかに剣さんもいたのかな?)水の冷たかったころの元町公園プール、何だか楽しそうだ。
横浜市資料室所蔵『横浜グラフ』(横浜国際写真通信社)
馬さんの証言は、ここまで。いつからあるのか? 井戸水を使わなくなったのはいつ、そして何故なのかは判明しなかった。
今度は行政・所管をしている横浜市に聞いてみよう。年代記としてのプールの歩みだ。
元町公園プール・クロニクル
プール、そして元町公園を所管している横浜市環境創造局南部公園緑地事務所に問い合わせをする。
本館正面、関内中央ビル7階にあります
…が、所管をしているもののプール(公園)の歴史に関する資料がないという。それでも判明した点は2つ。
ひとつめは飛び込み台について。「死亡事故があったために撤去を行った」こと。
ふたつめは、井戸水から水道水へ切り替えた理由。
それは「水質検査基準の向上に、井戸水が耐えられなくなったから」。
また、切り替えは大規模な水道局による工事ではないため、水道局にも記録はないという。
所管する横浜市でも歴史が分からないとは…
そして過去に元町公園プールの所管をしていた「横浜市緑の協会」に問い合わせをするが、こちらも「分かりません」との回答。さらに…。
みなとみらい線「日本大通」駅近くの「横浜都市発展記念館」
こちらでも同様に「資料なし」という結果。
さらにさらに、プールの水質検査などを行う「横浜市保健所・健康安全部生活衛生課」の回答も同じ。
手を広げてみる。プールなどの施設が加入する「公益社団法人・日本プールアメニティ協会」でも「分かりません」だ。
(元町の歴史をアーカイブする「横浜元町資料館」でも判明しない!)
不思議だ。大勢のハマっ子が知っている山頂のプールで、CKBの歌詞にも選ばれるエッセンスたっぷりの場所なのに分からない、資料がないなんて。
少し、元町公園プールが可哀想すぎやしないか?
横浜市中央図書館3階の郷土資料をあたる
発見したのはこの2冊
『ペリー来航~ 横浜元町一四〇年史』(発行:元町自治運営会)
『横浜スポーツ百年の歩み』(発行:横浜市教育委員会事務局体育科)
この2冊に歴史が書かれていた。
まずは成り立ちから。横浜市と横浜市青年連合団が資金を出し合い1930(昭和5)年5月20日に完成とある(今年で85周年)。
当時は湧水を利用していたため「清泉プール」と呼ばれていたという。
プール開き当日は、フィリピンとの対抗水泳大会が開催されたそうだ 『横浜スポーツ百年の歩み』より
夜間照明を備え「東洋一」の設備・規模を誇るプールだった 『横浜スポーツ百年の歩み』より
当時の様子。周囲の木々はまだほとんど植えられていない 『横浜スポーツ百年の歩み』より
児童プール(長さ15メートル、幅7メートル)も併設 『横浜スポーツ百年の歩み』より
また写真に散見する、高さ12メートルを誇った飛び込み台について。開設当時からのものだが、撤去されたのは1967(昭和42)年。
飛び込み台は事故が起こり姿を消してしまった 『ペリー来航~ 横浜元町一四〇年史』より
以上が中央図書館で得られたことのすべて。
資料でも井戸水から水道水への切り替え時期は判明しなかった。
悔しいが仕方がない。
謎は謎のまま、そこにあるのに記録がない
次は冒頭の、施設内に飾られていた写真は「いつごろのどんな写真なのか?」という謎。
このキニナルの回答は…1930(昭和5)年から1967(昭和42)年の間に撮影されたもの。これ以上は残念ながら不明だ。
最後に、このキニナルも解いておこう。
横浜で一番水の冷たいプールといえば昔は「元町プール」のことを指したようです。地下水を使っていたから、とても冷たかったようで。さて、今はどこのプールが横浜市内で一番冷たいのでしょうか。夏を爽快に過ごせる取材をお願いいたします。(maniaさんのキニナル)
市内30ヶ所のプールにアンケートを敢行(横浜市体育協会ホームページより)
温水プールと子どもプール2ヶ所(芦名橋公園プールと白幡仲町公園プール)、老朽化のため閉鎖されている上飯田西公園プールは除外とした。
日時は、8月6日の午前9時の水温を聞き取った。
この夏、一番水温の低かったプールは…
旭区の大貫谷公園プールの水温28度!(これでも充分すぎるほど温かい)
ちなみに最も水温が高かったのは港北区の綱島公園プールや、都筑区の茅ヶ崎公園プールなど5ヶ所が記録した32度で、すべての施設の平均水温は31.46度と、これまた温かい数値。すべての施設が、望ましいとされる水温の基準内だった。
横浜市内の市営プールの水温は今、どこもほぼ同じだった。
横浜の市営プールはどこも良好なコンディションでした~
取材を終えて
いつまで元町公園プールの水は冷たかったのか?
過去、プールに通っていたという方々に聞き込みをしたが「飛び込み台の撤去と同時期」や「平成に入ってから」、「数年前だ」とさまざまな回答があり、時期を絞り切ることができなかった。
裏付ける行政側の資料が存在しない以上、これらの証言を検証しキニナル回答として掲載をするわけにはいかない。
横浜を代表する歴史あるプールの歩みが一部、埋もれてしまっていた。
(これ、どうなんだろう?)
とはいえ、夏の日にちょっとだけ童心に帰らせてくれる横浜のプールは、掛け値なしに素晴らしいものでした。
そして皆さまにおいては単純に、ぜひ元町公園プールで残暑の澱(おり)を流していただければ…と。