特集 2015年9月3日

大仏は現代でいうとダムなんじゃないか説

人生でまさか大仏を造る日が来るとは
人生でまさか大仏を造る日が来るとは
相次ぐ自然災害や凶悪事件、政治の不安などを理由に、このところTwitter上では大仏建立の声が高まっている、と聞いた。

その理由や規模などを調べたとき、もしかして大仏は現代でいうとダムなんじゃないか、と思ったのだ。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

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ダムは現代の大仏である

大仏建立という声を聞いて、奈良の大仏のことをちょっと調べたところ、おや、と思った。

たとえば奈良の大仏は、当時疫病や農作物の不作、大地震などの自然災害が相次ぎ、また国内の情勢不安にも悩まされていた聖武天皇が建設を命じたらしい。

大仏もいいけど、ダムを造れば下流に水を安定して供給することができるから、不衛生な水を使って広まる病気を防ぐことができるし、農作物も安定して収穫することができるようになる。地震からの復興にだって水は必要だろうし、少なくとも水不足が原因で農民が困窮することは減るから情勢も多少は安定するだろう。
ダムができれば生活環境は向上するはず
ダムができれば生活環境は向上するはず
また、奈良の大仏は743年に聖武天皇による詔(みことのり:天皇の命令文書)が出され、745年に工事が開始。そして752年に完成している。計画が始まってから完成まで9年間だ。

ダムでも、たとえば京都府の淀川(宇治川)に造られた天ヶ瀬ダムは1953年に襲来した台風の被害を契機に計画され、1955年に事業が始まって1964年に完成した。つまりこちらも9年間。
ダムの写真は数万枚あるけど大仏の写真を1枚も持ってない
ダムの写真は数万枚あるけど大仏の写真を1枚も持ってない
そして、奈良の大仏は9年間でのべ260万人が工事に関わったとされている。

まさか、と思いながら調べてみると、なんと岡山県にある湯原ダムも、のべ260万人が工事に関わったというのだ!
ちなみに工事期間は3年なので人数は1日あたり3倍
ちなみに工事期間は3年なので人数は1日あたり3倍
もうひとつ、奈良の大仏は高さが14.98m。日本の河川法では高さが15m以上のものをダムとしているので、ギリギリ足りないかと思いきや、大仏が座っている蓮華座の高さが約3mある。大仏と蓮華座をセットで考えればおよそ18mで、余裕で河川法上のダム要件をクリアーである。

そして高さ18mは鳥取県の百谷ダムと同じ。つまりもし大仏が川の中に建っていればダムでもおかしくないのだ!!(おかしいよ)
ほぼ奈良の大仏と同じ高さのダム
ほぼ奈良の大仏と同じ高さのダム
さらに、奈良の大仏は現在の価値に換算するとおよそ4600億円以上もの費用がかかった国家的プロジェクトだったという。

さすがのダムでもそこまでのお金は...、と思ったけど、現在群馬県に建設が進められている八ッ場ダムの総事業費が4600億円だという!(八ッ場ダムは先日記事にしているので読んでください→こちら

確かに、八ッ場ダムも政権が2回も変わる要因のひとつとなったほどの国家的プロジェクトだ。
ここに造られる本体はおよそ600億円と言われているので国立競技場より安い!
ここに造られる本体はおよそ600億円と言われているので国立競技場より安い!
どうだろう。

役割をほぼフォローしているうえ、工期、寸法、人員、予算も範囲内。ここまで書けば十分に理解していただけたのではないだろうか。つまり大仏は現代のダムだということを。

むしろダムは、大仏の背景にある信仰や祈りといった未知数な要素ではなく、流入量と放流量というきっちりとした数字で結果にコミットする。つまり本気で災害や情勢不安を払拭するには、同じ労力をかけるなら大仏よりダムを造るべき、というわけだ。

ここまでで、この記事で言いたかったことはほぼ書ききった。まだ続くけど、以下は蛇足である。

大仏はダムになるのか

それならば、と思った。ダムが現代の大仏だというなら、大仏はダムになるのだろうか。

そこで、大仏をダムにしてみることにしたのだ。
というわけで大仏を造ることになった
というわけで大仏を造ることになった
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大仏のつくりかた

最初、大仏は市販のミニチュアで済ますつもりでいたのだけど、それがなかなか見つからなかった。大日如来とか菩薩観音とかはあるのに、大仏のフィギュアってありそうであんまりないのだ。版権とかあるのだろうか。

情報として鎌倉のお土産屋さんで売られている、というのを見つけたのだけど、鎌倉まで行く時間と手間を考えて手作りすることにした。しかし今なら言える。時間と手間とクオリティーを考えて鎌倉に行くべきだった。

大仏の造り方は確か小学校の社会科の教科書に載っていた気がする。本物は金で覆うために山を造ったりして、ほとんど土木工事と言える方法だけど、こちらはミニチュアなので紙ねんどを使う。
材料節約のために芯に発泡スチロールの玉を入れる
材料節約のために芯に発泡スチロールの玉を入れる
顔に使う小さい玉を何となく顔っぽい形にカットしていく
顔に使う小さい玉を何となく顔っぽい形にカットしていく
胴体用の大きい玉もそれっぽくカット
胴体用の大きい玉もそれっぽくカット
意気揚々と100円ショップで材料を揃えたものの、このへんまで造ってそういえば工作下手だったと思い出した。まだ造形前とはいえシルエットは大仏というより雪だるまである。いまからオラフに変えようか。いやそれでは根本から話が変わる。

既に鎌倉までの交通費くらい使ってしまっているので、何とかこのまま進めていくことにした。

ところで仏像関係の基礎知識に疎いので、用語や造形など間違っているかも知れませんがそのへんはご了承ください。
鼻をつけると急に愛着が湧いてくる
鼻をつけると急に愛着が湧いてくる
顔用の小さい玉を紙ねんどで包み、顔の形を造っていく。画像検索した大仏の顔を見ながら、鼻がいちばん目立つ気がしたのでまずは鼻を造形。鼻がつくと急に顔っぽくなり、なんだか愛着が湧いてきた。
タロットカードの太陽みたいな顔になった
タロットカードの太陽みたいな顔になった
続いて目と口をつけてみた。喜怒哀楽のない、いい無表情が作れたと思う。

このあたりから手がねんどで汚れているので写真が撮りづらくなってくる。あらかじめカメラをラップか何かで包んでおくべきだった。こうしてデイリーポータルの記事書きノウハウがまたひとつ貯まってゆく。

続いて大仏といえばの頭についているボツボツ、いわゆる螺髪をつけてゆく。これが時間かかった。
大仏の後頭部ってどうなってたっけ!?
大仏の後頭部ってどうなってたっけ!?
ねんどで小さい玉をたくさん作って頭に貼ってゆく。しかしもみあげってどうなってたっけ?襟足はどうしてたっけ?と混乱した。画像検索しても出てこない奈良の大仏の後頭部に悩む日が来るとは。修学旅行で行ったときにもっと観察してくればよかった!

嘆いても仕方ないので、そのへんはてきとうに済ませて、顔ができあがった。
なんだか欲のないいい顔になったと思う!
なんだか欲のないいい顔になったと思う!
確か耳もこんな感じだったよね
確か耳もこんな感じだったよね
続いて大きい玉を芯にして胴体を作る。

こちらは大きくて大変だったのと手が汚れていたので写真が撮れず、いきなり完成形をお見せしよう。
腕が違う色なのは紙ねんどが足りなくて違う種類を使ったから
腕が違う色なのは紙ねんどが足りなくて違う種類を使ったから
いや言いたいことは分かる。これはひどい。でも時間と資料と資材と能力的にはこれが精一杯だったのだ。40を過ぎて小学生の工作並みの作品を世の中に出さなければならない方の身にもなってほしい(逆ギレ)。

なんだか胴体の大きさと形を誤ったのと、腕に使った種類の違う紙ねんどのコツがつかめないまま朝を迎えてしまったのだ。

仕方ないので、そのまま頭を合体させた。
ガッチリ固定できるように爪楊枝で首と胴体を刺した
ガッチリ固定できるように爪楊枝で首と胴体を刺した
造形的にはどうしようもないので後ろを向かずに突き進む。最後に色を塗って仕上げだ。金色にいろいろな色を少しずつ混ぜて年季の入った感を出してゆく。
もちろん色塗りも不得意です
もちろん色塗りも不得意です
全身を金色に塗り、風通しのいいところで放置。ねんどと絵の具が乾けば完成だ。
ベランダから町の平穏を見守る大仏
ベランダから町の平穏を見守る大仏
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大仏を作ったことがある者だけが石を投げなさい
大仏を作ったことがある者だけが石を投げなさい
いろいろ思うところはある。顔は丸顔だけど本物はもっと縦に長いよなあとか、胴体はもっと薄いよなあとか、指はもっと細くてきれいだよなあとか。大仏作りでも、やってみて初めてわかる気づきがあるのだ。国中公麻呂(奈良の大仏の仏師)まじリスペクト!

でもまあこれが僕の大仏なのだ。愛着がないわけはない。あと、こんな作品とはいえ「仏像を作った」ということで、経験的には運慶とか弘法大師などと同じ土俵に立った、と言っていいだろう。いまの時代なかなかいないと思う。

さて、この大仏をダムにするにあたって、ダムを作る場所を用意した。
この中に作ります
この中に作ります
ちょうど小さい水槽が空いていたのでその中に作ることにした。具体的には、水槽の中にダムを作る場所っぽい地形を作ってそこに大仏ダムを設置し、実際に水を入れて貯められるかどうか試したい。
このまま飾っておいてもいいんじゃないかという気になった
このまま飾っておいてもいいんじゃないかという気になった
川の途中が狭くなっていてここにダムを作れば効率いい!(という設定)
川の途中が狭くなっていてここにダムを作れば効率いい!(という設定)
というわけで途中は省いてその場所にダム完成!
というわけで途中は省いてその場所にダム完成!
岩盤と岩盤の間に入ってちゃんと水をせき止められるか
岩盤と岩盤の間に入ってちゃんと水をせき止められるか

貯水開始!

ではダムも完成し、いよいよ貯水を開始してみる。大仏の上からあふれるギリギリのところまで水を入れて、大仏が耐えられれば立派なダムとして認める。

果たして大仏はダムになるのだろうか!?もはや僕を含めて誰も意味のわからない実験のスタートだ。
ペットボトルで少しずつ水を入れていく
ペットボトルで少しずつ水を入れていく
果たして貯めることができるのか!?
果たして貯めることができるのか!?
紙ねんどがまだ完全には固まっていないのでゆっくり慎重に注いでゆく。徐々に水位が上がってくるが、まだ下流側に漏れ出す水はない。大仏の足元がちょっと心配だったのだけどちゃんと水を止められているようだ。
かなり水位が上がってきた!
かなり水位が上がってきた!
その後も水を注ぎ続け、水位は大仏の肩のあたりまで来た。これ以上注ぐと肩の上から放流してしまう。

大仏は背中で水圧をしっかり受け止め、下流に水を漏らさないように踏ん張っている。もういい!大仏はダムになる!大仏はダムになったのだ!!
ダムの背後に広大な湖が広がる
ダムの背後に広大な湖が広がる
しかし下流には1滴の水も漏らしていない!その瞬間、大仏はダムになった
しかし下流には1滴の水も漏らしていない!その瞬間、大仏はダムになった
さらに水を注ぎ続けると、ついに貯水池の水が肩のあたりからあふれ出した。大仏ダム完成して初めての放流である。まるで自らのダム化を祝うかのような美しい放流。おめでとう大仏ダム!いやダム大仏!!(なんのこっちゃー)
水位があふれるギリギリ!
水位があふれるギリギリ!
ついに水があふれ出した!
ついに水があふれ出した!
ダム大仏はじめての放流!美しい!!
ダム大仏はじめての放流!美しい!!

大仏はダムだった

というわけで、ダムは大仏だし大仏はダムだった。もはや何を言っているのか分からないしその結果にどんな意味があるのかも不明だけど、それが分かって僕は満足です。
しばらくそのままにしておいたら下流側に貯まった水が大仏の下に入り込み押し上げて倒すという、本物のダムでも恐れられている方法で決壊しました
しばらくそのままにしておいたら下流側に貯まった水が大仏の下に入り込み押し上げて倒すという、本物のダムでも恐れられている方法で決壊しました
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