

コーラやサイダーは「ジュース」ではない

ここにも決まりがあった

どの分野の産業にも、その業界で定めたルールというものがあると思う。
そんな中でも、身近ながら知らないうちに接しているのが食品関係の業界ルール。例えば上の写真の味付け海苔。大きさの最低限度が定められているのだ。
他にも食べ物については面白いルールが出てきそう。調べて紹介してみよう。
そんな中でも、身近ながら知らないうちに接しているのが食品関係の業界ルール。例えば上の写真の味付け海苔。大きさの最低限度が定められているのだ。
他にも食べ物については面白いルールが出てきそう。調べて紹介してみよう。

1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」
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きっちり決めてくる味付け海苔
今回参照するのは、表示に関する「公正競争規約」という業界が自主的に設定するルール。(参照)
そこでは、商品についてこれを記載しなさい、逆にこれは書いちゃダメ、といったことが定められている。例えば不動産だと、「新築」と言っていいのは建てられて1年以内と決まっているのだ。
そこでは、商品についてこれを記載しなさい、逆にこれは書いちゃダメ、といったことが定められている。例えば不動産だと、「新築」と言っていいのは建てられて1年以内と決まっているのだ。


きみにも決まりがある

表示に関する公正競争規約は記事公開現在で分野別に67件あり、例えば味付け海苔は「加工のり」の規約に含まれる。
産地や内容量などを表示するという規定は一般的でよくわかる。ただ、最小規格として「横3.1センチメートル、縦8.7センチメートル又は27平方センチメートル以上でなければならない」ということまで書いてあったりする。
産地や内容量などを表示するという規定は一般的でよくわかる。ただ、最小規格として「横3.1センチメートル、縦8.7センチメートル又は27平方センチメートル以上でなければならない」ということまで書いてあったりする。


おお、しっかりクリアしてる


こっちが縦というのも意外

買ってきたのを測ってみたところ、縦横ともに最小規格にほぼぴったり。こうしたものにも決まりがあったのだ。

「風」がついてる理由


言ってることにちょっと違いがある

続いて調べてみるのは「生めん類」に当たるうどん。
写真の2つは同じ店で売っていたものだが、謳っていることが微妙に違う。左は「讃岐うどん」で、右は「讃岐風うどん」なのだ。
写真の2つは同じ店で売っていたものだが、謳っていることが微妙に違う。左は「讃岐うどん」で、右は「讃岐風うどん」なのだ。


「讃岐うどん」のパッケージ

規約では、「さぬきうどん」と表示するには香川県内で製造されたものであることが条件となっている。確かに「讃岐うどん」の方は香川県の会社で作られていることがわかる。


あくまで「風」

対して「讃岐風うどん」は東京の会社が製造している。パッケージから製造地まで読み取れなかったものの、香川県にこのメーカーの工場はないので、「風」をつけたのかもしれない。「讃岐じゃないけど讃岐のおいしさ目指しました」という感じだろうか。


埼玉で買っても札幌感あふれてる

信州そばや長崎チャンポンなど、規約内で品名と製造地を結び付けている麺類はいくつかあり、その中には札幌ラーメンもある。


あれ、札幌の会社ではないぞ

ただ、パッケージを見ると会社は札幌市ではない。メーカーのサイトを見ると、工場も札幌市内にはない。
しかし、規約では商品名と結びつける製造地は道府県レベルなので、これはルール上オッケー。実際、メーカーのある江別市は札幌市のすぐ隣なので、感覚的にも違和感はない。
存在するのかどうかは不明だが、ルール上は稚内や根室で作られた札幌ラーメンがあってもいいように読める。スケールがでかい。
しかし、規約では商品名と結びつける製造地は道府県レベルなので、これはルール上オッケー。実際、メーカーのある江別市は札幌市のすぐ隣なので、感覚的にも違和感はない。
存在するのかどうかは不明だが、ルール上は稚内や根室で作られた札幌ラーメンがあってもいいように読める。スケールがでかい。

プレミアムには意味があった


いつも適当に買ってたコーヒー

続いてはコーヒー。規約は「コーヒー飲料等」と「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒー」とが別々にあって、ここで調べてみるのは前者の方としよう。
上の写真、容器こそ異なれどそのまま飲めるコーヒーであることは同じだ。ただ、表示には違いがある。
上の写真、容器こそ異なれどそのまま飲めるコーヒーであることは同じだ。ただ、表示には違いがある。


「飲料」がつくかどうか

左の2つは「コーヒー」で、一番右は「コーヒー飲料」。この違いについては、真ん中のボトルのパッケージに書いてあった。


「俺はコーヒーの方だぜ」と主張

違いは、容量100g当たりに使っているコーヒー生豆の量。それぞれの最低限量で比べると、2倍の差がある。確かに値段も豆が少ない「コーヒー飲料」の方が安かった。


レギュラーでもほぼ同じ豆の割合

ちなみにカップに乗せてドリップするタイプのレギュラーコーヒーを調べてみたところ、140mlのコーヒー用として豆は8g。
100ml換算すると約5.7gなので、5g以上であるすぐ飲めるタイプの「コーヒー」も大体同じくらいだとわかる。ちゃんとレギュラー並に豆を使ってます、という一つの基準になると思う。
100ml換算すると約5.7gなので、5g以上であるすぐ飲めるタイプの「コーヒー」も大体同じくらいだとわかる。ちゃんとレギュラー並に豆を使ってます、という一つの基準になると思う。


出た、プレミアム

紙パックに入っているのも種類別は「コーヒー」なのだが、プレミアムやリッチと書いてある。
これは規約に決まりがあるもので、こうした言葉を使うには、指定された銘柄の豆を51%以上使っていなければならないと定められている。
これは規約に決まりがあるもので、こうした言葉を使うには、指定された銘柄の豆を51%以上使っていなければならないと定められている。


パッケージでも軽く触れている

他には、スぺシャル・エキストラ・ロイヤルといった言葉も同じ基準。なんとなくかっこいいなと思っていた言葉には、ちゃんと意味があったのだ。

トマトジュースで不老長寿は無理
飲み物つながりでいくと、「果実飲料等」という分類の規約がある。


どれもオレンジ系の飲み物

写真はいずれもオレンジ味の飲み物だが、パッケージの絵柄に規約で決まりがある。


これ見よがしの100%


断面見せない40%

それは、果汁のしずくや果実のスライスを載せてよいのは果汁100%のものだけ、というもの。実際に100%と40%の商品で比べてみるとよくわかる。
また、果汁5%未満のものは果実の絵を表示するのは不当表示だけど図案化した絵なら差し支えない、という決まりもある。
また、果汁5%未満のものは果実の絵を表示するのは不当表示だけど図案化した絵なら差し支えない、という決まりもある。


果汁1%の図案化したオレンジ…?

そう知って1%の絵を見たが、思っていたよりリアルに感じる。よくよく見ると40%のものと比べて皮表面の描写が描き込まれておらず、こういうところが図案化なのかもしれない。規約内でギリギリの表現を狙っているのだろうか。


きみはどうなんだ


アグレッシブにフルーティー

気になったのはレモンティーのパッケージ。果汁0.1%とあるにも関わらず、レモンの断面が思いっきり描かれている。


ジャンルが違った

ただこの商品は「果実飲料等」ではなく、分類は「紅茶飲料」。それゆえ、先の規約にとらわれずこういう表現ができるのだ。


右のはジュースではない

また、果実のジュースと謳ってよいのは、果汁100%のものだけという決まりもある。それより低い場合は「果汁入り飲料」。
コーラやサイダーはジュースではないし、果汁が結構入っていてもジュースと名乗れないのだ。なっちゃんはジュースではないのだ。
コーラやサイダーはジュースではないし、果汁が結構入っていてもジュースと名乗れないのだ。なっちゃんはジュースではないのだ。


さらに低いと飲料水

そして、「果汁入り飲料」には最低で10%の果汁が含まれていなくてはならないので、1%では名乗れない。この商品は「清涼飲料水」とされていた。もはや水カテゴリーだ。
100%じゃないとジュースじゃない。言われてみれば、と思い当たる商品があった。
100%じゃないとジュースじゃない。言われてみれば、と思い当たる商品があった。


だからきみはジュースなのか


非リアルでもかっこいい絵

それはポンジュース。そう名乗る背景には、果汁100%という実績があったのだ。
パッケージには描かれているのは、スライスこそされているものの、リアルタイプではなく図案化された果物。これはこれでもうポンジュースのアイデンティティになっているからすごい。
パッケージには描かれているのは、スライスこそされているものの、リアルタイプではなく図案化された果物。これはこれでもうポンジュースのアイデンティティになっているからすごい。


意識しなかったけどジュース

そしてトマトジュースもそうだ。トマト汁100%、ゆえにトマトジュースなのである。
トマトジュースは「トマト加工品」という分類の規約で規定されている。ここでは不当表示となる文言が定められていて、天然・健康・フレッシュといった言葉もそれに当たるとされているのは、やや意外に感じた。
トマトジュースは「トマト加工品」という分類の規約で規定されている。ここでは不当表示となる文言が定められていて、天然・健康・フレッシュといった言葉もそれに当たるとされているのは、やや意外に感じた。


NGワードを使わずに表現

他に挙げられている言葉は「不老長寿」。トマトジュースの缶に不老長寿と書いてはいけないのだ。
うん、そう思う。みんなトマトジュースにそこまで求めてないと思う。
うん、そう思う。みんなトマトジュースにそこまで求めてないと思う。

勝手に受賞させても無理
他にも飲み物類では「豆乳類」という分類の規約がある。ここでも天然・フレッシュはNGワード、さらには「畑のミルク」もそうだ。


きみは畑のミルクじゃない


金メダルがまぶしい

写真の豆乳で目立つのは金メダルの絵。モンドセレクションで金賞を受賞したらしい。
これはちゃんとした賞だからよい。ただ、規約では「社会的地位、責任のないものがつけた賞」については載せてはいけないという決まりも記載されている。
これはちゃんとした賞だからよい。ただ、規約では「社会的地位、責任のないものがつけた賞」については載せてはいけないという決まりも記載されている。


勝手にあげてもダメ


こんな賞、余計に怪しい

試しに私が自分用に作ったことのあるトロフィーを並べてみた。
仮に私が賞をあげても、私には社会的地位も責任もないので、豆乳のパッケージに載せられることはないのだ。
なんだか切なくなってきた。いつか豆乳に賞をあげられるような男になりたい。
仮に私が賞をあげても、私には社会的地位も責任もないので、豆乳のパッケージに載せられることはないのだ。
なんだか切なくなってきた。いつか豆乳に賞をあげられるような男になりたい。


「はっ」がひらがなでかわいい


主にヨーグルトのこと

他にNGワードのルールはいろいろな分類の規約の中にある。例えばはっ酵乳の規約の中には、「チャンピオン」という言葉は不当表示と定められている。
チャンピオンヨーグルト。聞いたことない。でも、ダメだと知ると食べてみたい響きがある。
チャンピオンヨーグルト。聞いたことない。でも、ダメだと知ると食べてみたい響きがある。

まさか死んでいたなんて
はっ酵乳は乳酸菌飲料と一緒にまとめられていて「はっ酵乳、乳酸菌飲料」という分類になっている。


下に乳酸菌飲料と書いてある


乳酸菌の生存をアピール

例えばスポロンは乳酸菌飲料。パッケージにわざわざ「生きた乳酸菌」と書いてあるのには意味がある。それは、乳酸菌飲料とは別に「殺菌乳酸菌飲料」という分類があるからだ。
なんだそれは。早口言葉か。
なんだそれは。早口言葉か。


そうだったのか…

有名どころで言うとカルピス。えっ、カルピスって乳酸菌飲料じゃないの?と思っていたのだが、分類上別カテゴリとなっている。
パッケージをよく見るとそう書いてあった。
パッケージをよく見るとそう書いてあった。


下のところ、「(殺菌)」のインパクト



株式会社明治のQ&Aより引用(こちら)

「乳酸菌は生きていません。」と2回言い切っていて背筋が伸びる。
続きを読めばわかるが、だからと言って意味がないわけではない。乳酸菌飲料がもつ作用は、生菌でも、殺菌でもそれほど違いはないと考えられているのだから……。
希望を残したこのさわやかな余韻はなんだろう。
続きを読めばわかるが、だからと言って意味がないわけではない。乳酸菌飲料がもつ作用は、生菌でも、殺菌でもそれほど違いはないと考えられているのだから……。
希望を残したこのさわやかな余韻はなんだろう。







殺菌ショックから立ち直ろう



死んでもなお意味がある乳酸菌。自分も乳酸菌のような男でありたい。
そう書いたけど、やっぱりまずは生きていたい。
公正競争規約は今回扱ったほか、「合成レモン」「加工土産品」といった分類名だけでも気になるものがまだまだたくさんありますよ。
そう書いたけど、やっぱりまずは生きていたい。
公正競争規約は今回扱ったほか、「合成レモン」「加工土産品」といった分類名だけでも気になるものがまだまだたくさんありますよ。

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