特集 2015年8月11日

ベトナムの丸亀製麺はパクチー盛り放題

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牛角、吉野家、大戸屋、丸亀製麺と、最近はベトナムに日系飲食店チェーンが続々と増えている。

在住者としてはほぼ歓迎ムード一色だけど、自慢の味を提供する相手は日本人ではなくベトナム人であり、アイデンティティを守りつつも現地の人々の味覚に合うものをどうやったら生み出せるのか、「ローカライズ」と日々格闘していることだろう。

その中でかなりエッヂの立ったことをしている存在が、丸亀製麺だ。何しろ、トッピングにパクチーがある。もう一度言う、うどんにパクチーだ。
1984年大阪生まれ。2011~2019年までベトナムでダチョウに乗ったりドリアンを装備してました。今は沖永良部島という島にひきこもってます。(動画インタビュー

前の記事:ベトナムのコンビニの独特すぎる商品たち、あとオタフクソースが900円

> 個人サイト AbebeTV おきのえらぶ島移住録 べとまる

ベトナムの丸亀製麺はパクチー盛り放題!

論より証拠、いきなりご覧に入れましょう。
ベトナムの丸亀製麺。
ベトナムの丸亀製麺。
店に入ってすぐにある注文カウンター。
店に入ってすぐにある注文カウンター。
その奥にある無料のトッピングコーナー。
その奥にある無料のトッピングコーナー。
天かす!
天かす!
刻みネギ!
刻みネギ!
そしてパクチー!
そしてパクチー!
最近でこそ日本でも市民権を得つつあるパクチーだが、それでもこれほどの塊を見たことがある人の方が少ないんじゃないか。

しかし、ベトナムという国は、フォーなどの麺類と一緒に4~5種類の香草がプラスチック製のカゴに盛られて出てくる香草大国である。うどんも麺類、だからパクチー、ベトナム人のグルメ理論では当然のことなのだ。
こんな感じで盛られてくる、ただしベトナム人でも食べ切れないことが多い。
こんな感じで盛られてくる、ただしベトナム人でも食べ切れないことが多い。

パクチーがちょっと苦手な私は二人のパクチストを呼んだ

そこで実際に、パクチーをトッピングしてうどんを食べてみようと思う…けど、ここで困ったことに私はパクチーが苦手。というほどでもないが、この国では貴重な「日本の味」にどうしてわざわざパクチーをぶち込められようか。

そこで今日はパクチスト(パクチー好き)の女性二人にお越しいただきました。
うん、ちょっと待って!
うん、ちょっと待って!
THE・おかしい。
THE・おかしい。
ネルソン 「それ何でしたっけ?」
多田さん(左)「ぶっかけうどんです」
中島さん(右)「スパイシーポークうどんです」

訂正したい、この場合は「もともとそれ何でしたっけ?」だ。
ここまで盛ると、
ここまで盛ると、
もはやそういうアートだ。
もはやそういうアートだ。
「食べたいだけ盛ってください」とは言ったけど、俺舐めてた、パクチストを舐めてた。これもうトッピングちゃうやん、主食やん。

ネルソン「まぁ…早速想像を超えていますが、何はともあれ食べましょう」
「いただきまーす!」と、嬉しそうな二人。
「いただきまーす!」と、嬉しそうな二人。

怒涛のパクチーおかわり山盛りで!

多田さんはたまに旦那さんと来るものの、「日本の味を求めているのにパクチーを盛るなんて(そもそもパクチーが嫌い)」と言われるため普段は控えているらしく、パクチー欲を全開に出来る今日は嬉しいそうだ。

旦那さん、好きなものを食べさせてあげてください。でも私はあなたと全く同じ意見です。

一方の中島さんはいつも通りのボリュームらしいが、同席している人に気を遣っておかわりをしないので、やはり今日は嬉しいらしい。何故みんな盛らないのか分からない、とすら言っていた。

中島さん「あれ、ネルソンさんのパクチーは?」
ネルソン「えっ」
ネルソン「俺はいいんだよ!俺は撮る側だからね!」(必死に説得)
ネルソン「俺はいいんだよ!俺は撮る側だからね!」(必死に説得)
だが説得は失敗した。
だが説得は失敗した。
中島さん「盛り方がまだまだ甘いですよ!」
ネルソン「いやほんま、好きちゃうねん!」
再び説得は失敗した。
再び説得は失敗した。
ネルソン「森じゃないすか」
中島さん「おいしいですよ」

そう言って席に戻るや否や…。
早々にパクチーを食べ切った多田さんが第二陣!
早々にパクチーを食べ切った多田さんが第二陣!
バッサバッサ!
バッサバッサ!
念のため断っておくと、お店の方より「トッピングは無限」とのお言葉を戴いております。

ネルソン「それうどんの味するの?」
多田さん「スープが絡まってちょうどいいよ」

そう言って席に戻るや否や…。
早々にパクチーを食べ切った中島さんが!
早々にパクチーを食べ切った中島さんが!
第二陣!
第二陣!
もうダメだ! 二人のパクチストが並んだらおもしろいかもと思ったが、どちらも呼んだことが裏目に出た。

このままだとシフト制で盛られる(ネタを振られる)ので自分自身がいつまで経っても食べられない。

ふと脳裏に「織田信長」「火縄銃」「三段撃ち」という言葉が浮かんだ。まぁ、そうは言ったところで、私のうどんも…。
すでに森と化しているのですが…。
すでに森と化しているのですが…。
ちなみにコレ、元・チーズ釜玉うどんです。
ちなみにコレ、元・チーズ釜玉うどんです。
そして全員、完食。頑張った(俺だけ)。
そして全員、完食。頑張った(俺だけ)。
ネルソン「ちなみにスープだけ残ってるけど、まだパクチー入れたら食べられるの?」
多田さん「食べられるね。むしろ麺よりパクチーの方が合うかも」
中島さん「スパイシーポークの風味とコントラストになっていい」

俺は、パクチーを食べてる気しかしなかったよ。

パクチーだけじゃないローカライズ! 丸亀製麺ベトナムの中の人に話を聞きました

ここまで焦点を当てたものはトッピングのパクチーのみだったけど、実はベトナムの丸亀製麺はそれ以外にもかなり独自性に富んでいる。

今回、現地法人「TORIDOLL V LOTUS」の副社長の山本隆之さんにお話を聞かせていただきました(ちなみに社長はベトナム人)。
山本さん。ベトナムの丸亀製麺の出店を任される前は、台湾の出店を任されていた。
山本さん。ベトナムの丸亀製麺の出店を任される前は、台湾の出店を任されていた。

パクチーを選んだ理由はメジャーな香草で取り扱い易いから

ネルソン「トッピングにパクチーがあることは以前から知っていたのですが、何故パクチーだけなんですか?それ以外にも香草には種類があると思いますが」

山本さん「単にスペース上の問題と、取り扱い易さですね」

ネルソン「確かに、種類を揃えだすとキリも無いですしね」

山本さん「あとは日本でも知られ、許容されるものだったという理由もあります」
日本と同じく、うどんと揚げ物が主力商品。後者は自分で取ってそのあと会計。
日本と同じく、うどんと揚げ物が主力商品。後者は自分で取ってそのあと会計。

味の素の消費大国だけど、塩分は下げて下げて、下げる

ネルソン「実を言うと私、日本で丸亀製麺に行ったことがありません…笑」

山本さん「そうなんですか笑」

ネルソン「だから日本との比較が出来ないのですが、ここベトナムではトッピングにパクチーを追加する以外に、どのようなローカライズをされたのでしょうか?」

山本さん「まず塩分を少なくしていますね」

ネルソン「スープの?」

山本さん「はい。そもそも日本が他国に比べて塩分摂取量が高いので」

ネルソン「あ、確かにそんな話を聞いたことがあります」

山本さん「不思議ですよね。ベトナムも味の素を多く消費しているのに、塩分とはまた別なんです」

ネルソン「そうですよね、フォーを食べていると舌が痺れるくらい味の素が入っていたりするのに」
ランチ前の11時半頃には注文カウンターがビッシリ埋まる。
ランチ前の11時半頃には注文カウンターがビッシリ埋まる。
山本さん「台湾でも同じく塩分を抑えていますが、ベトナムよりは日本寄りですね」

ネルソン「味覚が近いんでしょうか?」

山本さん「特に台湾の若い人は。それに加えて、日本食をファッションフードとして受け入れているところがあ
るので。ただ、豚骨うどんという商品があるのですが、塩分の高さを嫌ってか、年齢が上になってくると水を入
れて味を調整しているお客様を散見しました笑」

ネルソン「水を入れて!…日本だと考えられないですね」
ベトナムの商品ラインナップ。最も安い釜揚げうどんは220円ほど(執筆現在)。
ベトナムの商品ラインナップ。最も安い釜揚げうどんは220円ほど(執筆現在)。

「MARUGAME」か「MARUKAME」か、屋号は現地担当者が決める

山本さん「(名刺を指して)ここにMARUKAMEとありますが、日本だとMARUGAMEなんですよ」

ネルソン「え!どうしてですか?」

山本さん「MARUGAMEだと…英語表記で『MARUゲーム』と読まれてしまうからです」

ネルソン「あー!…って、え?まさかゲームセンターと勘違いでもされるんですか?」

山本さん「はい、時にはそういうこともあります」

ネルソン「日本の物差しで測っちゃいけないな…」

山本さん「だから、どちらにするかは、その国(地域)の担当者の判断に委ねられます」

ネルソン「ローマ字読みする国は日本だけですもんね」

山本さん「ちなみに台湾も立ち上げの際にはMARUKAMEでした」
※現在は全店舗漢字表記になっています
中心地にあるお店の店内はカフェ風のガラス張り。内装も周辺環境に合わせている。
中心地にあるお店の店内はカフェ風のガラス張り。内装も周辺環境に合わせている。
ネルソン「屋号が丸亀製麺ではなく丸亀うどんであることも同じような理由ですか?」

山本さん「そうです。ただ、ベトナムにおいて「うどん」という言葉を使えた背景には、エースコック・ベトナムさんがその分野を開拓してくれたという要因は欠かせません」

ネルソン「Udonの商品ですか?」

山本さん「はい。あの商品によってベトナムにおいて「うどん」がすでに認知されていました」
エースコック・ベトナムの人気商品、Udon。45円くらい。私も好き。
エースコック・ベトナムの人気商品、Udon。45円くらい。私も好き。

実は山本副社長、丸亀製麺入社三年目

ネルソン「山本さんはずっと丸亀製麺(トリドール)なんですか?」

山本さん「いや、私はこの会社で働き始めて三年目なんですよ」

ネルソン「三年!?」

山本さん「はい。パナソニックの海外営業部で5年働いて、自分で貿易事業の会社を立ち上げて11年、その時によく台湾を行き来していて、トリドールが台湾での出店の担当者を募集していた時期に入社しました」

ネルソン「それではもう社会人になった頃からずっと海外畑なんですね…」

山本さん「そうですね、むしろ日本国内の飲食事業は全く経験がないですね」

ネルソン「でも、その、丸亀製麺で全く働いたことのない方に海外展開を任せるんですね。それが意外というか…」

山本さん「そうかもしれませんね。その点では、度量の大きい会社だなと思っています」

ネルソン「ただ、確かに、そうでもしないと回らないことだとも納得できます」

山本さん「はい。海外での展開は日本のマニュアルに沿って進めることと違い、ゼロベースからの開拓ですから。私自身、ベトナムでの立ち上げでは最初、ただ「現地にいるマイという女性に会え」としか言われなかったですからね笑」

ネルソン「そのマイさんが、もしかして現地法人の社長の方ですか」

山本さん「そうです。彼女に会って、「マイさん、まず麺を作る小麦粉から探しましょうか」から始まりましたから」

ネルソン「ゼロベース中のゼロベースですね…それでは日本とはまた違った展開がありそうですよね」

山本さん「ありますね。たとえば、うどんは出店コストが高いので、限られた資金の中で現地法人を運営するため、その業種以外の店舗の開発も行っています。ラーメン、やきそば、お好み焼きなど、ベトナムの方の嗜好に合わせた商品開発を心がけており、日本の本社主導ではなく、現地法人が中心となり各業種、業態を運営していく計画です」
「TORIDOLL V LOTSU」が展開する「TOKYO kitchen」。うどんは提供していない。
「TORIDOLL V LOTSU」が展開する「TOKYO kitchen」。うどんは提供していない。
ネルソン「うーん、まさに海外展開のプロですね…。お話、ありがとうございました!」

山本さん「こちらこそありがとうございました」
最後にまとめよう、ベトナムの丸亀製麺はここが違う!

・無料トッピングにパクチーがある
・コシは日本よりも弱め
・麺とスープは塩分控えめ
・丸亀製麺ではなく丸亀うどん
・内装は店舗の周辺環境に合わせる
・MARUGAME(ゲーム)ではなくMARUKAME
・コリアンタウンにある丸亀製麺にはキムチがあるらしい

全国のパクチストよ、丸亀製麺ベトナム店に集え!

一見すると我々の目には変わったものに映るローカライズ、しかしそこにはその土地に根ざすべく綿密な計算の上にあった。

さて、最後は思った以上にビジネスらしいインタビューになったけど、何はともあれベトナムの丸亀製麺は現在ある4店舗全て何処でもパクチーが盛り放題だ。

全国のパクチストよ、あなたにとってのユートピアはベトナムかもしれない。今すぐチケットを握りしめて海を渡ろう。あ、ハノイにはまだありません。
「トッピング無限」は撮影用ではなく、「誰でも本当に無限」だそうです。
「トッピング無限」は撮影用ではなく、「誰でも本当に無限」だそうです。
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