特集 2015年7月25日

青森県の横浜に共通点はあるのか!?

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「青森県の陸奥横浜で横浜を感じる要素を探して欲しいです!」という投稿がMRハニーさんからはまれぽ.com編集部へとどいた。

調査してみると「共通点はなかなか見つからなかったが海がきれいな静かな町だった。」ということがわかった。

はまれぽ.com 吉岡 まちこ

(編集部より:記事を提供してくれているはまれぽ.comから、今週は過去に掲載されたヒット記事をご紹介します。)
はまれぽ.comは横浜のキニナル情報が見つかるwebマガジンです。毎日更新の新着記事ではユーザーさんから投稿されたキニナル疑問を解決。はまれぽが体を張って徹底調査します。

前の記事:昭和の香りがするガード下の居酒屋「国道下」に突撃!


はるか遠く下北・横浜へ

地名に「横浜」がつくというだけで親近感がある青森県の横浜町(よこはままち)。いったいどんな所?

お盆に青森県内に行くついでがあったので行ってきた!

前知識は、菜の花が有名なところ。たぶん下北半島の真ん中あたり…。
「横浜町」は縦に20km弱くらい
横浜町の正式名は、青森県上北郡横浜町。そのあとに33の「字」に分かれている。
面積は126.55km2。青葉区・緑区・都筑区・港北区に西区を足したくらいの大きさに、5000人を切る人口だ。

さっそく下北半島の付け根から陸奥湾沿いに車で北上し、横浜町をめざす。高速道路はない。
横浜まで14km。恐山まで54km。ちなみに恐山という山はない
横浜まで14km。恐山まで54km。ちなみに恐山という山はない
左手には陸奥湾の群青色の海
左手には陸奥湾の群青色の海
陸奥横浜駅に向かうJR大湊線は単線だ。いい感じ…
陸奥横浜駅に向かうJR大湊線は単線だ。いい感じ…
いよいよ横浜町に突入!
いよいよ横浜町に突入!

横浜町ウォッチング!

今来た国道279号の別名は「よこはまバイパス」。そのまま行くと、イタコで有名な霊山・恐山のあるむつ市へ向かってしまい、横浜の街の中を通り過ぎてしまう。

道を逸れ、町役場のある旧国道に入った。このあたりが横浜町字横浜。町の中心地だ。
本町と呼ばれる町の中心地。明日はお祭り
本町と呼ばれる町の中心地。明日はお祭り
ザ・横浜! 神奈川県の横浜にはありそうでないバス停名
ザ・横浜! 神奈川県の横浜にはありそうでないバス停名
バス停近くの店の無人スタンド。野菜は神奈川でも見かけるけれど、衣類の無人スタンドは珍しい?
無人スタンドで洋服まで売っちゃう
無人スタンドで洋服まで売っちゃう
「みちのく銀行横浜支店」と「横浜郵便局」。
「みちのく銀行横浜支店」と「横浜郵便局」。
どちらも横浜市にはありそうでない
どちらも横浜市にはありそうでない
町の中心街は車だと5分で回り切れてしまうほどだ。ちょっと海沿いに行くと漁港もある。

後で調べたところ、ホタテの養殖は青森県2位とかで、陸奥湾ホタテは遊離アミノ酸が多く甘みがあるそうだ。カレイ、タイも水揚げされる。
漁港は他に3港。遠浅の砂泥地と穏やかな波がナマコ漁にも向いている
漁港は他に3港。遠浅の砂泥地と穏やかな波がナマコ漁にも向いている
ナマコ漁は年末3日間だけ。柔らかい高品質な物だけを獲る「横浜なまこ」はブランド品で、陸奥湾産なまことは別格の扱いだそうだ。青森県や秋田県のお正月料理用にしか出回らず、乾燥加工されたものは中国に輸出される。

“海産物問屋”があったのでさっそく行ってみた。が、入るといきなり洗剤が並ぶ普通のスーパー。
鮮魚売り場は、それほど安い印象もなく…。千葉県産のイワシが売られていたのにビックリ。地元の人は刺身用の魚介は買わずに、漁師さんからただでもらう習慣らしい。
“海産物問屋”とあるけれど、普通のスーパー
“海産物問屋”とあるけれど、普通のスーパー
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横浜町ウォッチング!

駅にも寄ってみた。
校庭の体育倉…、ではなく陸奥横浜駅の駅舎。無人ではない
校庭の体育倉…、ではなく陸奥横浜駅の駅舎。無人ではない
JR大湊線は野辺地と大湊を結び、1日に上下各9本だ
JR大湊線は野辺地と大湊を結び、1日に上下各9本だ
駅舎の中はカラフルなベンチが8脚。片隅に「菜の花文庫」という書棚があったので、駅員さんに聞いてみたが、まだ赴任してきたばかりで詳しいことはわからないとか。待っている間に自由に読める本らしい。
「菜の花文庫」は、菜の花に関係する童話が中心
「菜の花文庫」は、菜の花に関係する童話が中心

町役場で聞いた「じゃん」に代わる語尾は…

何日か前に電話をし「どなたか地元の方にお話をうかがいたいのですけれど…」「それなら私が」、と待ってくださっていたのは、広報的な役割をしている横浜町役場・総務課の秋田さん。
立派な3階建てだが、中が暗くて一瞬「あれ?やってる?」
立派な3階建てだが、中が暗くて一瞬「あれ?やってる?」
入口はかなり真っ暗。総務部は2階、町長室の目の前だった。クーラー、扇風機はない。

「欲しいねっていう話は毎年出るんですけれど、話しているうちに2週間ぐらいで暑さが終わります」と秋田さん。とにかく風が強い地域で、冬は雪が積もると言うより壁に張り付くそうだ。
横浜市では道路沿いには防音壁。横浜町では横殴りの雪を防ぐ開閉式フェンス
横浜市では道路沿いには防音壁。横浜町では横殴りの雪を防ぐ開閉式フェンス
風が強い横浜町の風車。民間の電力会社のものらしい
風が強い横浜町の風車。民間の電力会社のものらしい
地元出身の秋田さん。大学卒業後、横浜市の青葉区に4年間住んでいた
地元出身の秋田さん。大学卒業後、横浜市の青葉区に4年間住んでいた
横浜町の歴史は古く、鎌倉幕府以前に源義家が建てた八幡神宮があり、江戸時代にはすでにその名があったという。浜が横に長いからついたらしい。
横浜市のルーツ「横浜村」の、「横」に向かって伸びる砂「浜」があったからという名前の由来と少し似ている!?

ところで横浜町の人は自分を「ハマっこ」とか呼ぶんだろうか? 「高校生の時ふざけて言っていましたけど(笑)。“じゃん”言葉は横浜弁というより“都会の言葉”っていうイメージですね」
“じゃん”に代わる語尾は?と聞くと「“~だいせ(~だいへ に近い発音)”ですかね。ノートだいせ、とか。ノートだよという意味です」。秋田さんはゆっくり優しく喋る。

横浜町の人の特徴は「ヨゴハマー」と濁点が付いて語尾が伸びると前知識を仕入れたので、発音してもらった。「ヨゴハマ~。本当だ、言ってますね(笑)」。そのヨゴハマ~といえば、菜の花が有名。
菜の花の見頃は5月。町が補助して農家に作付けしてもらっている
菜の花の見頃は5月。町が補助して農家に作付けしてもらっている
「5年くらい前までは作付面積が日本一だったんですけどねー。市町村合併で北海道の市が1位になってしまって」。菜種油のためではなく、NPOや道の駅が観光のために商品を開発しているそうだ。
菜の花の新芽と菜の花ハチミツを使った菜花ソフト(左)は、なぜか緑色
菜の花の新芽と菜の花ハチミツを使った菜花ソフト(左)は、なぜか緑色
町のどんな所が好きかと聞くと、「流れる空気が違いますよね…ゆったりしているというか。町役場に勤めて7年ですけれど、警察が出てくるような話はDVが1件あっただけです」。

それでも過疎化は深刻。1年間の出生数は約30人。それなのに町内に小学校が4校もあるという。計算すると1校につき59人! ちなみに横浜市は1校につき約550人だ。
海沿いにある町立横浜小学校。いずれこの1校にまとまる予定だ
海沿いにある町立横浜小学校。いずれこの1校にまとまる予定だ
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町役場で聞いた「じゃん」に代わる語尾は…

「六ヶ所村の日本原燃と日本ハムの加工工場に働き口があるから、若者が留まってくれている。なかったらと考えると恐ろしいですよ」と横浜町役場の秋田さんは言う。

六ヶ所村の核燃料再処理施設とは町境から5kmも離れていない。そして隣接の下北郡には東通(ひがしどおり)原子力発電所がある。
「東通からは30km圏内ですから、稼働して福島みたいなことが起これば、町から逃げるしかないですよね…」(秋田さん)。町のHPのトップにも「横浜町原子力関係」という見出しがあり、防災の心得が具体的につづられていた。
国道沿いには「六ヶ所村」「東通」をPRする看板が続く
国道沿いには「六ヶ所村」「東通」をPRする看板が続く
キニナル横浜市との交流は? 何年か前、町役場の職員組合で横浜市に行って、財政は厳しいが福祉はやりやすい話しなどしながら交流を深めたそうだ。ちなみに、高知県や石川県の横浜とは、まったく交流はないという。

最後に町長のお写真でもと内心願っていたところ、正午のチャイムがなったとたんゾロゾロと職員が階段を降りだすでは…。あ、町長さんも…。食堂でもあるの?

「いえ、昼ご飯は家に帰るんです。みんな車で10分もかからないですから」と秋田さん。横浜町では車は1人1台。歩いていると「なんで歩いてるの!?」と周りから指摘されるそうだ!

正午を過ぎ、廊下の暗さはこんな――。
震災後の節電? 「前からですね。お金ないですから…」
震災後の節電? 「前からですね。お金ないですから…」

ヨコハマといえば、海、埋立て、ラーメン、野球!?

ヨコハマといえばこれかな、という目線で町を回ってみた。横浜町のビーチと言えば、砂浜海水浴場。
この日気温は最高26.5度、最低15.8度。でも水は冷たくなかった
この日気温は最高26.5度、最低15.8度。でも水は冷たくなかった
どことなく海の公園に浜のカーブが似ている!?
どことなく海の公園に浜のカーブが似ている!?
上の二つの浜の中間にあるナタネ島
上の二つの浜の中間にあるナタネ島
このナタネ島は、海水浴客が流されるのを防ぐ役目と、釣りを楽しむために20年ほど前にできた人工の島。いわば埋立て! 埋立ての共通点を見つけたところで(?)、ラーメン店を探してみよう。
牛乳ラーメンはともかく(失礼)、ほたてラーメン食べてみたかった!
牛乳ラーメンはともかく(失礼)、ほたてラーメン食べてみたかった!
今回は行けなかったドライブインの「トラベルプラザ・サンシャイン」では、菜の花を練り込んだ“菜の花ラーメン”まであるようだ。でもやっぱり麺は緑色。

そして横浜と言えば野球。横浜町では野球が盛んで、サッカーチームはないそうだ。お話をうかがった秋田さんも少年野球チームの監督をしている。

めざすは「横浜高校」なのだろうか? と思ったら、本当にバス停にその名前が!
まさしく「横浜高校」!!
まさしく「横浜高校」!!
ところが、建物は保育園になっていた!
ところが、建物は保育園になっていた!
平成18年に閉校になり、今横浜町に高校はないそうだ。う~ん、共通点はなかなか見つからないものだ。

取材を終えて

初日に大雨に降られ、予定外に2日間とんぼ返りで行く取材になってしまったため、町の人と話す時間もラーメンを食べる時間もなかったのが残念だ。
横浜市との共通点は、海沿いの空の広さだろうか。湿度がなくカラッとして気持ちいい横浜町への旅だった。
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