今年で26歳になります。そろそろ後輩を行きつけの居酒屋さんに連れていきたい年ごろです。どうやって後輩を作ったらいいのかは、とりあえず後回しにして、まずはかっこいい居酒屋さんを探すとこから始めます。記念すべき第1回は、国道駅のトンネル内にお店を構える「国道下」へ。
国道駅改札出て徒歩30秒
お店は午後4時半からオープン。取材の旨を伝える電話をしたとき、かなりお忙しそうな印象だったため、不安がこぼれそうな山崎。編集部・山岸は一眼レフで写真を撮りまくる。
JR国道駅
まだ昼間だけどトンネル内は暗め
こちら改札です
トンネル内にはほかにもお店もあったが
どこも営業していない様子
こちらが噂の飲み屋「国道下」
渋いスポット好きさんにはたまらん外観の「国道下」。その渋さ故に若干入り辛さも否めない。緊張しながら開店を待つ。
と、ニット帽をかぶったとてもにこにこしている男性が
「寒いから中に入りなー。30分は準備で忙しいからちょっと待っててね」とお店を開けて中へ入れてくださったのは、ご店主の今橋さん。ほっといたしました。よろしくお願い致します。
お店の中は
こんな感じ
店の奥から見たかんじ
この照明が赤くてバッチグー
カウンターの中はキッチン
全部で12席ある店内は、人がすれ違うたびに触れ合ったりして素敵なコミュニケーションが取れそうな心地よい広さ。カウンターや椅子など、年季が入っているけどよく磨かれて清潔感がある。
「国道下」は今橋さんと奥さんとで営業していらっしゃる。営業時間は月曜~土曜の午後4時半~午後8時半までで、日曜・祭日が休み。今橋さんご夫婦は「写真が嫌い」なのだそう。お顔を見たい方は実際にお店へ行ってみてください。とても素敵なご夫婦なうえ、奥様は美人。
『華麗なる一族』の撮影時に来店した主演男優と今橋さん奥様のツーショット
同店にはたくさんの有名人が来店しているよう
お店の中をぽーぽー見て回っているうちに、開店準備も落ち着きお話をお伺いすることができた。
後輩にさらっとお店の生い立ちを語ったりしたいよね
同店が営業を始めたのは約37年前。
「50年前、このトンネル内は居酒屋や洋服屋、釣り宿などの店舗がずらっと並んでた。当時この前の通りがここらで一番にぎやかで人通りも多かったからね。職人の多い街だった。ここにお店を出した理由は、忘れちゃったけど“ここだったら食べていける”と思ったんじゃなかったかな。3ヶ月やってダメだったらやめようって言っていたんだけど」と当時のことを振り返られた。
トンネル内にあるお店は「国道下」を除き全て、店をたたんでしまった。
の美人さんは流れゆく月日をずっと見守って…と思ったら
2015年のカレンダーだった。
この場所はJRの所有地だそうで、店名の由来は「“国道上”はホームだから。ここは“下”でしょう」となんともカッコイイ理由だった。
と、こうしているうちに最初のお客さんがいらっしゃった。3年前から通っている常連さん。慣れたご様子で注文し、くつろいでいらっしゃるのがなんともうらやましい。
どんな方々でにぎわうのか
お店にはいつの間にか灯りがともっている
では私たちもなにかいただきましょう
壁のメニュー黒板には値段が書かれていない。「分からなかったら常連さんに聞いたらみんな教えてくれるよ」と奥様。焼き鳥は1本50円で、コメカミ・トリカワ・レバー・つくねの4種類とのことで、全部1本ずついただくことに。
外から焼き場が見える
同店では焼き鳥の持ち帰りもできるうえ、暖かい時期は外の椅子に座って呑むことができる。この匂いがホームへのぼっていって、お勤め帰りの方々に暖簾をくぐらせるんだろうなあ。
すっごく絵になる
こちらが今橋さん渾身の焼き鳥。写真右からつくね、コメカミ、レバーで、その隣がトリカワ。なぜかトリカワだけ2本頼んだ。辛みそをつけて。
うほっ、ビールは大ビン1本500円
どれも肉の味と甘くて優しいタレの相性が良く、おいしい。帰りにスッと寄って呑んでいくには最高の軽やかさ。この場所でいただくことも美味しさのひとつな気がする。
少しずつ人が増え始める。みなさま常連さん
開店してすぐにお客さんが入り始め、みなさん親しげに挨拶してそれぞれのペースで呑んでいらっしゃった。
37年前から通う常連さんにお会いできた
カウンターに座る後ろ姿がしこたまナイスな男性。
「国道下」が営業を始めたのと同じ年月通っていらっしゃる。通い始めたきっかけをお伺いした。
「昔、ここはうなぎも焼いていて、国道駅で電車を降りると、うなぎのいい匂いがしてきてね。たまらず入ったのがきっかけ」とのこと。現在は週3でいらしているそう。「ここはママもマスターも、常連さんもみんな仲が良くて信頼し合ってる。とても居心地が良い場所」と語ってくださった。
開店して30分、常連さんで満席
常連さん方はとても気さくな方が多く、お店全体で話が盛り上がるのが温かい。中にはお一人で静かに呑まれる方もいらしたが、みなさん自然にそっとしていた。こういうところからも良いお店なのが分かる。
かわいらしい小学生のお客さんもいらっしゃる
おでんの盛り合わせ(500円)も
いただいた。がんも・ちくわぶ・ゆで卵・がんもどき・はんぺん・さつま揚げ・厚揚げの盛りだくさんな1皿。
やさしい味!
薄めの家庭的な味。具に味がしっかりしみこんでいて温かい。手が込んでるんだろうなあ。山崎は「はんぺん」がおすすめ。
常連の薫さんにウーロン茶ボトルで頂きました
こちらもおすそ分けいただきました
モツ煮(350円)は絶品…
こちらのモツ煮、臭みがなく歯ごたえが程よく絶品。わんぱくに2皿ぐらいいただきたい。
お正月明けだったためか、おもちもいただいた
とにかく居心地がよく、山岸とも会話が弾んだ。こんな素敵な場所にまだ見ぬ後輩を連れてきて、今まで話せなかったこととか話せたらミッションコンプリートだなあって思った。
そんなことを考えている自分は浅はかだなあっても思った。が、こうしてまた訪れたい素敵な居酒屋さんに出会えたのはとてもうれしいことです。また来ます。
キムタクの下にはまれぽステッカー貼ってもらいました。
最後に、常連さんからお伺いした心が動いた話を。
「国道下」にはお手洗いがないため、駅のお手洗いをお借りすることになっている。トイレは今橋さんがお店の始まる前に、必ずぴかぴかに掃除をされているそう。国道駅は風情のある魅力的な場所。その場所で長い時間を過ごしてきた今橋さんの、毎日のお心遣いに感動いたしました。良い時間を過ごせました。みなさまありがとうございました。
取材を終えて
本当に居心地の良い場所だった。自分の気持ちを休める場所に出会うのも、そこに居続けることも大変だけど、これから生きていく中で見つけられたらなあと思った。早く素敵な「呑みエチケット」を習得しようっと。