特集 2015年7月22日

コラージュ川柳とは何か? コラセン倶楽部に潜入してきた!

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ツイッターを見ていたら「コラージュ川柳」という謎の言葉が目に飛び込んできた。川柳といったら俳句と同じ〈5・7・5〉の定型詩だよね。俳句との違いはいくつかあるが、簡単にいえば俳句が文語体であるのに対して、川柳は口語体でよい。それに季語も必要としない。つまり、面倒な制約にしばられることなく、自由に楽しめる表現形式だといえる。

で、コラージュ川柳というのは、新聞の見出しから5文字と7文字の単語を切り抜いて、それらを組み合わせて作る川柳なのだった。いったいどんな人たちが、どのようにしてコラージュ川柳を生み出しているのか? その現場を目撃するため、ぼくは京都に向かった。
フリーライターをしながら特殊古書店 マニタ書房を経営。日本一ブックオフに行く男としても知られる。


> 個人サイト akihito tomisawa index

2連泊!! ふとんに潜む ズワイ蟹

なにしろ最初に見た作品のインパクトがすごかった。誰がリツイートしていたのかはもう忘れてしまったが、いきなりタイムラインにこの画像があらわれたのだ。
こんなの見せられたら笑うしかないよなー。
こんなの見せられたら笑うしかないよなー。
見た瞬間に降参した。こういう川柳は普通に頭をひねるだけではまず出てこない。まったく関係のない言葉同士をコラージュするからこそ生まれる無意味なおもしろさ。それがコラージュ川柳なのだ。

こんなおもしろいものを量産している人たちがいるらしい。つぶやき主のアカウントを見ると「コラージュ川柳倶楽部公式アカウントです」との説明があった。通称「コラセン倶楽部」だそうだ。倶楽部というぐらいだから一人ではない。こんなおもしろいことをやっている人たちが何人もいるわけだ。「コラージュ川柳」という言葉であれこれネットを検索してみると、次第に全容が見えてきた。
(1)コラージュ川柳は2011年に誕生した。
(2)考案したのはアートユニット淀川テクニックの柴田英昭さん。
(3)コラセン倶楽部は京都造形芸術大学内のウルトラファクトリーという工房で活動している。
とにかくツイッターアカウント「コラージュ川柳」を見にいってほしい。「ズワイ蟹」以外の作品も続々アップされている。これらが京都造形芸術大学で生み出されているのだ。

京都か……。東京からは遠いな。でも見に行っちゃおうかな。現場を見ないとわかんないことってたくさんあるもんね。

というわけで、京都までバビューンと行ってきた。

たいへんだ ハゼの甘露煮 入ってない

旅のお楽しみといえば、駅弁とビールだ。大坪ケムタさんも言ってるように、ぼくはいつも深川めしを買って新幹線に乗り込む。でも、今回、パカッとふたを開けておどろいたね。
はぜの甘露煮がなくなって、かわりに以前はなかった千住ネギがコラージュされている。
はぜの甘露煮がなくなって、かわりに以前はなかった千住ネギがコラージュされている。
ま、弁当のことはどうでもよろしい。京都に着いても、約束の時刻まではまだたっぷりある。そこで地元の友達と会ったり、古本屋をのぞいたりして過ごす。そうこうするうちに約束の時間が来たので、京都造形芸術大学へ向かう。
気のせいか「エイドリア~ン!」って叫びたくなる階段。
気のせいか「エイドリア~ン!」って叫びたくなる階段。
コラージュ川柳発案者の柴田英昭さんは、ここで非常勤講師をされている。そのウルトラファクトリーと呼ばれる工房の中に、コラセン倶楽部はある。倶楽部は毎週火曜日の午後6時に活動しているそうで、初対面の柴田さんにご挨拶をしていると、部員とおぼしき学生たちが続々やってきた。

部員は現在14名いるそうだ。この日の出席者はそのうちの7名ほど。ゆる~い感じでなごやかに始まった。
大きな作業台に新聞紙をひろげ、カッターで切り抜く。
大きな作業台に新聞紙をひろげ、カッターで切り抜く。

切り抜いた 言葉はみんなの 共有財産

今回、現場を取材してみていちばん驚いたのは、切り抜いた言葉はコラセン倶楽部のメンバー全員で共有していることだった。「これは!」という言葉を切り抜いたら自分の秘蔵ファイルなどにストックするのだと思っていたが、そういうことではないのだ。
切り抜かれた言葉が作業台の中央にどんどん集められていく。
切り抜かれた言葉が作業台の中央にどんどん集められていく。
個人が自分の創作活動としてコラージュ川柳に取り組むなら、自分用にため込むのもよいのだろうけれど、これはあくまでも大学の部活だ。同じ情報の山にみんなで向き合い、互いにアイデアを出し合い、力を貸したり貸されたりしながら、作品を制作していく。その過程に意味があるのだ。
心に引っかかった言葉を並べ、うまい組み合わせを考える。
心に引っかかった言葉を並べ、うまい組み合わせを考える。
皆さんが作品づくりに取り掛かっているあいだ、これまでの傑作選をいくつか見せていただいた。すると、ここでまたぼくは驚かされることになる。

貼り方も 台紙サイズも ルールなし

まず、次の写真を見てほしい。これは、ぼくが初めて見て衝撃を受けたあの名作コラージュ川柳「2連泊!! ふとんに潜む ズワイ蟹」の現物だ。
わかりますか? 台紙がすごく小さいの!
わかりますか? 台紙がすごく小さいの!
川柳は、俳句にくらべて制約がほとんどないというのは知っていた。でも、台紙のサイズはA5くらいに統一されているのだろうと思っていた。ところが、コラージュ川柳にはそんなルールすらないのだった。

作業工程をよく観察してみると、メンバーの皆さんは次のように作業をしていた。まず、5・7・5で使う言葉を選び出す。そして白い大きな紙を用意して、切り抜かれた見出しの大きさに合わせて貼り付けていく。小さい見出しを使えば、必然的に台紙の隅の方に貼られることになる。その後、貼ったエリアの周囲を四角く切り出す。

そうやって出来たのが、「2連泊!! ふとんに潜む ズワイ蟹」だったのだ。

それからもうひとつ。こんな作品もあった。
貼り付けた見出しが台紙からはみ出ている!
貼り付けた見出しが台紙からはみ出ている!
この場合は、おそらく台紙の紙が小さいものしか残っていなかったのだろう。それでもいいやと、ムリヤリ貼った。でも、結果的にこの方が「ハワイでバカンス」の解放感が出ている。そして下へ突き抜ける「人は死ぬから」……。コラージュ川柳、まったくもってフリーダムな世界だ。

目をつぶり コラセンネームを 決めましょう

俳句を詠む人たちに俳号があるように、コラージュ川柳を作る人たちにも名前がある。それがコラセンネームだ。ちょうどぼくが見ているときに、リーダーの柴田さんがご自分のコラセンネームを決めていた。

どのようにコラセンネームを決めるかというと、例の切り抜いた見出しの山に手を突っ込み、その中から目をつぶって一片だけつまみ出す。その言葉がネームとなるのだ。柴田さんは見事「ミドリムシ」という素敵な単語を引き当てられていた。

せっかくの機会だ、ぼくもコラセンネームを付けさせていただこうじゃないか。柴田さんのあとに続いて、文字の山から一片つまんでみた。そうして引き当てたのが、これ!
今日からぼくは「とみさわ農機具ひろば」。
今日からぼくは「とみさわ農機具ひろば」。

最後はみんなで品評会

みんなが2~3作品をつくり終えたら、最後は品評会でしめる。出来上がったものを作業台に並べ、それぞれのいいところを中心にあれこれ議論を交わす。否定的なことは言わないようにしているらしいところに好感をもった。

最後には、いちばんいい出来だと思ったものを、全員でいっせいに指差して決定する。

じつは、ただ京都まで行って取材するだけじゃつまらないと思ったので、ぼくもコラージュ川柳を何作かつくっておいた。ルールを知らなかったので、仕事場にあった不要の紙をA5サイズに切って、それに貼り付けていった。
適当に選んだ紙がピンク色だったので、どれがぼくの作品かバレバレ!
適当に選んだ紙がピンク色だったので、どれがぼくの作品かバレバレ!

最後に選ばれたのは……

柴田さんもおっしゃっていたが、自分がつくるものよりも、圧倒的に学生の作品がおもしろい。この日の最後に全員で指を差して、過半数の票を集めたのも学生の作品だった。ぼくのなんてカスリもしなかったよ! まだまだ精進が必要だ。
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