特集 2015年7月20日

江戸時代の旅の心得61ヶ条

いざ、物見遊山

200年前、江ノ島は江戸に住む庶民に人気の旅行先だったといわれている。表向きは江島神社の弁財天を参詣するという(お上に対する)大義名分があったが、実際は気軽に出かけられる物見遊山の旅の趣が強かったようだ。

なので、ただ遊ぶだけじゃなく、しっかり「おつとめ」を果たさないといけないのが江戸の旅のツラいところだ。
でも、その前に歩き通しで疲れた体を休めるため温泉へ
でも、その前に歩き通しで疲れた体を休めるため温泉へ
江島神社は日本三大弁財天のひとつとされ、芸道上達の功徳を持つ江島弁財天を祀っている。心を込めて参詣すれば、凡才ライターの腕も少しは向上するだろうか?

そんな由緒正しき神社に、汗だくのまま詣でるわけにはいくまい。まずは島の入口付近にある温泉施設で身を清めることにした。
宿などに着いたら「東西南北の方角を確かめ、表や裏の出入口などを見え覚えておけ」との教えにならい、避難経路を確認してからお風呂へ。館内は撮影禁止だが、いい湯でしたよ
宿などに着いたら「東西南北の方角を確かめ、表や裏の出入口などを見え覚えておけ」との教えにならい、避難経路を確認してからお風呂へ。館内は撮影禁止だが、いい湯でしたよ
『旅行用心集』には各地の湯治場に関する記載も詳しく、相当なページ数が割かれている。蘆菴氏が訪ね歩いた全国の温泉の特徴や効能が緻密に書かれていて、旅のアドバイスだけでなく、温泉のガイドブックとしても使えるのだ。

なお、湯治の折、その温泉が自分に合うかどうか確かめるには「最初一、二回入った後、腹がすいて食べ物が美味しい場合は、効く温泉だと思えばいい」とのことである。

本当だろうか、確かめてみよう。
水は「かんで飲む」と当たらないらしいです
水は「かんで飲む」と当たらないらしいです
さっそく湯上がり、海風が心地良い屋上のカフェへ。
注文した料理をおいしく感じたら、ここの湯は僕に合うということになる。
おつまみセット1500円
おつまみセット1500円
うまい!!!
うまい!!!
うん、うまい。どうやらここの温泉は僕の肌になじむようだ。

まあ、ほとんどの料理をおいしく感じる神の舌の持ち主である僕には、この説は当てはまらないかもしれないが。
屋上から望む海景色。曇天でも美しい
屋上から望む海景色。曇天でも美しい

日記の書き方も教えてくれる

屋上から望むのは、曇天でも十分美しい大パノラマ。この感動を140字で呟こうとしたが、その魅力をうまく表現する言葉がなかなか出てこない。

そんな時も、『旅行用心集』が頼りになる。

「道中、風景のすばらしいところや珍しいものなどを見たり聞いたりしたら、何月何日どこで何を見たと、ありのままに書きつけ、もし詩、短歌、連歌、俳句などが心に浮かんだら、後先は続かなくてもよいから、どんなようすだったかを日記に書いておくがよい」

と、蘆菴氏は日記の書き方まで指南してくれる。道中で完璧に詩歌をつづろうとすると、旅行の差しさわりになるため、そのとおり見たまま、ありのままを書きつけておき、帰ってから清書しなさいと説いているのだ。
ありのままの感想
ありのままの感想
さて、どうするか
さて、どうするか
そんなこんなでのんびりしていたら、日も暮れかかってきた。いかん、このままではただの物見遊山になってしまう。役人にばれたら大事だ。
物見遊山客でごった返す参道を抜け、急ぎ江島神社へ
物見遊山客でごった返す参道を抜け、急ぎ江島神社へ
本堂前には行列ができていた
本堂前には行列ができていた
江戸時代、特に初期の頃は幕府の統制が厳しく、「旅というものは、それだけの理由がなければすることはない」(東海道・川崎宿の名主、田中丘隅『民間省要』より)ものだったという。

それだけに、参詣を怠り、食と遊びにかまけていたとばれたら打ち首獄門に処されても文句はいえない。

物見遊山ではない証拠を示さねば。
証拠写真を残そうとしたけど、自撮り失敗
証拠写真を残そうとしたけど、自撮り失敗
左のやつと合成すればいけるか
左のやつと合成すればいけるか
行列で三脚が立てられず、なかなかピンが合わない。残念ながら打ち首決定である。

江戸の庶民の好奇心よ

旅先での病気や事故、行き倒れ…。遠出のリスクが今より遥かに大きかった江戸時代において、それでも見分を広めんと旅に出る。その好奇心には本当に感服してしまう。

危険だけでなく、制約も厳しかった時代に全国を旅した偉人の指南は、現代においても学ぶべきことが多かったです。
証拠ゲット
証拠ゲット
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