行けるかなと思ったらだめだった、っていう道
ぼくは子供の頃、やたら自転車で散歩していた。これが散歩と呼べるのかどうか分からないけど。いまでもよくやる。
自転車は好きだが、疲れるのは嫌いだ。幸い山のない千葉県は船橋市というところで育ったので、坂をのぼることはほとんどない。
この地域でいちばん坂なのは橋だ。なのでなるべく橋を渡らないコースで散歩をしていた。
で、陸橋に出会うと、のぼりたくないので、その脇に陸橋と平行に走る地面細い道を行く。もしかしたらうまいこと坂を避けて先に進めるのではないかと期待して。
自転車は好きだが、疲れるのは嫌いだ。幸い山のない千葉県は船橋市というところで育ったので、坂をのぼることはほとんどない。
この地域でいちばん坂なのは橋だ。なのでなるべく橋を渡らないコースで散歩をしていた。
で、陸橋に出会うと、のぼりたくないので、その脇に陸橋と平行に走る地面細い道を行く。もしかしたらうまいこと坂を避けて先に進めるのではないかと期待して。
こういうことです。
でもたいていうまくいかない。
たいてい行き止まり。
結局引き返してとぼとぼと陸橋をのぼらなければならない。
いや、べつにあてのない散歩なので、越えることができないなら別の道を行くだけなんだけど。
ともあれこの「だめかー、ひきかえすかー」って感じが良いのだ。
すごく分かりづらい好みだと承知している。10人だけは分かってくれていると思う。
ちなみに上の物件は「行き止まり度」が低いのでそれほど好きではない。
いや、べつにあてのない散歩なので、越えることができないなら別の道を行くだけなんだけど。
ともあれこの「だめかー、ひきかえすかー」って感じが良いのだ。
すごく分かりづらい好みだと承知している。10人だけは分かってくれていると思う。
ちなみに上の物件は「行き止まり度」が低いのでそれほど好きではない。
上のものは、こういうタイプ。「行き止まり度:★」(星ひとつ)だ。
冒頭のイラストのように、陸橋のぼりぐちまでUターンして戻らざるを得ないのが最高なのだ。
最高なのです。
最高なのです。
たくさんあると思っていたのだが
ぼくを最も興奮させる「陸橋下・完全行き止まり」物件。幼少期の豊富な自転車散歩経験からの印象ではそこらじゅうに存在する感じがしていたが、いざ探すとなかなかない。
どれも上のもののような「行き止まり度:★」ばかりだ。
どれも上のもののような「行き止まり度:★」ばかりだ。
これも陸橋下および周辺の佇まいはかなり好きなのだが、突き当たり正面の線路脇に立派に道路がある。惜しい。
逆サイド線路脇から見たところ。画面右側が線路。
上のものも、そんな「惜しい」物件のひとつ。工事中の陸橋下や、周辺のいかにも郊外的な雰囲気といい、すごく良い感じなのだが。
あと、陸橋の途中に付いてる歩行者用階段の向きが線路側向いてるっていうのもめずらしくて良い。これで線路脇に道がなかったら最高なのだが。
あと、陸橋の途中に付いてる歩行者用階段の向きが線路側向いてるっていうのもめずらしくて良い。これで線路脇に道がなかったら最高なのだが。
今回見た中で最高の物件
さて、おおかたの読者をおいてけぼりにしていると思いますが進めます。
ありそうでない「純粋行き止まり物件」。今回わがふるさと総武線沿線を少しめぐって見つけた「これこれ!」っていうものをご覧いただきたい。
ありそうでない「純粋行き止まり物件」。今回わがふるさと総武線沿線を少しめぐって見つけた「これこれ!」っていうものをご覧いただきたい。
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この2ページ目まで進んでくれたみなさまには厚く御礼申し上げます。
で、今回みつけた最高のものはこれ!
で、今回みつけた最高のものはこれ!
画面左が線路。右からやってきても、ここでUターンしなければならない。すばらしい行き止まり! この土地ほしい!
「これが最高かよ」とお思いの方もいらっしゃるかもしれない。いやしかし、上の写真で左線路沿いに見える道は私有地へのアプローチなのだ。従ってこれは「純粋行き止まり」だ。
線路を背中に。すばらしいUターン。周辺の「ザ・郊外」といった佇まいもすてきだ。路上生活するならここでしたい。
逆を向いたところ。つまり行き止まり方向。ここでUターン。正面が線路。
反対側サイドから。ここのジオラマつくりたい。
逆サイドやや上流から。伸びやかに越えていく陸橋車道に嫉妬・未練はない。下のこの行き止まりこそパラダイス。
いかがだろうか。いかがだろうか、って問われても困ると思うけど。
場所はここ。千葉市花見川区の至宝。
上の地図をご覧いただくと分かるように、ちょっと変わった行き止まりだ。線路を渡るわけではなく、南東からこの道路に入ってきて北へ向かいたい場合もここをUターンしなければならない。イラストで示したようなケースとはだいぶ異なる。
このようにひと口に「陸橋下の行き止まり」といってもいろいろあるのだ。世の中にひとつとして同じ行き止まりはない。現場百回。行き止まりは脚で稼げ。そういうことを教えてくれた事例である。
あと、線路の反対側にもあるのはもちろん、そのすぐ南に京成線による行き止まりも連続していて、「陸橋下行き止まりの宝庫」になっているのが地図で分かる。
南の方は今回見に行っていない。なぜなら陸橋わたるのがしんどいから。そもそもそういう動機で発見したものだったはずだ。このスタンスはまっとうしたい。暑いし。
このようにひと口に「陸橋下の行き止まり」といってもいろいろあるのだ。世の中にひとつとして同じ行き止まりはない。現場百回。行き止まりは脚で稼げ。そういうことを教えてくれた事例である。
あと、線路の反対側にもあるのはもちろん、そのすぐ南に京成線による行き止まりも連続していて、「陸橋下行き止まりの宝庫」になっているのが地図で分かる。
南の方は今回見に行っていない。なぜなら陸橋わたるのがしんどいから。そもそもそういう動機で発見したものだったはずだ。このスタンスはまっとうしたい。暑いし。
トンネルはちょっと違う気がする
線路を渡る手段は陸橋だけではない。アンダーパス、いわゆるトンネルもある。
アンダーパス。正面が線路。この「地面をえぐってコンクリートで固めました! 以上!」っていうエッジの立ち方すばらしい。
この場合も、たいてい陸橋と同様に脇に地面レベルの道路があって、行き止まる。
行き止まりは、こんな感じ。左からやってきて、画面右が線路。なかなか良い。良いんだけど…
上の写真は、さきほどの最高峰事例から東京方面に1.5kmほど行った場所にある「トンネル脇の行き止まり」事例。
ご覧の通りの郊外的佇まいにかなりぐっとくるのだが「行き止まり」的には、いまひとつ。やはり陸橋のほうがいい。
ご覧の通りの郊外的佇まいにかなりぐっとくるのだが「行き止まり」的には、いまひとつ。やはり陸橋のほうがいい。
反対側から。画面左が線路。背後に線路沿いの道が延びている。トンネルの歩道に降りるための階段の位置が心憎い。すてきだ。すてきなんだけどなあ。
上の写真は、さきほどの最高峰事例から東京方面に1.5kmほど行った場所にある「トンネル脇の行き止まり」事例。
ご覧の通りの郊外的佇まいにかなりぐっとくるのだが「行き止まり」的には、いまひとつ。やはり陸橋のほうがいい。
ご覧の通りの郊外的佇まいにかなりぐっとくるのだが「行き止まり」的には、いまひとつ。やはり陸橋のほうがいい。
これは津田沼の事例。線路沿いの道がしっかりしていて、行き止まり度は低いが、この「上空を覆われてる感」がすばらしい。行き止まりは陸橋の下に限る。
おそらく高架の下であることが「行き止まり感」を高めているのだと思う。
やっぱり、陸橋下の使われ方が重要だ。こういう風にまさかまじまじと観察されるとは思ってもいない、飾り気のない荒々しさが良い。
陸橋下を敬い給え
そう思って見ると、陸橋の下およびその周辺って、かなりハードコアだ。
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前ページ最後の津田沼の物件にはこんな貼り紙。
どうもなんだか高架・陸橋下でゆゆしき事案が発生しがちみたいなのだ。なげかわしい。実になげかわしい。
陸橋下にしては開放的で爽やかさすら感じられる(ぼくには)この行き止まり物件。
逆サイドから。画面右が線路。住宅街に佇む端麗な陸橋にもかかわらず、よく見るとその橋脚に立て看板が。
痴漢という犯罪の高コストをアピールしている。うむ、もっともだ。
このように不審者・痴漢への警戒を呼びかける表示が陸橋下には多い。すばらしい陸橋下行き止まりでなんてことをするのか。極刑に処すべきだと思う。
こんなに爽やかですてきな陸橋行き止まりなのに(例によって、線路沿いの道があり、行き止まり度は低いのだが)。
この2連陸橋行き止まりにある看板は、
冠水注意。こういう自然災害的種類のアラートもまた陸橋下っぽい。あと、柵が丸太と有刺鉄線っていうのがなつかしい。最近あまり見ない。
行き止まりで、かつ上を高架が覆うという行き止まり感のある空間を、もっと敬え! と思った。いまだ「陸橋下行き止まり観賞趣味」が広まらないのは、にっくき犯罪者どものせいに違いない。なげかわしい。
総武線は陸橋下行き止まりパラダイスなのか
閑話休題。
冒頭で書いたように、今回めぐったのは千葉北西部の総武線沿線だ。
おそらく陸橋下の行き止まりは日本中にある。鉄道はもちろんのこと、今回は紹介していないが、川を渡る橋の下にもあるし。
ここを選んだのは、幼少期からの「行き止まり記憶」がある馴染みの場所、という以上の意味はなかったのだが、後から振り返るとどうやらここはけっこう良いエリアだったのではないか。
冒頭で書いたように、今回めぐったのは千葉北西部の総武線沿線だ。
おそらく陸橋下の行き止まりは日本中にある。鉄道はもちろんのこと、今回は紹介していないが、川を渡る橋の下にもあるし。
ここを選んだのは、幼少期からの「行き止まり記憶」がある馴染みの場所、という以上の意味はなかったのだが、後から振り返るとどうやらここはけっこう良いエリアだったのではないか。
これも津田沼付近。陸橋脇の道の佇まいがすでに良い感じすぎる。突き当たりにはなにやら小屋があって、行き止まりをじゃましている(「行き止まりをじゃま」って変な言葉)。
小屋の脇をすり抜け、どうにか通り抜けた先の「行き止まりスペース」はこんな。画面左が線路。これはもはや行き止まりというより別の何かだ。何だ。わからない。でもこれもいいぞ。すごくいい。ここで育った子供たちの将来が楽しみだ。
というのも、これは線路が地上を走っていないと生まれないものだからだ。鉄道が高架だと当然のことながら跨線橋がその上に架けられることはない(ないことはないんだけど、まあふつうにはない。そもそもあったとしても下の道が「行き止まり」にならない)。地下鉄でもありえない。
なので、都心にはあまりない。
一方、もっと地方の線路だと踏切で交差を処理してしまう。
つまり「陸橋下の行き止まり」は、都心にほど近く、たくさんの線が走って本数も多い地域のものなのだ。
ぼくの育った西船橋は名著「鉄塔武蔵野線」でも主人公が鉄塔にのめり込んでいくきっかけの地として描かれている。陸橋も多い。そしてぼくはこの通りの人間だ。どうもこの街は土木構造物への偏愛を醸成する場所らしい。
なので、都心にはあまりない。
一方、もっと地方の線路だと踏切で交差を処理してしまう。
つまり「陸橋下の行き止まり」は、都心にほど近く、たくさんの線が走って本数も多い地域のものなのだ。
ぼくの育った西船橋は名著「鉄塔武蔵野線」でも主人公が鉄塔にのめり込んでいくきっかけの地として描かれている。陸橋も多い。そしてぼくはこの通りの人間だ。どうもこの街は土木構造物への偏愛を醸成する場所らしい。
行き止まりの先に行き止まり
さて、お国自慢をしたところで、引き続き総武線沿線シリーズ、津田沼にあるすてきな「鷺沼西跨線橋」をぜひ見ていただこう。
陸橋下の行き止まりだけではない行き止まりがある。
陸橋下の行き止まりだけではない行き止まりがある。
どうですかこのかわいらしい陸橋!
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鷺沼西跨線橋は地図で見ると、ここ。
なんだか線路が複雑なことになっちゃってる。
地形も複雑な上に路線が交差しまくってて線路を越えて反対側に行くのがややこしい。そして跨線橋は小さくてキュート。
もちろん陸橋下の行き止まりもすばらしい。
もちろん陸橋下の行き止まりもすばらしい。
脇の道の佇まいがすでに名作を予感させる。
ああ……! なんとすばらしい行き止まり!
線路脇に道が沿っていて「行き止まり度」は低いが、それを補って余りある雰囲気。総合評価では満点を与えたい。こぢんまりとした陸橋にあったサイズの周辺道路、そしてなんといっても団地! 2ページ目の事例と双璧をなす総武線沿線の最高傑作である。
小さいながら地元利用者の通行量は多い。愛され陸橋。自転車に乗った親子のシルエットが団地の壁に落ちる。リリシズム。
で、これがのぼってみてさらにびっくりなのだ。
陸橋上中央部で左右180度パノラマ。真ん中に脇に降りる階段があるではないか。
見下ろすと、線路に挟まれて島のようになった部分に住宅が。
たぶん鉄道趣味の方々の間では有名な場所だと思う。こういう線路に挟まれた岬状の土地はけっこうあって、興味を惹かれている人も多い。いわゆる「チーズ・ケーキのような形をした」あれである。
前出の地図をご覧いただければ分かるが、総武線と京成線に挟まれた三角形のほぼ先端部にこの跨線橋は架かっているのだった。
前出の地図をご覧いただければ分かるが、総武線と京成線に挟まれた三角形のほぼ先端部にこの跨線橋は架かっているのだった。
反対側は、こんな。まさに岬の先端。チーズケーキ。いいなー。ここに住みたい。
馴染みの陸橋下がいちばんエキサイティングだった
さて、最後にご紹介したいのは、それこそぼくがもっとも「行き止まってUターンしまくった」馴染みの陸橋下だ。
あらためて訪れてみて分かったが、結局これが最もエキサイティングな事例だった。
あらためて訪れてみて分かったが、結局これが最もエキサイティングな事例だった。
船橋と西船橋の間。ここ。
ほそーい脇の道を行くと、完璧な行き止まり! パーフェクト!
素晴らしいのはその完璧な行き止まりの奥、橋脚の影(画面の右、線路と橋脚の間)に、歩行者専用の小さな地下道の入り口がある点! 伝わるかどうか分かりませんが、これがあるの、ほんと素晴らしい!
日がな一日陸橋下をめぐったらすっかり陽も暮れて、馴染みのものに到着したのは夜。写真がいきなり夜景になってしまった。
この陸橋下の行き止まりがエキサイティングなのは、ここをUターンする自動車がひっきりなしだからだ。
この陸橋下の行き止まりがエキサイティングなのは、ここをUターンする自動車がひっきりなしだからだ。
一方通行の細い道、しかも判型の小さい急カーブだが、交通量がすごい。
実はここ、陸橋の出入口付近に交差点がなく、反対側車線から合流するためには通らざるを得ないというやっかいな「行き止まり」なのだ。だからひっきりなし。
これで気づいたが、たぶん、ここ以外の普通の「陸橋下行き止まり」も、慣れないドライバーが左折レーン間違って入り込んじゃう、っていうことがあるんだろうな、と。
なにが言いたいのかというと、ぼくは「良い感じー!」とか言ってるけど、「陸橋下行き止まり」は、クルマ運転する人にはやっかいな道なのかもしれない、と今頃気がついた、という話です。
でもなんか良いよねえ、「陸橋下行き止まり」。同好の士がいることを願っております。せめて10人。
これで気づいたが、たぶん、ここ以外の普通の「陸橋下行き止まり」も、慣れないドライバーが左折レーン間違って入り込んじゃう、っていうことがあるんだろうな、と。
なにが言いたいのかというと、ぼくは「良い感じー!」とか言ってるけど、「陸橋下行き止まり」は、クルマ運転する人にはやっかいな道なのかもしれない、と今頃気がついた、という話です。
でもなんか良いよねえ、「陸橋下行き止まり」。同好の士がいることを願っております。せめて10人。
L字になっちゃってるのもったいない。これでは行き止まれないではないか。あたらせっかくの陸橋を。