なんか気になる店がある
昭和の佇まいを見せる店
お昼時に物凄く混雑しているお店があった。長命うどん…?聞いたことがないけれど、他の所でも見たことがある。チェーン店か。
気になったけれど入りはせずに家に帰ってネットで調べた。下調べする派というのもあるが店構えにビビったのである。こういう所すんなり入れる孤独のグルメの人すごい。
ホームページを見てみると、普通のうどん屋さんっぽい。が、「通な食べ方」っていうページに、うどんとラーメン一緒に食うと美味いぞ。うどんと中華麺で「うちゅう」だ!みたいなことが書いてある。
なに、これ…。あの混雑の原因はこれか…?気になったので行ってみることにした。
ホントにあるのか
マジで孤独のグルメみたいな内装。
入ってみても昔ながらの庶民的なお店という雰囲気。お客さんが来るごとに「~さんおひさしぶり」とか「~のお兄ちゃんどうも~」とか言っていて、こんな「イメージ通りの昭和」的なことがあるのかと感心する。
どうも、初めてのお客様です。
無いな。うちゅう(うどんと中華麺)とか書いてない。
そんななか、メニューを見るもうどんとラーメンを一緒に食べられるよ!みたいな記載はない。通な食べ方、って記載されていたので常連さんにならないと頼めないとかそういうやつか。
意を決して「スミマセン、うっうどんとラーメン一緒に入ったやつとか出来ますか…?」というと「ハイッ、出来ますよ~」とあっさり通った。やっぱり出来るのか!
うどんとラーメンを一緒に食べた味がする
ちゃんと注文できて良かった。と、ホッとしていたらその瞬間にお待たせしました~って来た。超早い。待ってない。
うちゅうコロ大かき揚げ(うどんと中華麺冷たい出汁大盛りでかき揚げトッピング。という意味)
あっ、ホントにうどんとラーメンが入ってる。という見たままの感想しか抱けない見た目。ちなみに「コロ」というのも名古屋独特のものだけれど、冷たい麺つゆのぶっかけうどんと思ってだいたい間違いない。
うどんピカピカで美味しそうじゃないですか。
恐る恐る食べてみると美味い。うどんは滑らかでモチっとした芯もあり食べごたえ充分。冷たく締められた中華麺はシャキシャキとした歯ごたえで食感のコントラストが効いている。
そして、不思議なのが食べる麺によって出汁の印象が変わること。カツオ節がしっかり効いているのは同じなんだけどうどんと食べると甘みが感じられ、中華麺だとさっぱりとして和風冷やし中華といった感じ。
一緒に食べると迷路に入り込む
奇をてらったおもしろメニューかと思っていたが、実際に食べると二種類あることによって全然飽きないし嬉しいし楽しくて満足感がすごい。
なかなか面白いものがあるんだなぁと思っていたら実はこんなもんじゃなかったのだった。
何でもありかよ。
出来るものならなんでも作るよ
ホームページに載っていた通り、うどんと中華麺を一杯で食べられた。そして他のお客さんも普通に「うどんと中華かけ大で」とか言って普通に食べている…。(でもホームページみたいに「うちゅう」って注文してる人はいない)
この辺じゃ普通の食べ方なんだろうか…? 聞いてみた。
違うときに食べた、うちゅうコロ大海老(うどんと中華麺冷たい出汁大盛りに海老天トッピング)
私「美味しかったです、こういう二種類の麺入れるのってこの辺じゃよくあるんですか?」
店員さん「どうなんでしょうね、ウチはうどんもラーメンも食べたいって欲張りなお客さんの注文聞いてたら定着したーって感じですけど」
私「まず、うどん屋さんでラーメンあるのも不思議ですよね」
店員さん「あっ、ホントですね!なんででしょう、それも注文聞いてたらーって感じですかね」
別のお客さん「この店はなんでも聞いてくれるからね。このうどん(このお客さんが食べていたうどん)は『ぬるめ』やで」
うちゅうぬるめ大かき(うどんと中華麺かけ出汁ぬるめ大盛りかき揚げトッピング)
私「えっ、温度も注文できるんですか!?」
店員さん「そうですね、猫舌な人やったらぬるめにも出来るし、言うてくれたらあっちんちん(熱々)にもしますよ。どんな注文にも対応できるようにウチの伝票って白紙になっとるからね」
大ヌルってすごいヌルヌルしそう。
ぬるめ…。うどんのぬるめ、一体どうなんだと思って次に行った時に注文してみた。常温くらいかな?と思っていたが、予想よりは熱い。
普通に注文したうどんが熱くて初めは一本ずつくらいしか食べられなかったのが、食べ進むと冷めてきて三本くらいすすれるようになってきた。くらいの温度。
うどんが提供されたその瞬間から全力でうどんをすすれるクライマックス。ぬるめ、アリだな…。
ホントになんでもアリだった
出来る限りどんな注文にも対応してくれる…? それはどこまでイケるのだろうか。
うそちゅう特冷やしちくわ(うどんとそばと中華麺特盛り冷たいつけ汁でトッピングちくわ)
ならばこれはどうだろうかと、うどんとそばと中華麺の三種盛りをお願いすると「わかりました~」と、すんなり注文が通った。マジか…。
ピントがズレた。
麺類オールスターズみたいな事があっさり起こった。「こういう注文って面倒じゃないんですか?」と聞いても「いや~、別にそんなことないですよ~」と笑顔で返ってくる。
ちなみに、うどんと中華麺、そばと中華麺みたいに複数同時に食べたら相乗効果で美味くなる。みたいなことは全くない。そして、三種類の麺を一緒に食べると何故か味が“無”になる。
白い衝撃
うどんとそばと中華麺ですらあっさりと出てきた。ならばこういうのはどうかと試してみると。
白い。圧倒的に白い。
自分で頼んだのに出てきたらあまりの白さにビックリした。うどんと冷や麦と素麺の盛り合わせ。この涼し気な印象の食べ物たちに圧倒される事になるとは思わなかった。なんだこの威圧感は。
これは三種類いっぺんに食べても“無”にはならなかったけど、別に美味くもならなかった。
大雑把に言えばただ太さが違うだけのもの三種類の盛り合わせ。こんな外食ではありえなさそうな、いや、家でも「めんどくさいからどれか一つにしぃ!」って言われて実現しなさそうなものが食べられるとは。
そしてこの意味のなさそうな盛り合わせが、食べてみると意外と良い。美味いけれど飽きるのが早い食べ物No.1の素麺を飽きずに大量に食べることが出来るのだ。太さの違い、メッチャすごい。
このお店すごいなと思っていたらば、名古屋には他にもこういう食べ方ができるお店があると知った。なに名古屋すごい、ちょっとそっちも行ってみよう。
きしめんもあるし名古屋名物力高いのでは
他の店はどうなんだろうかと、先ほどの長命うどんの違う支店にやってきた。
昭和っぽさは薄め。
店構えから内装も違うしメニューも全然違う。ほぼ麺類だけだった前の店と比べてこっちは親子丼とかクリームコロッケとかまであるし、ビールも飲める。
同じチェーンとは思えない。先ほどの店に再度行った際そう伝えると「あー、別の店はそうなのかも知れないね~。(チェーンとしてのルールは)別にないんじゃないかな~?」と言っていた。自由。
きちゅうコロ大サカナ(きしめんと中華麺冷たい出汁大盛りにイワシの天ぷらトッピング)
こちらのお店はきしめんがあったのでそれと中華麺でオーダー。きしめんがある時点で名古屋名物なのに、中華麺との合盛りとはまさにここでしか食べられない名物なのではあるまいか。
ビロビロピカピカしてる。
このきしめんが美味かった。茹で置きのものしか食べたことがなかったためあまりいいイメージを持っていなかったきしめんだが、これはビロビロシコシコしていて唯一無二の食感で美味い。きしめんさん見くびっていてスミマセンでした。
そして中華麺ももちろん美味い。なんだこれ、美味しい美味しいかよ。。
麺が混ざっていいならカツくらい乗っていいよね
長命うどんとは関連のない店
どこのうどんやもメニューが表のようになっている。ここもかけうどんでぬるいのがある。名古屋市民は猫舌なのか。
メニューには複数種類混ざることができるという記載は無し。でもうどんやなのにそばも中華麺も冷や麦もある時点でちょっとおかしいよね。
注文してみたら「あぁ、出来ますよ」とのことだったのでお願いした。
カツ中華うどん合盛コロ大(中華麺とうどんの冷たい出汁大盛りにトンカツを乗せたもの)
今はもう、美味そう。としか思わないのだけれど、初見だと突っ込みどころが多そうなビジュアル。食べるとうどんが非常にモッチリ、カツもカリッと感とじゅんわり感が味わえて、普通にアリ。
お店の人に「メニューにない注文しちゃってスミマセン」って言うと「その注文される方多いんで普通に出来るんですよ~」と言っていた。名古屋市民、うどんやさんに対する要求が自由すぎないか…?
麺を分けて考えるほうがおかしいんじゃないかと思い始めた
長命うどんと名前が似ている長寿うどん
まだまだあるよ、色んな合盛りを出している店。店名にうどんとついているが看板にら~めん、そばの表記があるのでこれは行けそうだな。という感じがある。
メニュー豊富なタイプのお店。
メニューを見ると、どれもうどんと書かれているが注意書きで(らーめんもあります)とか(らーめんそば50円増)と書いてある。名古屋において麺の垣根はない(そしてもちろんぬるめもイケる)。
和風ジャージャー麺にしてみました。
もちろんうどんと中華麺半々で。
頼んだのは和風ジャージャー麺。これもお願いするとすんなりうどんと中華麺で注文が通る。もう、複数の麺を選べるのが当たり前みたいな感覚。
見た目、ぬっちゃぬちゃだけどメッチャ美味い。
普通のうどんからするとかなり変化球だけれど問題なく美味い。うどんも中華麺もバッチリと合っているし、2つの食感があることによる広がりが良い。普通に良い。
そばとかきしめんでも出来たのか。
なにやら、そばでも注文できたようだ。これまでならそばは合わないんじゃ…?とか言ってたと思うけれど、多分イケると思う。知らんけど、知らんけどイケると思う。
麺類に対する固定観念がガンガン崩れている。全然イケる。外国の人が焼きそばを日本そばで作ったって話聞いて、昔は「うわぁ…」って思ったけれど、今は美味そうだと素直に思う。全然イケる。
うどん屋さんの融通の利き具合が異常
うどんの他の麺をいっぺんに出してくれるお店は他にもまだまだあるというか、うどんとその他の麺を出しているお店ならどこでも出してくれる気すらするのだけれど今回の記事はラスト1件で自宅から一番近い長命うどんにやってきた。
「長命うど」だしやっていないのかもしれない。
が、やっていない。これは定休日なのかもう営業していないのか見分けがつかない。長命うどんのホームページには西支店は載っていないし、インターネット上には判断できる情報がない。
無駄足になっても何度か行ってみるか、と思ったが、食べログに電話番号が載っている事に気がついてかけてみた。
電話先の人「はい、もしもし、なんですか~」
私「(あっ、民家のリアクションだ!)す、スミマセン、長命うどんさんですか?」
電話先の人「あっ、はい、そうですけど~」
私「(そうなのかよ)今日って営業してますか?何時までですかね?」
電話先の人「やってますよ~、営業時間は四時までですけど、お見えになるんだったら六時くらいまでだったら開けときますよ~」
私「あっ、すぐ行くんで大丈夫です。ありがとうございます」
名古屋のうどん屋の融通の利き具合は料理だけじゃなかった…! 営業時間も二時間くらいすぐに伸ばしてくれる!いいのか、そんなのいいのか。
ほんとに開いてた。ちなみに、西支店は営業時間10時から16時で定休日は日曜です(インターネットではここにしかない情報)。
あと、インターネットを過信してずっと探していたけれど見つからなかった情報が電話一本ですぐ分かった。すごいぞ、電話!
柔軟さと一本の芯
小盛(一玉)→大盛(二玉)で40円アップ。大盛(二玉)→特盛(三玉)で80円アップ。法則は一定だけど理由が謎。
西支店でももちろんうどんと中華麺やそばとの合盛りは出来るとのこと。さて、何にしようかと考えていたら。
まさか、高齢のおじいちゃんが今もうどん打ってるのか!?
さっきまで厨房にいた70歳くらいのおじいちゃんが奥に行って、リズミカルに縦に揺れている。あ、あれはうどんを踏んでいる!?やるとわかるが、うどん打つのは結構な体力がいる。お店で出すくらいの量を作ろうとすれば相当だ。
私「あれって今うどん踏んでるんですか?」
おばあちゃん「そうですよ」
私「体力いるから大変でしょう?!」
おばあちゃん「そりゃあそうですけど、うどん屋ですから」
私「そばとか中華麺も作ってるんですか?」
おばあちゃん「打ってるのはうどんだけですよ。うどん屋ですから」
私「う、うどんください!!」
うどんコロ大ごぼう天(うどんに冷たい出汁ごぼう天トッピング)
うどんにうどんしか入っていない。複数種類の麺を食べられるけれどあえてのうどんのみという贅沢。すすり込むおじいちゃんの上下動の結晶。美味い。出汁が結構しょっぱめ。
驚くぐらいの柔軟性と共に併せ持つしっかりとしたうどん屋としての矜持。すごい、すごいぞ名古屋のうどん屋さん…。
個人的な話になるが、最近大阪から名古屋に引っ越してきて「名古屋では大阪のようなうどんがなくて悲しい…」とか言っていたのだが、この柔軟すぎる名古屋のうどん観に出会って食事が非常に楽しくなった。
自分の好みにあった味だけを求めるんじゃなくて、その土地の個性というか特色を楽しんでいくのが住む、というか土地に生きるってことなのかなぁと思わされたりしました。
私も要求があればうどんと中華麺を混ぜるように生きていきたいと思います。よくわかりませんがそう思いました。どうぞよろしくお願いします。