特集 2015年7月5日

書き出し小説大賞・第76回秀作発表

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書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)
雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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公開中のマッドマックス~怒りのデスロード~を観た。噂通りアドレナリンダダ漏れ、超ド迫力エンターテイメントに酔いしれた。と同時に、怒りのデスロードが子供たちの通学路じゃなくて本当によかったと胸をなで下ろしました。

それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しよう!

書き出し自由部門

ずっと残像の方と戦っていた。
おかめちゃん
歩きスマホを駆けスマホが追い抜いた。
紀野珍
議事録に目を通して初めて、議長のダジャレに気づいた。
Mch
「ファンなんです」の一言の後、色紙とレモン汁を差し出された。
ふじーよしたか
未来の私が枕元に立ち、過払い金請求のアドバイスをし去っていった。
g-udon
伝書鳩を既鳩した。
もんぜん
僕は毎年、てっぺんの蕾が開く前に、その花をへし折っていた。

イチゴ形のタイマーは驚くほど早く、しかし正確に45分コースの終了を知らせた。
TOKUNAGA
主を亡くしたアカウントが再び呟き始めた。
えむ毛
赤いカーネーションが台所で逆さに吊られている。
小夜子
園児が順に龍にまたがり、いっぱいになったところで一匹ずつ空へ舞い上がった。
茂具田
東洋人ピエロのくれた風船に張りがない。
人が生きてる
能の舞台を突っ切れば会議に間に合う。
義ん母
マウンド上で砂肝を噛んでみたが、案外気づかれないし美味しい。
prefab
画板に行く手を阻まれている。
xissa
推理小説の伏線にビーズを通してネックレスを作っている。
松っこ
湿気を吸った猫は、押入れの隅で「取り替えて下さい」と小さく鳴いた。
タクタクさん
全てを失ったが、残尿感はある。
ヘリコプター

不意に思いついた笑えるネタが、実はある意味真理をついていた。おかめちゃん氏の冒頭の作品はまさにそんな一文。あなたが実体と思い込んでいる相手はただの残像かもしれない。
紀野珍氏の「歩きスマホ~」ふたりを見ている第三者の視点、その構図がいい。Mch氏の「議事録~」ダジャレが現行犯ではなく証拠でみつかるという時間差の笑い。ふじー氏「ファンなんです~」のあぶりだしも違う意味で時間差ネタ。g-udon氏、例の必要以上に怖いナレーションが浮かぶ。小夜子氏「赤いカーネーション~」ドライフラワー状態だろうか。淡い光を受けた静物画のような風景。prefab氏の「マウンド上~」必然性のなさがある臨界点を超えると破壊力のある笑いに転じる。美味しいならよかったw 最後、ヘリコプター氏の「全てを~」もおかめちゃん氏の作品同様の真理をついている。すべてを失ってもなお身体性は残る。残尿感。

続いては規定部門、今回のモチーフは「ゾンビ」であった。ゾンビのごとく迫る大量の書き出しに怖れ笑って頂きたい。

書き出し規定部門・モチーフ「ゾンビ」

腐敗こそすれ充実していた。
TOKUNAGA
ゾンビが乗ってきて、私は優先席を立った。
東ことり
洗濯物をくぐり、自転車をどかし、網戸を開けてゾンビが来た。
哲ロマ
私はコンタクトを、その人は目玉を探していた。
Mch
「スリラーってなんすか?」新人ゾンビが無邪気に聞いてきた。
山本ゆうご
生前は腐女子だった。
xissa
死んで間もないゾンビは、青信号が点滅しだすと駆け足になる。
紀野珍
ダッシュすると骨だけになった。
TOKUNAGA
天気予報士の後ろでさっきからゾンビが何度も見切れている。
茂具田
見よう見まねで両腕を前に出してみる。
ババア伝説
年金を受け取ると、ゾンビ達は大人しく帰っていった。
えむ毛
「ゾンビチャ~ンス!!」危篤状態の父の前で院長先生はそう言うと青い液体の入った注射器を取り出した。
腑分け
ゾンビでもいい。あの人が蘇るなら。
マシマロ
私はあなたの前にいるときだけ、素のゾンビでいられる。
もんぜん
ゾンビになった後輩の手をかじるとアボカドみたいな食感だった。
もんぜん
南国のゾンビはよく笑う。北国のゾンビは状態が良い。
東ことり
まっすぐ伸ばした両腕が、生前の夢をつかみとるようにふたつの膨らみをとらえた。
Mch
スーツを新調したらゾンビ感が薄まった。
g-udon
ゾンビさん、ゾンビさん、一人飛ば、ゾンビさん。
ビールおかわり
ゾンビの甘噛みは、なついた証拠。
ウチボリ
人権派弁護士がゾンビに目をつけた。
まじいい
店主は逃げたがケバブは噛まれた。
義ん母
ゾンビになってから発酵食品が食べられるようになりました。
流し目髑髏
アルバイトに雇ったゾンビは初めての給料で、防腐剤を買った。
あつし
夜空に咲いた大輪の花が、隅田川にひしめくゾンビたちを照らす。
よかトピア
ゾンビでもいいかな、モテないし。
マークパン助
「いらっしゃいませ!」張り切って挨拶したゾンビ店員の顎が、頬肉ごと落下した。
イワモト
「この写真、遺影にしたい!」 ゾンビは嬉しそうに笑った。
大伴
朽ちたキャミソールから彼女の白い胸骨がのぞく。
大伴
ゾンビらしいことは何一つしてやれなかった。
ヘリコプター
30本のゾンビ作品を読み通してまず思ったこと。「ゾンビ可愛い……」モチーフがもつイメージの逆をつく手法はひとつの基本だが、これだけ生き生き、かつ人間臭くゾンビを表現されるとどうにも親近感が沸いてしまう。
冒頭のTOKUNAGA氏の作品には私たちがゾンビに憧れる理由を喝破している。一応人肉を求めるという設定はあるものの、基本ゾンビはただ集団で「ア゛~ア゛~」さまよっているだけである。真の充実とはまさにこの無目的な集団行動にあるのではないだろうか。哲ロマ氏「洗濯物をくぐり~」障害物の日常感がいい。自転車どかすんだw えむ毛氏「年金~」ここは深読みせず、ゾンビのような人よりゾンビそのままでイメージする方が面白いだろう。もんぜん氏「素のゾンビ」という言葉の勝利、もんぜん氏はゾンビの食感に言及したもう一本もいい。東ことし氏も「ゾンビの状態がいい」という文末が秀逸。たしかに、ゾンビは北国の方が日持ちする。まじいい氏「人権派~」まさかゾンビに法廷モノに発展するとは。義ん母氏の「店主~」商品の肉の塊が店主の窮地を救った。これは見事という他ない一本。自由部門に続いてシメを飾ったヘリコプター氏。どんなシチュエーションでこのひと言がw 想像するのもアホらしい脱力作。そのほかの作品も高レベル、楽しませて頂きました。

それでは次回のモチーフを発表する。
次回モチーフ
「初体験」
夏と言えば初体験、といってもあっちの体験ばかりではない。ほかにもさまざまは初体験がある。初めての体験は新鮮な感動を呼ぶ。もっともそれがうれしいものばかりとは限らないが、そこにはなんらかのドラマがある。実体験でも妄想でもいい。初体験をテーマにした書き出し作品をお送り下さい。締め切りは7月17日正午、発表は7月19日を予定。下の投稿フォームから自由部門、規定部門を選択しご応募ください。力作待ってます!
最終選考通過者

有坂/地獄ゆき/ウウタルレロ/アイアイ/ねもっ血風クン/不眠/suzukishika/菅原 aka $UZY/ダイダイダイキチ/ミミズグチュグチュ/かと/春乃はじめ/
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