特集 2015年6月8日

ドイツの害虫ボードゲームがおかしい

伝われ!やばそう感
伝われ!やばそう感
当サイトでも何度か記事にしている、ドイツなど海外のボードゲーム。どの作品もデザインにセンスがあり、知的な面白さを感じさせるものだ。
私もいくつか持っているが、実際そうだと思う。下手こくと、おしゃれですらある。

そうしたものが多い中、たまに「これをゲームにするのか!」と思わされるものがある。例えばそれは、害虫がテーマのゲーム。いくつか紹介してみたい。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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基本的にはおしゃれ大爆発

ドイツのボードゲームというと、全般的に知的好奇心を刺激するようなセンスを感じるものが多い。中でも子供向けのゲームには、かわいらしいデザインのものが目立つ。
おとぎ話の世界が再現されたよう
おとぎ話の世界が再現されたよう
例えば上の『メルヘン王国を救え!』は、怖い王様が戻ってくる前に、引き裂かれてしまった童話の本をみんなで協力して取り戻すというゲーム。
怖いけどかわいい王様
怖いけどかわいい王様
箱やボードの絵が美しく、王様や子供の木製コマも愛らしい。ゲームを進めながらプレーヤーが記憶や知恵を出し合い、みんなで童話を取り戻していくのが楽しい

* * *

──はい、ここまで。この記事中の素敵とおしゃれはこれで終了。

ここから先は、なんだこれはの害虫ゾーン。念のために確認をしておこう。
!
それでは本記事の趣旨に突入しよう。

ひどい、けど楽しい

まず紹介するのは『ごきぶりポーカー』。
あっさりと閾値を超えてくる名前
あっさりと閾値を超えてくる名前
日本では嫌われ者の虫の名前を迷いなくフィーチャーしたタイトル。当サイトの記事でも何度か登場しているものだ。(その1その2その3)
かっこつけさせてもらってるなー
かっこつけさせてもらってるなー
中身のデザインはシンプルで、ゴキブリ・ハエ・カメムシといった害虫類が描かれているカードだけ。

ゲーム内容をごく簡単に言うと、ウソやハッタリをかまして害虫カードを他のプレーヤーに押しつけるというもの。嘘つきありの害虫押し付け合いなのだ。

冷静に考えるとひどい。でも、ウソをうまくついたり見破ったりする心理戦が楽しい

ただ、嫌われ者とは言え、絵の雰囲気にはセンスも感じられる。また、押し付け合いという内容からして、害虫モチーフの意図がよくわかる。その点、次のは謎だ。

ひどい、楽しい、あと、何で?

続いてはこれだ。
こちらは箱が日本語化されていない
こちらは箱が日本語化されていない
『ごきぶりポーカー』と違い、箱はこのゲームを作った会社があるドイツの言語のまま。ただ、よく見ると他の言語の表記もある。
これならわかる、わかるけど…
これならわかる、わかるけど…
これは英語だろう、「COCKROACH SALAD」。コックローチ・サラダ。これくらいの英語ならわかる。わかるけど、本当にそれでいいのか。
ババーン
ババーン
説明書は日本語版も添付されていて、タイトルは予感的中の『ごきぶりサラダ』。

やばいだろ。それはないだろ。
だからまずいだろ
だからまずいだろ
中身の大半は、野菜が描かれたカード。野菜の絵そのものは相変わらずセンスがあるのだが、そこにいてはいけない者がピコピコしている。

ゲーム内容をごく簡単に言うと、状況によって変わるNG野菜を言わないようにしてカードをめくっては野菜の名前を唱えるというもの。

やってみるとわかるが、短時間でNG野菜を避けて言う緊張感と混乱が楽しい。ただ、『ごきぶりポーカー』と比べて、カードに例の虫がウロウロしている意味がよくわからないのだ。
お前、コック服着る立場じゃないだろ
お前、コック服着る立場じゃないだろ
野菜カード以外に、NG野菜を増やすゴキブリカードも登場する。ただ、野菜カードと共通して感じるのは、ゲームのテーマからして別にゴキブリじゃなくても…という疑問。押し付け合いといった大義名分がない。

『ごきぶりサラダ』ってタイトルは、日本人的にはシンプルで強烈。ドイツの人って日本人と違い、別に本気でゴキブリ嫌ってないんだろうか。

ゲームのルール概念を壊すゲーム

続いてはこちら。
悪そうなやつだなー
悪そうなやつだなー
箱絵の虫は蛾。ドイツ語で「MOTTE」は蛾だそうで、こいつにスポットライトが当たっているゲームだ。
こちらは基本の数字カード
こちらは基本の数字カード
ゲーム基本的な内容は、手札を数字に応じて場に出していき、全て出し切った人が勝ちというのもの。その部分はUNOと共通だ。
いかさまオッケー!
いかさまオッケー!
タイトルは『いかさまゴキブリ』。日本語名がこうなっている経緯はわからなかったのだが、それよりもルールが斬新。手札を捨てる際に、ズルしてよいことがオフィシャルに認められているのだ。
こちらは特別な効果や意味のあるカードたち
こちらは特別な効果や意味のあるカードたち
特殊効果のあるカードも登場しつつ、目的はとにかくあらゆる手段を使って手札をなくすこと。監視役プレーヤーに見つかるとペナルティがあるので、こっそりとポケットに入れたり床に落としたりしてよい。ばれないように食べたって違反ではないのだ。

言うまでもなく、監視の目を盗んでズルをするのが楽しい。もちろん、反対に現行犯逮捕するのも楽しい。害虫はともかく、ルールを超えたルールがすごい。

それでうれしいんですか

害虫つながりはあるものの、ここまでと全く毛色の違うゲームがこちら。
ゴキブリが異常にでかい
ゴキブリが異常にでかい
日本語タイトルは『ごきぶりキッチン』。やばいだろ。コックが調理器具でゴキブリつかまえようとしてるのもまずいだろ。
大きく写すのに耐え得るたたずまい
大きく写すのに耐え得るたたずまい
箱自体が可動式迷路になっている
箱自体が可動式迷路になっている
中身はまず電池式で不規則に動く虫のおもちゃ。ゴキブリモチーフとは言え、許される範囲内のビジュアルで安心。そして箱自体、壁が回転する迷路になっている。

ゲームを開始したら、まずは迷路に虫を放とう。
サイコロを振るのが基本のゲーム
サイコロを振るのが基本のゲーム
そしてプレーヤーは順番にダイスを振り、出た絵と同じカトラリーを回転させて迷路を変化させていく。その中を移動する虫の様子があれなのだ。
あらまー
あらまー
カタカタ音を立てながら、かなりそれっぽく右往左往する。もうこの時点で楽しい
偉そうなマークが載ってる箱
偉そうなマークが載ってる箱
このゲーム、箱には何やらいくつかかっこいいマークがついている。どうやら向こうの国のゲーム賞にいろいろと輝いているようなのだ。
レビュー数と評価の星がすごい
レビュー数と評価の星がすごい
ドイツのアマゾンでこのゲームを見ると、カスタマーレビューが277個もあった。さらには評価も4.5と高い。
自動翻訳だとレビューのタイトルはさっぱりわからん
自動翻訳だとレビューのタイトルはさっぱりわからん
そんなにゴキブリ好きなのか、ドイツ人。

真偽は不明だが、そう思わせる理由はゲームのルールにもある。ボードの隅には各プレーヤー用のへこみ穴があり、そこにゴキブリをおびき寄せて入れると、そのプレーヤーの得点になるのだ
こうなると得点ゲット
こうなると得点ゲット
そしてもらえるゴキブリチップ
そしてもらえるゴキブリチップ
穴でじたばたするゴキブリ。この得点システム、普通は逆じゃないだろうか。プレーヤーの立場は何なんだ。

ただ、やってみるとわかるが、ゴキブリが穴に入ると「やったー!」と喜んでいる自分がいる。このゲーム、いつの間にかゴキブリへの価値観を逆転させてくる。

得点としてもらえるチップも元気にゴキブリ柄。冷静に考えると、これ、もらってうれしいんだろうか。ドイツ人のゴキブリに対するスタンスが今ひとつわからない。

ガツンと来ますよ

ここまではそれほどアレな感じではないものを紹介してきたつもりだが、この最終ページでは結構がっつりとアレな感じのものが登場する。

心のざわつきをプレビューするため、まずは小さい写真を載せてみよう。
胸騒ぎの予感
胸騒ぎの予感
漂ってくる悪の気配が心配な人は、読み進めるのをやめた方がいいかもしれない。

ただ、まず登場するのは安心のかわいい系。このページで紹介するのはHABAという会社の製品だ。
鬼かわいい
鬼かわいい
このHABA社、子供用の玩具をたくさん作っていて、ボードゲームもセンスのあるかわいさに満ちたものが多い。パッケージからしてあからさまにそれが伝わるだろう。
夜叉かわいい
夜叉かわいい
この『おばけの試験カードゲーム』は、12人の人物が描かれたカードを短時間で覚えて、誰がいたかをプレーヤーが順番に答えていくもの

こう書くと単なる記憶モノのようだが、かわいくもまぎらわしい絵が多くて子供も大人も一緒に混乱できるのが楽しい
正解すると進められる木製おばけゴマ
正解すると進められる木製おばけゴマ
HABA社の製品は基本的にこんな感じだ。

そう油断させておいて出てくるのがこれ。
真打ち登場
真打ち登場
パッケージに描かれているのは、ハエとおぼしき虫とビッグベン。
さらにズームイン
さらにズームイン
絵のタッチも他のゲームの異なり、割と容赦ない。シワや尖りは保護者に媚びることなく、子供ウケをダイレクトに突いてくる。
一応婉曲しているタイトル
一応婉曲しているタイトル
日本語版の題名は『ハエのごちそう』。例のブツを少し遠回しに表現する文学性がある。

ドイツ語の原題は箱にもある通り『Fliegenschmaus』。どういう意味なのか翻訳サイトで調べてみたところ、『ハエのごちそう』そのままだった。日本語版タイトルはしっかりと直訳なのだ。
そういう言い方もありなのか
そういう言い方もありなのか
説明書には内容物として気になるものが載っている。ハエケーキだ。

心の中で自然とリフレインする言葉、ハエケーキ。なるほど、立場が変われば例のブツもケーキとなるのだ。そう、このゲームでのプレーヤーの立場はハエである。
いくぞ!えい、えい、ブーン……
いくぞ!えい、えい、ブーン……
やけによくできたハエのコマ。このゲーム、基本的にはすごろくで、自分の色のハエを4匹ゴールに到着させたプレーヤーが勝ちだ
マスの絵も独特の雰囲気
マスの絵も独特の雰囲気
カードを効果的に使っていく
カードを効果的に使っていく
6角形の板にはハエがいそうなシチュエーションが描かれている。8枚あって、これらがそれぞれすごろくの1マスになる。

ゲームの流れはさまざまな効果のあるカードをめくりながら展開していく。自分のハエを遠くに飛ばしたり、相手をハエたたきでスタートに戻したりと、自分の有利と相手の不利を戦略的に考えるのが楽しい
スタート位置からハエ軍団、発進
スタート位置からハエ軍団、発進
羽音が聞こえるようにも思える中、ゲーム開始。いろいろと考えながらハエのコマを進めていく。
そしてゴールはハエケーキ
そしてゴールはハエケーキ
忘れていたかもしれないが、ゴールはハエケーキ。さまざまな駆け引きを超えて到着させると、「よし、やったー!」と、すっかりハエ気分になっているのだ。

…いやいやいや、ちょっと待て。ゴールに描いてある絵をよく見てみろ。人間として、冷静になれ。
たまってくるとほんとやばい
たまってくるとほんとやばい
同梱の商品パンフとの落差が激しい
同梱の商品パンフとの落差が激しい
これ、チョウチョがお花を目指して進んでいくテーマにしてもゲームとして成立するだろう。ドイツ人がどれくらいの考えでこのゲームをデザインしたのか謎だ。

ごきぶりサラダのむかつくゴキブリ
ごきぶりサラダのむかつくゴキブリ
いずれの作品も独特の個性を漂わせる、ドイツの害虫ボードゲーム。個性も大概にしろよと言いたくなるほどの個性だ。

もちろん、どれもしっかり面白いから単なる悪ふざけじゃないのはよくわかる。ちゃんと知的な要素があるのだ。

ただ、デザインにその知的ムードを吹き飛ばす勢いがあるのも事実。バカげてるのか頭いいのか、振れ幅の大きさも楽しさなのかもしれない。
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