特集 2015年6月1日

ローズ復帰で話題のBCリーグは面白いのか?

話題の独立リーグを見てきた
話題の独立リーグを見てきた
野球のBCリーグをご存じだろうか? 正式名「ベースボール・チャレンジ・リーグ」。関東・東北・北信越の8球団で70試合ほどを戦う独立リーグで、先日は元近鉄・巨人のローズが選手復帰することでも話題になった。

もうひとつのプロ野球、BCリーグとは果たしてどんなものなのか? 球場に足を運んでみることにした。
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。

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> 個人サイト Twitter (@noriyukienami)

北信越・東北・関東の8球団で運営

2006年に設立されたBCリーグ。日本で「プロ野球」というと、一般的にNPB(日本野球機構)傘下のセリーグとパリーグのことを指すが、BCリーグもれっきとしたプロ野球だ。北陸を本拠地とする球団を中心に、より地域に根差した運営がなされているという。

去る土曜日、BCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスと信濃グランセローズの試合が催されると聞き、足を運んでみることにした。
やってきたのは群馬県伊勢崎市。群馬ダイヤモンドペガサスのホームであり、プロ野球創設の功労者・鈴木惣太郎氏の出身地でもある
やってきたのは群馬県伊勢崎市。群馬ダイヤモンドペガサスのホームであり、プロ野球創設の功労者・鈴木惣太郎氏の出身地でもある
プレーボールの1時間前に着いたので、球場のまわりを歩いてみた。すると、これから試合に臨む選手が普通に球場の日蔭で弁当を食っていたりする。

なんだか草野球みたいな雰囲気だが、みんなプロ野球選手なのである。とにかく体がデカい。しりがプリっとしていてカッコいい。
日蔭でランチをとる選手たち
日蔭でランチをとる選手たち
球場外にある売店を選手も利用
球場外にある売店を選手も利用
さて、この日の試合は群馬を本拠地とする群馬ダイヤモンドペガサス(以下、群馬)のホームゲーム。群馬は昨シーズンのBCリーグで優勝を果たした強豪で、NPB注目の有望選手も数多く所属している。

ちなみにヤクルト、巨人などで活躍した大打者アレックス・ラミレス選手が現役生活最後のシーズンを送ったのがこのペガサスである。
引退後も人気のラミちゃん人形
引退後も人気のラミちゃん人形
ラミレスや冒頭のローズしかり、NPBで一時代を築いた有名選手が所属していたりする点も、BCリーグの魅力のひとつだろう。ちなみに、新潟アルビレックスBCには桑田選手の息子がいる。

それもピークを遠く過ぎた「往年の名選手」ではなく、昨年まで最高峰の舞台で戦っていた一流どころが、NPBへの返り咲きを目指して本気でプレーしているから面白い。

いまオリックスで4番を打っているカラバイヨ選手も昨季は群馬に所属していたし、選手のほとんどがNPBの高みを目指しているのだ。
なお、群馬の監督は川尻哲郎氏。万年Bクラスだった時代の阪神を支えたサイドスローである
なお、群馬の監督は川尻哲郎氏。万年Bクラスだった時代の阪神を支えたサイドスローである
そんな川尻采配のベースは野村ID野球とのこと
そんな川尻采配のベースは野村ID野球とのこと
では、いざ球場内へ。 グラウンドでは試合前練習が行われており、お客さんと選手がキャッチボールをしていた。素敵なファンサービスだ。
地域リーグらしく、選手とファンの距離が近い
地域リーグらしく、選手とファンの距離が近い
ちゃんとマスコットもいる
ちゃんとマスコットもいる
ファンに愛想をふりまきつつ相手チームのベンチを兆発するなど、なかなか芸がこまかい
ファンに愛想をふりまきつつ相手チームのベンチを兆発するなど、なかなか芸がこまかい
ちなみに、思ったより、といったら失礼かもしれないが、けっこう観客は多い。ホームである群馬側のスタンドには応援団もいて、熱のこもった声援をおくっている。

群馬唯一のプロ野球チームであるダイヤモンドペガサスは人気があるのだ。
鳴り物禁止なので、声と手拍子で応援
鳴り物禁止なので、声と手拍子で応援
野球少年も熱視線
野球少年も熱視線
選手からカラーボール投げ入れのファンサービス。真ん中にいるへんなのは、チームのゆるキャラ「ラミッパ」
選手からカラーボール投げ入れのファンサービス。真ん中にいるへんなのは、チームのゆるキャラ「ラミッパ」
選手と同じくらい体格がいい。心なしか態度もでかい
選手と同じくらい体格がいい。心なしか態度もでかい
試合前のセレモニーが終わり、いよいよプレーボールだ。群馬の先発は、ベネズエラ出身のエンジェルベルト・ソト選手。昨季までNPBの横浜DeNAベイスターズに所属していたバリバリである。
出ました、バリバリ
出ました、バリバリ
ストレートの最高球速は150km/h。は、速え~!
ストレートの最高球速は150km/h。は、速え~!
NPB通算4年間で74試合に登板したソト選手は、剛速球と切れ味鋭いスライダーをもつ一流投手だ。しかし、元NPBだからって無双できるわけではなく、普通にヒットを打たれるあたり、BCリーグのレベルの高さがうかがえる。
初回いきなりスリーベースを打たれるソト
初回いきなりスリーベースを打たれるソト
後続をおさえベンチに戻るソト
後続をおさえベンチに戻るソト
一方、信濃の先発は米大リーグでのプレー経験もあるペドロ・リリアーノ投手。昨季は北米独立リーグでプレーしていたこちらもバリバリである。

この日の試合ではソトやリリアーノ以外にも、ベネズエラやドミニカといった野球強豪国からの助っ人がスタメンに名を連ねていた。
リリアーノ投手はドミニカ出身
リリアーノ投手はドミニカ出身
ドミニカVSベネズエラというWBCさながらの対決
ドミニカVSベネズエラというWBCさながらの対決
息を呑むスタンド
息を呑むスタンド
あらためてスタンドを見渡すと、ひとりで来ている年配の野球ファンが目立つ。

声援をおくるでもなく、野次を飛ばすでもなく、ただ熱心にプレーを見つめる真に野球好きのおじさんたちだ。NPBの試合がめったに行われない地方の野球好きおじさんにとって、BCリーグは最高の娯楽なのだろう。
熱射病が心配なおじさん
熱射病が心配なおじさん
身を乗り出して戦況を見つめるおじさん
身を乗り出して戦況を見つめるおじさん
さて、試合は1点を争う白熱の展開。好プレー続出の見ごたえあるゲームが続く。
盗塁あり
盗塁あり
抗議あり、の白熱した展開
抗議あり、の白熱した展開
声援も熱を帯びる
声援も熱を帯びる
回を重ねるごとに応援団の声援にも力がこもる。ミスをすれば厳しい野次も飛ぶ。ファンは想像以上に勝敗にシビアだった。独立リーグとはいえ、プロ野球なのだ。
ホームの声援を背に群馬が先制
ホームの声援を背に群馬が先制
川尻采配の積極走塁も当たり、5回を終えて群馬が3点のリード。ここで試合はしばしの休憩に入る。
群馬3点リードで後半戦へ
群馬3点リードで後半戦へ
選手自身がグラウンドを整備
選手自身がグラウンドを整備
それにしても熱い。グラウンドの選手たちもさることながら、ラミッパのコンディションが気がかりだ。
炎天下のグラウンドを練り歩くカッパ。皿の渇きなど気にするそぶりもない
炎天下のグラウンドを練り歩くカッパ。皿の渇きなど気にするそぶりもない
たまらずビール投入
たまらずビール投入
10分後、ゲーム再開。好投を続けるソト選手はこのままリードを守れるか。
しかし、7回につかまる。1点を返され、さらに満塁のピンチ
しかし、7回につかまる。1点を返され、さらに満塁のピンチ
盛り上がる信濃ファン。応援団は5人だけだったが声がよく出ていてとても力強かった
盛り上がる信濃ファン。応援団は5人だけだったが声がよく出ていてとても力強かった
マウンドに駆け寄る川尻監督
マウンドに駆け寄る川尻監督
けっきょくこの回1点差まで詰め寄られる
けっきょくこの回1点差まで詰め寄られる
7回裏、群馬ラッキーセブンの攻撃前には野球アニメ『タッチ』の主題歌が流れた。高校野球の応援歌としては定番だが、ブラスバンドではなく岩崎良美の歌声が響き渡って球場は一気に甘酸っぱい雰囲気に。

あだち充が群馬出身なのでタッチということらしいのだが、「呼吸を止めて~」の爽やかな歌声にのってゴツいベネズエラ人が登場してくる違和感に笑った。
伊勢崎の星・あだち充
伊勢崎の星・あだち充
さて、試合も終盤。主砲・井野口選手の一発に期待
さて、試合も終盤。主砲・井野口選手の一発に期待
9回表、群馬1点リードでマウンドには抑えの山崎投手が登る
9回表、群馬1点リードでマウンドには抑えの山崎投手が登る
しかし、2連続四球で一打同点のピンチに
しかし、2連続四球で一打同点のピンチに
心配そうなスタンド
心配そうなスタンド
「いっつも最後で負けるんだよな~」

スタンドからは手厳しい野次も飛ぶ。振り返ったら70歳くらいのおばあちゃんだった。鳴り物のない球場だから、おばあちゃんの声もよく通る。

「○×△☆!」「×☆□○!」と、テキストにするのもはばかられるほどけっこう口は悪いが、孫ほど年の離れた若者をこれほど熱心に応援できるというのは素晴らしいことだ。

がんばれ山崎。孫の力を見せてやれ。
その後、なんとか2アウトまでこぎつけ
その後、なんとか2アウトまでこぎつけ
ショートゴロでゲームセット
ショートゴロでゲームセット
3対2で群馬の勝利
3対2で群馬の勝利
大いに沸くスタンド
大いに沸くスタンド
遠くから来てくれた信濃に敬意を表し、エールを送る群馬ファン
遠くから来てくれた信濃に敬意を表し、エールを送る群馬ファン
エールを返す信濃ファン。美しい交流
エールを返す信濃ファン。美しい交流
試合後にはご当地アイドルによるヒーローインタビューも
試合後にはご当地アイドルによるヒーローインタビューも
ヒーローは勝利投手のソト。通訳はヨンデル・ラミレス選手(アレックス・ラミレスの息子)
ヒーローは勝利投手のソト。通訳はヨンデル・ラミレス選手(アレックス・ラミレスの息子)
好ゲームの余韻にひたりつつ球場を出ると、試合を終えたばかりの選手たちが外でファンをお見送りしているではないか。
まさに、会いに行けるプロ野球
まさに、会いに行けるプロ野球
サイン攻めにあう川尻監督
サイン攻めにあう川尻監督
初めてもらったプロ野球選手のサイン。家宝にします
初めてもらったプロ野球選手のサイン。家宝にします
どの選手もファンひとりひとりに手厚く対応。これも独立リーグならではの魅力だろう。握手した川尻監督の手はでっかく、あったかかった。
野球少年に囲まれるカッパ。意外に人気者だった
野球少年に囲まれるカッパ。意外に人気者だった

初めて生で見るBCリーグ。NPBを目指す金の卵たちのひたむきなプレーは美しかった。独立リーグといえ、150km/hの球を投げたり、50mを5秒台で走る超人たちがウヨウヨいる世界なのだ。

正直、観戦前はちょっとだけ舐めていたところもあったが、単純にプロスポーツとして面白く、ファンサービスも含め素晴らしいエンターテイメントだった。
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