外房からローカル線で大多喜へ
千葉県夷隅郡大多喜町。房総半島南東部に位置する山深い集落に、それはあるという。
町を横断するローカル線・いすみ鉄道に乗り、当地を目指す。
昭和63年開業のいすみ線。房総半島を南部を横断する貴重な足である
いすみ線は開業以来赤字続きで、過去幾度も廃線になりかけているそうだ。しかし、意外にも(といったら失礼だが)この日の車内は観光客とおぼしきファミリーや中高年でほぼ満席だった。
調べてみると、2007年頃に本気で廃線まったなしのまずい状況に追い込まれてから取り組みはじめた乗客獲得作戦が実を結び、少しずつ活気を取り戻しているとのこと。
たしかに観光客を呼び込む創意工夫は随所に感じられた。
たとえば、国鉄時代の中吊り広告で昭和レトロを演出
車窓をぼーっと眺めていると、池のほとりに「ムーミン谷」。森林に恵まれた沿線の風景を活かし、一帯をムーミンの郷としてアピールしているという。
沿線の見どころはムーミンと渡辺リーダーの実家
この「ムーミン谷」の横を通過する際は車掌さんがアナウンスで教えてくれ、徐行運転もしてくれるのでゆっくり観察できる。
ちなみに、沿線にはムーミン谷のほかに、リーダーことタレントの渡辺正行さんの実家もある。ここでもアナウンスが入り、「実家は焼き鳥屋で、現在はお兄さんが代を継いでいる」という思いのほか詳しい情報を伝えていた。
地元のスターであるリーダーの実家は、ムーミンと並ぶ名所なのだ。
対向の電車の中では結婚式が行われていた。駅員と地元民も祝福
そうこうしているうちに、電車は目的地の最寄り駅に到着した。
東京都心から約3時間、東総元駅に到着。ちなみにあれだけ乗客がいたのに、ここで降りたのは僕だけだった
駅で出迎えてくれた大吉。いい旅になりそうだ
さて、例の場所は東総元駅から歩いて5分ほどのところにあ。ただ、ここでは詳しい場所は控えさせていただく。
観光スポットとかではないため、地元の人への配慮もあって大っぴらに紹介しづらいのだ。申し訳ない。
でも、駅舎に置いてある思い出ノートにその場所までの分かりやすい案内図が書かれているので、行きたい場合はそちらを頼りにしてください
それにしても、のどかである
田植えの季節。実る頃にまた来たい
新緑の農道を5分ほど歩く
車では行けない道の先にそれはある
一般車両通行止めの細い道を進むと、ほどなく雄大な夷隅川の流れが行く手を阻む。
行き止まりか
しかし、よくよく目を凝らすと、水面の一部にうっすらと道のようなものが見える。
な、なんと、川の中に道がある!
川の中に向こう岸まで続く一本の道があるではないか。
そう、ここが目的地の「夷隅川の洗い越し」である。洗い越しとは川に平面交差した道のことで、予算の都合などにより橋を架けることができない場合の横断路として使われる。
この日はまだ道の輪郭がうっすら視認できるが、水量が多いときなどは完全に流れの中に道がのみ込まれてしまうようだ。そんな日は地元の人が歩いていたとしても、そこに道があるなんて思わないだろう。それこそ川の上を歩く仙人のように見えるかもしれない。
靴のままだとすべって危ないので
裸足で渡ります
一歩一歩、踏みしめながら歩く
進むにつれ流れが速くなる。こけたらたぶん死ぬ
きちんと舗装されていて歩きやすい道だが、思ったより流れが早く、気を抜くと足をとられてしまいそうだ。
転倒したらそのまま濁流に飲み込まれて一巻の終わりだろう。周囲には人っこひとりいないので、流されてもたぶん助けは来ないと思う。
もし渡る場合は、くれぐれも気を付けていただきたい。
素晴らしいロケーションに気を取られ…
足元がお留守にならないようご注意ください
THE・激流
ゆっくりゆっくり歩いて
ようやくゴール
対岸には鬱蒼とした森が広がっていた
仙人みたいに優雅にはとても渡れなかったが、なかなかスリルのあるアトラクションで楽しかった。
しかし、何度も言うがぼんやり渡ると本当に死んじゃうのでくれぐれも注意されたし。
全裸で渡ったら仙人っぽいかな。どうせ誰もいないし
なお、水量が多いときは渡るのをやめましょう。のんびり眺めているだけでも癒やされますよ
まだ5月だというのに暑い日が続く今日この頃、足元をひんやり濡らす清流にすっかり癒やされた。
しかし、渡るとなるとおそらく今日のコンディションが限界だろう。これからは特に梅雨時を迎え水量が増えるので危険も高まるだろう。しつこいようですが、現地を訪れる場合はくれぐれも無茶をしないようお願いします。