特集 2015年4月24日

400種類の中でご飯に一番合う塩を探す

ご飯に合う塩はどれだ?
ご飯に合う塩はどれだ?
昔からファミレスで出されるライスには塩をかけて食べる。お茶碗のご飯にはかけない。お皿に盛られたご飯を見ると、塩をかけないと気が済まないのだ。そして、ご飯に塩をかけて食べると美味しい。塩っ気とご飯の甘みが相まって食が進む。ご飯と塩、素朴な組み合わせだけど、掘り下げたら奥が深そうだ。約400種類の塩を取り揃える塩の専門店で、ご飯に一番合う塩を探してみることにした。

ご飯に一番合う塩はどれだ?
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。


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答えはすぐに出た

東京都港区の麻布十番に塩の専門店がある。約400種類の塩を取り扱う「塩屋(まーすーや)・麻布十番店」だ。塩にそれだけの種類があることにまず驚くが、400種類もある塩の中から、ご飯に一番合う塩を見つけることなんて出来るのだろうか?

ご飯に合う塩を探すため、小さいおにぎりを用意しておいた。実際にご飯と合わせてみて、一番相性の良い塩を見つけるつもりだ。
塩の専門店。塩屋(まーすやー)さんで検証
塩の専門店。塩屋(まーすやー)さんで検証
テイスティング用に小さいおにぎりを用意した
テイスティング用に小さいおにぎりを用意した
しかし!

塩屋さんの店内に入ってすぐ、「ご飯に一番合う塩」の答えを見つけてしまった。
様々な塩が並ぶ中に
様々な塩が並ぶ中に
おにぎりの塩
おにぎりの塩
「おにぎりにおすすめ」と謳われた「おにぎりの塩」。これがご飯に一番合う塩に決まっている。

ソルトソムリエで店長の木内さんからお話を伺った。
店長の木内伸さん
店長の木内伸さん
――これがご飯に一番合う塩ですか?

木内さん「我々ソルトソムリエが吟味して3種類の塩をブレンドして作りました。ご飯との相性が良いとご好評をいただいています」

塩の専門家によって答えは既に出ていたのだ。

用意した10個のおにぎりをどうするか考えながら、木内さんから塩についてお話を伺うことにした。

お塩についてのあれこれ

塩は大きく分けて、海水塩、岩塩、湖塩の3種類に分かれるという。日本の塩は主に海水塩で、その海水塩も海水を天日に干して作る天日塩と海水を煮詰めて作るせんごう塩に分けられる。

木内さん「日本の気候条件だと、天日塩は中々難しいので煮詰めて作るせんごう塩がほとんどです。また、日本には岩塩層がないので、国内にある岩塩は全て海外産です。世界的にみると、岩塩の割合が7割を占めますね」
ヒマラヤ岩塩 めぐみ(パウダー)
ヒマラヤ岩塩 めぐみ(パウダー)
――湖塩というのは?

木内さん「有名なところでは死海湖の塩だったり、最近では絶景で人気のウユニ湖の塩があります。ただ、全体量の約1割弱ですから、シェアは少ないですね」
死海産湖塩
死海産湖塩
2005年にそれまで専売制だった塩が完全自由化されたことで、様々な種類を食卓で楽しめるようになったのだとか。そういえば、ここ10年で色々な塩を目にするようになったような気がする。

木内さん「ご飯に合うお塩もそうですが、私たちは用途に応じて色々な塩をご用意しています」

おにぎりの塩の他に、「ゆでたまごの塩」「天ぷらの塩」「刺身の塩(白身)」「刺身の塩(赤身)」など、ソルトソムリエが厳選したブレンド塩が並んでいた。
ゆでたまごの塩
ゆでたまごの塩
天ぷらの塩、刺身の塩(白身)
天ぷらの塩、刺身の塩(白身)
刺身の塩(赤身)、そしておにぎりの塩
刺身の塩(赤身)、そしておにぎりの塩
木内さん「これだけ種類があると、どの塩を買ったらいいか迷ってしまうお客様が多いので、このような用途別の塩は評判がいいです」

確かに。ゆでたまご好きとしては、ゆでたまごの塩にはかなり惹かれている。

他にもパスタに合う塩やスパイシーな塩などもあった。
パスタに合う塩
パスタに合う塩
麻婆、トムヤムをイメージしたスパイシーな塩。オムレツに合う塩。
麻婆、トムヤムをイメージしたスパイシーな塩。オムレツに合う塩。
そして、ご飯に合う塩のバリエーションとして、「ごはんの塩」「くろごま塩」「梅かつお塩」などのブレンド塩もある。
ごはんの塩
ごはんの塩
くろごま塩
くろごま塩
梅かつお塩
梅かつお塩
どれもご飯との相性は抜群だろう。字面だけでご飯3膳はいけそうだ。いや、最近胃もたれがひどいからそんなには食べられないけれども。

珍しいお塩たち

400種類ある中で一番高価な塩はどれだろう? 木内さんに聞くと、それは「牡蠣の塩」というお塩だった。
一番高価な「牡蠣の塩」
一番高価な「牡蠣の塩」
15グラムで800円(税抜)。かなり高い。

牡蠣の中にある海水から塩を抽出するらしく、1トンの牡蠣から4キロしか取れないという。それは相当貴重だけど、牡蠣の中にある海水から塩を抽出してみようと考えた人、あなたは凄い。

牡蠣の塩以外にも、変わったところでは、減塩醤油を作る工程から出来る「醤油からできた塩」や、竹炭を作る時に一緒に塩を入れて燻した「竹炭の塩」など、今まで見たことのない塩が店内に並んでいた。
醤油からできた塩
醤油からできた塩
竹炭の塩
竹炭の塩
ムーンソルト、というプロレス技のような塩もあった。
ムーンソルト
ムーンソルト
これはやはり、初代タイガーマスクの技から来てるのでしょうか?

木内さんに聞いてみたが、「いや、それはちょっと分からないです」と答えが返ってきた。

今、原稿を書いていて気付いたが、初代タイガーマスクの技は「ムーンサルトプレス」だった。ソルトじゃない。


ここで、ちょっとブレイク。

木内さんから伺った塩トリビアをご紹介します。
塩トリビア その1
「塩は一番うまくてまずいもの」


徳川家康の側室だった阿茶局は、家康公に「この世で一番うまいものは塩」と答えた。さらに「一番まずいのも塩です。どんなにうまいものでも、塩味が過ぎると食べられなくなります」と続けたという。家康公はその言葉に感銘し、その後、人心掌握の教訓にした。

本題、ご飯に一番合う(と僕が思う)塩を探す

色々と塩に関するお話を木内さんから伺いながら、僕はずっとおにぎりのことを気にしている。

朝、仕事に出かけようとしていた妻をつかまえて作ってもらったおにぎりだ。「早く言ってよ」「いつもそうなんだから」と僕の無計画性を非難されながら握ってもらったおにぎりを無駄にする訳にはいかない。

塩屋さんが推奨する「おにぎりの塩」。ソルトソムリエが厳選したのだから、それがご飯との相性がバッチリなのは確かだ。しかし、「おにぎりの塩」は3種類の塩を合わせたブレンド塩である。ブレンドせずに単独でご飯に合う塩を僕なりに探してみよう。

木内さんにお願いして、10種類の塩を選んでいただいた。その中から、ご飯に一番合う、と僕が思う塩を決めたいと思う。
木内さん厳選の10種類の塩から選ぶ
木内さん厳選の10種類の塩から選ぶ
塩屋さんにはイートインスペースがあるので、そこでおにぎりに塩をかけて検証していく。

※普段は雪塩ソフトを食べるスペースです。今回は特別に、おにぎりの持込をOKしてもらっています。
おしゃれなイートインスペースで検証
おしゃれなイートインスペースで検証
木内さんが選んでくれた塩は以下の10種類。
おにぎりの塩。ソルトソムリエ一押しのブレンド塩。やはりこれは試しておきたい。
おにぎりの塩。ソルトソムリエ一押しのブレンド塩。やはりこれは試しておきたい。
荒波。沖縄の伊江島で作られた天日干しの塩。「昔ながらの塩味のしっかりした塩むすびの味を楽しめる」(木内さん)。
荒波。沖縄の伊江島で作られた天日干しの塩。「昔ながらの塩味のしっかりした塩むすびの味を楽しめる」(木内さん)。
入浜式の塩。香川県で300年の伝統を誇る入浜式の塩。やらかい味が特徴。
入浜式の塩。香川県で300年の伝統を誇る入浜式の塩。やらかい味が特徴。
黒潮源流塩。日本最西端の与那国島で作られた手作りの塩。
黒潮源流塩。日本最西端の与那国島で作られた手作りの塩。
球美の塩。沖縄の久米島で作られた海洋深層水100%の塩。「子どもにも人気の優しい味わい」(木内さん)。
球美の塩。沖縄の久米島で作られた海洋深層水100%の塩。「子どもにも人気の優しい味わい」(木内さん)。
雪塩。沖縄県宮古島の塩。「パウダー状でかなりやさしい味わいです」(木内さん)。
雪塩。沖縄県宮古島の塩。「パウダー状でかなりやさしい味わいです」(木内さん)。
瀬戸の粗藻塩。海藻エキスを海水塩に混ぜ合わせる製法でうまみが強い。
瀬戸の粗藻塩。海藻エキスを海水塩に混ぜ合わせる製法でうまみが強い。
醤油からできた塩。「焼きおにぎりのような風味を楽しめます」(木内さん)。
醤油からできた塩。「焼きおにぎりのような風味を楽しめます」(木内さん)。
ヒマラヤ岩塩 めぐみ。「岩塩としてはまろやかな味わい」(木内さん)。
ヒマラヤ岩塩 めぐみ。「岩塩としてはまろやかな味わい」(木内さん)。
ウユニ塩湖の塩。「塩味とコクが強くステーキに合わせると美味しいと思います」(木内さん)。
ウユニ塩湖の塩。「塩味とコクが強くステーキに合わせると美味しいと思います」(木内さん)。
上から順番に小さいおにぎりに付けて食べていった。

果たして、ご飯に一番合う塩はどれなのか?
小さいおにぎりでテイスティング
小さいおにぎりでテイスティング
正直に言おう。

4種類目あたりから、味の違いが分からなくなってしまいました。

塩屋さんオススメの「おにぎりの塩」は確かに美味しかったし、4番目に食べた「黒潮源流塩」はかなりご飯に合ったと思う。

それ以降のお塩に関して、それぞれの味の違いは分かる。しかし、それがご飯に合うのかどうか、まったく判断ができないのだ。

木内さんにその旨を伝えると、

「それはそうでしょう。僕たちも塩の味をみる時は5種類が限界ですから」

と笑っていた。

無謀だったのだ。

それでも、僕なりに出した答えを一応お伝えすると、

ご飯に一番合う塩は、

与那国島の「黒潮源流塩」!

4番目に食べた、お塩である。
これがご飯に一番合う塩だ!
これがご飯に一番合う塩だ!
これがご飯に一番合う塩だ!
塩トリビア その2
「古代ローマの給与は塩」


古代ローマ時代の兵士の給与は塩。ラテン語で塩はsal。サラリーマンの語源にもなっている。

アントニオ猪木の「闘魂レシピ」という料理本に、「塩にぎり」というメニューが載っていた。レシピ本なのに塩にぎりって! と読んだ当時は笑っていたが、今回の取材で、塩にぎり侮るべからず、と身にしみた。ご飯に合う塩をいい塩加減でおいしく握る。いつか、究極の塩にぎりを食べてみたい。
塩屋さんには美容用の塩もある
塩屋さんには美容用の塩もある
塩ソフトもおいしい!
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