特集 2015年4月10日

香港のモールの吹き抜けがすごい

こういう吹き抜けに夢中です(大きな画像はこちら)
こういう吹き抜けに夢中です(大きな画像はこちら
昨年末、団地とデモを見に香港へ行った。香港ちょうたのしくて、先日また行ってしまった。

香港に住みたい。クラウド・ファウンディングとかいうあれで、ぼくが香港に住むための資金を調達したい。見返りはぼくが楽しく暮らす様子をお伝えする、じゃだめか。だめだよな。

あいかわらず団地も見たが、今回は香港のモールをご覧頂きたい。すごいぜ、香港のモール。
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

前の記事:ボウリング場っておもしろい ~さよなら田町ハイレーン~

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まずはモールの写真をどーんと

モールといえば吹き抜け。撮りまくりました。
モールといえば吹き抜け。撮りまくりました。
ご覧の通り、モールの吹き抜けを堪能してきたのだ。モールといえば吹き抜けだ。

今回、妻と一緒に行ったのだが、吹き抜けがありそうなモールを見つけるたびに「すみません、ちょっと吹き抜けてきていいですか?」と許可をいただいて写真を撮った。「吹き抜ける」という動詞に新たな意味が誕生した瞬間だ。

かっこいいよね、吹き抜け。
今回見た中で最もかっこよかった吹き抜けはこれだ。「希慎広場 (Hysan place )」というモールのもの。(大きな画像はこちら)
今回見た中で最もかっこよかった吹き抜けはこれだ。「希慎広場 (Hysan place )」というモールのもの。(大きな画像はこちら
なんで吹き抜けに注目したかというと、ここにモールの本質があると思うからだ。いやほんとに。まあ聞いてよ。

ぼくは建造物に興味があってこれまでたくさん写真を撮ってきた。すべて外観だ。しかし、モールにかぎっては「外観」がないと思うのだ。

「何いってんだこいつ」と思うかもしれませんが、まあ聞いてよ。
じつはこれも同じ希慎広場の吹き抜け。香港のモールはさすが超高層で、建物内の上下に吹き抜けが2つあったりするのだ。吹き抜け天国。(大きな画像はこちら)
じつはこれも同じ希慎広場の吹き抜け。香港のモールはさすが超高層で、建物内の上下に吹き抜けが2つあったりするのだ。吹き抜け天国。(大きな画像はこちら
日本のモールを思い浮かべてみると、あれは建築というより看板だ。「MUJI」とか「GAP」とか「ZARA」などの文字に覆われていて、いわゆる建築作品のように造形的にモニュメンタルな感じはまったくしない。

アプローチの仕方も、道路から駐車場に入りクルマを降りたらすぐもう内部で、建築をじっくり見るというシーンは想定されていない。
「Langham Place」というモールの吹き抜け。ここはほんとすごかった。吹き抜けすぎ。怖い。4階~8階まで吹き抜けてて、そこに83メートルのエスカレーターがドン!
「Langham Place」というモールの吹き抜け。ここはほんとすごかった。吹き抜けすぎ。怖い。4階~8階まで吹き抜けてて、そこに83メートルのエスカレーターがドン! "The Xpresscalators" というそうだ。(大きな画像はこちら
また、構造的にもいわばあれは「倉庫」と呼ぶにふさわしい。

つまり、モールは「内装だけでできている」のだ。外部がない建築。これはけっこうすごいことだと思う。

そんな中、建築デザイナーが唯一腕を振るえるのが吹き抜けではないか。そう思ったのだ。
そしてここ「Langham Place」も上にもうひとつ別の吹き抜けが。またもや8階から12階までぶち抜きのエスカレーターが。(大きな画像はこちら)
そしてここ「Langham Place」も上にもうひとつ別の吹き抜けが。またもや8階から12階までぶち抜きのエスカレーターが。(大きな画像はこちら
この「外観がない」は香港においても一緒だ。ただ、日本とはその理由が違う。

ご存じのように高層のビルがみっしりと建ち並んでいて、この年では建築の外観を眺める「引き」がないのだ。道路から見えるのは連なるエントランスの連続で、建築の全体像を見ることができない。

上の「希慎広場 」と「Langham Place」はどちらもモール内に上下に2つ巨大な吹き抜けがある。これは超高層の都市ならではだ。おもしろい。おもしろいよね。
とはいえモールだけじゃなくてビルも愛でてきましたよ。
とはいえモールだけじゃなくてビルも愛でてきましたよ。
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やっぱりビルがすごい

全体をとらえることが難しいとはいえ、でもやっぱり香港の建物の外観はすばらしすぎるので、それらもじっくり見てきた。せっかくなのでご覧頂きたい。ご覧くださいお願いします。
すごいよなあ。
すごいよなあ。
色の塗り分けも謎だし。
色の塗り分けも謎だし。
これのプラモデルほしい。
これのプラモデルほしい。
これiPhone の壁紙にしたらかっこよさそうだ。
これiPhone の壁紙にしたらかっこよさそうだ。
色は本当に謎。
色は本当に謎。
屋上家屋が見える!
屋上家屋が見える!
団地もこういう具合でぼくはもうめろめろ。
団地もこういう具合でぼくはもうめろめろ。
比較的新しいマンション群。武蔵小杉あたりを数・高さともに数十倍にして煮詰めた感じ。南武線はどこだ。
比較的新しいマンション群。武蔵小杉あたりを数・高さともに数十倍にして煮詰めた感じ。南武線はどこだ。

角のビルが丸い

さて、これら古い「唐樓」と呼ばれるアパートメントのうち、交差点に建っているものは角が丸いのに気がつく。
こういう風に丸い。かわいい。
こういう風に丸い。かわいい。
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香港は丸ビルだらけ

たまにはこういう低層もある。そしてやっぱり丸い。かわいい。
たまにはこういう低層もある。そしてやっぱり丸い。かわいい。
高さのマチマチ感すごい。
高さのマチマチ感すごい。
カーブ部分に丁寧にガラスが入っているのがまたいい。
カーブ部分に丁寧にガラスが入っているのがまたいい。
と思えば一層だけ窓じゃなかったり。
と思えば一層だけ窓じゃなかったり。
そう思ってよく見ると階によって窓の量が異なる。謎だ。そしてやっぱりかわいい。
そう思ってよく見ると階によって窓の量が異なる。謎だ。そしてやっぱりかわいい。
どんどん窓が変則的に。なんなんだ。
どんどん窓が変則的に。なんなんだ。
というように、角のビルはおおかた丸い。最初は意匠かと思っていたが、ここまで丸ビルばかりなところを見ると、法律があるのではないか。どうだろう。詳しい方いらっしゃったら教えてください。
丸くない! と思ったらベランダ場に出ている一部がちゃんと丸い。律儀。
丸くない! と思ったらベランダ場に出ている一部がちゃんと丸い。律儀。
これも。樹に隠れてよく見えないが、交差点に向けて出っ張っている部分がちゃんと丸い。
これも。樹に隠れてよく見えないが、交差点に向けて出っ張っている部分がちゃんと丸い。
そういえば、香港のビルを撮る写真家といえば Michael Wolf さんだがもしかして、と思ってみたら、彼もやっぱりこの丸ビル撮ってた。"corner houses" と名付けておられる。さすがだ。みなさんも香港に行ったら「丸ビル」を愛でてください。

すっかり吹き抜けの話題じゃなくなっちゃったぞ。元に戻そう。
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モールはストリートだ

さて、ぼくがモールに興味を持ったきっかけは、実は東浩紀さんさんとの対談でである。東さんというのはあの東さんだ。日本を代表する思想家だ。思想家となんでお話することになったのかというと…、なんでだっけ。まあ、とにかくモールをテーマに楽しくおしゃべりしたのだ。

実際お話ししてみるまで、正直、東さんちょっと怖い人だと思ってたんだけど、これがほんと楽しくて。すごく楽しいので全人類が彼と対談するといいと思う。
これは中心地から離れた駅「柴湾(Chai Wan)」にある「新翠商場」というモールの吹き抜け。なんでこんな駅(ふつう観光客は絶対行かない街)で降りたかというと、ここには香港を代表する団地があるから。郊外のモールって感じでぐっとくる。(大きな画像はこちら)
これは中心地から離れた駅「柴湾(Chai Wan)」にある「新翠商場」というモールの吹き抜け。なんでこんな駅(ふつう観光客は絶対行かない街)で降りたかというと、ここには香港を代表する団地があるから。郊外のモールって感じでぐっとくる。(大きな画像はこちら
で、その対談をするうちに「百貨店とモールって何が違うんだろう?」と思うようになって、考えた末にぼくが出した結論が「いい吹き抜けがあるのがモール」というものだった。なんだその結論。でもまあ聞いてよ。

ちなみにその対談は「ショッピングモールから考える」という本(電子書籍)にまとめられています。勢い余って「モールの起源はイスラム庭園だ!」とか言ってますぼく。
旺角にある「Olympian City」というモールの吹き抜け。今までご覧頂いたものに比べるとすこし古いモール。その時代感を吹き抜けに見て取れる。ちょっと垢抜けないよね。吹き抜けは日々進化しているのだ。(大きな画像はこちら)
旺角にある「Olympian City」というモールの吹き抜け。今までご覧頂いたものに比べるとすこし古いモール。その時代感を吹き抜けに見て取れる。ちょっと垢抜けないよね。吹き抜けは日々進化しているのだ。(大きな画像はこちら
百貨店の移動においては、エレベーターが結構重要だ。それに対して、モールではエスカレーターが主役。

もちろんこうなっている理由は百貨店が高層でモールは低層(少なくとも日本では)だから、というのもあるが、それ以上にぼくはモールのコンセプトが「ストリート」だからだと思っている。

エスカレーターは通路の延長なのだ。
こちらはかなりラグジュアリーな吹き抜け。金鐘(Admiralty)にある「Pacific Place」というモールのもの。お金持ちしかこなそうなブランドのラインナップだった。(大きな画像はこちら)
こちらはかなりラグジュアリーな吹き抜け。金鐘(Admiralty)にある「Pacific Place」というモールのもの。お金持ちしかこなそうなブランドのラインナップだった。(大きな画像はこちら
百貨店がフロアごとに「キャリア婦人服」「紳士服」などというように内容を仕切っているのに対し、モールはシーケンスだ。ストリートだ。つまり街だ。言われてみればモールの多くが「タウン」「シティ」を名乗っている。

どんどん歩いて行ってなんとなく内容が変わっていく。モールの2階と3階で明確にジャンルが変わっていると言うことはあまりない。どちらのフロアにも靴屋があったりする。
こちらも同じ「Pacific Place」。ちなみに前回見に行ったデモはここのすぐそばで行われていて、デモ帰りに「ちょっと吹き抜けていいですか」となった。デモの直後にこのラグジュアリー。すごく不思議な気分になった。
こちらも同じ「Pacific Place」。ちなみに前回見に行ったデモはここのすぐそばで行われていて、デモ帰りに「ちょっと吹き抜けていいですか」となった。デモの直後にこのラグジュアリー。すごく不思議な気分になった。
モールには事実上フロアの違いは存在しない。「ガレリア」と呼ばれる通路(ストリート)の真ん中に穴が開いているのは、歩いている最中に下や上のフロアが見えるためで、「あ、あの店行こう」ってなったらすぐにエスカレーターで移動できるようにしてある。

その極めつけが吹き抜けというわけだ。だからモールでは吹き抜けが重要なのだ。
このダイナミックなエスカレーターの走り具合はまさにモールの真骨頂。香港で最も有名なモール「Times Square」の吹き抜け。(大きな画像はこちら)
このダイナミックなエスカレーターの走り具合はまさにモールの真骨頂。香港で最も有名なモール「Times Square」の吹き抜け。(大きな画像はこちら
もうひとつ重要なのは「モールには行き止まりがない」ということだ。新しいよくできたモールはぐるぐるとまわるようになっている。川崎のラゾーナとか、西宮ガーデンズとか。南船橋のららぽーとは、以前は百貨店で行き止まる形式だったが、増築してぐるぐるまわる導線になった。モールへの進化である。

そしてその行き止まらずにぐるりとターンする箇所に吹き抜けがある。かくのごとく、モールをモールたらしめているのは吹き抜けなのだ。
「Miramar Shopping Centre」の吹き抜け。空間と柱の関係が複雑で、トリッキーな写真になってしまった。(大きな写真はこちら)
「Miramar Shopping Centre」の吹き抜け。空間と柱の関係が複雑で、トリッキーな写真になってしまった。(大きな写真はこちら

などと持論を展開

ニュースで「~などと持論を展開」って書かれているときのその持論ってとんちんかんな内容だよね。記事にした記者が暗に「ないわー」っていうのを伝えるために使われていると思う「などと持論を展開」。

いろいろ言いましたが、今回は吹き抜けの写真がすてきに撮れたので見ていただきたかったということです。また撮ろう。

本場アメリカ、そしてドバイとかの吹き抜けを見に行きたいです

いろんな国で「ちょっと吹き抜けていいですか」って言いたい。やるか、クラウド・ファウンディングとやら。
香港名物といえば竹で組んだ足場ですが、路上に積んであるのを見かけた。すごい。
香港名物といえば竹で組んだ足場ですが、路上に積んであるのを見かけた。すごい。
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