特集 2015年3月5日

先輩が自分自身を讃える祭りを開催したら、Yahoo!ニュースに取り上げられた話

キミは日下祭を知っているか。
キミは日下祭を知っているか。
日下さんが自らを王と讃えて芸を奉納するお祭り。それが日下祭である。
父は数学教師。母は国語教師。姉2人小学校教師という職員室みたいな環境で育つ。普段はTVCMを作ったり、金縛りにあったりしている。(動画インタビュー)

前の記事:会社を休んで粘土でスマホケースを作ってたら最終的にカメラが壊れた話


このハムナプトラのイムホテップみたいな人が日下さんです。
このハムナプトラのイムホテップみたいな人が日下さんです。
日下さんはこの数時間のお祭りの中で、長髪→マゲ→坊主と何度も変身を繰り返した。フリーザもびっくりである。

このお祭り、きちんと説明しても結局意味がわからないのだが、一応解説すると、これからの広告文化を担う人に送られる、由緒ただしい「佐治敬三賞」の受賞記念パーティーという名目だった。

日下さんは、広告会社の社員であり、「商店街ポスター展」の仕掛け人でもある。(ポスター展についてはこちら
一時期ネットでも話題になったのでご存知の方もいるかもしれない。
一時期ネットでも話題になったのでご存知の方もいるかもしれない。
ポスター展の業績が認められ、佐治敬三賞を受賞したというわけである。

そんなわけで会場には、広告会社の垣根を越えて、商店街のおっちゃん、フリーターやアーティストなどなど、いろんな人があふれるカオスな空間となった。
何だこれは。
何だこれは。
このお祭り、派手なことがとにかく好きな広告業界においても異常な盛り上がりを見せ、最終的にYahoo!ニュースでとりあげられるまでの騒ぎになった。

この意味不明な状況をなんとかお伝えしたい。

まず、場所がスゴい

会場はあの味園ユニバース。
会場はあの味園ユニバース。
そう、今をときめく二階堂ふみが主演の映画、「味園ユニバース」の舞台でもある。
今では考えられないポロリのあるCMを放映していたことでも有名な、元キャバレーだ。
今ではイベント場所として借りることができる。
今ではイベント場所として借りることができる。
アーティストのファンも多いらしい。
EGO-WRAPPIN'や細野晴臣がライブ場所として使用したこともあるのだとか。
結婚式に使っても素敵だろう。

会場が強烈な場所なのはいいのだが、ひとつ困ったことがある。
僕は装飾係だったのだ。
「派手」という言葉を三日三晩煮詰めたようなこの場所に、果たして装飾はいるのだろうか。頭がクラクラしてくる。

いかにラクにつくるかへの挑戦

工作を続けて、はや10年。その中で培われたノウハウを駆使しよう。
「安くて、派手で、でかいものをラクに作る」を念頭に作業を開始。

カラーガムテープを活用する。
この道具のスゴイところは、塗装と固定が同時にできてしまうところだ。
ペンキと違ってハケがいらないし、スプレーみたいに空気も汚さない。乾きを待つ必要もない。

今回はガムテープでいろんなものを作った。
まずは、神輿。
まずは、神輿。
色付けは全てガムテープで行った。
近くで見ると汚かったりするのだが、遠目に見た時はパキっと綺麗な色に見える。
いいところは他にもある。
そのまま担ぐと木のトゲが刺さって危ないが、ガムテープをまくと怪我をする心配がなくなるのだ。
ダンボールもいい。
ダンボールもいい。
ダンボールは、軽くて丈夫で加工がとにかく簡単だ。
ホームセンターにあるダンボールは大きさが規格化されているので、レゴブロック感覚で巨大なものが作れる。
250cmの巨大文字を2文字作った。
250cmの巨大文字を2文字作った。
軽いのでひとりで持ち上げることもできる(これがのちのち効いてくるのだ)。

表面にはアルミホイルを貼る。これは初めて試みだった。
ダンボールにぐるりと回してぐしゃぐしゃにすれば、固定できるかなと思っていたのだが、そんなに甘くなかった。

結果、両面テープで貼ることになっただが、プチ金箔はりのような地味な作業になってしまった。会社の人たちが手伝ってくれなかったら泣いていたと思う。

もちろん仕事ではないので、生活の隙間隙間で祭りの準備をする生活をしていたら、インフルエンザに罹った。
賽銭箱ハラスメント
賽銭箱ハラスメント
インフルエンザで一週間ほど寝込んでいたのだが、久しぶりに出社してみると、「賽銭箱がほしい」という要望が日下さんからあった。賽銭箱ハラスメントである。

できたのがこちら。
照明を仕込んだので中が光る。
照明を仕込んだので中が光る。
スルッと書いているが、土日が潰れた。
一人ではどうしようもないので、同僚の茗荷くんに手伝いをお願いした。
賽銭箱の中には、ふたりの土日が封じ込められているのだ。
全然意味ないけど、キャスターも4つ取り付けた。
日下さんのでかい顔を5枚出力する。
日下さんのでかい顔を5枚出力する。
ただの顔ではつまらないので、汚れを払う気体を噴出する装置(消臭力)を内側に仕込んだ。
ちょっとUSJのアトラクションみたい。
ちょっとUSJのアトラクションみたい。
ここに至るまでにも試行錯誤があった。

制汗剤は500円するわりに、粒子が細かく、噴射量が少ない。
消臭力は200円にもかかわらず、スゴイ量が噴射される。おすすめ。

たくさんの人に手伝ってもらって、最後の仕上げ

金色のガムテープ超かっこいい。
金色のガムテープ超かっこいい。
ひとりではどうにもならなくなったので、たくさんの人たちに手伝ってもらって、装飾はなんとか終わった。

僕は装飾だけをしていたのでわかっていないが、みんな何かしら「賽銭箱ほしいんやけど」みたいな日下王のわがままを聞いているに違いない。
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楽屋に入って驚いた

日下さんがマゲを結っている。
日下さんがマゲを結っている。
しかも、地毛。この人本気だ。
しかも、地毛。この人本気だ。
舞台裏は、花魁、サラリーマン、ロカビリー集団、美少女キャラのコスプレをしたおじさん、何と形容したらいいのかわからない人、ハワイアンダンサーで溢れかえっている。
カオス度が測れるスカウターを身につけていたら、粉々に割れていることだろう。
カオス度が測れるスカウターを身につけていたら、粉々に割れていることだろう。
出番を待つ出演者の熱気でむんむん。
出番を待つ出演者の熱気でむんむん。
「意味不明」の針が振り切れてあさっての方角を向いている状況だった。

本番ぎりぎりで、神輿はチューンナップを施した

消臭力の知見を神輿にもフィードバッグ。
消臭力の知見を神輿にもフィードバッグ。
一気に11本の消臭力が噴射されるバーを設置した。
一気に11本の消臭力が噴射されるバーを設置した。
20分だけ強烈に光るケミカルライトがあったので、25本神輿に装着。
20分だけ強烈に光るケミカルライトがあったので、25本神輿に装着。
大型クラッカーも10本取り付けた。これで日下さんが場内の人たちに砲撃を繰り出すことが可能に。これで準備は整った!

祭りがはじまる

ぞくぞくと人が集まってくる。スーツの人もいれば、カジュアルな格好の人もいるし、何と形容したらいいのか分からない人もいる。
不思議な熱気が会場に満ちはじめる。
不思議な熱気が会場に満ちはじめる。
日下さんが神輿にスタンバイした。
いよいよ、お祭りのはじまりだ。
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日下王、登場

北島三郎の「まつり」をスピーカーがズムズム鳴らし始めると、先陣を切って花魁衣装の女性達がしゃなりしゃなりと歩き出す。
「クッサイ!クッサイ!」
「クッサイ!クッサイ!」
掛け声とともに、神輿がそれに続く。耳元でクラッカーの破裂音がこだます。
凄い光量のはずのケミカルライトも、味園ユニバースでは大して目立たない。
凄い光量のはずのケミカルライトも、味園ユニバースでは大して目立たない。
重い。神輿をかついでいるので、会場内の様子はよくわからないが、若手が一丸となって舞台上の玉座へと日下さんを運ぶ。
この人、サラリーマンなんだぜ。
この人、サラリーマンなんだぜ。
芸に応じて、金塊型のチョコが振舞われるというシステムだった。
芸に応じて、金塊型のチョコが振舞われるというシステムだった。

芸の奉納がはじまる

トップバッターは、同じ会社の先輩。
トップバッターは、同じ会社の先輩。
「刺せっと言われて、思わず刺した~」と歌うたびに、おでこにグサっと爪楊枝を突き刺している。
「燃やせっと言われて~思わず燃やした~」今度は、刺した爪楊枝に火をつけ燃やしはじめた。
先輩はリハーサルでも、おでこに爪楊枝を突き刺していた。
大人のカッコよさを垣間見た瞬間だった。
コスプレをしたおじさま。
コスプレをしたおじさま。
往年のアニメの主題歌を歌っているのだが、とにかく声が小さい。
耳元で囁くような歌声が、スピーカーで拡大されて会場内にこだます。
手の振りつけもとにかく小さい。肩幅より外にでない。
(あとで知ったところによると、この方、最近中田ヤスタカのPVを手がけたそうです)
ロカビリー!
ロカビリー!
そのほか、ハワイアンダンス、K-POP、フラメンコなどなど、踊りも充実しているお祭りだった。
そのほか、ハワイアンダンス、K-POP、フラメンコなどなど、踊りも充実しているお祭りだった。
日下祭の前日に参加が決定したKくんは、告白という演目で、自らが童貞であることをカミングアウトしていた。
写真はお色直しして、ファラオになった日下さんです。
写真はお色直しして、ファラオになった日下さんです。
舞台から逃げるように走り去った彼には、一ヶ月を待たず、彼女ができたらしい。ご利益かもしれない。

新幹線の先頭車両を東京駅から押してどこまで飛ばせるか競いあう、超人オリンピックのテリーマンを演じている人もいた。
新幹線に乗ってきて、新幹線ネタを披露。
新幹線に乗ってきて、新幹線ネタを披露。
僕は入り口で受付をしていたのだが、会場内に入る前からこの人はテリーマンの格好をしていた。
東京から新幹線で大阪まで駆けつけたらしい。
どこでテリーマンに変身したのだろう。同じ会社の人だったので二度驚いた。
もしかしたら、新幹線を押してきたのかもしれない。

カオスなお祭りの中でも一際異彩を放っていたのが、谷内一光さんのパフォーマンス。
ゲームのSIRENにこんな敵キャラいた。
ゲームのSIRENにこんな敵キャラいた。
谷内さんのパフォーマンスは、全身で絵の具をかぶるというものである。
絵の具をかぶる前に、「えーと、この度は、まぁ絵の具をかぶるんですがね」と温泉宿の芸人みたいなトークを繰り広げている。
でもマイクがないから(絵の具がかかると壊れるから)何を言っているのかほとんど分からない。
谷内さんのパフォーマンスは、わりと長い。
以前パフォーマンスを拝見した時は、途中でホームセンターに買い出しに行く用事ができたのでその場を去ったのだが、帰ってきてもまだ絵の具をかぶっておられた。
普段は営業のお仕事をしているそうである。

その他にもいろんな芸が奉納された。
ひたすら放送禁止用語を連呼する人、
相撲、
ゴミ箱とパイプでディジュリドゥみたいな演奏をする人、
弊社をディスるラップを披露する人、
おしりで仮面ライダーアマゾンを再現する人、
舞踏、
前衛的なヒゲダンス、
あるあるネタ。
全然ベクトルの違う出し物が、現れては消える。
写真は商店街の会長さんにケツを向けて踊る舞踏家の地案さん。
写真は商店街の会長さんにケツを向けて踊る舞踏家の地案さん。
河村隆一のものまねと、コンセプチュアルなアートパフォーマンス、すべてが同じ空間にある。ジャンルも糞もない。

理性的なものがすべて溶けてしまって、めくるめく意味不明が構築されてゆく。
いったん広告です

ついにクライマックス

さいごは、だんじり。
さいごは、だんじり。
途中から参加者がどんどん壇上にあがりはじめ、祭りはクライマックスを迎える。

後で聞いたところによると、通りすがりの人も会場に何人か紛れ込んでいたそうだ。
金塊チョコがぴゅうぴゅうとステージに向かって飛び、顔パネルが壇上で振り回され、日下さんがバシバシと叩かれている。
宙を舞うイムホテップ。
宙を舞うイムホテップ。
250cmある巨大日下文字、日下さんに直撃。
250cmある巨大日下文字、日下さんに直撃。
実はこっそり壇上に持ち上げるようにけしかけたのは僕なのだ(だからダンボールで軽く作ったのだ)。

巨大文字はいろんな人の手をつたり、あれよあれよという間にバッコーンと日下さんに直撃した。
壇上の狂騒はなかなかおさまらず、日下さんが舞台から姿を消してもしばらく続いた。

祭りの後で

結局なんだったんだ、このお祭り。
結局なんだったんだ、このお祭り。
「大御所の10枚目のアルバムよりも、素人のデビューアルバムのほうが面白い」
日下さんが、たしか以前、こんなことを言っていた。

そんな初期衝動みたいなものが、みっちり、ぎっちり詰まっている不思議な夜だった。論理とか効率とかと無縁の夜でもあった。
賽銭箱は紹介してもらう機会を逃し、舞台の下でぼんやり光っているただの箱で終わった。
賽銭箱は紹介してもらう機会を逃し、舞台の下でぼんやり光っているただの箱で終わった。
なかを覗いてみると、完成したのが嬉しくて自分たちで放り込んだお金と、お菓子のゴミだけが鈍い光で照らされていた。
効率化をはかってひたすら装飾を作っていた自分が少し恥ずかしくなった。

今回の記事の写真は、すべて参加者の方々のものを使わせて頂いている。
意味不明なお祭りだからこそ、解釈は無限。
参加者それぞれの日下祭があったんじゃないかなと写真を見ながら思った。

左にいるのは、日下さんの奥さん。
左にいるのは、日下さんの奥さん。
いちばん恐ろしいなと思ったのは、日下さんが一切お酒を飲まずに、全くのシラフで参加していたこと。
撤収後、ケータイをなくして困っている日下さんの姿が、急に現実に引き戻されている感じがしておかしかった。
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