特集 2015年2月17日

むしろ、電子レンジで急に沸とうさせる

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最近、「電子レンジによる急な沸とうに注意!」という警告をよく見る。

中学校の理科で習う「突沸(とっぷつ)」という現象が起こって危ないらしいのだ。

今日はこの突沸事故を防ぐため、突沸に最適な条件を調べて、むしろ積極的に突沸させまくってみたいと思う。
1978年、東京都出身。漂泊の理科教員。名前の漢字は、正しい行いと書いて『正行』なのだが、「不正行為」という語にも名前が含まれてるのに気付いたので、次からそれで説明しようと思う。

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さて、ぼく自身が仕事で実験していて突沸したことは何度かあるが、うちの電子レンジで起こしたことは一度も無い。本当に起こるのだろうか
ちょっと電子レンジで水を熱してやってみよう。
いつも使ってる普通のマグカップ。
いつも使ってる普通のマグカップ。
電子レンジ500Wで4分くらい加熱して
電子レンジ500Wで4分くらい加熱して
スプーンで混ぜると、ふわーー!
スプーンで混ぜると、ふわーー!
効果音をつけるとすれば「ボコ、ハラムーー!」といった勢い!
効果音をつけるとすれば「ボコ、ハラムーー!」といった勢い!
かきまぜた瞬間、ぶわっしゃー!と一気にくる!
本当に突沸するぞ、電子レンジ!

では起こることが確認できたところで、ちょっと突沸のしくみを考えてみよう

そもそも、どんなときに起こるのか

突沸は、静かに加熱したときに起こりやすい。
水は100℃に達しても、きっかけが無いとすぐには沸騰しない。
沸騰したくてうずうずしているところへ振動や異物などのきっかけがあると、一気にいってしまうのだ。
なので、つるつるの容器はひっかかりが無く突沸しやすい
なので、つるつるの容器はひっかかりが無く突沸しやすい
なるほど。あらためて原理を考えると、つるつるのマグカップを回転しない電子レンジであっためるというのは、最高に起こりやすいシチュエーションなのだなあ、と思う。

細長い容器は起こりやすいのか

ところで突沸に関して、「細長い容器では特に注意」との警告もよく見る。

つまりあれだろうか。シャンパンが噴き出すみたいに、容器が細長い方がより勢いよく吹き出すってことなのだろうか。
手持ちのマグカップのうち、一番細長いのを選んで実験してみた。
おなじ容量に対して内径6.7cm、深さ9cm。
おなじ容量に対して内径6.7cm、深さ9cm。
スプーン入れた瞬間に、ぶわっしゃーー!
スプーン入れた瞬間に、ぶわっしゃーー!
想定以上の突沸パワーに本気でひるみ、撮影の三脚にぶつかってしまった。(しかもちょっとヤケドした)
ほんとうにびびった。
吹きこぼれたお湯の量、なんと56mL!
吹きこぼれたお湯の量、なんと56mL!
すごい、想定外の噴出力だ。
さっきの普通の青いマグが14mLだったので、まさに4倍の突沸力を持つと言える。
やばいぞ突沸、やばいぞ細長い容器。
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さて、次のページでは、お湯よりも現実的なシチュエーションを考えてみたい。
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現実的に考えて、いちばん温め直して飲むことが多い飲み物って何だろうか。

以下のあたりじゃないだろうか。
たくさんいれすぎたコーヒー
たくさんいれすぎたコーヒー
買ったけど余したミルクティー
買ったけど余したミルクティー
朝のみそ汁を昼にも飲む、とか。
朝のみそ汁を昼にも飲む、とか。
昨日のスープを今日も飲む、とか。
昨日のスープを今日も飲む、とか。
さあ順番に突沸力を測定してみよう。

その1・コーヒー

ぼくが一番電子レンジで温める液体、コーヒー。これが突沸しなければ日常の9割は安全と言えるだろう。
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はしを入れて混ぜると、ふしゅわー、と気泡が噴き出すが、すぐにおさまる。気泡も水より細かくて繊細。
突沸力は9mL。コーヒーライフには注意が必要である。
突沸力は9mL。コーヒーライフには注意が必要である。
水に比べれば大したことないが、それでも結構吹き出す。気は抜けないだろう。

その2・ミルクティー

温めると吹きこぼれやすい飲み物ナンバーワン、それはミルクティーではないだろうか。

ただでさえ汚れの原因なのに、突沸するとなれば、もう終わりだ。人類の安全と衛生にかかわる。
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しゅわっと細かい泡が一気に噴き出すが、すぐおさまる。鍋で温めたときのあの悪夢のような吹きこぼれ方はしない。

思ったより平気だ。人類の存続は大丈夫そうだ。
突沸力は8mL。ペットボトルを温める際には要注意。
突沸力は8mL。ペットボトルを温める際には要注意。

その3・みそ汁

突沸の警告の中には「みそ汁も要注意」とあった。もし本当なら、向こう30年の日本人のライフスタイルの根幹にかかわる話だ。大丈夫だろうか。
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みそ汁、ぜーんぜん突沸しない!
めっちゃおいしそうなままである。

5~6回やったけれど平気で、どうやらニッポンの朝ご飯に突沸の恐怖はそこまで迫ってないようだ。

その4・スープ

同じく警告には「とろみのあるものにも注意」とあった。たしかに、くず湯作ってる時に突沸した時の破壊力は、どっぱーん!とすさまじいが、スープの場合はどうなのだろうか。
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これも同じく突沸なし。
ぜんぶ合わせて結論を言うと、水よりも激しく突沸するものは無かった。
これは予想がつく結論でもある。なぜなら、突沸は安定な環境で起こる現象だからだ。

つまり、ミルクの成分とか、みその粒子とかの不安定な不純物があると、そこをきっかけとしてエネルギーがほどよく分散放出されるため、水ほどの突沸にはならない。
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では沸騰のきっかけになり、突沸を引き起こす「シグナル」としてはどれが一番危ないだろうか。
みなさんには懐かしの「アレ」にも登場してもらって挑戦してみよう。
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飲み物に入れそうなシグナルの候補として、以下の4品を選び、「突沸シグナル」としてのパワーを競ってみた。
沸騰と言えばこれでしょう、「ふっとう石」
沸騰と言えばこれでしょう、「ふっとう石」
ザ・手近にあるかきまぜ棒、「割りばし」
ザ・手近にあるかきまぜ棒、「割りばし」
紅茶にもコーヒーにも定番「角砂糖」
紅茶にもコーヒーにも定番「角砂糖」
動物性乳脂肪ばんざい!「粉状クリープ」
動物性乳脂肪ばんざい!「粉状クリープ」

その1・ふっとう石

ふっとう石は職場で使っている本式のものだ。
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中に含まれる小さな空気の泡が沸騰をうながす仕組みだ。これを突沸寸前のマグカップに放り込む。
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すげえ!

普段はおだやかな沸騰を導いているふっとう石のこの爆発力!吹きこぼれたお湯は57mLと想定外のパワーを発揮した。

その2・割りばし

割りばしをビールに入れると泡が噴き出す、みたいな動画を見たことがある。熱い飲料のかきまぜにうっかり使っても大丈夫だろうか。やってみよう。
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すげーー!
割りばし、だてに表面ささくれだってないぜ!
沸騰パワーは71mLと最高値を更新した。やばい。
熱い飲み物は決して割りばしで混ぜないようにしよう。

その3・角砂糖

次の実験は砂糖だが、割りばしのパワーを見てすっかり突沸が怖くなった。
できればマグカップに手を近づけたくない。
というわけで、遠くから角砂糖ポンと放り込んで済ませた。
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やはり突沸はするが、割りばしと比べると若干弱め。
それでも突沸パワー32mL。充分に危ない。
しかし最後になる次の実験は本当に怖い。どう考えても超高校級に突沸するのが分かり切ってるからだ。

その4・クリープ

こんな空気をふわっふわに含んだもの、どう考えても突沸するに決まってる。そしておそらくは、ミルクみたいに際限なくあふれ出すだろう。下手したら天井まで噴き上がるんじゃないか。

たかがマグカップのお湯に、火を怖がる動物のようになりながらクリープを注ぎ込む。
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しゅぼー、しゅぼー、しゅぼー、と際限なくお湯はあふれ出す。
終わらない、終わらない、突沸のカーニバル。

容量の関係でアニメは縮めているが、実際はこの3倍ぐらい吹きこぼれ続けていた
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突沸パワー、72mL
跳ねて飛び散る怖さはないものの、噴出量は割りばしを上回り、クリープの突沸力は最強であることが証明された。
皆さんもお湯は決してクリープを入れて飲まないようにくれぐれも注意してほしい。
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突沸、やばい。

とにかく、どれであっても、突沸はやばかった。家の電子レンジで起こるとは思えない迫力だった。
現実的に言うと、コーヒーとクリープが有り得そうで一番危ない組み合わせのように思うので、くれぐれもご注意願いたい。

なお、実験に際しては専門知識がある(はず)の理科教員が行っていますが、再現される際には、くれぐれもご注意ください。
ふっとう石(拡大)
ふっとう石(拡大)
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