
親子連れにスルーされるマレーグマ
クマの中でも最も小さいとされるマレーグマ。よく知られたクマだが、どの動物園にもいるわけではなく、意外にも関東では上野動物園でしか飼育されていない。


関東唯一のマレーグマ飼育園


暖かいところに住むクマ

東南アジアに生息するためか、冬眠しないので冬でも元気な姿を見ることができる。門から少し進んだところ、クマゾーンの一角にマレーグマの運動場がある。


確かにマレーグマの表示があるのだが

到着したのだが、姿が見えない。少し目をやって「あれ?いないねえ」と、通り過ぎて行ってしまう親子連れも何組かいた。
おかしいな…と思ってよく見てみる。いた。
おかしいな…と思ってよく見てみる。いた。


なんでそこなの?

はじっこの細い通路の突き当たり、隅のところにマレーグマはいた。
楽しそうな仕掛けもたくさんある運動場なのに、どうやらここが好きらしい。しばらく眺めていたのだが、細い通路をうろうろしつつ、運動場にはなかなか出てこない。
楽しそうな仕掛けもたくさんある運動場なのに、どうやらここが好きらしい。しばらく眺めていたのだが、細い通路をうろうろしつつ、運動場にはなかなか出てこない。


クマにしてはちゃっちゃ過ぎるだろ、カワウソだから

運動場の一角には、コツメカワウソの飼育ゾーンもある。マレーグマの展示場だと知りつつクマを見つけられない親子連れが、カワウソを見て「あ、いたいた!ちゃっちゃいね、マレーグマ」と言いながら行ってしまう様子も見かけた。
それはないだろう。お父さん気付いてよ。
それはないだろう。お父さん気付いてよ。

アニマルとおっさんとの融合
そうしたことも起きてしまうくらい、はじっこ好きなマレーグマ。それでもさらに待っていると、運動場にあがってきた。


あっ、来た来た!


マレーグマ、かわいいね


かわいいよね?


かわいい…?


………?

歩いてきたマレーグマをじっと見ていると、いかにもクマっぽかったり、かわいく見えたり、あれっ?となったりと、どんどん印象が変化していくのだ。


うん、りりしい


…あれ?


うん、クマっぽい


…なんかおっさんっぽくない?

マレーグマはずっと動き回っていて、秒単位で受ける印象が変わる。りりしさが間抜け面に、アニマルがおっさんにと、万華鏡のように移ろっていく。


こちらはザ・子熊、ツキノワグマ

例えば隣の飼育スペースにいたツキノワグマは、首尾一貫して子熊の愛らしいイメージを放ち続けていたのだが、マレーグマはそうではない。


クマ


おっさん


クマ


おっさん

ここまで写真を載せたマレーグマは全て同じ個体で、アズマというオスのクマだ。りりしいクマ性と間抜けなおっさん性が、くるくると変わる。
これは彼独自のキャラクターなのだろうか。メスだと少し様子が違うように見えた。
これは彼独自のキャラクターなのだろうか。メスだと少し様子が違うように見えた。


クマなりの女子力

こちらは別の時間帯になって交代で出てきた、キョウコというメスのマレーグマ。愛嬌のある顔立ちをしている。


頭の上のたぷたぷがすごい


なんとなく妻を思い出しました

こちらのクマはおばちゃん体型と言えばいいのだろうか、オスのアズマとは違った印象。終始この感じで、一定のイメージを放ちながらモゾモゾ動いていた。


かっこいいアズマ


哀愁のアズマ

キョウコに対してアズマは、印象をどんどん変えていく速度が速い。猛獣でもあるクマらしさを見せたと思えば、次の瞬間には悲しさを漂わせたりもする。


親戚のおじさんに似ている

歩く後ろ姿はひょこひょことしていて、どちらかというとおっさんテイスト。


クマ


くしゃみの出そうなおっさん


クマ


好奇心旺盛なおっさん

こいつ、見ていて飽きないぞ。実のところアズマははじっこが余程好きなのか、私が見ていた時間の9割方は細い通路を行き来しているだけ。それでも、たまに上がってきてこうした様子を見せてくれるので、つい長居したくなるのだ。


なんとなく着ぐるみっぽい


さらに着ぐるみ感加速

アズマを見ている人たちのつぶやきで何度か耳にしたのは「なんか人っぽいね」「これ、中に人が入ってるでしょ」というもの。わかるわかる、そういうムードを漂わせるときがあるのだ。

隅っこ好きを体感したい
マレーグマがおっさんっぽい。この事実を逆にとらえれば、おっさんである私がマレーグマっぽくなりやすい、と言えるのではないか。


服の要素としてはマレーグマ


なかなか味が出せない

その仮説を検証すべく、黒い服を着用し、妻の首巻きを前後逆につけてたたずんでみた。
うーん、思ったよりもアズマテイストが出てこない。服装もおっさんも満たしているのに、なぜだろう。やはり彼独自のキャラクターなのだろうか。
うーん、思ったよりもアズマテイストが出てこない。服装もおっさんも満たしているのに、なぜだろう。やはり彼独自のキャラクターなのだろうか。


「…何?」

先ほど書いた通り、見ていた時間のほとんどをはじっこで過ごしていたアズマ。通路を行ったり来たりするだけで今ひとつ面白くなのだが、ときどき隅っこに立つことがある。この瞬間が味わいタイムなのだ。


「うーん…」


「んあー!」

悩んでいるようなポーズを取ったり、背中を壁にこすりつけたりと、豊かな動きを見せてくれるのだ。


もだえるアズマをアニメでどうぞ

かゆいのかなんなのか、気持ちまではわからないが、いい表情でくねくねしている。アズマを見つめる者にとって、ボーナスタイムの趣きがある。


なんかいいねこれ

アズマの放つ味わいはとても出せなかったが、自分でもやってみてわかった。この動き、なんとなく癖になる。
そしてあとから驚いたのは、アズマのポーズの一致性だ。
そしてあとから驚いたのは、アズマのポーズの一致性だ。


1日目


2日目

動物園には一週間あけて2日に渡って撮影に行ったのだが、写真を整理していると別の日に撮ったものなのに、完全にポーズが同じものがあった。
偶然を超えて、アズマが隅っこを好きだと思う気持ちが成し遂げた奇跡だ。
偶然を超えて、アズマが隅っこを好きだと思う気持ちが成し遂げた奇跡だ。


「あ、あっ、やばいかも…」


「ウオエェェェ…」

勝手にセリフをつけたくなるアズマの動き。別に飲み過ぎたわけでもないだろうにすまん。


「あー、あんなに飲まなきゃよかった…」







カモーン!



さまざまな要素が1頭の中で交錯し、次々に別のイメージを乱反射させる動物、マレーグマ。特にアズマには釘付けになった。
上野動物園には3頭のマレーグマがいて、運動場に出てくるタイミングは日によって違うようだ。当日朝に電話して聞くと出てくる予定を教えてくれます。
上野動物園には3頭のマレーグマがいて、運動場に出てくるタイミングは日によって違うようだ。当日朝に電話して聞くと出てくる予定を教えてくれます。
