『南京玉すだれ』とは
そもそも『玉すだれ』って何なんだ、という方もいらっしゃるでしょう。
一般的なすだれは竹などを編んだものを吊るしたり立て掛けて遮光や部屋の仕切りとして使う、カーテンやブラインド、パーテンションのようなものですが、玉すだれは大きさや用途が大きく異なります。
見た目としては、巻き寿司を作る時に使う巻き簾に近いかもしれません。
一般的な家庭で使用されている巻き簾。
一般的な家庭で使用される南京玉すだれ。
いえ、一般的な家庭に玉すだれは無いことが多いですね。
菜箸くらいの大きさの竹を糸で編んだもので、うちにある巻き簾とは大きさが一回りくらい違います。
写真では分かりにくいですが、黒い点が付いている二本が中心、赤い点が付いている箇所が右上となるように持ち、糸と竹との張り合いをもちまして神通自在にご覧に入れますのが南京玉すだれです。
こんな感じに持ちます。
右下方向には動かず、
右上に引っ張ると動きます。
いくつかの流派・保存会が存在し、すだれの形状や技の種類が流派によって微妙に異なる場合もあるそうです。
ちなみに、名前に『南京』と付きますが、中国からやってきたわけではなく富山発祥とのことです。
南京玉すだれ体験
何故急に玉すだれとか言い出したのかというと、たまたま地元で玉すだれ体験をする機会があったからです。
こちら、横浜市の都筑民家園では月に1回南京玉すだれの稽古が行われていて、希望者は気軽に見学や体験ができるようになっています。
古民家を利用した公民館的な施設です。
15~6人くらいの人が稽古に参加していました。
都筑民家園の南京玉すだれ体験は月謝を払って習う『教室』ではなく、玉すだれ好きが集まって練習し、ボランティア活動などを通じて玉すだれの普及に努める『愛好会』です。
会の発足は2003年。現在の登録メンバーは30名ほどで、保育園や老人ホームに慰労に行ったり地元の文化祭でパフォーマンスを披露したりとアクティブに活動しています。
愛好会代表で講師の林先生。
先生の指導も親切で分かりやすいのですが、長い人はもう7~8年は続けているというほどベテランメンバーが多く、メンバー間で教え合う雰囲気が出来上がっているので初心者でもすんなりと練習に参加できました。
年齢層が高めなせいか田舎の寄合的な雰囲気もあり、和やかな時間を過ごせます。
30代半ばともなると世間的にはお局扱いされる年頃ですが、おば様方に「若い方に是非参加してもらいたいわー」と声を掛けていただき、数年ぶりに若者扱いしてもらえてちょっと嬉しかったです。
東京タワー。
玉すだれという芸を実際に見たのは初めてでしたが、一見地味なようでいて、軽妙な口上に合わせてすだれの形がくるくると変わっていく様子はなかなかに興奮を誘うものがあります。
『地味だと思っていたクラスメイトがメガネをとると美少女だった』というくらいには意外性と興奮がありますので、どこかで玉すだれの芸が見かけたら是非足を止めてご覧ください。
そして、見るのはもちろん、自分でやるのも楽しいです。
写真を撮ると目が死んでいるか半目のどちらかが多いのですが、玉すだれ中の写真はどれもちゃんと笑顔で写ることができるほどに楽しかったです。
私は手先が不器用なのであまりすんなりといきませんでしたが、それでもいくつかの技を覚えることができました。
阿弥陀如来の後光。ちゃんと笑顔で写ってました。
阿弥陀如来が5人集まるとオリンピックの輪になります。
不器用でも練習すればそれっぽくなりますので、宴会芸にお悩みの方は手品やモノマネなんかよりも玉すだれを練習すべきです。お勧めします。
一週間練習した結果を披露します
安直に人様に宴会芸としてお勧めする前に、まず自分が実践してみるべきだろう。
できることなら私も宴会芸として身に付けてみたい。
そんな思いから、愛好会メンバーの方にすだれをお借りして一週間練習してみました。
宴会の予定は特にないので、この場を借りて披露させていただきます。
アさて、アさて、アさて、さて、さて、さて、
さては南京玉すだれ。
すだれを軽く叩いて音を鳴らします。
ちょいと伸ばせば
浦島太郎さんの
魚釣竿にちょいと似たり。
すだれの伸ばし方のバランスが悪いので釣竿感がありませんが、出来る人がちゃんとやれば釣竿っぽく見えるはずです。多分。
ちょいと返せば、
瀬田の唐橋、唐金擬宝珠(ぎぼし)
擬宝珠ないのがおなぐさみ、と続きます。
本物の瀬田の唐橋を見たことはないけれど、多分こんなんじゃないとは思います。
関係ないですが、写真の後ろの方に写っている女の子が冬なのにノースリーブで遊んでてびっくりしました。
ちょいと伸ばせば
ちょいと返せば
日米国旗にさも似たり
日米国旗がしだれ柳に早がわり。
しだれ柳に飛びつく蛙、蛙いないがおなぐさみ、と続きます。
『しだれ柳』はダイナミックにすだれを伸ばすため元に戻すのが大変なので、通常はパフォーマンスの締めの技となります。
しだれ柳が出たら、皆さん盛大な拍手をお送りください。
今年の忘年会の宴会芸は玉すだれで決まり!
流派によって多少違いはありますが、私が教わった玉すだれの技は9つなので、あと6つ覚えられたら宴会で披露したいです。
今年の忘年会、または来年の新年会の宴会芸デビューを目指して頑張ります。
取材協力:
都筑民家園
〒224-0028 横浜市都筑区大棚西2番
TEL 045-594-1723
FAX 045-594-2019