特集 2015年1月9日

人類最古の調理法と獣肉、ワイルドにいただく

人類最古の調理法
人類最古の調理法
人類最古の調理法で調理したものを出すお店がある。人類最古、と言い切るには「※諸説あります」という注意書きが必要なのかもしれないが、お店がそう言っているのだから乗っかっておきたい。

人類最古の調理法で出される料理とは? さらに、そのお店では色々な種類の獣肉も味わえるという。
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。


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三軒茶屋の路地裏でワイルド

人類最古の調理法で料理するお店は、世田谷区三軒茶屋にある。お店の名前は「炉端 美食食堂 炉とマタギ」。

三角地帯と呼ばれるディープな飲み屋街の一角、獣道のような路地を抜けるとそのお店が見えてくる。
獣道のような路地を抜けると
獣道のような路地を抜けると
「炉端 美食食堂 炉とマタギ」
「炉端 美食食堂 炉とマタギ」
「マタギ」という店名にふさわしく、お店の外壁にはイノシシやシカなどの絵が描かれていた。
イノシシさん
イノシシさん
シカさん
シカさん
マタギさん
マタギさん
マイケルのようなうりぼう
マイケルのようなうりぼう
店内に入ると、鹿の剥製や色々な種類の刃物が飾ってあるのが見える。

ワイルドだ。

店構えから店内の雰囲気にいたるまで、ここにはワイルドが充満している。
鹿の剥製と色々な刃物
鹿の剥製と色々な刃物
鹿の骨の剥製と「動物注意」の標識
鹿の骨の剥製と「動物注意」の標識
天狗と鬼と良く分からないお面
天狗と鬼と良く分からないお面
席に着くとまず、店員さんから箸を手渡されるが、その箸袋がおみくじになっていた。ここまで漂っていたワイルド感がおみくじによって少し中和されるシステムだ。
箸がおみくじ
箸がおみくじ
中吉、という中途半端な結果
中吉、という中途半端な結果
「山里は冬そさひしさ増さりける 人めも草も」

中吉、という結果とともに添えられた歌。百人一首からの抜粋である。ざっくりと「冬は寂しいね」という意味だろう。

人類最古の調理法による料理の前に、まずは「炉とマタギ」の売りである獣肉料理をいただくことにした。

まずは獣肉各種を

店員さんから「馬刺」「蝦夷鹿の生ハム」「マタギの三獣奏」という獣肉料理を薦められた。馬刺、生ハムあたりは見当がつく。「マタギの三獣奏」はどんな獣肉なのだろうか。出てくるのを楽しみに待とう。

お通しは猪豚のポトフだった。豚とイノシシを交配して作る猪豚をメインとしたハイブリッドなポトプをいただくが、これから獣肉を食すにあたり、「臭みがない」という感想は避けたいと思う。獣肉を扱うお店に対して、そして獣に対して、その感想は失礼だと思うからだ。
お通しの猪豚のポトフ
お通しの猪豚のポトフ
もの凄く柔らかいベーコンのような猪豚だ。臭みがない、と言いたい気持ちをグッとこらえた感想は、「美味しい」だ。お通しでこのハイクオリティである。この後の獣肉料理への期待が高まる。

少し経って馬刺と蝦夷鹿の生ハムがやってきた。
馬刺
馬刺
馬刺用のかえし醤油
馬刺用のかえし醤油
蝦夷鹿の生ハム
蝦夷鹿の生ハム
馬刺は甘めのかえし醤油でいただくらしい。
馬刺から
馬刺から
やっぱり「臭みがない」と言いたい。本当に臭みがないのだ。蝦夷鹿の生ハムも同様に「臭みがなくて美味しい」。

そして、どんな獣肉が来るのか分からなかった「マタギの三獣奏」が現れた。
三種類の獣肉盛り合わせ
三種類の獣肉盛り合わせ
三種類の獣肉がテーブルに並ぶ。内訳は、京都の鴨肉、北海道の蝦夷鹿、淡路島の猪豚である。九州の焼き味噌をお好みで付けてもいいらしい。
京都の鴨肉
京都の鴨肉
北海道の蝦夷鹿
北海道の蝦夷鹿
淡路島の猪豚
淡路島の猪豚
「炉とマタギ」さんの素材へのこだわりは強い。例えば淡路島の猪豚は、高級肉と珍重される鹿児島の黒豚とイノシシから生まれた猪豚に、さらにデュロック種という豚を交配させた淡路島ポークである。
また、「三獣奏」のメインである北海道の蝦夷鹿は、十勝地方新得町トムラウシから届いた逸品。地元のマタギによって小規模な養鹿場で育てられている。捕獲してから飼育すると、「臭みがなく柔らかくて美味しい」鹿肉になるのだという。

メニューにあった説明文を抜粋したが、やっぱりそこにも「臭みがない」と書いてあった。獣肉を褒める時、「臭みがない」は有りらしい。

極上の蝦夷鹿を赤ワインとともにいただいてみた。
芳醇な赤ワインの香りを楽しみながら
芳醇な赤ワインの香りを楽しみながら
蝦夷鹿をいただき
蝦夷鹿をいただき
お肉の余韻があるうちに赤ワインを
お肉の余韻があるうちに赤ワインを
たまらない
たまらない
片手にお箸、片手にワイングラスというナニワ金融堂スタイルでいただくと、
美味しさが倍増される。

鹿肉はお店で熟成させているので旨味が深い。
鹿肉熟成中
鹿肉熟成中
店員の岡田さん
店員の岡田さん
熟成中の鹿肉
熟成中の鹿肉
熟成するには、0℃から2℃を保つ必要があるらしく、冷蔵庫の扉もなるべく開閉しないようにしているという。お肉を見せてもらうために冷蔵庫から出していただき、申し訳ないことをしてしまった。

いよいよ人類最古の調理法の料理へ

獣肉は充分に堪能させていただいた。いよいよ、人類最古の調理法によるスペシャルメニューの登場である。

人類最古の調理法で調理されるもの、それは川魚のイワナだった。
人類最古の調理法で調理される
人類最古の調理法で調理される
イワナ
イワナ
人類最古の調理法は、簡単に言うと「焼く」ということだったのだ。しかし、ただ焼く訳ではない。「炉とマタギ」さんでは原始焼きというこだわりの方法でイワナを調理している。

通常、下の写真のように火の上でイワナを焼くが、
普通の焼き
普通の焼き
原始焼きはそうしない。火から少し離れた所にイワナを置いて、遠赤外線の力でじっくりと20分かけて焼くのだ。そうすることで、イワナを頭から骨まで全部食べることができるらしい。

炭の置き方で焼き上がりが変わるらしく、そこにもこだわりがあるのだという。
遠赤外線の力でじっくり焼く
遠赤外線の力でじっくり焼く
調理を担当する木村さん曰く、

「原始焼きは、1番シンプルですが1番素材の旨味を引き出すことができます」

とのこと。

そんな原始焼きによって焼き上がったイワナが僕の前に登場した。
人類最古の調理法によって焼き上がったイワナ
人類最古の調理法によって焼き上がったイワナ
白目をむいたイワナがそこにいる。これを頭から…。

念のため、店員さんに確認することにした。

「これは、全部食べられる方向で?」

店員さんは頷きながらも、

「頭を食べるにはちょっと気合いがいりますが」

と付け加えた。

気合いがいるのか。

ワイルドにいこうじゃないか

乗りかかった船だ。頭からワイルドに食らいついてやろう。
よし
よし
気合いダー!
気合いダー!
上半身裸で食べるワイルドな俺。

と事前にイメージをしていたのだが、あいにく、人様にお見せするような上半身を持ち合わせていない。「筋肉マンシャツ」というインナースーツを仕込んでおいた。

シャツの力を借りつつ、ワイルドにいこうじゃないか!

と、その時!

右斜め前方に座る女性2人組からの冷たい視線を感じた。
あっち見ちゃダメ、という雰囲気
あっち見ちゃダメ、という雰囲気
まずい。変態だと思われたら大変だ。
やっぱりはだけるのはやめにしよう
やっぱりはだけるのはやめにしよう
あの女性2人組には僕のワイルド感が伝わらなかったらしい。おとなしくしていよう。
おしとやかに
おしとやかに
そして上品に
そして上品に
頭と骨は無理だった
頭と骨は無理だった
どうしても頭と骨を食べることが出来なかった。筋肉マンシャツで挑めば、あるいは食べ切れたのかもしれない。しかし、そこには冷たい視線というリスクが伴った。

試しに店員の岡田さんに聞いてみた。

「岡田さんは全部いける感じですか?」

もちろんです、と岡田さん。

なんだか悔しかったので、もう1本焼いてもらって岡田さんに食べてもらうことにした。
全然余裕です
全然余裕です
と、まずは頭をたいらげ
と、まずは頭をたいらげ
あっという間に
あっという間に
全部食べちゃった
全部食べちゃった
本当に全部食べてしまった。
なんでだー!
なんでだー!
再び、上半身裸で気合いを表現してみたが、先ほどの女性2人組が帰り、店員さんが奥に引っ込んだタイミングでのパフォーマンスである。
ナイスポーズ
ナイスポーズ
新しくお客さんがやって来た気配を感じ、僕は急いでシャツを羽織り何事もなかったかのように残りのワインを飲み干して家路についた。

獣肉はどれも美味しかったし、原始焼きで焼かれたイワナも絶品だった。おみくじの結果は「中吉」だったが、満足度は「大吉」である。

「山里は冬そさひしさ増さりける 人めも草もかれぬとおもへは」

これから益々寒さ厳しい季節となりますが、みなさまもお身体をご慈愛ください。
炉とマタギ
炉とマタギ

取材協力:
「炉端 美食食堂 炉とマタギ」
東京都世田谷区三軒茶屋2-14-21
tel/fax 03-5787-8171
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