特集 2014年12月31日

さよなら、鬼怒川秘宝殿 ~好きなところに行く~

めくるめく
めくるめく
栃木県日光市にある「鬼怒川秘宝殿」が年内いっぱいで閉館するという。
昭和56年のオープンから33年、その歴史にピリオドを打つのだ。なんでも鬼怒川秘宝殿がなくなると、日本に残る秘宝館は静岡県の「熱海秘宝館」のみになるという。これは大変だ。ラスト2館目として踏ん張った鬼怒川秘宝殿。
なくなってしまう前に見届けなければならないだろう。
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。


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> 個人サイト すみましん

車を走らせて、秘宝殿へ

好きなところに行っていい、というデイリーポータル年末プロジェクトのお話をいただき、僕は鬼怒川秘宝殿を選択した。しかし、26日の仕事納めまで現地に行く時間を取れず、入稿ギリギリの28日に鬼怒川秘宝殿を目指した。

28日ともなると、学校は冬休みである。「ちょっと栃木まで行ってくる」と妻に告げると、「子供たちも連れて行ってくれ」と頼まれる。それは無理な相談だ。「いや、仕事だから1人で行く」と突き返したが、冬休みなんだからと引かない。仕方がないので「秘宝殿に行くから…」と小声で伝えてようやく納得してもらい、僕は1人で車を走らせた。

東京から首都高速、東北道と高速を乗り継ぎ、今市というインターチェンジで国道121号線に降りた。そこから2つの有料道路を経て、龍王峡トンネルをくぐると、「鬼怒川秘宝殿」の看板が見えた。走行時間はおよそ2時間半。

最後にくぐった龍王峡トンネルは、まさに産道のようであった。産道の長いトンネルをくぐると、そこは鬼怒川秘宝殿だった。
東北道から今市インターチェンジを目指す
東北道から今市インターチェンジを目指す
産道をくぐると、そこは秘宝殿だった
産道をくぐると、そこは秘宝殿だった

着いて気付いたまずい状況

駐車場に車を停めて気付いたことがある。

僕以外、ほとんどのお客がカップルなのだ。男1人でカメラを構えている客は、僕以外にいない。
良く考えたらそうだろう。秘宝殿に男1人でやって来てニヤニヤしながら写真を撮っている。まずいまずい。なるべく気配を消さないと、結構まずい。

大きく秘宝殿
大きく秘宝殿
33年の歴史を感じさせる外観
33年の歴史を感じさせる外観
おかめと天狗がお出迎え
おかめと天狗がお出迎え
3、4組のカップルが中に入るのを見届けて、しばらく経ってから中に入った。秘宝殿の中でカップルと合流するようなことがないことを祈る。
閉館のお知らせ
閉館のお知らせ
中に入るとすぐ、「鬼怒川お竜」という名の女性が片膝をついている。丁半博打のつぼ振りだろう。
かなり僕好みの美人であるが、片乳が出ていて、下半身は丸出しである。

いくら美人でも恋人にはしたくないタイプである。
鬼怒川お竜
鬼怒川お竜
受付付近には、男性を感じさせるシンボリックなものがニョキニョキと立っている。

道祖神。

そう名付けられている物もある。説明文を読むと、

「江戸時代に鬼怒川温泉に湯治に来ていた大工職人夫婦が湯治料が払えず悩んでいる時、たまたま目に入った大木を見て遊び心で作った男性器に多くの客人が集まり」

と書いてあった。

遊び心で男性器を作り、それに人が集まる。江戸の粋を感じつつ、受付で入場料の1000円を支払い、順路に従って秘宝殿に入っていく。

響く和太鼓、舞う男女

順路の先には暗闇が広がっていた。

ほぼ真っ暗で、ここでも1人で来たことを後悔する。先に進むのが怖いのだ。エロ怖いのだ。

少し躊躇していると、暗闇からドンドンドンドンドンと和太鼓の音が鳴り響く。なんだ? 祭りか?

和太鼓の響きに導かれるように、僕は暗闇に足を踏み入れる。

すると…。

洞窟の奥のスクリーンに男女の姿が写し出される。男性は天狗のお面を、女性は般若のお面を被っている。和太鼓の響きをBGMにして、天狗と般若が服を脱いでいく。

ドンドンドンドンドンドン。

和太鼓のビートは徐々に激しくなり、映像の中の天狗と般若が半裸状態で男女の営みをモチーフにしたダンスを繰り広げる。
天狗と般若による男女の営みダンス
天狗と般若による男女の営みダンス
ドンドンドンドンドンドン。

あらゆる体勢で展開する男女の営みダンスはピークを迎え、ドーンッという和太鼓の音とともに果てる。

映像が消えると左右から、天狗と般若のお面を被った男女の蝋人形がせせり出てくる。
左右からせせり出る蝋人形
左右からせせり出る蝋人形
最後に出て来た蝋人形は、出て来てそのまま、特に動きがある訳でもなく、スーッとまた左右にはけていった。

この後の展開を期待して待つが、再び和太鼓が鳴り響きスクリーンに先ほどと同じ映像が写し出される。そうか、最後に出てくる蝋人形は、カーテンコールのようなものだったのだ。

「世界観!」

思わず声が出る。


先を急ごう。

あっ、お坊さんがお経を唱えている。
お経を唱えるお坊さん
お経を唱えるお坊さん
拝んでいるものを見ると、怪しい形状だった。
更に、お坊さんの背後には「3D?映像が出ます」と書いた紙が貼ってあったがそこにあったのは蝋人形だった。

展示側もクエスチョンマークを書き加えてしまう3D映像。素敵だ。

お侍さんが、将軍が

そこから先も、蝋人形たちが表現する男女の営みが続く。

坂東武者出征前夜や豊臣秀吉と4人の女性たちなど。合戦前夜に鎧を着たまま営んだり、将軍様は4人を相手にしていたり。とにかく凄い時代である。
(写真はイメージです)。
(写真はイメージです)。
蝋人形がリアルなだけに、当時のエロに対するポテンシャルがぐいぐい伝わってくる。

そして、入館前に危惧していた事態に直面してしまった。

カップルと合流してしまったのだ。
カップルと合流
カップルと合流
2組のカップルが熱心に見ていたのは、かんぴょう農家の庭先風景だった。

時は正徳2年(僕の名前と同じ年号だ)、栃木県の農産物で日本一を誇るかんぴょうは、当時、まず包丁で輪切りにして中のズイを取り、マッチ箱大のカンナで内側からむいていたという。ここに展示されていたのは、そんな頃の「のどかだがせわしない或る農家の庭先風景である」と説明があった。

カップルたちがいなくなるのを待ち、かんぴょう農家の蝋人形に近づいてみた。

庭先で会話するおじさんと娘さん
庭先で会話するおじさんと娘さん
夕暮れ時だろうか。おじさんと娘さんが庭先でのどかな会話を繰り広げている。ここでおじさんが咳をしたりすれば、山口百恵の「秋桜」を彷彿させるが、ここは秘宝殿。だんだん娘の様子がおかしくなる。

それもそのはず……
写真はイメージカットです(編集部 林)
…………エロ怖い!

あらゆる角度から探求

鬼怒川秘宝殿には、西洋のエロスを彫刻で表現したコーナーや、科学的にエロスを追求するコーナーもある。
エロスギャラリー
エロスギャラリー
ラブ・サイエンス
ラブ・サイエンス
ラブシネマ、という上映会場もある。
ラブシネマ、という上映会場もある。

お土産も充実

じっくりと館内を見学すると、最後にお土産コーナーがある。どんな展示会でもこの仕組みは変わらないと思うが、やはりここは秘宝殿。置いてあるものが違う。
このおじさんは蝋人形ではない
このおじさんは蝋人形ではない
ここでもカップルと合流してしまい、彼氏の方が「金玉カード」を購入しようとしているのが見えた。

彼氏はおじさんに「金玉カード」と伝えることが出来ず、指を指して「これを」と言っている。おじさんは、そんなシャイな彼氏の気持ちを顧みず、「金玉カードですね」とはっきりと発音していて、いい光景だな、と思った。

また、鬼怒川秘宝殿には無料休憩所も用意されていたのだが、そこでも油断は大敵だ。
かわいらしい熊の置物も、ちょっと様子がおかしい
かわいらしい熊の置物も、ちょっと様子がおかしい
トイレの張り紙もそれらしく
トイレの張り紙もそれらしく
こんなにも刺激的でユーモアがあってエロ怖い場所。そんな鬼怒川秘宝殿が、今年いっぱい、12月31日の17時をもって閉館してしまう。

あの蝋人形たちはどうなってしまうのだろうか? 引き取り手は決まっているのだろうか?

家にあったらちょっと怖いから、僕はいらないけども。


すっかり鬼怒川秘宝殿を満喫して、僕は来た道を戻った。寄り道はしなかった。沈む太陽の方向に車を走らせて家を目指した。

都内まで帰って来るとすっかり日は落ちていた。ふとカーナビを見ると、そこには秘宝殿の世界が現れていた。
秘宝殿的な画像
秘宝殿的な画像

違う違う。これは道案内だ。カーナビの表示が秘宝殿的なはずがない。「まだ秘宝殿にやられてるな」と反省しつつ、娘たちを連れて来なくて本当によかったと改めて思った
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