居抜き物件の先駆け、ABC店舗さんの案内で
いつかは飲食店をやりたい。僕はずっとそんな夢を持っている。何かしらにこだわった何かしらを出して、常連さんたちとお酒を酌み交わす日々。楽しそうだ。でも、何を出す店にしたらいいのか、ずっと分からないでいる。だから夢はずっと漠然としたままだ。漠然とはしているけど、店を始めるなら居抜きで借りることに決めている。居抜きは初期費用をぐっと抑えることが出来るからだ。
今回、居抜き物件を内見するにあたり、ABC店舗という不動産会社さんにご協力いただいた。ABC店舗さんは、12年前から飲食の居抜き物件を専門に扱う、居抜きのパイオニアである。
営業部・カウンセラーの和田さんとIT事業部の氏原さんの案内で、居抜き物件を内見していく。
カウンセラーの和田さん(左)とIT事業部氏原さん
この写真はこの後紹介する2件目の物件で撮影した。1件目から2件目への移動中に打ち解けた成果である。
居抜き物件の見方
居抜き物件といっても、不動産会社から出される情報は普通の賃貸借のそれとさほど変わらない。
居抜き物件の情報
物件の写真、概要、賃貸条件、仲介手数料など、家を借りる時によく目にする項目が並ぶチラシである。
しかし、居抜きの場合、普通のチラシとは少し違った項目がある。
例えば、賃貸条件の中にある「店舗資産譲渡料」という項目。これは、店舗に残された造作や什器を買い取るための料金である。
店舗資産譲渡料
上の例では店舗資産譲渡料が130万円となっている。
まったくのスケルトン状態から造作を作って什器を入れたらとてもこの金額では納まらないという。居抜きだったら、店舗資産譲渡によって初期費用を約5分の1程度に抑えることが出来るのだ。やはり、居抜き物件はお得である。
その店舗資産譲渡は仲介手数料にも影響する
仲介手数料、物件詳細の項目にも居抜きならではの項目が
店舗の賃貸借契約とは別に、店舗資産譲渡契約というものを結ぶ必要があり、そこにも仲介手数料が発生する。「店舗資産譲渡料に応じた額」とあるが、ABC店舗さんの場合、200万円以内で5%とのこと。
物件詳細にある「除外部品」とは、内見時に置いてあってもいずれ前のオーナーが持っていくから使えませんよ、という部品だ。
このように居抜きならではの項目があることを念頭において、早速、居抜き物件を内見していこう。
まずは、桜台の焼き鳥居酒屋さん、だったお店だ。
桜台。1階路面 焼き鳥居酒屋居抜き
1件目は、西武池袋線「桜台」駅から徒歩2分という好立地の焼き鳥居酒屋さん。ABC店舗のチラシによると「住宅地でありながらランチ営業も盛ん!」とある。駅前に7階建てのマンションが建築中なので、人口の増加も見込まれるエリアである。
焼き鳥居酒屋さんの外観
この下に提灯をぶら下げるのもよし
情報掲示板もあるので、ここに旬のメニューなどを掲示したい
19.5坪の店内
ヒョウ柄の椅子が印象的なカウンター席
半個室として使用できるテーブル席
道路に面してテーブル席が2つ
厨房の施設も充実。大きな冷蔵庫が2台
ここで串を焼いて
ここには秘伝のタレなどを入れたり
20坪弱ではあるが、かなり広く感じた。
厨房2人、ホール2人くらいいれば回せるだろうか。ホールに立つのは明るい女性がいいな。ユニフォームは黒っぽいTシャツにしよう。冬場は鍋料理も出して、預かったお客さんのコートのポケットにホッカイロを忍ばせておく。そんなサービスも検討しよう。24時以降の営業は不可なので、23時閉店にして23時半からみんなで賄いを食べよう。
などと、居抜き物件を見ているとイメージがどんどん涌いてくるが、残念ながらこの物件は次のオーナーが決まっている。
焼き鳥居酒屋居抜き
保証料:1,500,000円
賃 料:235,000円(税抜)
管理費:16,000円(税抜)
店舗資産譲渡料:1,300,000円(税抜)
大塚。駅ロータリーからすぐの居酒屋
続いてJR大塚駅にやって来た。駅のロータリーから歩いて2分。こちらも駅近の物件である。
大塚の居酒屋さん
和風でこじんまりとした、僕好みの居酒屋さんである。
この場所で長年やってきたオーナーさんがご高齢のため、店を閉じることになったのだという。きっと地元の常連さんたちから愛されてきたのだろう。このお店を居抜きで借りれば、以前の常連さんたちも居抜けるかもしれない。と、氏原さんに言うと、実際にそういった例もあるのだという。
居抜き物件はお客も同時に居抜ける(こともある)、というメリットもあるのだ。
電光掲示板も使用可能
入って左側にはカウンター席
7坪弱の店内。対面式の大きなテーブルが真ん中に
横に3人席も確保されている
お手洗いの扉には「頭上注意」の看板
トイレの中にも「頭上注意」。天井が斜めになっているらしい
これが注意しないといけない「斜め天井」
頭を抑えてトイレから出てくるお客たちを見かねて、前の店主が「天井注意」の看板を貼ったのだろう。次に使う人もこの看板は外さない方が懸命である。
また、このお店には奥へと続いてそうな扉もあった。
奥へと続く扉?
階段?
2階へと続く階段が現れた。この物件は2階もあるのか? 図面を確認してもそのような記述はない。2階に上がってみると、そこにはネイルサロンが入っていて、この居酒屋とは全く関係がない。
「この扉の意味は?」
と和田さんに聞いてみたが、和田さんも首を傾げていた。
そういったトリッキーな面を兼ね備えたチャーミングな物件であるが、こちらも次のオーナーが決まっている。
居酒屋居抜き
保証料:1,840,000円
賃 料:184,000円(税抜)
管理費:16,000円(税抜)
店舗資産譲渡料:1,388,889円(税抜)
要町。1階路面ラーメン店の居抜き
次に訪れたのは有楽町線の要町駅。駅から徒歩4分の場所にある、1階路面のラーメン店である。
最近はラーメン店の居抜きが増えてきているという。少し前までは韓国料理と中華料理が多かったらしい。飲食店の流行の流れが居抜き物件に表れるのかもしれない。
ラーメン店の居抜き物件
大きな看板も使用可能
10名程度が着席可能なカウンター席
お客が座るとこういうイメージ
広々とした厨房
寸胴を3台置けるスペース
麺を茹でるスペース
券売機も使用可能
スープの割汁を入れるポットやお冷やのポットも残されている
レンゲがいっぱい
器も充実
筆箱
今すぐにでも営業を開始出来るんじゃないか、と思えるほど色々な物が綺麗な状態で残されている。
色々な物が残されている中、この物件の「除外部品」に、「寸胴、製麺機」とある。
寸胴と製麺機は除外部品
前のオーナーがこの場所を閉じるにあたり、その2つだけは手放さなかったのだ。なので、上の写真にあった1つだけ残された寸胴も、資産譲渡を受けることは出来ない。
ちなみに、こちらの物件は既に申し込みが入っている。
ラーメン屋居抜き
保証料:900,000円
賃 料:150,000円(税抜)
管理費:16,000円(税抜)
店舗資産譲渡料:1,500,000円(税抜)
水道橋。熱心なバイトの痕跡が残るもんじゃ屋さん
続いての物件は、水道橋のもんじゃ焼き店である。16年間も愛され続けてきたお店だったが、オーナーさんの体調不良で店を閉じることになったとのこと。水道橋の駅から徒歩4分で1階路面。立地も最高だ。
もんじゃ焼きの居抜き物件
かつて使われていた看板
対面式のもんじゃ焼きテーブルが縦に3列並ぶ
しっかりとした造作
営業中に使用されていたグラスなどの備品も、そのまま綺麗に残されている。
ワイングラス
ビールジョッキ
箸と灰皿、タイムレコーダー
営業していた頃のメニュー
イッキコールは禁止
この物件は、営業時の面影が色濃く残されていて、特にアルバイトの人たちの頑張りが至る所で垣間みれる。
バックヤードの貼り紙
駅からの道順を聞かれた時の対応マニュアル
ヒマを持てあました時のそうじ。手があいた時の仕事
その日の反省などを綴ったノート
お客様に対しては書体を変えてアピール
キラキラとした文字で残されたアルバイトたちの頑張り。16年間愛され続けてきた理由がここからも伺える。
この貼り紙を残したバイトリーダーは、バイトのみんなをうまくまとめて来たのだろう。夏にはバイト仲間でバーベキューをして、冬にはみんなで鍋を囲み。接客について意見を交わし合った夜もあり、重要な意見が出たら貼り紙にしてバックヤードに貼り。
良いお店だったに違いない。
営業中に来てみたかったが、今はもう居抜き物件である。
営業中だった頃のイメージ
この物件には「焼肉不可」という業種制限がかかっている。今のところ申し込みは入っていないようなので、もんじゃ焼き屋を考えている人は是非! そして、もしここでもんじゃ焼きをやる際には、バックヤードの貼り紙を残して営業していただきたい。
もんじゃ焼き屋居抜き
保証料:3,800,000円
賃 料:457,000円(税抜)
管理費:16,000円(税抜)
店舗資産譲渡料:1,759,260円(税抜)
東大前のカフェ。なんと造作無償!
最後の物件は、南北線「東大前」駅から徒歩2分、1階路面のカフェ居抜きである。
カフェの居抜き物件
18.3坪の店内は明るく清潔な雰囲気なのだが、全体的に不思議な雰囲気が漂っている。なんというか、ドラマのセットっぽいのだ。
カウンター席とテーブル席が3席
奥には会議室のようなスペースがあり
そのまた奥には小さな小部屋が
ドラマのセットと言っても、少し前のドラマ。そう、90年代のドラマの空気が漂っている。
トイレのタイルが90年代っぽい
ノロウイルスの貼り紙で現代を感じるが
コークサワーが再び90年代に時代を戻す
トレンディが充満するこの物件、なんとすべての造作が無償なのだ。ここにあるものすべてタダ! 店舗資産譲渡料がかからないのだ。
この冷蔵庫も
この冷蔵庫も
レジスターも
IHヒーターも
食器棚も
神棚スペースも
新品のエアコンも
これらすべてが無償で手に入り、駅から2分という好立地。これはかなりのお得物件じゃないでしょうか? どうですか? 奥さん!
「先にシャワー浴びちゃえよ」(台詞はイメージです)
カフェ居抜き
保証料:1,500,000円
賃 料:221,400円(税抜)
管理費:16,000円(税抜)
店舗資産譲渡料:無償!
このカフェの横で営業しているカレー屋さんは、ABC店舗さんの仲介だそうだ。お昼時を過ぎていたが、店内はお客さんでいっぱいだった。
居抜き物件からカレー屋さんになったお店
「居抜きの仲介をしたお店が繁盛していると、本当にうれしいです」
和田さんがカレー屋さんをのぞきながら、そう言っていた。
「あと、ここの女性オーナーが凄く美人です」
そうか。
だったら、近いうちにここのカレーを食べに来なくてはならない。
今から12年前、居抜き物件というのは一般的ではなかったという。店を閉じる時はスケルトンにして返すのが当たり前。そんなそれまでの常識に「もったいない!」と声を上げたのが、ABC店舗の社長さんだ。それから12年、居抜き物件は年々増えていき、ABC店舗さんが扱う物件だけでも現在では2000件弱もあるという。
これは店を開くチャンスだ。
チャンスだけど、何を出す店にしたらいいのか、まだ分からないからしばらくは静観しようと思う。