特集 2014年12月26日

団地とデモを見に香港へ行った

香港といえば団地だ

高層団地に魅せられ続けてはや20年ほど。この趣味が高じて会社を辞めたぼくにとって香港はまさにパラダイスである。彼の地で訪れたいと思っていた団地はたくさんあるが、特に期待していたのはここ。
航空写真で見ただけでももう鼻血が出そうです。すごい。(大きな地図で見る
この囲われっぷりどうだ。すごい。ぼくも囲われたい。これは"Ka Wai Chuen Block" という団地。"Block"は「団地」のことだ。いい呼び方だ。

航空写真ですでにすごいことになっているこの団地。どきどきしながら向かった。そしたらやっぱりすごかった。
興奮してお腹が痛くなりました。同時に上を向きすぎて首が痛くなりました。
興奮してお腹が痛くなりました。同時に上を向きすぎて首が痛くなりました。
かっこよすぎる。(大きな全体画像はこちら)
かっこよすぎる。(大きな全体画像はこちら
ぐるりと見渡すとこんな。(大きな画像はこちら)
ぐるりと見渡すとこんな。(大きな画像はこちら
フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂を訪れた人の多くが、気分が悪くなって倒れるそうだ。理由はダビデ像をじっと上を向いて見続け、首の血流が悪くなるから。「ダビデ症候群」と呼ばれている。

香港においては「団地症候群」と呼ばれるべきだろう。この堂々たる高層っぷり。日本ではお目にかかれない。首が痛い。

団地以外の話もしますがもうちょっと待ってください

今回訪れた団地はいくつかあるのだが、それを全部紹介しているとそれだけで10ページぐらいになる。ぐっとこらえて、もうひとつだけ。お願い、もうひとつだけ。(団地団地うるせえよ、って方は2ページ目に行っちゃってください)
こちらの実直な囲いっぷりもすばらしい。団地趣味の持ち主なら「一度でいいから囲われたい」と思うだろう。
こちらは"Shek Kip Mei Estate Block"というブロック。

さきほどのものがダイナミズムで勝負ならば、こちらはかわいらしさでぼくを攻め立てる。
団地脇のバス停。墨痕鮮やか「22」の号棟表示とポップなカラーリング。すかしブロック。かわいい。かわいすぎる。
団地脇のバス停。墨痕鮮やか「22」の号棟表示とポップなカラーリング。すかしブロック。かわいい。かわいすぎる。
めろめろです(大きな全体画像はこちら)
めろめろです(大きな全体画像はこちら
レゴブロックでこのブロックを作りたい。(大きな画像はこちら)
レゴブロックでこのブロックを作りたい。(大きな画像はこちら
いきなり団地の写真ばかりお見せしてすまない。でもすてきなのでしょうがない。

昨今日本では「団地よく見たらすてきなんじゃないか」という機運が高まっているが、香港もなかなかのもの。なにせこの"Shek Kip Mei Estate Block"のすぐそばには団地博物館があって、そこがすごくいいのだ。
1950年代に建てられた古い団地をリノベした施設。これがほんとうにすてきだった。
1950年代に建てられた古い団地をリノベした施設。これがほんとうにすてきだった。
"Mei Ho House"というこの施設は古い団地を改修して博物館とユースホステルとカフェに生まれ変わらせたもの。次回香港に行く時にはここに泊まろうと思っている。

団地博物館の内容はほんとうに充実していて、細かくご紹介したいのだが、これもまた10ページぐらいになっちゃうので涙を飲んでやめておく。

いやほんと、団地に興味なくてもふつうに楽しいのでみんな見に行くべき。
団地の時の間取りをそのまま残して、各時代の暮らしぶりを実物展示。すごく興味深い。これは50年代の様子。この広さに3人で暮らしていたとか!
団地の時の間取りをそのまま残して、各時代の暮らしぶりを実物展示。すごく興味深い。これは50年代の様子。この広さに3人で暮らしていたとか!
こちらは70年代。なんだかなつかしいです。
こちらは70年代。なんだかなつかしいです。
当時のおもちゃとか雑誌、映像や写真、模型も豊富。日本の団地と共通点が多く、はからずもこの展示で、今までスルーしていた日本の住宅のことが見えてきた気がした。
やっぱり土管が遊具だったんだねえ。ドラえもんがすんなり受け入れられたのも頷ける。
やっぱり土管が遊具だったんだねえ。ドラえもんがすんなり受け入れられたのも頷ける。
カフェもすてきで、小さい子供連れの家族がたくさん。
カフェもすてきで、小さい子供連れの家族がたくさん。
さて、断腸の思いで団地の話題から離れよう。

香港市街ですてきなのは団地だけじゃない。というか、あらゆるビルがかっこいい。
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「かわいいビル」とかいってる場合じゃない

これも香港にいった方なら誰もが知っていることだと思うが、この街にはとにかく古めの巨大なビルがびっちり建っている。そしてそのほとんどがすてきビルなのだ。

以前「かわいいビル」とかいって日本の高度成長期のキュートなビルを見て回ったことがあるが、香港ときたらそこらじゅうかわいいビルなのだ。

前ページで「2ページに行っちゃってください」といいつつ、本ページも結局ビルの写真ばかりです。なんなら3ページ目に行ってください。
なんなんでしょうか、このデザイン、この色、この室外機。さきほどの
なんなんでしょうか、このデザイン、この色、この室外機。さきほどの"Ka Wai Chuen Block" のすぐ隣にあるビル。大きな全体画像はこちら
いやほんとすごいよねえ!
いやほんとすごいよねえ!
このビルはほんとうにすてきだった。ほしい。持って帰りたい。(大きな全体画像はこちら)
このビルはほんとうにすてきだった。ほしい。持って帰りたい。(大きな全体画像はこちら
地震がないと、都市というのはこんなふうになるのかー!って改めて思った。(大きな全体画像はこちら)
地震がないと、都市というのはこんなふうになるのかー!って改めて思った。(大きな全体画像はこちら
いいですなー。(大きな全体画像はこちら)
いいですなー。(大きな全体画像はこちら
だんだん麻痺してきて普通に見えてきちゃうというぜいたく(大きな画像はこちら)
だんだん麻痺してきて普通に見えてきちゃうというぜいたく(大きな画像はこちら
そしてすごくカラフルだ。(大きな画像はこちら)
そしてすごくカラフルだ。(大きな画像はこちら
いやはや、またもや写真を並べ立ててしまって申し訳ない。でもやっぱりすてきなのでしょうがない。

この高層っぷりについては、以前屋上の記事を書いた時に香港の違法屋上家屋について触れた。詳しく話し出すとこれも長くなるのでかんたんにいうと、要するに土地がなく住宅供給が追いついていないのが香港の現実なのだ。
このかわいいビルの屋上にあるのも違法屋上建築。きっとほかの高層のビルの上にもあるんだと思うが、高すぎて地上からは見えない。いつか「香港屋上建築ツアー」をやってみたい。
このかわいいビルの屋上にあるのも違法屋上建築。きっとほかの高層のビルの上にもあるんだと思うが、高すぎて地上からは見えない。いつか「香港屋上建築ツアー」をやってみたい。
さて、高層がぎっちり、っていうのもすごいが、色使いもすごい。
すごくポップな色使いのものがあちこちに。
すごくポップな色使いのものがあちこちに。
前ページ最初の
前ページ最初の "Ka Wai Chuen Block" のエントランスなんてこんな色だし!
日本ではなかなかお目にかかれないカラフルさ。これは街行く人の着ている服にも通ずるものがあると思った。
おかげで日本では浮きがちな、ぼくのけったいな服も街に溶け込んでいました。
おかげで日本では浮きがちな、ぼくのけったいな服も街に溶け込んでいました。
あと地下鉄の駅もすごくカラフルだった。かわいかったので角丸に加工してみた。
あと地下鉄の駅もすごくカラフルだった。かわいかったので角丸に加工してみた。
地下鉄も駅ごとにテーマカラーが決まっていて、一面その色のタイルで覆われていて、なんだか不思議な空間になっていた。

ホテルの最寄り駅の色覚えておけば、列車の車窓からすぐ判別できるのでこの色使いはとても便利。日本でもやればいいと思った。

あと「駅もれ」がひとつもなかったのが印象的だった、日本が地震とともに地下水に悩まされているのだということを実感。

さて、2ページも終わり、ここまでビルの写真ばかりで辟易している方もいらっしゃるかと思いますが(これでもかなり写真の点数削ったんです)、次のページもビルです。

でもかなり毛色が違いますよ。ザハの建築ですから。そう、いま話題の新国立競技場のあのザハさんのビルが香港にはあるのだ。
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ぼくの服の色よりけったい

ザハの建築があるのは香港理工大学の中。「イノベーション・タワー」という名前で、デザイン系学部がここに入っている。
前ページまでとうってかわってこんなビル!(大きな画像はこちら)
前ページまでとうってかわってこんなビル!(大きな画像はこちら
見る角度が変わるとぜんぜん違う形に(大きな画像はこちら)
見る角度が変わるとぜんぜん違う形に(大きな画像はこちら
先日東京でザハ展が行われ(2014年10月18日~12月23日)、ぼくも見に行った。いろいろ思うことがあったのだが、これはとにかく実際の建築を見てみなくちゃな、と思った。それで団地もそこそこに切り上げてこの大学に向かったしだいだ。

やっぱりね、実物見ると圧倒されるよ。よくこんなもの作ったなー、と。いろいろあって完成したのは昨年2013年だそうだ。

上の写真見るとかなりの高層に見えるけど、これ細かくルーバーが走っているのでそう感じるだけで、実際にはそれほどでもない。14階建てだ。これまでの団地に比べればどうってことない。

とにかくスケール感がよく分からない。ディテールがサイズに合ってない。模型作ってシフトキー押しながらドラッグして拡大した感じ。
中に入ると、こんな。デザイン科の学生による展示が行われてた。
中に入ると、こんな。デザイン科の学生による展示が行われてた。
ザハ的期待を裏切らない内部デザイン。
ザハ的期待を裏切らない内部デザイン。
階段のある吹き抜けはこんな。
階段のある吹き抜けはこんな。
廊下はこんな。
廊下はこんな。
あちこちに展示スペースがあって楽しそうだった。
あちこちに展示スペースがあって楽しそうだった。
どちらかというと、ぼくは中にびっくりした。ザハってけっこう「中の人」なんじゃないか。中、きらいじゃない。

でもやっぱり作るのたいへんだったみたいで、仕上げがちょっと雑というか甘い。

あと、写真撮っててまっすぐかどうか分からなくて困った。ぼくは垂直にこだわる人間なので(過去のぼくのどの記事見てもらっても垂直だけはビシッとしているはずだ)難儀した。
いったい垂直の線はどこにあるんだ。こまるよほんとに。
いったい垂直の線はどこにあるんだ。こまるよほんとに。
しかしザハがどんなにがんばっても、雨だれの跡が垂直をあらわにする。
しかしザハがどんなにがんばっても、雨だれの跡が垂直をあらわにする。
新国立競技場の問題に関してのぼくの意見は話がややこしくなるので置いておくとして(あ、一点、重鎮建築家の槇文彦氏がザハの案を批判して「まるで土木構築物」と言ったのはドボクファンとして看過できない)、いまや「勢いのある国にはザハのひとつやふたつあるもんだ」という感じになってるので、日本にもあってもいいんじゃないかと思った。それが新国立競技場かどうかはさておき。
ひとついえるのは、大学内のほかの建築がみんなレンガ調の重厚なデザインなのでザハも映えるんだよなー、ということ。左の奥にちらっと見えるが、すごいコントラスト。
ひとついえるのは、大学内のほかの建築がみんなレンガ調の重厚なデザインなのでザハも映えるんだよなー、ということ。左の奥にちらっと見えるが、すごいコントラスト。
さて、団地とザハと、もうひとつ香港に来た理由がある。それは団地写真家に会うためだ。
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団地のもとの友情

今回師走の忙しい時期に突発的に香港に赴いたのは、彼の地に住む大好きな写真家 Dustin Shum さんが団地の写真の展覧会を開いていたからだ。

日本を発つ前に体調も崩したが(実はあまりに具合が悪くて行きの飛行機で吐いた。でも到着して団地見たら元気になった)、どうしてもこれを見たかったのだ。
尊敬する香港の写真家。すごーーーくナイスガイの Dustin Shum さん。ぼくは生まれ変わったら彼になりたい。この記念写真は一生の思い出だ。
尊敬する香港の写真家。すごーーーくナイスガイの Dustin Shum さん。ぼくは生まれ変わったら彼になりたい。この記念写真は一生の思い出だ。
"The Salt Yard " という彼と彼の仲間で運営しているギャラリーで行われていた。みなさんも香港に行ったらここ行ってみて。すてきだから。
古いかっこいいビルの一角を自分たちで改装してギャラリーにしている。この入り口の木の板、日本の小学校の机(こういうやつ)の天板の再利用だって!すごい!「1個1ドルで中古品を引き取ったからすごく安上がりだったよ」って言ってた。
古いかっこいいビルの一角を自分たちで改装してギャラリーにしている。この入り口の木の板、日本の小学校の机(こういうやつ)の天板の再利用だって!すごい!「1個1ドルで中古品を引き取ったからすごく安上がりだったよ」って言ってた。
その名も
その名も"BLOCKS PHASE II" という名の団地写真展。
「シノゴ」と呼ばれる大きなフィルムの写真機で撮った香港の団地たち(ちなみにぼくの団地写真集もシノゴで撮ってます)。ほんとすてきな展示だった。この写真が一番好き。
「シノゴ」と呼ばれる大きなフィルムの写真機で撮った香港の団地たち(ちなみにぼくの団地写真集もシノゴで撮ってます)。ほんとすてきな展示だった。この写真が一番好き。
彼と知り合ったのは、以前カルカルで行った「間取り図ナイト」というイベントに彼が来てくれたとき。ネットでぼくの団地写真を見てくれたらしく、来日したときにたまたまやっていたイベントにわざわざ来てくれたのだ。うれしい。

「それにしても間取り図とか工場とか、マニアックな内容でイベント開けるなんて日本はほんとすごいよね。香港じゃあり得ない」って言ってた。いや、カルカルが変なだけだし。
展示は残念ながら終わってしまいましたが、団地趣味の方、ご安心ください。この展覧会の作品を収めた写真集があります!彼のギャラリーサイトでオンライン販売してます。
展示は残念ながら終わってしまいましたが、団地趣味の方、ご安心ください。この展覧会の作品を収めた写真集があります!彼のギャラリーサイトでオンライン販売してます
この写真もすごかった。「この団地、入り口が崖の上にあって、道路からエレベーターで上がっていくようになってるんだよ」とのこと。
この写真もすごかった。「この団地、入り口が崖の上にあって、道路からエレベーターで上がっていくようになってるんだよ」とのこと。
いつか彼に「香港団地ツアー」をやってほしい。
いつか彼に「香港団地ツアー」をやってほしい。
ぼくも写真もっとがんばろう、と思いました。すてき。
ぼくも写真もっとがんばろう、と思いました。すてき。
英語が堪能な Dustin はぼくのかなりてきとうな英語を一生懸命聞き取ってくれて、気がつけば何時間か話し込んでしまった。

「"Ka Wai Chuen Block"行ったよ」
「あー、あの団地はいいよねー。"Mei Ho House"は行った?」
「あ、それは明日行くー」

などと団地談義しながら不思議な気分になった。もはや国籍や民族より趣味によってぼくらは連帯しているのだ。政治体制などとは関係なく、団地のもとにぼくらは仲良くなった。グローバル化とはこういうことか。違うか。
記念写真撮ろう、ってなってセルフタイマー用に三脚用意してくれた。「三脚にカメラセットすると急に垂直が気になるよねえ」「わかるー」っていう「カメラマンあるある」で盛りあがった。
記念写真撮ろう、ってなってセルフタイマー用に三脚用意してくれた。「三脚にカメラセットすると急に垂直が気になるよねえ」「わかるー」っていう「カメラマンあるある」で盛りあがった。
後ろ髪引かれつつギャラリーを後にしようとするとき、彼が言った。

「デモは見た?」

そうなのだ。最後にもうひとつ。この時期に香港に行った理由は「雨傘革命」を見るためもあった。

「まだ見てない。見たいんだけど、どういう雰囲気なのかな?だいじょうぶかな?」
「衝突もあったけど、いまは穏やかだよ。あれは見ておくべき!」
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このデモ、なんなんだろう?

日本でも報道されたのでみなさんご存じかと思うが、今年2014年の9月から、普通選挙を求めて香港の学生を中心に大規模なデモが行われた(この記事を書いている時点ではすでにデモ拠点は撤去されている。以下の写真は撤去前のもので、現在はこんなふうではない)。

ぼくはいままでデモに参加したこともないし、ちゃんと見たこともない。せいぜい出かけた先で行進に出会ったら、横目で眺めて通り過ぎる程度だ。

このデモに関しても意見が言えるほどちゃんと勉強しているわけでもない。ので、そういうことについては触れない。ネット上にいくらでも情報があるので、そういうのはそちらを見てほしい。

ただ、静かに淡々と道路を占拠する様子にぐっとくるものがあったので、それについて書きたいと思う。

ともあれまずは道路占拠の様子を見てみよう。2014年12月6日の夜。場所は金鐘(Admiralty)
路上にたくさんのテントが張られ、人でいっぱい。背後に見えるのが政府の建物(大きな画像はこちら)
路上にたくさんのテントが張られ、人でいっぱい。背後に見えるのが政府の建物(大きな画像はこちら
ここは本来ハイウェイなのだ。ニュースでは見ていたが、いざ目の当たりにするとすごく不思議な光景。
ここは本来ハイウェイなのだ。ニュースでは見ていたが、いざ目の当たりにするとすごく不思議な光景。
道路が高架になる先の方まで続いている。
道路が高架になる先の方まで続いている。
浮かれたビルのネオンとあいまってますます不思議な光景に。
浮かれたビルのネオンとあいまってますます不思議な光景に。
高架の上の方から振り返り見下ろすと、こんな。
高架の上の方から振り返り見下ろすと、こんな。
ほんとに不思議な雰囲気だった。なにが不思議って、すごく静かなのだ。たぶん香港中心部でこんなに静かな場所めずらしいのではないか。団地よりも静かだったかもしれない。

デモなのにほかのどの場所よりも静か、っていうのはおもしろい。
まさに
まさに "KEEP CALM" だった。
あとすごく面白かったのは、参加している学生たちが、みんな勉強してるのだ。
真ん中、中央分離帯そばに自家発電機から電気が引かれた大きなテントがあり、そこでみんな静かにレポート書いてたり本を読んでいたりしてた。これはほんとにデモなのか、って気分になった。
真ん中、中央分離帯そばに自家発電機から電気が引かれた大きなテントがあり、そこでみんな静かにレポート書いてたり本を読んでいたりしてた。これはほんとにデモなのか、って気分になった。
分厚い英語の専門書読んでる参加者。
分厚い英語の専門書読んでる参加者。
ぼくが知っている・想像していたデモとまったく違う。ハイウェイを占拠している、ということ以外、ものすごく「日常」だった。学生でいっぱいなのに、みんな静か。騒いでいる人が誰もいない。これはいったいなんなのだろう、とドキドキした。不思議な気分だ。
ゴミもきちんと分別。
ゴミもきちんと分別。
そしてもうひとつ面白かったのは、ぼくをふくめて「見物人」が、これまたしれっと日常な感じでたくさんいたことだ。中には犬の散歩させてる近所の住民もいた。
デート帰りのサラリーマンカップルもしばしば見かけた。
デート帰りのサラリーマンカップルもしばしば見かけた。
ここが本来ハイウェイであること、参加者は静かにただ居るだけということ、見物人がふつうにたくさんいること。

ぼくが思ったのは、これは「場所に別の可能性を記録している」ということなんだな、ということだった。いいですか、いまからぼくはDPZに似つかわしくない良いことを言いますぞ。

このデモがどういう結末を迎えて今後香港の政治がどのようになるのかはぼくには分からない。学生たちが望んでいるようなふうにはいかないかもしれない。でも、彼らと香港市民は、この場所に来るたびにこの不思議な光景と雰囲気を思い出すだろう。もちろんぼくもだ。きっとぼくは死ぬまで "Admiralty" と聞いたらこの夜とこの場所、彼らが求めていたことを思い出すだろう。このデモの効用はそういうことではないか。
ほかには各所にあった粋なオブジェやポスターもおもしろかった。陸橋にぶら下げられたこのシンボルである傘をモチーフにしたオブジェかわいかった。
ほかには各所にあった粋なオブジェやポスターもおもしろかった。陸橋にぶら下げられたこのシンボルである傘をモチーフにしたオブジェかわいかった。
時間は過ぎ去ってしまっても、場所はそこにある。ぼくは建築など空間のデザインの機能とは「外部記憶装置」だと思っている。過去の思い出がもっとも強烈に思い起こされるのは、それが起こった場所に立ったときだ。つまり、ぼくらの記憶は頭の中にあるのではなくて、場所に保管されているのだ。だからぼくは写真家になった。写真はその場所に行かないと撮れないから。
上から見ると、こんな。下のテントと同じ「傘状の形」で向き合う感じがすてきだと思った。
上から見ると、こんな。下のテントと同じ「傘状の形」で向き合う感じがすてきだと思った。
場所によってぼくらは過去と現在と未来とを区別せずに考えることができるようになる。

「歴史に "If" (もしも)はない」というが、それは後世の人間が言うことであって、今現在を動かすのは "If"だ。

しかし「別の現在があるかもしれない」と想像するのはなかなか難しい。それを容易にするのも場所の機能だと思う。ハイウェイがハイウェイでなくなった、ここで行われたことによって「いま・ここ」にいる「私」とは別の現在と未来があるかもしれないと想像できるようになる。

このデモはそういう「想像」のために行われて、それは成功したとぼくは思う。
あまりに不思議な雰囲気に動揺して、自分でもよく分からないまま気がついたらテントをひとうひとつ撮影してた。大きな画像はこちら。
あまりに不思議な雰囲気に動揺して、自分でもよく分からないまま気がついたらテントをひとうひとつ撮影してた。(大きな画像はこちら

なんかすみません

えーと、なんだか最後らしくない感じになってしまいましたが「香港の団地すてき!」ってことだけ伝わればいいな、と思います。
デモの現場で「想像」について考え、ふと目を上げたらそこに
デモの現場で「想像」について考え、ふと目を上げたらそこに "IMAGINE" があった。

【告知】12月28日コミケに新作写真集持って行きます!

以前書いた、コミケに参加するために自分で写真集を作ってみたという記事。楽しくてあれ以来毎回何かしら作っては参加しています。そして今年の年末のコミケも!

今回、かなりすてきな写真集ができたので、みなさん、ぜひ。詳しくは→こちら
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