特集 2014年12月5日

毒蝮三太夫参加の「おもしろおじさん」PVに出演します

「おもしろおじさん」のPV撮影風景
「おもしろおじさん」のPV撮影風景
ある日、ユニバーサルミュージックの方からメールが届いた。DJ JET BARON(高野政所)のメジャー1stアルバムに「おもしろおじさん」という曲があり、その楽曲には毒蝮三太夫さんも参加していて、今度PVを撮影することになったから出演していただけないか。

3回読み直したけど全く意味が分からなかった。情報量が多過ぎる。僕はどこで何をしたらいいのか。良く分からない状態のまま、PV収録の日を迎えた。
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。


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出演オファーまでの経緯

そもそも、何故僕に声がかかったのか。その理由は10年前の記事にある。当サイトで執筆した「拝啓、毒蝮三太夫さま」という記事だ。かねてから憧れていた毒蝮さんの毒舌を勉強するため、ラジオ番組「ミュージックプレゼント」の現場を取材した。結果、毒蝮さんのオーラにやられ、毒舌を盗むことは出来なかったのだが…。

そんな毒蝮さんが、DJ JET BARONさんの楽曲「おもしろおじさん」にラップで参加することになり、ユニバーサルミュージックの人が10年前の僕の記事を見つけてくれて、PVへの出演オファーとなった訳だ。「おもしろおじさん」は、「今の日本に少なくなった、なんだか憎めないおもしろおじさんを賛美する曲」とのこと。その趣旨には僕も賛同だ。

DJ JET BARONさんが提唱する「おもしろおじさん」的な者を目指し日々過ごしている。オファーが来たということは、僕も「おもしろおじさん」として認められたということなのだろう。それは嬉しい。なにより、あの毒蝮さんと同じ作品に出演出来るのだ。光栄以外の何物でもない。

でも僕は、そのPVで何をしたらいいのだろうか。

そこは最後まで分からなかったが、PVの出演依頼を受けることにした。

スタジオには濃い人たちがいっぱい

クロマキー撮影のできるスタジオにて
クロマキー撮影のできるスタジオにて
収録の日、指定されたスタジオに行くと、撮影現場は異様な熱気に包まれていた。熱気の正体は、そこに居た人たちの雰囲気。只者じゃない、人たちだらけなのだ。

DJ JET BARONこと高野政所さんはスキンヘッドにキャップを被り、ゲスト参加ミュージシャンのCHOP STICKさんはアフロヘア、同じくゲスト参加の丸省さんもスキンヘッドにあご髭だ。渋谷でこの3人とすれ違ったら目をそらすと思う。
写真左から、CHOP STICKさん、丸省さん、高野政所さん
写真左から、CHOP STICKさん、丸省さん、高野政所さん
他にも今回のPVに出演する、ベッドインというアイドルユニットのお二人の姿も見える。
バブル期をコンセプトにしたアイドルユニット「ベッドイン」のお二人
バブル期をコンセプトにしたアイドルユニット「ベッドイン」のお二人
そしてもちろん、毒蝮さんもいる。
10年ぶりの毒蝮さん
10年ぶりの毒蝮さん
以上のようなメンバーがスタジオに集まっているのだ。とにかく濃いのである。

スタジオの濃密な雰囲気に負けないよう、とりあえず、カーディガンを脱いで白いワイシャツ姿になった。ディスコでは白いシャツが目立つ。若い頃に友人と導き出した結論である。

そして、スタジオに集まった個性溢れる面々をまとめるのが、今回のPVを監督するホンマカズキさん。MINMIや湘南の風の若旦那のPVや、モモクロのVJを手がけているという。
監督のホンマカズキさん
監督のホンマカズキさん
監督は毒蝮さんから「メロンパンみてぇな顔だな!」と言われていて、親に自慢すると言っていた。僕は心の中で勝手にメロンパン監督と呼ぶことにした。僕のPV出演がどのような物になるのか。その命運はメロンパン監督が握っている。
僕はなぜここにいるのか?
僕はなぜここにいるのか?

撮影スタート。毒蝮ワールドが炸裂する

撮影の準備が整い、毒蝮さんがクロマキーの中に入る。それまで和やかだったスタジオにピーンと緊張感が走る。
毒蝮さんの撮影スタート
毒蝮さんの撮影スタート
「おもしろおじさん」の毒蝮さんパートを撮影するようだ。カメラの前に立つやいなや、いきなり毒蝮さんが吠え始める。

「おい、ババァ、マームちゃんって言ってみな
違うだろこのババァ!
この曲誰に贈るんだい? え? あの世に送る?」

毒蝮節が炸裂し、スタジオ内は笑いに包まれる。
毒蝮さんがミュージックシーンに登場するのは18年ぶり
毒蝮さんがミュージックシーンに登場するのは18年ぶり
18年ぶりのミュージックシーンだというのに、ブランクを感じさせない軽快なテンポで毒舌ラップを繰り広げる毒蝮さん。それをモニター越しに確認する、高野さん、CHOP STICKさん、丸省さん。
毒蝮さんの様子をモニターで確認する3人
毒蝮さんの様子をモニターで確認する3人
ノリノリな毒蝮さん
ノリノリな毒蝮さん
3名のミュージシャンが、毒蝮さんの一挙手一投足に夢中になっている。モニター越しに交わされる毒蝮さんとミュージシャンの会話。

僕もこのグルーヴに乗らなければ!
4人目のミュージシャンとして
4人目のミュージシャンとして
お三方と並んで毒蝮さんの様子を見守ったことにより、僕も少し「おもしろおじさん」の曲の世界に入れたように感じる。PV出演にあたっての、自分なりの役作りである。

監督がその場で毒蝮さんを合成画面にはめ込んで見せてくれた。
毒蝮さんが3人
毒蝮さんが3人
合成された画面を見て、

「今はこんなことが出来るのか? バルタン星人みたいじゃねーか!」

と毒蝮さん。アラシ隊員の口から出る「バルタン星人」という響き。何とも感慨深い。

「菅井きんさんには分からない世界だろうな」

と毒をはき、再びスタジオが笑いに包まれ、撮影が再開する。

次の撮影は毒蝮さんをベッドインのお二人が囲む、というシーンである。
毒蝮さんとベッドインのお二人
毒蝮さんとベッドインのお二人
ベッドインのお二人を両手に抱えると、

「いつものババァとは全然感触が違うね」

と、また笑いを取る毒蝮さん。素敵過ぎる。

毒蝮さん、衣装チェンジ

撮影は順調に進み、毒蝮さんが衣装を変えて登場した。
ラッパーに変身した毒蝮さん
ラッパーに変身した毒蝮さん
「ラッパーってのは、こんな格好するのか?」

と怪訝そうな顔をする毒蝮さんだが、その似合いぶりに現場にいた全員が驚いている。ラップ界のドン! といった貫禄が漂っている。このPV撮影のことを聴いたストリート・ブランドのSpecial Oneのスタイリストさんが用意した服だそうだ。

「中は網だぞ。俺は漁師か!」

と照れくさそうに自分の服装に突っ込んでいるが、カメラの前に立てば照れはなくなり、堂々と毒蝮ラップを繰り出す。
ラッパースタイルで再び
ラッパースタイルで再び
大喜びのお三方
大喜びのお三方
スタジオ内に「おもしろおじさん」のコーラス部分が鳴り響き、毒蝮さんと高野さん、CHOP STICKさん、丸省さんがカメラの前で暴れだす。
スタジオの興奮がピークに
スタジオの興奮がピークに
「愛を振りまき おもしろおじさん
毒をばら撒く おもしろおじさん」

高野さんたちは大声で歌い、毒蝮さんが舞う。

そんな様子を見て、「なんて気持ちのいい連中なんだろう」と、思わず「カリオストロの城」の名台詞が頭に浮かぶ。

そこに、ベッドインのお二人も加わり、スタジオ内はもうお祭り騒ぎである。
今夜は
今夜は
パーリィーナイト!
パーリィーナイト!
お祭り騒ぎの収録が終わり、毒蝮さんは控え室に戻った。
一仕事終えたラップ界のドン
一仕事終えたラップ界のドン
「ラップってのは、元気が出ていいな。演歌じゃこうはならないだろ」

と高野さんたちに収録の感想を述べる毒蝮さん。

「でも、今日のことは誰にも説明ができねーな。もう、二度とやらねぇよ」

と、最後まで毒蝮節は忘れない。
テレビ番組向けのコメント撮りをするラップ界のドン
テレビ番組向けのコメント撮りをするラップ界のドン
毒蝮さんの収録が終わり、次はいよいよ僕の出番である。

あの盛り上がりの後に、僕に何が出来るのだろうか?
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おもしろおじさんとして、踊れ!

おもしろおじさん、というコンセプトから、事前にネクタイは用意しておいた。ネクタイを頭に巻いて、気のいい酔っぱらいを演じる。これが、僕なり考えてきた「おもしろおじさん」の演技プランだ。
気のいい酔っぱらいをイメージして
気のいい酔っぱらいをイメージして
ネクタイを頭に巻きカメラの前に立ち、「で、僕は何をしたらいいでしょう?」とメロンパン監督に聞く。

監督から出た言葉は、

「さっきのように踊ってください」

であった。

お、踊るのか。
監督からの演技指導
監督からの演技指導
さっき全員で踊っていた部分を住さんなりの踊りで表現してください。

と、メロンパン監督。

踊ることは想定していなかったので、戸惑っていると、

「大丈夫、おもしろおじさんになりきれば出来る!」

と監督から励まされる。
全力を尽くしましょう
全力を尽くしましょう
俺はおもしろおじさんだ! と自己暗示をかけて、さっきまで毒蝮さんを映していたカメラに向かって踊りを披露する。
自分なりのダンスを
自分なりのダンスを
音楽に合わせ色々な動きをやってみた。

「カット!」

と監督の声が響き、音楽が止まる。今のダンスを監督と一緒に確認する。
モニターで
モニターで
ダンスチェック
ダンスチェック
いい感じじゃないですかね、と監督に声をかけるが、答えが返ってこない。アシスタントの2人に、「どう思う?」と聞いている。経験上、こういう場合は納得していないことが多い。
これ、どうだ?
これ、どうだ?
アシスタントは何も言わない。

いや、いいんじゃないでしょうか。気のいい酔っぱらいを表現した訳ですから。ほら、「おもしろおじさん」の歌詞にも「ブルース・リーよりジャッキーチェーン」ってあるじゃないですか。酔拳ですよ、酔拳。

ヤバい時ほど早口になる。
それが、このときの僕の状況だ。

監督は、

「今のだと、おもしろおじさんって言うより、おもしろおじさん風(ふう)なんですよ」

と急に厳しいことを言い始めている。

「このまま続けるのはフィルムの無駄です」

MPEGデータで収録していることを僕は知っているが、そこは突っ込むべきではないのだろう。作品に対して真摯に向き合った結果、「フィルムを無駄に出来ない」という言葉が口をついて出たのだと思う。
風(ふう)、なんだよなぁ
風(ふう)、なんだよなぁ
もっと、おもしろおじさんじゃないと…
もっと、おもしろおじさんじゃないと…
三船敏郎も黒沢組の作品に参加した当初は黒沢監督から色々とダメ出しを受けたと聞く。僕が「おもしろおじさん」だと思って踊った舞が違うというのなら、監督の見本を見せてもらうしかない。

メロンパン監督に、風ではないおもしろおじさんの舞をやっていただいた。
たとえば、こんな風に
たとえば、こんな風に
こうしてみたり
こうしてみたり
お腹を出すのもアリだし
お腹を出すのもアリだし
正直、僕の舞との違いが分からない。しかし、こんなに熱心に演技指導をしてくれているのだ。監督の意図をくみ取り、僕なりの「おもしろおじさん」の舞を披露するしかない。
母さん、僕は今
母さん、僕は今
正解の分からない課題と
正解の分からない課題と
向き合ってます
向き合ってます
3分ほど踊っていると、

「カット!」

今度は明るいトーンで監督の声が響いた。

「素晴らしい! これは良い作品になりますよ!」

と握手を求めてきた。お互いの意見をぶつけあった結果、僕の「おもしろおじさん」は見事に完成したのだ。僕は監督の手を強く握り返した。
ベッドインのお二人と記念撮影。「ハイチーズ」の代わりに「ギルガメッシュ!」と言っていた
ベッドインのお二人と記念撮影。「ハイチーズ」の代わりに「ギルガメッシュ!」と言っていた

今回のような機会をいただいたユニバーサルミュージック、DJ JET BARONさん、CHOP STICKさん、丸省さん、そして、毒蝮三太夫さん。全ての人たちに感謝の気持ちで一杯だ。

このPVは12月7日頃完成の予定である。この記事の公開には間に合わなかったが、今、メロンパン監督が鋭意編集中である。出来上がりがとても楽しみである。

尚、この「おもしろおじさん」が収録されたDJ JET BARONさんの1stアルバム「Enak Dealer」は12月3日に発売されています。急いでレコード店へ!


※PVが完成したらTwitterなどでお知らせします。
素晴らしきおもしろおじさんたち
素晴らしきおもしろおじさんたち
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