特集 2014年12月15日

プリキュアのキラキラを中和する

 女子力と正義の圧がすごい
女子力と正義の圧がすごい
女児に人気のアニメ、プリキュアシリーズは2014年の今年、10周年を迎えたらしい。

毎年新シリーズが放映され、そのたびに主人公のプリキュアが新しく登場する。10年も経つとプリキュアの人数もかなりの数になる。一堂に会すると、キラキラ感が 圧倒的だ。まぶしすぎるのだ。

これじゃ直視できない。なんとかしてそのまぶしさを中和したい。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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光と影の調和を目指して

今回入手したのは、ホームセンターでたまたま目にしたプリキュアのレジャーシート。
 単体でも十分まぶしい
単体でも十分まぶしい
今年は10周年ということで、歴代プリキュア36人が勢揃いしたデザインになっているらしい。 パッケージの外からでも全体のデザインがわかる紙が入っている。
 目を細めないと見えない
目を細めないと見えない
さらには袋から出して広げてみると、予想以上に女児向けオーラが爆発。部屋の空気を一変させる存在感を放つのだ。
 プリキュアに次ぐプリキュア、そしてプリキュア
プリキュアに次ぐプリキュア、そしてプリキュア
よく見るとそれぞれ特徴のあるプリキュアが、シート全体になると抽象的なキラキラとなって、見る者の心をパステルカラーの正義で攻め立てる。
 なぜだか負けたくなさが発動
なぜだか負けたくなさが発動
 どげんかせんといかん!
どげんかせんといかん!
小学校の理科の授業で、太陽は直接見てはいけないと習った覚えがある。それと同じ強烈な輝きを、このプリキュアオールスターシートにも感じるのだ。ならば、私が身を挺してその光を和らげようではないか。
正義を心に灯して
正義を心に灯して
まずはターゲットとなるプリキュアを意識して自らの写真を撮ろう。大きさを合わせてこの顔をプリントアウトし、プリキュアの輪郭 と同じように切り抜いてシートに貼り付けるのだ。
 水滴にみたいになった
水滴にみたいになった
説明だとわかりづらいだろうから、実例を見せた方が早いだろう。上のプリキュアは、以下のようになる。
中和されたね!
中和されたね!
そこに現れたのは、正義以外の何かを見つめるプリキュア。吸い込まれそうなキラキラはトーンを落とし、プリキュアして生きる苦しみが表に出てきている。
クラスになじめないプリキュアが1人
クラスになじめないプリキュアが1人
 使用したのはスーパーファイン紙
使用したのはスーパーファイン紙
 出てきた自分もスーパーファイン
出てきた自分もスーパーファイン
自分の分身としてのプリキュア量産体制。正義の敵は悪ではなく、また別の正義なのだ。
 ディティールも忠実にカット
ディティールも忠実にカット
 クラスを侵食するプリキュアとしての自分
クラスを侵食するプリキュアとしての自分
できあがったセルフプリキュアを順番に貼っていくと、キラキラしていたプリキュアたちが鈍い光を放ちはじめた。これなら裸眼でも安心して正視できるだろう。

作業を始めて数時間、腰の痛みが限界に近づこうとしていたとき、なんとか完成させることができた。
中和完了
中和完了
まず思ったのは、「トータルとしてはまだ結構キラキラしてんな…」ということだ。個別事例としては完全に中和したはずなのに、全体のプリキュア感にはまだ勢いがあるのがすごい。
一体感はまるでない
一体感はまるでない
拮抗する光と影
拮抗する光と影
 相反する要素に引き裂かれそうになる
相反する要素に引き裂かれそうになる
それでもプリキュアを1人ずつ見れば、ひどいことになっているのは間違いない。「木を見て森を見ず」と言うが、木レベルでは僕の勝ちだろう。
 ウインクしてるプリキュアもいる
ウインクしてるプリキュアもいる
 正確にトレースしたい
正確にトレースしたい
うざいことに写真を撮影する際、元々のプリキュアの表情も真似して撮っている。上の写真の例でも、表情としてはかなりの再現度であることがわかるだろう。

そしてそこからわかることは、表情を再現しても再現されない部分の方が多いということだ。

妙にはまった事例

プリキュアは36人もいるので、それぞれ個性と再現度に違いが出てくる。中にはやけにぴったりと決まった例もいくつかあった。
なんだろうね
なんだろうね
プリキュア化した自分と向き合って湧いてくる感情をうまく説明できない。いつの間にか自信が揺らぎ、中和という大義名分すらおぼろげになっていく。
たいへんだ
たいへんだ
これはたいへんだ
これはたいへんだ
プリキュアはその物語の中で悪と戦っているのだろうが、これらのプリキュアを見ていると何が正義で何が悪なのかわからなくなってくる。正義と悪の対立という構図が見えづらくなってくるのだ。

無理がある事例

やたらとフィットしたプリキュアがいるのと反対に、どうしてもなじめないプリキュアもいた。
 プリキュア先輩、自分にはムリっす
プリキュア先輩、自分にはムリっす
正式版プリキュアの中には顔がやたらと小さく、目と口の距離が異常に短い者もいる。上の例、撮影前からこれは厳しい戦いになるぞ…と予感していたが、やはりなかなか難しい結果となった。
 もうなんか怖いよ…
もうなんか怖いよ…
 勘弁してください
勘弁してください
口をギリギリ輪郭の最下部にまでもってきても、目が入りきらない。これは私の顔がでかいということとは別の話だろう。問題になるのはパーツ間距離の比率であるはずだからだ。

なんかむかつく事例

中和されたプリキュアの中には、フィット感とはまた別の軸で心にざわめきをもたらす者もいる。もうここまでで十分にむかついているとも思うのだが、さらに拍車をかける奴がいるのだ。
なんか腹立つ
なんか腹立つ
フィット感はまずまずと言えるこの事例。ただ、出来映えとは別の意味で、なんだか腹立たしくさせられるのはなぜだろうか。
 なぜなのか
なぜなのか
 謎が解けたかも
謎が解けたかも
それはきっと、ポージングの問題なのだと思う。正式版が乙女チックなポーズを取っていることで、中和が不十分になって、見る者に怒りに近い感情を起こすのだと思う。そういう意味で、私自身の罪ではないのだ。

現役プリキュアファンとの対峙

ここまでは1人遊びだったが、プリキュアの中和という実験をしたからには、その結果を世に問いたく思う気持ちが湧いてくるのも必然だろう。
 正式版が透けて見える裏面側でセット
正式版が透けて見える裏面側でセット
できたら現在進行形でプリキュアに夢中のファンに判断を仰ぎたい。そういうわけで、プリキュアを毎週見ているという知人の娘さんを自宅に招くことにした。

中和版プリキュアは、裏返すと正式版が透けて見えるのでちょうどいい。ここから逆転させて、このプロジェクトの成果を見てもらおう。
 プリキュアってキラキラし過ぎて目に悪くないかな?
プリキュアってキラキラし過ぎて目に悪くないかな?
やってきた娘さんに、まずはレジャーシートの柄見本カードを見せる。「プリキュアが好きって聞いたけど、これだよね?」と聞くと、「うん!」と元気に答えてくれた。

よし、確認オッケー。ここで中和版レジャーシートを裏返して「じゃあ、どのプリキュアが好き?」と聞いてみた。
とりあえず無言
とりあえず無言
広げた瞬間、素早く後ずさってお父さんの陰に隠れてしまった。不穏を察して回避する能力を5歳にしてしっかり持っている賢明な娘さんだ。

「どれが好きかな?どれかな?」と聞くも、答えはない。
 怖がらなくていいんだよ
怖がらなくていいんだよ
 距離を詰めようとしない
距離を詰めようとしない
それでも繰り返し「どれが好きか言っていいんだよ」と聞くと、ついに「全部イヤだ」と答えてくれた。わかっていたけど、それが正解である。

「これもひとつの、正義と悪の戦いなんだよ…」と言ってはみたものの、言葉は虚しく通り過ぎていくだけだ。
 「こっちは本物だから!信じて!」
「こっちは本物だから!信じて!」
こういうこともあろうかと思って、いたずらしてない正式版のプリキュアぬりえを用意しておいた。これは本物だから、ちゃんとしたやつだから、大丈夫だから…。

プリキュアのビジュアルショックで閉ざされた心を開くには少し時間がかかったが、受け取ってくれたのでなんとか信じてくれたのだと思う。
 おっ、慣れてきたかな?
おっ、慣れてきたかな?
 怖いもの見たさってあるよね
怖いもの見たさってあるよね
そのあとみんなで食事をするうちに、ショックが癒されてきたのか自らシートに近づいて遊び始めた。さらにすると、チラッとめくって中和版プリキュアを確認しているではないか。
 恐怖はもう克服できたんだね
恐怖はもう克服できたんだね
怖いもの見たさ的にめくっているのかと思っていたが、シートを改めてよく見た娘さんが言った言葉は「私もこれ、やりたい!」。

そう、自分をプリキュア化した今回の試みは、現役ファンの「自分もプリキュアになってみたい」という気持ちと結びついたのだ。考えてみればあり得る話しだが、この展開は予測していなかった。

よし、おじさんにまかせとけ!36人分もやったから制作ノウハウはばっちりあるのだ。
 子供がやるとちゃんとかわいくはまるんだね
子供がやるとちゃんとかわいくはまるんだね
プリキュア用の写真を撮り、先ほど渡したぬりえに加工して娘さんのプリキュア化は完了。ぬりえがこうした形で心を通わせるきっかけになったのも意外だ。
感動的な和解
感動的な和解
渡してみると「うわーっ!」と声をあげて喜んでくれた娘さん。表情もまがいのない笑顔だ。さっきは驚かせてごめんね。

でも、おじさんのしたことがこんな風に生かされて喜んでくれるなんて、本当に嬉しい。プリキュアを中和するはずだった私の心がいつの間にか中和されて、そこには優しい風が吹きはじめていたのだ。

 もう僕は1人じゃない
もう僕は1人じゃない

孤独にもがくだけだった自分に、子供と出会ったことで訪れたケミストリー。こんなはずじゃなかった。単にふざけてるだけのつもりだった。

だけど、どうしてこんなに爽やかな気持ちなんだろう。

全くの盲点だった。「自分もプリキュアになりたい!」という、女の子の夢をうっかり叶えてしまった。なのに、ありがとうと言いたいのはこっちの方だ。
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