あいからわずお肌モチモチでした。
前回僕と茗荷くんは、文の里商店街の魚屋さんでご主人の「人拓」ポスターを作らせてもらった。
このポスター、広告業界では大きな賞であるカンヌライオンズでファイナリストに残ったりもした。たぶん一番低予算だったのではないだろうか。
これは宇宙人のコスプレらしい(特にハロウィンとかではなかった)
そんなポスター展の第3回目が開催されることになったのだ。
仕掛人は、一回目から同じ。上司の日下さん。謎のお祭りセルフ祭を開催している人でもある。今回の舞台は、伊丹西台商店街。
入社一年目から、ウン十年の人まで、総勢60人のコピーライターとアートディレクターが参加することになった。僕もその中のひとりとして参加する。一緒にやるのは一回目から同じ、アートディレクターの茗荷くんだ。
お店に話を聞きに行く
フォントがかわいい。
僕たちが担当させてもらえることになったお店は、「メガネのタマキ」さんである。
1967年創業らしい。今は、店主とその息子さんで営業されているようだ。
お店のなかでイチバン高い眼鏡、35万円!(全然売れないらしい)
お店の売りを聞いたところ、「フィッティングですかねー」と教えてもらえた。度数だけではなく、骨格にもあわせてぴったりあわせてくれるらしい。
最近増えているチェーン店の異常に安い眼鏡は、日本人の顔の平均値で作られており、フィッティング自体ができない構造のものも多いのだとか。
チェーン店に眼鏡の修理にいったら、「眼鏡屋でなおしてもらって下さい」と言われた人もいたそうだ。「お前ら、ナニ屋ねんなぁ!」とご主人は笑っていた。
あと、タマキさんは、顔にあったオススメのデザインの眼鏡も教えてくれるらしい。失礼な話なのだが、街の眼鏡屋のおじさまに眼鏡選んでもらってもな~と思っていた。ところがである。
実際に選んで頂いたら、似合う気がするのだ。
茗荷くんにいたっては、無駄に視力がいいのに勧められた眼鏡が欲しいとまで言っていた。ソムリエみたいでかっこいいい。
どうやら、どんな人にもぴったりな眼鏡を提供できることがタマキさんの強みのようだ。これはどんなチェーン店にも負けないことだろう。
制作開始!
何作ろう…
広告として言わないといけないことは分かった。でも、どんなポスターを作ればいいだろうか。
言いたいことは、「どんな目にもぴったりあわすタマキさんのスゴい技術」である。
銅像とか、北京原人とか、規格外の人を連れてきてフィッティングしてもらえばいいのだろうか。
でも北京原人みたいな知り合いはいるけど、北京原人そのものじゃない。模型か何かを用意するにしても何だかよく分からない。
う~ん、目、目、目…
縫い目、境目みたいなところも掘ってはみたのだが、抽象的過ぎてよくわからん。いろいろ考えたあげく、辿り着いたのが「木目」だった。
木目に眼鏡のレンズをはめこんでもらうのだ。
コレだ!と2人でキャッキャ言いながら、いい木目の板を探しに出かける。
東急ハンズで探すが見つからない。締め切りまで日にちがない。
今日板を見つけないと100%間に合わない。
ホームセンターに行く。
なんとこの日は、台風が来ていた。並べられている板全てにブルーシートがかけられていた。なんてことだ。
仕方がないのでブルーシートを外しながら、1枚1枚確認していく。
出でよ!いい感じの木目!
木目の数が多過ぎると蓮コラみたいだし、コレだ!という板は、側面が割れていたりした。
20枚くらいめくっただろうか。ちょうどいい間隔で木目が入っているものが見つかった。茗荷くんのアートディレクション(いい感じの木目の板を見つけること)が光る。
板をB2のポスターサイズに裁断してもらう(店員さんに)
表面を磨いて穴を開ける(茗荷くんが)
穴があいた!…がだいぶ歪んだ楕円である。しかもかなり小さい。
作っといてあれだけど、ほんとにこんな板にレンズ、はめこんでもらえるのだろうか。不安が高まる。
しかし、時間もないので、重い足取りで、タマキさんへと向かう。
「まぁ、できると思いますよー」と息子さん。
軽~い。
ほんとうに大丈夫なのだろうか。かなり歪んだ穴ですよこれ。
全ての穴が、眼鏡になる可能性を秘めている。
これが眼鏡になるということは、だいたいの穴は眼鏡化できるということだ。世界中の穴という穴に、度を入れてほしい。
しかも、「3日間くらいあれば作りますよ」とのこと。
かっこいい!
ドキドキしながら、待つ。
そして3日後。
はまってる~!
しかも、レンズの種類いっぱい!
なんと、削っていただいたレンズはひとつじゃない。
サングラスや、遠近両用レンズ、色付きなど、たくさんのレンズを削って試行錯誤を重ねて頂いたようである。
レンズのはめ替えももちろんできる。晴れた日の木目には、サングラス。ちょっとお出かけする木目には、ピンクのレンズみたいなことも可能である。
仕上げ(茗荷くんに)
最後に、茗荷くんがアートディレクション(マスキングテープを切り抜いてスプレーで吹き付けてコピーを印字すること)して、完成!
木目の中だけ、少し空間が歪んでみえる。
光を通すと、木目自体が光を放っているようにも見える。
虫眼鏡のように光をあつめる姿もかっこいい。
何だかちょっとアート作品のようにも見える。
完成したポスターを息子さんに渡しにいく。
塗装するためにレンズを外したのだが、ぴったり過ぎて僕たちにははめなおすことができなかった。
息子さんにレンズをはめなおしてもらう。あいかわらずスゴい精度! 最後まで迷惑かけてしまった。
ほとんど息子さんに作って頂いたにもかかわらず、「ありがとうございました。」と言ってもらえた。うれしい…!
しかし、ボツ。
意気揚々と会社に帰ると、運営の日下さんから連絡があった。ご主人から、「ちょっとあれ、ようわかんし、もう一回作って」とお願いがあったらしい。
実は、今回のこの企画、誰に話してもピンとくる人がいなかった。自分たちではスゴクいいと思っていたのに!
ただ少し冷静になって考えてみると、ポスターというかあれ、板だ。
息子さんは、優しいからそのへんが言えなかったのかもしれない。「ポスターって聞いてたのに、あれ板だな~」と思っていたかもしれない。せっかくレンズをはめて頂いたのに、申し訳ない。
このポスター展、自由に作っていいという夢のような企画なので、間違った方向に爆走する危険性がある。知らない間にふたりよがりな企画になっていたようだ。作っている僕らだけが楽しいだけでは、ダメだ。
悲しい。そして恥ずかしい。
広告って、難しい。
ちょっと苦い思いを残しつつ、もう一度作りなおすことになった。
ポスター展開催中!
僕たちはポスター絶賛制作中ではありますが、ポスター展は2015年3月1日まで伊丹西台商店街で開催中ですので、興味のある方はぜひぜひお越し下さい!
※写真は、もう一店舗担当させて頂いたスターラブさんのポスターです。
全部で8枚ありますので、店舗でぜひぜひ!