特集 2014年10月14日

フライングディスク専門店へ行く

これ全部、すごい良く飛ぶやつです。
これ全部、すごい良く飛ぶやつです。
ある日、近所の公園でぼーっとしていたら、小さい子供とお父さんがフライングディスク(いわゆるフリスビー)で遊んでいたのだが、子供が投げてもシューッとなかなかきれいに飛んでいる。
※フリスビーは米国ワーム・オー社の商標

それがやたら楽しそうだったので僕もやりたくなったのだが、せっかく飛ばすなら、より良く飛ぶやつが欲しい。子供のオモチャじゃなくて、プロ仕様のとか、そういうの。
ネットであれこれ検索していたら、「フライングディスク専門店」というのに当たった。
なにそれ。専門店があるのか。じゃあ行かねば。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

前の記事:迫力満点の3Dチラシを作る

> 個人サイト イロブン Twitter:tech_k

プロショップは日暮里に

検索して行き当たったフライングディスク専門店は、日暮里にあった。
日暮里駅前のビルの一階にある、『D.D.Jam』さんだ。
キヨーレオピンとか「ぢ」は関係ない。
キヨーレオピンとか「ぢ」は関係ない。
外から見たらちょっとしたオシャレ雑貨屋かなにかにしか見えないが、店内に入るとギョッとする。
店内どこを見てもカラフルなお皿的フォルムのものが積み上げてあるからだ。
ルックスは輸入食器専門店に近い。
ルックスは輸入食器専門店に近い。
薄くてスタックできるから、在庫はかなりぎっしり。
薄くてスタックできるから、在庫はかなりぎっしり。
フライングディスクと言うぐらいだから基本的には円盤形のものばかりなのだが、よく見ると厚かったり薄かったり、素材も普通のプラのものからゴムやスポンジ、布までいろいろある。
鍋敷きかと思ったら、これも飛ぶやつ。編み込みフライングディスク。
鍋敷きかと思ったら、これも飛ぶやつ。編み込みフライングディスク。
持ち歩くときは折りたためるのが面白い。
持ち歩くときは折りたためるのが面白い。
漠然と「取材にかこつけて、よく飛ぶやつ買おう」と思っていたのだが、これはダメだ。
これだけあると、どれが良く飛ぶとか見当がつかない。
お店の人にちゃんと話を聞こう。

想像以上にすごいフライングディスクの世界

D.D.Jamの店主、本田嘉貴さんは、自らも長年フライングディスクの競技をやってきたベテランプレーヤーだ。
ダンディかつ気さくな本田さん。
ダンディかつ気さくな本田さん。
「すいません、フライングディスクにこれだけ色々なのがあるとは思ってなかったです」
「競技も10種類ぐらいありますからね。それぞれに合ったディスクがあるんですよ」

えっ。投げて距離競うとかそういうだけじゃないのか。

「有名なのは、フィールド上のバスケットに投げ込む『ディスクゴルフ』と、ディスクをボール代わりにしたアメフトみたいな『アルティメット』ですね」
「他にも、2人対2人でディスクを2枚投げ合い、相手のコートに同時に2枚持たせたらポイントになる『DDC』や、5対5で向かい合って、とにかく相手にキャッチされないようブン投げる『ガッツ』、ディスクを使って格好良い自由演技をする『フリースタイル』なんかも面白いですよ」

日本フライングディスク協会サイトの『種目紹介』ページから各種目の説明と動画が見られるので、細かくはそちらを見て欲しい。ディスクがブンブンと飛んでくる『ガッツ』は、ちょっと迫力ありすぎ。
左がガッツ用ディスクで、右がDDC用。固さや凹凸のフォルムなど微妙に違う。
左がガッツ用ディスクで、右がDDC用。固さや凹凸のフォルムなど微妙に違う。
「ガッツは14m離れて投げるんですが、時速100km以上でディスクがカーブしたり予想もつかないコースで飛んでくるんで、怖いですよ」

本田さんは笑顔で言うが、怖すぎるだろう。

「あと、シンプルに飛距離を争う『ディスタンス』という競技もあります。これがディスタンス用のディスクなんですが」
なんかサイン入ってる。
なんかサイン入ってる。
持たせてもらうと、薄くて、でも見た目よりかなり重い。確かに飛びそうだ。

「ディスタンス競技のワールドレコード保持者、アメリカのDavid Wigginsが使ってたモデルなんですよ。名前の下に836って数字が入ってますけど、836フィート、つまり約255mですね」

東京ドームがホームからフェンスまで122mなので、ドーム2つ分以上の距離を飛んだことになる。
それ、人間が手で投げられる距離なのか。

ディスクゴルフもまた奥深い

「ディスクゴルフ用のディスクもいろいろあって面白いですよ」
「自然のフィールドでやる競技なので、立木などの障害物をカーブで避ける用のディスクとか、距離を稼ぐディスクとか、最後にバスケットに入れる時の繊細なコントロールができるディスクとか」
「競技時には10枚20枚を持ち歩いて、その時々で選んで使うんです」

なるほど、ゴルフのクラブ選びと同じだ。
比較的距離が出るディスク。
比較的距離が出るディスク。
こちらは左に良く曲がるディスク。距離を飛ぶディスクとは厚みが違う。
こちらは左に良く曲がるディスク。距離を飛ぶディスクとは厚みが違う。
飛び方でみる、ディスクの選び方チャート。
飛び方でみる、ディスクの選び方チャート。
「これもディスクゴルフ用なんですが、ハイテクな新型ディスクです。異なる比重のプラスチックで二層構造になっているんですよ」
シャープでかっこいい、ハイテクディスク。
シャープでかっこいい、ハイテクディスク。
「外の黒い部分が重いので、遠心力で回転が上がって安定して良く飛びます」

おー、それめちゃくちゃかっこいいな。

距離は出ないが良く飛ぶディスクが楽しかった

距離が飛ぶディスクはそれだけでワクワクするが、冷静に考えたら、ふだん遊ぶのにそんな広い場所が身近にない。
なんせ東京ドーム2つ分以上を飛ぶんだからな。(世界記録を出す気満々である)

「じゃあ、自分で投げたディスクを自分でキャッチして、その滞空時間を争う『SCF』というセルフキャッチ競技用のディスクがいいかもね。ふわっと飛んで、上手に投げるとこっちに戻ってくるんですよ」
「中央の盛り上がった部分に風を受けて、ふわっと飛ぶんです」
「中央の盛り上がった部分に風を受けて、ふわっと飛ぶんです」
それ楽しそうだ!
向かい風に対して45°ぐらいの角度をつけて投げると、上空でしばらくふわーっと飛んだあと、旋回して戻ってくるというのだ。
投げ合いをする相手がいないときでも一人で遊べるし、これはいいぞ。
次から次にディスクが出てくる。
次から次にディスクが出てくる。
「犬にディスクを取ってこさせる『ディスクドッグ』という競技も、同じタイプのディスクを使います。柔らかい素材でできているので、噛んでも穴が開くだけで、割れないんですよ」

「これも風をよく受けるタイプで…」
隠し芸大会の皿回しか、というぐらいに皿を持ってた。
隠し芸大会の皿回しか、というぐらいに皿を持ってた。
本田さんがどんどんオススメを説明してくれるので、気付いたらもう持ちきれないほどディスクを抱える状態になっていた。なんかの演芸か。

室内でも飛ばせるディスク

「これなんかも面白いですよ。びっくりするぐらいゆっくり飛びます」

そう言って出してもらったのが、ディスクというか、プラスチックの輪っか。
超ふわっと飛びます。
超ふわっと飛びます。
「本当にふわーーーって感じなので、軽く投げるなら部屋の中でも飛ばせますよ」

まじですか。それ。
そう言ったからには、店内で投げさせてもらいますよ?
そう言ったからには、店内で投げさせてもらいますよ?
ふわーーーん
ふわーーーん
投げさせてもらったら、本当にふわふわと飛ぶ。受ける方も余裕でキャッチできるスピードだ。
なにこれ。超楽しい!
イメージとしては、『がんばれタブチくん』で安田が投げてた「見逃してください魔球」ぐらいのふわふわ具合。

輪っかが衝撃を吸収するので、部屋の中で家具などに当たっても傷つけることはあまりなさそう。
本田さんのフリースタイル。すげえ。
本田さんのフリースタイル。すげえ。
「これ、フリースタイル競技にも使えますよ。ほら」

そう言って本田さんは手から手へと転がしたり、回転させたのを股の下でキャッチしたりという演技を見せてくれた。すごい。

「一ヶ月ぐらい練習したらこれぐらいはできるようになりますよ」

いや、たぶんそれは無理だと思うけど、でもちょっと練習してみようか。

買っちゃったからには飛ばしたい

さて、D.D.Jamさんを辞して、その足で舎人ライナーに乗って荒川の河川敷まで移動する。
車中から、お誂え向きに飛ばせそうなところ発見。
車中から、お誂え向きに飛ばせそうなところ発見。
結局、お店でテンションが高まってフライングディスクを購入。で、ちょっとでも早く投げてみたかったのだ。
ディスク3枚購入。でももうちょっと買いたかった。
ディスク3枚購入。でももうちょっと買いたかった。
二層構造のミニディスクと、滞空時間の長いセルフキャッチ競技用、さらにふわーっと飛ぶ輪っかタイプの3枚を購入。
どうやら、シャープに飛ぶよりもふわふわぼんやりと飛ぶタイプの方が自分の性に合っていたようだ。

河川敷なら風もいい感じに吹いてるし、向かい風に投げてキャッチもできるのではないか。

意外な才能発見

最初は何投しても戻ってくる気配すらなかったのだが、30分ほど投げ続けていうちに、なんとなく旋回してこちらに戻ってくるようになった。

あとは滞空時間をちょっとずつ伸ばすチャレンジである。
どうみても及び腰なのに、なぜか良く飛ぶ藤原スローイング姿勢。
どうみても及び腰なのに、なぜか良く飛ぶ藤原スローイング姿勢。
で、そこで意外な才能を発揮したのが、撮影に立ち会ってくれた編集部藤原くんだ。

僕が何回投げても3秒ちょいで戻って来てしまうのに対して、藤原くんはコンスタントに4秒50以上をたたき出す。

滞空5秒いけば競技の予選には出られるとD.D.Jam本田さんに聞いていた(本戦は10秒以上の戦い)ので、選手クラスまであとちょっとである。
はるか先まで飛んで…
はるか先まで飛んで…
ふわーっと戻ってくる。
ふわーっと戻ってくる。
でもキャッチはできない。
でもキャッチはできない。
驚きなのは、藤原くんは今日がフライングディスク初体験だというのだ。
70年から80年代前半に小学生だった僕の世代は、フリスビー(当時はフライングディスクという言葉は知らなかった)のちょっとしたブームのようなものがあって、友達の家に遊びに行くとぜったいどこかに1枚はフリスビーがあったのだ。

ところが、86年生まれで現在まだ20代の藤原くんは、そんなもの友達の家で見たこともないと言う。
じゃあなにして遊んでたんだと聞くと「…ポケモンとかやってましたね」とこたえる。
そうか、彼が3歳の時にはもうゲームボーイが発売されていたのだ。
なんとなく負けられない気分が高まってる。
なんとなく負けられない気分が高まってる。
なんか意味もなく藤原くんが憎い。
そんなインドアな遊びばかりしてたから、飛んできたディスクもキャッチできないんだ。(本人の運動神経の問題です)

よし行くぞ。ポケモン野郎に、フリスビー世代の技を見せてやる。
飛んですぐに旋回し出すので、滞空時間は延びない。
飛んですぐに旋回し出すので、滞空時間は延びない。
猛ダッシュ。翌日以降の筋肉痛確定の瞬間。
猛ダッシュ。翌日以降の筋肉痛確定の瞬間。
ジャンプキャッチ成功。
ジャンプキャッチ成功。
どうだ、お前らがポケモン捕まえるより上手いだろう。
どうだ、お前らがポケモン捕まえるより上手いだろう。
挑発的なキャプションをつけてみたものの、写真の顔はあきらかにびっくりしてる。
正直、十数回挑戦してキャッチできたのはこれ一回だけだったのだ。
でも取れたことに変わりはない。僕ら世代の勝利である。

ともあれ、ポケモン野郎とフリスビー世代が二人してキャッキャとディスク投げに興じているうちに、あっというまに一時間ほどが過ぎていた。

やはりフライングディスク、楽しいぞ。

競技が10種類もあることや、競技毎にディスクの種類があることなど、ちょっとして遊び程度に考えていたフライングディスクの奥深さに驚かされた。

今度は広い場所を確保して、飛距離を出すディスクを投げてみたい。どこかにないか、東京ドーム2つ分投げられる場所。

取材協力
D.D.Jam
東京都荒川区西日暮里2-25-1 ステーションガーデンタワー1F
電話:03-6316-0917
先日亡くなったD.D.Jamの看板フリスビー犬の在りし日の勇姿と、現在店内にいる二代目
先日亡くなったD.D.Jamの看板フリスビー犬の在りし日の勇姿と、現在店内にいる二代目
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