特集 2014年9月13日

6480円のサンドウィッチ

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サンドウィッチといったらコンビニで200円も出せば食べられる。その30倍、定価6480円(税込み)のサンドウィッチが銀座にあるという。サンドウィッチで6480円である。ただ事ではない。一体、どんな物をはさんでいるのか? 確かめるため、話題のお店に行ってきた。
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。


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> 個人サイト すみましん

食パンを買うための行列

その店の名前は「CENTRE THE BAKERY」という。場所は中央区銀座一丁目。食パンがおいしいお店として人気を集めているという。

ネットで調べると、

「あの不朽の名バゲット『バゲット・レトロドール』を作ったVIRONが新たに繰り出す食パンにこだわった新店」

という説明が出てきた。全く意味が分からない。

そこで、以前、ニフティさんにいた平岩部長(在籍当時の役職です)にメールで上の解説文の意味を聞いてみた。平岩部長がニフティ在籍当時、一緒に日本の最北端に行ったことがある(日本の最北端コレクション)。

今、平岩部長はバゲット界の有名人になっていて、バゲットのことで分からないことがあったらきっと教えてくれるはずだ。

平岩さんから返事が来るの待ちつつ、とにかく「CENTRE THE BAKERY」へ向かった。

すると、店頭には日傘をさした貴婦人たちが列を作っている。

食パンを買うための行列だろうか?
貴婦人たちの行列
貴婦人たちの行列
店の人に聞くと、座って待っている人たちはレストランでランチを食べる人たちで、店内で立って並んでいる人たちは食パンを買うための列だという。「CENTRE THE BAKERY」はレストランも併設しているのだ。

6480円のサンドウィッチを買うにはどっちの列に並んだらいいのだろう?

忙しそうな店員さんに再び声をかけて、「6480円のサンドウィッチが欲しいのですが」と聞いた。

「それでしたら、レストランのスタッフに声をかけてください」

と親切に教えてもらい、レストランのスタッフに聞いてみた。6480円のサンドウィッチを買うのだから、別室に通されるのかなと思っていたが、普通にレジでお金を払い出来上がるまで外で待つ、というシステムだった。
こ、こ、これでお願いします
こ、こ、これでお願いします
出来上がるまで20分かかるという。さすがに6480円のサンドウィッチを作り置きはしていないのだろう。注文を受けてから料理してくれるのだ。

再び外に出て、ランチ待ちの貴婦人たちと一緒に6480円のサンドウィッチが出来上がるのを待つことにした。
傘が置いてあった
傘が置いてあった
晴雨兼用
晴雨兼用
せっかくなので日傘をさして待つ
せっかくなので日傘をさして待つ
日傘をさしてサンドウィッチを待つ。この絵柄はまるで「グランド・ジャット島の日曜日の午後」みたいではないか。
グランド・ジャット島の日曜日の午後
グランド・ジャット島の日曜日の午後
銀座の平日の午後
銀座の平日の午後
こうして比べて見ると全然違う。僕が貴婦人たちの優雅さを壊しているのだろう。しかも、現場にはこういう人もいる。
岡崎プロデューサー
岡崎プロデューサー
最近、僕の仕事を面倒みてくれている岡崎プロデューサーに撮影をお願いしていたのだ。

ヒゲでアロハ、しかも半ズボンである。何を生業にしているのか分かりづらく、明らかにこのセレブな雰囲気とは似つかわしくない。

早くサンドウィッチが出来上がってこの場から離れたい。なるべく岡崎プロデューサーと距離を保ちながら、出来上がりを待つ。
岡崎プロデューサーと一定の距離を保ちながら
岡崎プロデューサーと一定の距離を保ちながら
ウエイティングスペースには冷水のサービスがあった。
冷水のサービス
冷水のサービス
特に喉は乾いていなかったが、6480円のサンドウィッチを買ったのだから少しでも元を取ろうと冷水を一杯いただいた。
無理矢理冷水を飲んだ
無理矢理冷水を飲んだ
そうこうしているうち、店員さんから「住さまー」と声がかかった。サンドウィッチが出来上がったのだ。

貴婦人たちに聞こえるように「6480円のサンドウィッチです」と言って欲しかったのだが、そのようなことはなく、白い紙袋に入った6480円のサンドウィッチを「ありがとうございました」と手渡された。
この中に6480円のサンドウィッチが入っている
この中に6480円のサンドウィッチが入っている
「1日にどれくらい出ます? このサンドウィッチ」

と聞くと、平均で1日1食、多い時で4食ですかね、と答えが返ってきた。1日100食くらいですかね、と言われたら度肝を抜かれたが、1日1食と聞いて少し安心する。そりゃあそうだ。6480円もあれば四文屋(※1)だったら3回は飲める。

※1
僕のお気に入りの焼きトン屋さん。キンミヤ焼酎の梅割りというストロングなお酒がおいしいが、1人3杯までしか頼めない。4杯以上飲むとおかしくなる客が続出したためだという。

6480円のサンドウィッチ、その正体は?

テイクアウトした6480円のサンドウィッチを慎重に運びながら、食べられる場所を探した。
貴重品を慎重に運ぶ
貴重品を慎重に運ぶ
袋の中には6480円のサンドウィッチが入っている
袋の中には6480円のサンドウィッチが入っている
ピクニックに最適な場所を探していたら、凄い行列に出くわした。100人以上は並んでいるようで、「最後尾」という看板を掲げた人が立っている。
突然、長蛇の行列が
突然、長蛇の行列が
ここが最後尾
ここが最後尾
何の行列だろう?

看板を持っている人に聞いてみた。

「これは何の行列ですか?」

大根の無料配布を行っています。350名限定で、今250名ですからまだ間に合いますよ、とのこと。

何でも昭和10年に築地に市場ができるまで、京橋に青果物を手広く扱う「京橋大根河岸」という市場があったのだという。今年で生誕350周年を迎えたことを記念して、京橋大根河岸会が主催して350本の大根を無料で配布しているのだ。しかし、ここに並んでいる人たちはどこからその情報をゲットしたのだろう。

高級な食パンと無料の大根。銀座の行列の種類は色々である。

僕は大根の列には並ばず、サンドウィッチを食べるのに最適な場所を見つけて腰掛けた。
ここでピクニックと決め込もう
ここでピクニックと決め込もう
いよいよ、6480円のサンドウィッチの正体が明かされる。果たして、何をはさんでいるのか!
じゃーん、これが6480円のサンドウィッチだ
じゃーん、これが6480円のサンドウィッチだ
そう、6480円のサンドウィッチには、高級なビフカツがはさんであるのだ。A4ランク黒毛和牛のヒレカツが150グラム。6等分されているので、ひとかけらが1080円という計算になる。
1欠片が1080円
1欠片が1080円
何がはさんであるのか? などと扇情的な書き方をしてきたが、事前の調査でビフカツがはさんであることは知っていた。知ってはいたが、実際に6480円のビフカツを目の前にすると放たれるオーラが凄い。

ひとかけら(1080円分)を手に取り、口に運んだ。
試食
試食
A4だわ~
A4だわ~
限りなくレアに近いA4ランクの黒毛和牛が、薄い衣に包まれて絶妙なハーモニーを奏でている。料理に詳しい岡崎プロデューサー曰く、20分かけて低温で揚げることでこういう仕上がりになるのだという。真意のほどは定かではないが、肉が本当に柔らかい。用意しておいた缶コーヒーと合わせてみた。
缶コーヒーと合わせて
缶コーヒーと合わせて
まだ、A4ランクのビフカツの余韻が残る口の中に、缶コーヒーを流し込む。

違う! 缶コーヒーじゃない!

このサンドウィッチに合うのは、ワインだ。赤ワインだ。

僕は近くのコンビニへと走った。
赤ワインを買いに走る
赤ワインを買いに走る
せっかく6480円もするサンドウィッチを買ったのだから、それに合う飲み物を用意すべきである。この後、2件ほど打ち合わせを控えていたが、それはなんとかなるだろう。
赤ワインをゲット
赤ワインをゲット
僕がコンビニで赤ワインを買っている間に、岡崎プロデューサーがビフカツを食べてしまわないか不安だったが、それは大丈夫だった。
ビフカツを食べずに待っていてくれた岡崎プロデューサー
ビフカツを食べずに待っていてくれた岡崎プロデューサー
うれしいワイン
うれしいワイン
ふたたび6480円のサンドウィッチを1口食べて、赤ワインと合わせてみた。
ビフカツと赤ワイン
ビフカツと赤ワイン
至福、とはこのことを言うのだろう。安い赤ワインだったが、ビフカツとの相性はバッチリだ。

袋から出さずにワインを飲んでいるのは、昼間からお酒を飲んでいることがバレないようにという作戦だ。終電間際のホームでこのスタイルで缶チューハイなどを飲んでいるおじさんをたまに見かけるが、そこから学んだ術である。

平岩さんからの返事

冒頭でバゲットに詳しい平岩さんにメールを出していたと書いた。返事を待たずに「CENTRE THE BAKERY」へ行き、赤ワインとビフカツサンドを十分に堪能した後、平岩さんから返事が届いた。

「VIRON自身は超有名店ですし、有名なシェフも何人もいるお店ですのでそこが出した食パン専門店ということでは、かなり話題にもなりました(確か出来たのが去年の4月ぐらいでしたっけ?)。食パン好きな人にとってはすごいことかも知れませんね。ただ、僕に言わせれば」

この後は平岩さんのバゲットへの愛が強過ぎる関係で、独自のバゲット論が展開されていた。今回の話とあまり関係ないように思えたので、平岩さんのバゲット論は割愛させていただきました。
日本最北端で風に煽られるニフティ平岩部長(2006年当時)
日本最北端で風に煽られるニフティ平岩部長(2006年当時)
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