路面電車の変遷を記した図
長崎のビール電車にはだいたい毎年、チケットが取れる限り乗るようにしている。今年も乗ってきた。チケットは
長崎電気軌道のWEBサイトから情報を得て予約する。
ある時、ビ電情報はないかと見に行き、そのまま隈なくサイトを見ていたところ、「
線路および停留所変遷図」というファイルがあるのに気づいた。
印刷。これを持って街を歩いてみよう。
電車の線路は最初から今のカタチだったわけではなく、様々な変遷を得ている。その詳細を記した地図である。
元々、長崎西洋館にある「路面電車資料館」に飾るパネルとして作られたもののようで、それがダウンロードしてWEB上で見られるようになっている。
長崎は西洋館内にある路面電車資料館。
入場無料。あまり知られてないマイナースポットだが、鉄好きは行くとよい。
コレだ。これが自宅で印刷して持ち運べるとは有り難い。
というわけで、出発は西洋館から。
現在国道沿いに右へ曲がっているが、かつては左だった。先には長崎大学病院がある。
建物の中に線路。
ちなみにこの西洋館、線路が建物の中を通っている。
建物の中に電停を作る計画もあったそうだが、お役所の許可が下りず断念した、という話を聞いたことがある。その名残りらしきもの(?)が通過する時に車窓から確認できる。
これは電停を予定していた跡なのか?
この辺りに「病院下」という電停があったらしい。
ここから始まった
変遷図によると、大正4年に病院下~築町の区間が開通したのが長崎の路面電車の始まりらしい。病院下というのは現在で言う長崎大学病院の下のことである。
廃止は昭和20年。原爆によって(!)。昭和22年には現在の国道沿いに電停が作られてる。
原爆遺構である片足鳥居の前も通る。
変遷図によると片足鳥居から先は緩やかなカーブを描きながらまっすぐ浦上駅へと向かうのだが、線路が通っていたような面影はまったく無い。
ここに線路が通っていた?
おそらく、この辺りは原爆の被害が激しかったため、リセットされたのだろう。(原爆投下前の航空写真を見ると道路の形も今とは若干違うように見えた。)
かつてはこんな感じで線路が来ていたのだろうか。
浦上駅。JRの駅の位置は昔からあまり変わってないようだ。
その先、浦上駅=長崎駅あたりは、現在は国道の真ん中を走っているが、かつてはJRの線路沿いだった。変遷図によると切り替わったのは昭和32年とのこと。
現在は国道沿いだがかつてはJR線沿いを走っていた。
こっち。
不思議なショートカットのような道として残っている。
場所は市役所の裏あたりで、現在はトンネルだがかつては坂を上り下りしていた。
トンネルの手前で左に曲がる。
そして坂を登る。
現在はバスがたくさん通る。
かつてはこのあたりに桜町電停があったそうだ。
長崎駅前~桜町が大正8年に、そこから馬町までが大正9年に開通している。
坂を上った後は下っていく。
ここに入っていく。勝山市場という。
プログラムだったらバグだと思うところだけど、本当です。
振り返るとこう。
中は、ほとんどが店を閉めていた。
外側の2軒だけが開いているようだった。
市場を横から見るとちゃんとスロープになっているのが確認できる。
端っこがビルに食い込んでるように見える。
その先は広くなっていて、現在の線路があるところへと向かう。つきあたりには電停もあったそうだ。
昭和29年にトンネルができ、現在の線路に替わった。
第2期線
最後は大正5年にできた千馬町~出師橋区間。
場所は出島の近く。
出島の前にあった建物がついになくなった。
ここにかつて線路があった。
病院下=築町を結ぶ第1期線の翌年にできたのが、ここ千馬町から出雲町(現在の石橋)を結ぶ第2期線。
昭和36年に路線変更により廃止された。
…と説明口調で書いてるがすべて変遷図より。
個人的に見どころはココ。
電車と一緒に走れる道
このあたりは車と電車が同じところを走る珍しいエリア。
車が路面電車の後ろについて走ったり、一緒に信号待ちしたりすることがある。初めて自分の運転でここを通った時は、間違ってないかけっこう不安になったものだ。
路面電車と車が同じ道を走る。長崎ではココが唯一。
信号待ちをしていたが、黄色の信号が出て電車はゴー。
長崎に来たばかりの頃は頭の中が「?」でいっぱいになった。
道がまっすぐ伸びている。
ここの電停は、かつては「出師(すいし)橋」という名前で、同名のトラス橋がかかっていた。現在は「市民病院前」。
すべて自分が生まれる前の話だった
ずっと昔の話なのに、線路跡を見ながら「ここを電車が走ってたのか~」と想像するのは不思議と楽しい。「意外と利便性いいのでは?」とか「不便かな?」とかいろいろ考えてしまう。
変遷図によると、長崎の路面電車の変遷は昭和34年以降変わってない。が、「もし変わるとしたらどこだろう?」「やっぱりあそこかな?」などと未来を想像するのもまた楽しいものだ。