1992年の11月、母引火事件
新宿フロントタワー署 捜査1課 DDIJ係 捜査会議
2014年9月9日。事件発生から20年以上が経過している「埼玉県日高市 母引火事件」の再捜査のため捜査1課から選出された気鋭の刑事からなるDDIJ係が緊急招集された。
西村警視、古賀警部以下6名の捜査官からなるDDIJ係
石川捜査官から事件の概要説明が入る。
石川「1992年11月某日、朝7時半。埼玉県日高市の住宅にて古賀家 母の陽子に引火したというのがこの事件です」
あの(我が家でのみ)有名な母の引火事件である…!
・朝食時に調理していた母陽子の長袖の袖口にふとしたきっかけでガスの火が引火
・あわてて台所の流しで消火をはかる母
・風呂場から手桶(パニックになりすぎ一番小さいアンパンマンの手桶を利用)で水を運ぶ及子(当時12歳)
・勝手口の外に出てホースから水を台所まで引こうとする仁子(当時9歳)
・風呂場から手で水をすくって運ぼうとする方恵(当時6歳)
現場は一時大パニックに見舞われたものの、陽子が自力で消火しことなきを得た。その後、「アンパンマンの手桶で火が消えるわけないでしょっ!」と及子が叱責されたという事件であることが、石川捜査官から説明された。
当時6歳だった方恵は自分の手からこぼした水ですべって転倒
石川「この事件につきまして、これまで出てこなかった情報が入りました。当日、引火時に及子12歳が食べていたのが、どうもアスパラガスだったらしいのです」
捜査の根幹をゆるがす情報にざわめく一同
時を経て事件にあらたな動きが…
石川「娘の及子12歳は35歳になる現在もアスパラガスを見ると燃えた母を思い出すとの供述が得られています」
1ヶ月に靴5足をはきつぶすほど足を使った捜査で定評のある石川捜査官。聞き込み捜査で得られた情報はすべて手帳に書き付けている
ここで新人、藤原捜査官から声がとんだ。
藤原「これって…事件ってより事故なんじゃないですか?」
……。
すみません小芝居がすぎました
これ、母は大事にいたらないうちに自力で消火しているので事件でも事故でもなく、大変に他愛のない、人んちエピソードである。
他人にとってはまったくもってどうでもいいある家族の事件をホワイトボードで図にまでして説明する。これが、私の今回やりたかったことなのだ。
小芝居に参加してくれたのも当然捜査官でもなんでもないサイト関係者である。
石川捜査官が手帳のように手にしていたのは、おさいふ
さらに本当にどうでもいいことだが、この捜査本部につけた「DDIJ係」というのは「どうでもいい事件係」の略であった。
事件、それは家族のたから
さて、「どうでもいい」と連発してしまったが、こういったちょっとしたことこそが長年にわたり家族に面白おかしく「事件」として語り継がれるものだ。こういったエピソードというのはどんな家にもあるのではないか。そしてそれが家族を家族たらしめるものなのではないか。
当時0歳だった弟は後に消防士に
子らが大人になり家を出た家族をつなぐもの、それが家族の「事件」だと私は思うのだ。
そういう意味で、この先も忘れないためにホワイトボード化したといってもいい。
単に「2時間ドラマの世界にアタイも出てみたいのろー」という欲望だけの企画では、ないのである。
免罪符的にいい話にもっていったところでさらに続けます。なんと、続けるんです!
ボンゴレそば事件/知らねーよ! 事件
スパゲティのボンゴレがボンゴレそばになったという事件
「ボンゴレそば事件」
母陽子がスパゲティのボンゴレを作ろうとしてソースだけ作ったあと、パスタがないことに気づいてそばを使った事件。
その味わいに抵抗を示したのは長女及子だけで、次女仁子、三女方恵、長男ヒロシはうまいうまいと食べた。ヒロシにいたってはおかわりまで。次男タカシは部活で不在。
弟、ヒロシの発言に家族全員で入れたツッコミが見事にハモったことにより家族で語り継がれる「知らねーよ」事件
「知らねーよ事件」
祖父佳人の三回忌で集まった親戚一堂で鉄板焼き屋へ。
ファーストドリンクをたずねられワインを注文したヒロシに何気なく「ビールじゃないの?」と父尚宏がたずねた返答としての「ほら、俺って、炭酸だめじゃん?」に対し、ヒロシを除いた家族6名がいっせいに声を合わせて「知らねーよ!」と突っ込んだことから家族の心がひとつになった事件。
うーむ…、どれも家族という究極の内輪で楽しんでいるだけのエピソードなのでうまく面白みが伝わらないのもどかしいし、申し訳ない。
ノウハウを共有しますので、ぜひやってみてください
これ、書いてみたら当事者としてはすごくおもしろかったのだ。ぜひ自分ちの事件でやってみてその面白さを味わってみて欲しいのだ。
実施していただくため、今回見えてきたちょっとしたノウハウを共有していこう。
ライター西村さんから指摘があったのだが、名前と年齢は入れたほうがそれっぽい
事件名の前には地名を入れたほうがいい、とはライター大北さんから。事件名称は「知らねーよ事件」から「港区赤坂知らねーよ事件」に
顔写真は1.真正面からのもの、2.記念写真を切り抜いたっぽいもの(画像荒め)、3.スナップを切り抜いたもの(画像荒め) どれでもそれっぽくなる
真正面のものは背景には何も写りこませないのが鉄則。実家はなんかいろいろ置いてあるので壁紙を真っ白く使うためにイスに乗ってもらって撮った
事件関係者としての母
本当は青バックのほうが2時間ドラマっぽかったのだが、準備不足であった
ドラマだと凶器の写真などが貼られがち。人物写真以外の写真もあると盛り上がる
そして優しい捜査官
さて、さきほどご紹介した「港区赤坂知らねーよ」事件であるが、古賀警部から事件概要の説明があったあと、捜査員から疑問の声が上がった。
石川捜査官(なにか引っかかるな…)
大北捜査官「これ、なんで『知らねーよ』なんですかね。ヒロシ君が炭酸が苦手だってこと、家族は知っていてもよかったのでは」
古賀警部「えっ、いや、ヒロシはこのときすでに20歳を超え、炭酸が飲めないことをえばるな! という意味での『知らねーよ』でして…」
石川捜査官「とはいえ、家族に一斉に突っ込まれてヒロシくんも傷ついたのではないですか…」
その発想はなかった
思いもよらず捜査官のやさしさにふれ、弟の胸のうちに気づかされることになったのだった。
ヒロシよ…
なにがやりたかったんだっけ
ほんの1ミリくらいの「やってみたい」を本気で実施してしまった今回、最終的に弟のぼんやりした写真でしめくくることになって驚いている(ヒロシよ、その髪のボリュームは一体どうしたことなんだい)。
思いもよらなかったことになるという意味でも、ぜひ家族で集まる際にの余興におすすめです。
今回は、胸をはって「読むよりも、やってみたほうが面白いですぞ!」という記事でした。
母の若いころの写真、それこそ事件に関与しているとしかいえなくて使いどころなかった