特集 2014年8月31日

ヘルメットと電柱と耳の穴が、怖い 第2回 こまかすぎて伝わらない“こわいもの”

大好評、TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」との連携企画にたくさんのご投稿ありがとうございました! 発表を構成作家の古川 耕さん、お願いします!
大好評、TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」との連携企画にたくさんのご投稿ありがとうございました! 発表を構成作家の古川 耕さん、お願いします!
高いところや狭いところ、鋭く尖ったものやブツブツした丸いものなど、メジャーなこわいもの(恐怖症)ではなく、「え? オマエそんなのがこわいの!?」と、マイナーすぎてなかなか他人に共感してもらえない「Myこわいもの」。

我々の番組でそれを募集したところ、予想を上回る大量の投稿と、それ以上に大きな反響と、「よくぞ聞いてくれました!(泣)」とある種の切実さをともなう熱狂をもって迎えられ、大変びっくりしました。

そこで、この驚きをぜひデイリーポータルZさんの愛読者諸氏と共有したい。うちの番組と、デイリーポータルZさんで新たに募集をかけ、先日8月30日の放送で紹介しきれなかった大量の投稿のいくつかを、この場を借りて皆さんにご紹介したいと思います。
(左・宇多丸)ヒップホップグループ「ライムスター」のラッパーにしてラジオパーソナリティ。映画の知識と敬語、低姿勢に定評がある。


(右・古川 耕)構成作家。文房具ライターとしても活動し、お気に入りボールペンの投票企画「OKB48総選挙」の総合プロデューサーもつとめる。



TBS RADIO ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル(土曜日22:00~24:30)

前の記事:こまかすぎて伝わらない“こわいもの”


スポーツタイプの自転車に乗る人が被っている、空気抵抗を減らすための後頭部が尖っているヘルメットが怖いです。
まともに見ていられません。

アスファルトの上で後ろへひっくり返りでもしたら、あの尖った部分から「コンッ」という衝撃が鋭く頭蓋骨に響くかと思うと。
例えアスファルトでなくても、あの尖った部分が土にぐっさり突き刺さるかと思うと。
どちらにせよ、剥き出しの首に大きな負担がかかるのも心配でなりません。

そもそも自転車はウィリーさえしなければ後ろにひっくり返ることなどほぼ無いという事実に、ようやく思い至りました。
でも事実は未だ恐怖心の先に立っておりません。
なごやん さん
大量の「Myこわいもの」をメールに目を通していると、感覚的に「“よい”こわいもの」と「普通のこわいもの」の二種類があることがわかってきます。目が肥えたのか、ただ腐ってきただけなのかはわかりませんが、いずれにせよ熟成された観点からすれば、この投稿は「“よい”こわいもの」です。目の付け所がシャープです。(ヘルメットの印象に引っ張られているだけかもしれません)
また、締めの「事実は未だ恐怖心の先に立っておりません」はけだし名文。そう、すべてはこっちの脳の問題なのです。
私が怖いもの、それは電柱です。

子供の頃、散歩中の犬がオシッコを引っ掛けていった、それを見て以来そこはかとない恐怖を感じるようになりました。

あの長い柱に毎日のように犬がオシッコをひかっけている。
時には酔っ払ったおっさんも。
いつか劣化して倒れて崩れるんじゃないかという恐怖心が、子供の心に植えつけられ、以来電柱からは50cm以上離れて歩くようにしています。

しかし、あまりに離れて歩くと、今度は車道を走る車が恐怖になるので、歩道のない細い路地裏などは歩けません。
HARUKO さん
日常にありふれたモノに向けて想像力が過敏かつ過剰にドライブした結果、「この人生きづらそう」みたいに思われてしまう。この手のMyこわいもの話を聞くと、我々専門家はつい「よっ! 感受性!」と合いの手を入れてしまいます。ここから新たな芸術や表現とかが生まれてくるといいですね。
私の怖い物。それは「耳の穴」です。

顔のちょうど真横に横に2個おもむろに開いていて、それはまさに、銃弾でうち抜かれたようにシンメトリーです。

口や鼻や、体の他の穴は全て何かに覆われたりカバーされているのに、耳の穴は何もカバーされておらず、無防備に開いたまんまです。
寝ているうちに何か入ってきたら……などと考えだすと、おちおち熟睡できません。せめて片方の耳だけでも何とかふさごうと、横向きに寝て枕に耳を押し付けます。

髪の長い女性が、髪をかき上げ耳に髪をかけて耳を出すしぐさなんて、「何て無防備な……」と心底心配になってしまいます。
オチャピー さん
我々の間では「誘発系」と呼ばれるタイプの投稿です。今までなんとも思ってなかったのに、話を聞いているうちにこわさが感染してしまうタイプ。ご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。確かにプールで耳に水が入るたび、「あれ、耳の穴って……?」と思ったことが何度かあります。
私の怖いものは、目玉焼きです。

一体だれが、何のために、卵を割って黄身と共に白身を焼いたものを「目玉焼き」と名付けたのでしょうか。
だって「目玉」を火で「焼く」んですよ……こわい!

「目玉のように焼いている」、だから「目玉焼き」と言うのだという解釈もできますが、私には「目玉焼き」をそういう解釈で捉えることはできません。
「目玉に焼き」「目玉が焼き」「目玉を焼き」……。

グロテスク!

しかしどうしても食べなければならない時は半熟が好きです。
タケ坊 さん
当人は心底こわがっているでしょうが、他人からするとちょっと微笑ましい、というものもあります。「どうしてもの時は半熟で」というオーダーにいまいち切迫感がないからかもしれません。
私がヒヤヒヤしてしまう恐怖。

それは、「いつか自分のアゴで鎖骨をポッキンしちゃうのではないか」という妄想です。

日常の中に潜んでいる危険なので、年に何人かは望まぬポッキンを経験してしまうのではないかという危惧から、皆さんの危険回避の為にもお伝えしておこうと思います。

例えば、宇多丸さんがチラシを版画でつくろうと、背中を丸めてガシガシ削っている、など作業に集中している場面で、後ろから唐突に「これ食べていい?」「これ、借りてくね」などと声をかけられる事、あると思うのですが、「んっ何? どれ?」と振り向く時、まさにその瞬間に危険が潜んでいると思うんです。

「何っ? どれっ?」と振り向く時、動きとしては自然と、下向きから肩越しにすくい上げる様に顔が動いてしまうのではないでしょうか。
こちらとしては集中から確認へ、それと、「今声かけんなよ」の気持ちからつい、バッと振り向いてしまいがちなんですが、この時にゴスリと顔が鎖骨を直撃してしまいます(Tシャツとか薄着の時は特に)。
この動き、衝撃でいつかは鎖骨を折っちゃうんじゃないか、というのが私の細かい恐怖です。

ただ今日まで、折れてません、多分今後も折れません、そんなんで折れるわけないんです。
でも恐いんです。

実は、鎖骨相手で悩ましいのが後2つあります。

(1)長袖を慌てて着る時に時々、ヒジが服の脇の下あたりに引っ掛かる事あるんですが、腕の勢いの反動で鎖骨に力が加り…………(恐いです)

(2)「伸び」で腕を上に伸ばして、両手をつないで更に伸びようと力んだ拍子に…………(恐いです)


━━━鎖骨に対する変な苦手意識が面倒です━━━

この鎖骨骨折を意識し出したのは多分、「くしゃみ・せきで肋骨が折れる事もある」と耳にしてからだと思います、
だったら鎖骨もかなり細いし、目立つし、日夜危険にさらされてるよな、ひょんな事で折れるのかなぁ、との想像が膨らんでしまったものと考えます。
今までどこの骨も折った事がないので、余計骨折に対し臆病になっているのかなとも思うのですが、

宇多丸さん、骨折も人生も、「馴れ」、ですかね?
キッチンペン さん
独特の書式、文体、そしてアゴ観に震撼いたしました。最高です。カイジとか『かぐや姫の物語』のアイツみたいなアゴを思い出しました。
私が恐怖に感じることは、虫を触れなくなることです。

私は平成生まれの都会っ子ですが、野生的な父のお陰で小さい頃は虫やカエルに親しんでいました。

大人になったある日、久々にセミを採ろうとしたところ、あまりの気持ち悪さで触れませんでした。
かつてあんなに捕らえ放題だったセミに触れなくなるとは、これでは自分の子供に虫採りを教えられなくなるではないか!と恐怖心が芽生えました。
かつて大丈夫だったものに恐怖することに恐怖を覚えたのです。

以来、毎年夏になると「今年触っておかなければまたこわくなる」という恐怖から、いい年をしたOLがセミを採りまくっています。
わらぴー さん
新種です。加齢とともにこわいものが減ったり増えたりすることはよくありますが、「(好き→嫌い)=こわい!」という計算式は初めて見ました。ついでに言えば、気の毒と萌えの奇跡の融合でもあります。

TBSラジオ「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」の8月30日に放送された「こまかすぎて伝わらない“こわいもの”サマーフェス」のポッドキャストが公開されています。

イキのいい「Myこわいもの」が続々飛び出します。ぜひ聞いてみてください!

30日間限定公開ですので、ご興味ある方はお早めに~。

第二回「こまかすぎて伝わらない“こわいもの”サマーフェス」(音声が出ます)

第一回「こまかすぎて伝わらない“こわいもの”特集」(音声が出ます)

古川さん、ありがとうございました!大好評だった「こまかすぎて伝わらない“怖いもの”」。このほかにもたくさんの“怖いもの”投稿が集まっております。

もしかしてもしかすると、第3回としてご紹介するかもしれません。どうぞお楽しみに!(編集部 古賀)
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