特集 2014年8月6日

石を積む

石花アートの世界へようこそ
石花アートの世界へようこそ
石があれば積みたくなる。人間とはそういうものだ。とはいえ、形も大きさもバラバラの石を高く積み上げるのは簡単ではない。しかし、その道の達人がいるという噂を聞いた。本気の技を見てみたい。
ライター。たき火。俳句。酒。『酔って記憶をなくします』『ますます酔って記憶をなくします』発売中。デイリー道場担当です。押忍!(動画インタビュー)

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「生け花」ならぬ「生け石」

向かったのは多摩川。そこに達人はいた。
石花ちとくさん(44歳)
石花ちとくさん(44歳)
彼は石を積むことで石に花を咲かせる「石花師」である。「生け花」ならぬ「生け石」だ。
過去の作品
過去の作品
こうしたアートを「ロックバランシング」と呼び、海外でも活動が行われているという。石花さんは、日本における第一人者だ。
正月をイメージした石花
正月をイメージした石花
石積みに目覚めたのは5年前。休日に自分の子どもを公園に連れて行くと、他の友達と夢中で遊ぶため手持ちぶさたになる。その時、ふと足下の石を積んでみたそうだ。
ワークショップも行っている
ワークショップも行っている
その面白さに気づくと共に、調べてみると海外では「ロックバランシング」として、石積みアートを作っている先駆者がいることを知った。

接地面積が少ないほどレベルの高い作品

さて、多摩川である。気温は35度。日陰はない。石を積むには、やや過酷なコンディションだ。
石を手に取る
石を手に取る
「あまり深く考えないで、目に付いた石をパッと取るんです。あとは、完成形の見映えをイメージしながら組み合わせていきます」
早くもアクロバティックな作品が
早くもアクロバティックな作品が
平たい石を積み上げるのではつまらない。これが、石花師としての矜持だ。さらに、石同士の接地面積が少ないほどレベルの高い作品になるという。
形と色のバランスも重要
形と色のバランスも重要
「まず、土台が重要ですね。上から指で圧をかけると、安定するポイントがわかります」
日常生活で石を押すことはあまりない
日常生活で石を押すことはあまりない
「じゃあ、大きいのを作りますか」。そう言うと、石花さんは本気の技を見せてくれた。
それは…無理なのでは…
それは…無理なのでは…
無理じゃなかった!
無理じゃなかった!
石花さんによれば、「積めない石はない」という。「ひとつとして同じ形がない石を、こうして川のせせらぎの音を聞きながら積み上げていくのが楽しいんですよね」

何かを訴えかけてくる「バナナ花」

達人の技に感動しつつ、持参したバナナを渡した。石以外でも積めるのだろうか。
バナナです
バナナです
とまどう達人
とまどう達人
「バナナは積んだことないなあ」と笑いながら、それでもチャレンジしてくれるという。
水辺に場所を変えて
水辺に場所を変えて
石と水とバナナが一体化した瞬間
石と水とバナナが一体化した瞬間
やや時間はかかったが、バナナも積めた。しかも、何かを訴えかけてくる「バナナ花」である。

無機物と有機物の違いは大きい

続いて、じゃがいもを渡した。形状が石に似ているので、バナナよりは積みやすいのではないだろうか。
これから積まれるじゃがいもたち
これから積まれるじゃがいもたち
じゃが花アートを制作中
じゃが花アートを制作中
しかし、これが予想以上に難易度が高かった。「石と違ってやわらかいから積みにくいんですよ。やっぱり、無機物と有機物の違いは大きいですね」
指先から全体のバランスを読み取る
指先から全体のバランスを読み取る
おお、4つ積めた!
おお、4つ積めた!
「苦労しましたが、最後はじゃがいものほうが根負けしてくれたようです」。達人ならではの名言が飛び出した。

荷重がかかるたびに細胞単位で流動している

4つまでは何とか積めたが、5つコンプリートのハードルは高い。
繰り返すが35度の炎天下である
繰り返すが35度の炎天下である
「水を含んでいるから、荷重がかかるたびに細胞単位で流動しているかんじですね。石のように指に伝わってくる確かな感覚もない」
したたる汗
したたる汗
熱中症になりかけているオーディエンス
熱中症になりかけているオーディエンス
孤独な戦いは続く
孤独な戦いは続く
30分ほど経った。5つ目のじゃがいもは根負けしてくれない。時折、甲高い鳥の鳴き声が川原に響く。
悠久の時が流れる
悠久の時が流れる
達人が熱中症で倒れては、日本の石花界に大きな損失を与える。一向にチャレンジをやめる気配のない後ろ姿に、「ありがとうございます。今日はこのへんにしておきましょう」と声をかけた。

石花は一期一会のアート

石積みアートは予想以上にすごかった。石花さんは積み上げた石花を、必ず崩して帰るそうだ。「子どもが遊ぶと危ないからね」。そう、一期一会のアートなのだ。なお、日本では護岸工事がどんどん進められているので、この場所のように安らかに石を積める川原は年々減っていっているそうだ。
飄々と帰っていく達人
飄々と帰っていく達人
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