ランドセル型ビールサーバーという代物
ビールから少し離れるが、水筒を持ち歩いている人が好きだ。そういう人はきっと、丁寧に日々を過ごしているに違いない。40才を過ぎてから、「丁寧」を心がけるようにしているので、水筒を持ち歩くことも検討した。しかし、実際は朝水筒につめるのが面倒臭いし、持ち歩くとなると荷物が増えて邪魔だ。丁寧に生きるのは難しい。
水筒ですら邪魔だと感じているのに、今回はビールサーバーを持ち歩こうとしている。
明らかに水筒よりも場所を取るし重そうだ。調べると、ランドセル型ビールサーバーという物が出て来た。ビールを含めた総重量は15キロになるという。腰が悪い僕に背負えるだろうか。心配だけど、やっぱり持ち歩きたい。それは運ぶものが酒だからだろう。15キロの麦茶だったら背負う気にならない。
ランドセル型ビールサーバーを貸し出している業者さんに連絡してみた。レンタルの費用が1泊2日で8640円。それ以外にビール10リットル分の料金がかかる。10リットルのビア樽は6千円くらいだ。結構かかるな。
届いたランドセル型ビールサーバー一式
結構高いと思いつつ、この夏は特に楽しい計画もないのでランドセル型ビールサーバーを借りることにした。この夏唯一のアクティビティとして。
そして届いた一式が結構な大荷物である。ビア樽を格納するランドセル型のショルダー、ビールを抽出するノズル、抽出の動力となるガスなどがセットになっている。
ガス
抽出ノズル
今回の主役である生ビールの樽はカクヤスで事前に注文しておいた。10リットルで6,206円。グラス一杯200mlで換算すると、約45杯分の生ビールを飲むことができる。
ビア樽10リットル
同封されていたマニュアルに従って、早速ビールサーバーをセッティングしていく。
ガスをビア樽に装着
抽出ノズルを装着
セッティング完了
セッティングは簡単に出来た。これを背負えば、いつでもどこでも生ビールが飲めるようになる。夢の実現まで、あと一歩である。
夢のカタチ
背負ってみて驚いた。総重量15キロは伊達じゃない。まず、誰かに支えてもらわないと背負った状態から立ち上がることが出来ない。立ち上がっても肩と背中にかかる重さは想像以上だ。
野球場の売り子さんは女性が多い。彼女たちはこれを背負ってスタンドの階段を上り下りしているのだ。信じられない。僕だったら試合が始まって1回の攻防が終わる頃にはギブアップすると思う。
ビールサーバーと街に出る
ビールサーバーの重さをずっしりと背中に感じながら、街に繰り出した。
前のめりになる
ランドセル型のビアサーバーを背負うと、猫背に拍車がかかることも知った。さらに後ろに持っていかれる力とのバランスを保とうとして、前のめりな姿勢になってしまう。
サーバーを背負って少し歩いただけで、僕はすでに汗だくである。
信号待ちが暑い
街に出ればすぐ信号である。真夏の信号待ちほど辛いものはない。
しかし、僕にはビールサーバーがある。暑い信号待ちの間に生ビールを飲むことが出来るのだ。
用意しておいたコップに生ビールを注ぎ
信号待ちの間に一杯
「エビスビールあります」の看板が乾いた喉を誘惑してくる。
エビスビールあります
僕もサッポロビールあります
どこでも飲める
普段なら「エビスビールあります」に誘われてのれんをくぐっていただろう。
しかし、僕の背中には10リットルからの生ビールがある。のれんをくぐらなくても、その場で生ビールを飲むことが出来るのだ。
街に出て30分、生ビールを2杯飲んだ時点ですっかり疲れてしまった。このまま続けると、ただの苦行になってしまいそうだ。僕はただ、いつでもどこでも生ビールを飲みたいだけなのに。
一旦、休憩しよう。
公園で休憩
生ビールを注いで
黄金の一杯
外で飲む生ビールは格別ですな
ビールサーバーの重みから開放されて飲む生ビールはうまい。冷えたビールのお陰で体力も復活してきたが、酔いもまわってきた。ビールサーバーを背負うのが少し憂鬱ではあるが、再び街に繰り出そう。
重いから立ち上がるのが大変
ビールサーバーと夏祭りへ
遠くから盆踊りの音が聞こえてきた。お祭りだろうか。
夏祭り
夕刻が迫るお寺に大きな櫓が組まれていた。ドンドコドンドコ、和太鼓の音が鳴り響いている。
毎年僕は近所の夏祭りを手伝っている。今年も焼きそばの屋台を担当した。僕の役割は、出来上がった焼きそばに紅ショウガと青のりをかける係だった。去年は焼きそばの袋を剥いて焼く人に渡す係だったから、少し出世した。来年はいよいよ焼く係がまわってくるのではと、少しドキドキしている。
近所の祭りで活躍する僕
また、夏祭りといえば、僕は今NHK青山ワンセグ開発という番組の「夏の復活祭」というものに参加している。以前作られた全36作品が復活していて、その中で一番再生された作品がレギュラー枠を獲得する、というお祭りだ。
僕が作ったのは「Mr.SUMI」という番組なので、是非、見てください。
ビールサーバーと一緒にやって来たお祭りは、僕の近所のお祭りよりも大掛かりで、焼きそばの屋台には紅ショウガをかける係はいなかった。
絶対美味しいに決まってる
紅ショウガと青のりのバランスが素晴らしい焼きそば
スーパーボールすくい
そして生ビール
こういう所で飲む生ビールは格別に美味しいに決まってる。屋台の生ビールにも心を惹かれるが、僕は背中に生ビールを背負っている。
セルフサービスで
生ビールを注ぐ
やっぱりうまいよね
ここまでコップ6杯ほどの生ビールを飲んできたが、ビールサーバーの重さが全然変わらない。重さが体幹にじんじんきている。ビールを消費していけば軽くなる訳だが、あと40杯近く飲まないとビア樽は空にならない。昼間のお酒ということもあり、酔いのまわりも早い。
1人で飲み干すのは無理だろう。
ビールサーバーが重くてしんどい気持ちと、いつでも冷たい生ビールを飲める喜びがせめぎ合っている。今のところ、ハーフハーフだ(浅田真央さんより)。
飲み会に参加して、生ビールを振る舞うことにしよう。
日が暮れていく
渋谷の居酒屋で振る舞いビール
ランドセル型ビールサーバーの生ビールを使い切るために、渋谷の居酒屋さんにやって来た。飲食店にビールを持ち込んで勝手に振る舞ってしまったら、それは営業妨害になってしまう。知り合いのお店にお願いして、友人たちにビールを振る舞うことにした。
渋谷の居酒屋「つくしんぼ」のご協力を得て
日頃お世話になっている人たちに感謝の気持ちを込めて。そして、暑中お見舞いの挨拶も兼ねて、飲み会の参加者たちにビールを振る舞っていこう。
飲み会の席でランドセル装着完了
店長さんからジョッキへの注ぎ方を教わる
編集部の藤原君にサーバーを支えてもらう格好で
ランドセル型ビールサーバーを背負っていると、自然と参加者たちの顔に笑みがこぼれていく。
僕がジョッキにビールを注ぐ度にカメラが向けられたりして、飲み会の注目を一手に集めている状況だ。
ランドセル大人気
最初はジョッキへの注ぎ方に慣れず泡が多めになってしまったが、注いでいるうちにコツがつかめてくる。
どんどん慣れてくる
参加者全員に一杯目のビールを注ぎ終わり、僕のビールでみんなが乾杯した。
(僕の)ビールで乾杯
喜んでもらえてうれしい
笑顔溢れる飲み会
ビールがどんどん進みますね
こんなにおいしいビールを飲んだのは初めてです(個人の感想です)
1人2杯ずつ飲み終えた後でも、背中にかかる重さが容赦ない。エアコンの効いた室内なのに僕だけ汗だくである。
あまり動き回ると体力が持たないと判断し、ビールをおかわりしたい人は僕の方まで来てもらうシステムを採用した。
配給のように
配給システムが浸透していくにつれ、次第にビールサーバーへの関心が薄れていくのが分かる。もう誰も僕の写真を撮ろうとしないし、ビールサーバーに向けられる笑顔もなくなった。
まずい。飽きられてる。
場の雰囲気を察知した僕は、飲みたい人が自分で注げるという新しいシステムを導入した。
自分で注ぐシステム
自分のジョッキに自分で注ぐ、ドリンクバーのわくわく感を演出したつもりだったが、
林さんから
「住さん、乳牛みたいですね」
と言われた。
そうか。ドリンクバーというより、牧場での乳搾り体験のようになってしまっているのか。それでも、みんなが楽しんでくれればそれでいい。
そう思っていた矢先。
自家製ウインナー
特製タンシチュー
チキンのガーリック焼き
美味しそうな料理が次々とテーブルの上に並び始めた。
主役が料理に移った
参加者全員が料理にカメラを向け始める。
場の流れが完全に変わった瞬間である。つくしんぼさんの料理は本当に美味しいので、それも仕方ない。
ビールサーバーの重さも限界に近づいてきた。
僕はビールサーバーをそっと降ろし、普通の飲み会へとシフトした宴席に加わった。
体力の限界、気力もなくなり
例えば仲間とバーベキューをやる時など、このランドセル型ビールサーバーはいい働きをすると思う。その場も盛り上がるし、冷たい生ビールが飲めるし。
ただし、ビールサーバーがかなり重いので注意が必要だ。サーバーを背負って以来、持病の椎間板ヘルニアが少しうずき始めているが、気のせいだと思いたい。
今度野球場へ行ったら、ビールの売り子さんたちに声をかけようと思っている。「君たちは本当に凄いよ」と。
文中でもお伝えさせていただきましたNHK青山ワンセグ開発「夏の復活祭」の件ですが、以下に全3回分の作品がアップされています。
第1回
第2回
第3回
お手すきの際にご覧いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。