三軒の茶屋。
江戸時代、関東一円では相模国丹沢山地の大山阿夫利神社に雨乞いに行くのが流行していて、大山へと通じる街道を大山道と呼んでいました。
落語に『大山詣』がありますが、落語の題材になるような人気のレジャーだったようです。
大山は現在の神奈川県県央部にあり、神奈川県内には今も「大山街道」の名が残っています。
三軒茶屋に残る大山道の道標。
田畑が広がる田園地帯の太子堂村は、大山道の本道と近道である新道とが交差する交通の要所であり、また距離的にも江戸から大山への道のりの最初の休憩地点として適していたため、ここに三つの茶屋、田中屋・信楽(後に石橋楼)・角屋が店を構えるようになりました。
簡易すぎて分かりにくい地図。
田中屋は敷地が100坪を超え宿泊施設も備えるほど繁盛していたとか、坂本竜馬も信楽を利用したとか、華やかなエピソードも伝えられますが、明治に入って角屋は閉店、田中屋は火災により焼失。
信楽は石橋楼、石橋屋商店、茶寮イシバシと変遷しながら続いてきましたが、昭和20年にやはり閉店。
地名の由来となった茶屋で今に残るお店はありません。
信楽はカラオケ。
角屋の辺りはカメラ屋さんとか喫茶店。
田中屋は名前だけ残ってるけど陶器店になりました。
じゃあ、今は何軒茶屋なのか。
ところで、昔の茶屋って今でいうカフェってことですよね。
かつて大山詣の休憩に使われた茶屋はもうありませんが、現代人が休憩に使うカフェはたくさんあります。
昔は三軒茶屋と名付けられましたが、今なら三十軒カフェくらいになっているんじゃないでしょうか。
カフェの定義についてはいろいろあるでしょうが、今回は
・ 座って休憩できる。
・ 飲み物とお菓子があるとなお良い。軽食があるとさらに良い。
・ お茶だけ頼んでも(お酒や食事を頼まなくても)気まずくない。
という私の主観を元に調査していきます。
それっぽい外観のお店を見かけたら近寄って確認、カフェや喫茶店だったらカウントするという方法をとりましたが、その場合注意することがいくつかあります。
かなりカフェっぽいけど本人が『bar』だと言い張る。結局数えなかった。
おしゃれなカフェだと思ったら美容室という罠。気を付けろ!
皆さんもカフェを数えなくてはならない時、この点にご注意ください。
ちなみに、いくつかお茶屋さん(カフェ的なのではなく茶葉を売ってるお店)を見かけましたが、これはカウントしていません。
確かに茶屋だけど、今回除外しました。
ネクスト角屋の茶屋たち
最初は、角屋があった玉川通り沿いを中心に、そこから歩いて徒歩5~10分くらいのエリアを探索しました。
玉川通り。地下には東急田園都市線が走っています。
青いエリアを探ります。
全体的にかわいらしい雰囲気のお店が多く、女性ひとりでも入りやすい感じのお店が多いです。
チェーン店も多いので、外出レベルが低くおしゃれなお店に恐怖してしまう私のようなタイプにも安心のエリアと言えます。
これがネクスト角屋候補だ!
1. コメダ珈琲店
2. ミスタードーナツ
3. Cafe Bossa
4. 上島珈琲店
5. ジョリーパスタ
6. ぱんやのパングワン
7. Pancake MaMa cafe VoiVoi
8. 三軒茶屋カフェ
9. ティールーム紅茶の森
10. パティスリー la Famille
11. 雑貨&カフェ LUPOPO
12. リゾットカフェ東京基地
13. Baker's Dozen
14. Cafe Obscura
15. Cafe THE SUN LIVES HERE
16. ブーランジェリー ボヌール
17. 星乃珈琲店
18. コーヒーSeven
19. from Earth Cafe
20. モスバーガー
21. picnic A go!go!
22. red clover
23. cafe Fuze
この中から私がお勧めしたいのは、18番『コーヒーSeven』。
玉川通りから数メートル路地に入ったところにある静かで落ち着いた雰囲気の喫茶店で、食事メニューが豊富です。
この地で営業を始めて50年以上になるそうで、説得力のある昔懐かしさが印象的でした。
ほんの数メートル先に玉川通りが見えます。
太麺で具材たっぷり、小細工なしのケチャップ味が懐かしさ満点のナポリタンは、私が妄想する「喫茶店のナポリタン」そのもの。是非お試しいただきたい。
これを卵でくるんだ『オムナポ』というメニューもあります。
意外にボリュームがあって、お腹いっぱいになります。
信楽を継ぐもの
続いて、かつて信楽を擁していた玉川通りと世田谷通りに挟まれたエリアをめぐりました。
全体の印象としては、飲み屋がやたら多い。
道と道に囲まれた三角州地帯。
裏道のような細い道が多く、入り組んでいるので迷子になりたい人には恰好のエリアです。
「これぞ三軒茶屋のカフェだ!」というようなおしゃれな隠れ家カフェから、ちょっと入りにくいあやしいお店まで幅広かったです。
バラエティに富んだ信楽の後継たち。
24. cafeレストラン ガスト
25. イタリアントマトカフェJr.
26. Baskin&Robbins サーティーワンアイスクリーム
27. 空とミルク
28. bar+cafe COCOON
29. a bridge
30. cafe+spice curry tuak jam day
31. cafe ゆうじ屋
32. RAIN ON THE ROOF
33. cafe bar Kirin
34. Cafe Dining ROOSTER
35. jam cafe
36. moon factory coffee
37. CAFE DINING il grato
38. かぼちゃ
39. ドードーの空
40. 木のおもちゃ・雑貨とジェラートカフェの店 ウディック
41. 本格中華・喫茶 ル・マン
42. ドトールコーヒー
カフェだかバーだかよく分からないお店もありますが、本人がカフェや喫茶を名乗るならばその意思を尊重しています。
個性派揃いの中でも、特に気になるのは41番『本格中華・喫茶ル・マン』。
一瞬、「何故フランス映画?」と思いましたが、それは『愛人/ラマン』。ル・マンはどちらかというと24時間レースですね。
『ルマン定食』という響きが何かいい。
ルマンは若干敷居が高くて入りにくかったのと、お腹いっぱいでルマン定食は食べられそうになかったのもあり、軽く休憩しようと選んだ40番のジェラートカフェ『ウディック』が期待以上に良かったです。
ルマンと同じ通り沿いにあるとはとても思えない空間。
木のおもちゃや雑貨に囲まれた店内は、温かみがあって不思議と落ち着きます。
あと、もはやお店に対する感想ではないのですが、暑い日に食べるジェラートは最高に美味しいです。
長時間歩いて汗をかいた大山詣の旅人たちにもジェラートを食べさせてあげたかったですね。
次世代の田中屋を探せ
最後に、東急世田谷線の三軒茶屋駅を中心とした田中屋エリアをめぐりました。
田中屋は名前は残っているけど今は陶器店なので、当たり前ですがカウントしていません。
エリアの区切り方が間違った気がする。一部被ってるし。
世田谷線三軒茶屋駅。
車両は路面電車タイプ。
世田谷線三軒茶屋駅のすぐそばには商業施設・劇場併設のオフィスビル『キャロットタワー』があり、道行く人もビジネスマンや劇場へ足を運ぶ文化人枠が多めな印象です。
チェーン系のカフェが多く、中には三軒茶屋内で複数の店舗を持つものもあります。
あと、カフェで仕事しているビジネスマンやノマド的な人もよく見かけました。
チェーン比率が高い次世代の田中屋たち。
43. モスバーガー(三茶世田谷通り店)
44. ギャラリーカフェくりっく
45. サンジェルマン
46. SUBWAY
47. ドトールコーヒー(キャロットタワー店)
48. Cafe COLORADO
49. Coffee&Restaurant デニーズ
50. 珈琲屋伽羅
51. マクドナルド
52. ケンタッキーフライドチキン
53. シャノアール
54. CAFE de Clie
55. Coffee Roasters Cbscura Laboratory
56. パティスリー la Famille(太子堂本店)
57. PERDiDo珈琲店
58. スターバックスコーヒー
59. Cafe Mame-Hico
この中のお勧めは52番のケンタッキーです。
というのも、休憩できるカフェを一日中探し歩くと結構疲れるので早く休憩したい、でも汗かいて化粧も落ちてるひどい有様だからおしゃれなお店には入りにくい。
そんな状況でも、チェーン店には安心して入れる包容力があります。
田中屋陶苑の隣にあります。
飲み物だけ頼んだり、お腹が空いていたらチキンを3ピースくらい頼んだりと、疲れ度合に応じてフレキシブルな利用が可能なところもケンタッキーの魅力です。
2階の窓から、向かいのジムでウォーキングする人がうっすら見えました。
ということで、現在の三軒茶屋は五十九軒茶屋ということが分かりました。
ただ、私が見落としてしまったお店もあるかもしれないし、カフェじゃないお店もカウントしてしまったかもしれない。
そういったすべての言い訳を包括して、「たぶん五十九軒茶屋」という結論にさせていただきます。
数取器で数えていたので、最後に記念撮影。
あるいは、「だいたい六十軒茶屋」。
多いだろうとは思っていましたが、そんなに広大な面積でもないのに六十軒近いお店が見つかるとは驚きました。
いつか五十九軒茶屋を全店制覇してみたいです。まずはル・マンからだな。
茶屋も多いですが、美容室も多かったです。
「六十五軒サロン」くらいにはなるんじゃないかと思いましたが、茶屋から離れすぎて原型が分からなくなりますね。
こじんまりしたおしゃれな美容室はカフェと間違いやすいので要注意です。
カフェかバーだろうと思ったら、ヘアカット専門店でした。