特集 2014年7月11日

売れ筋の中からいちばんお得な本を探す

内容の良し悪しではなく、『お得さ』のみで判断します。
内容の良し悪しではなく、『お得さ』のみで判断します。
毎月1冊2,000円ほどする漫画を購読しているのですが、たまに
「え?漫画1冊に2,000円!?」
みたいな反応をされることがあります。

確かに一般的なコミックより高いけど、大きいし分厚いし装丁もキレイだし一コマ一コマに作者の情念が詰まってて読むのに時間かかるから、全然高くないよ!むしろお得!!

と答えているうちに、ふと『お得な本』って何だろうと気になり始めたので、調べてみることにしました。
1980年北海道生まれ。
気が付くと甘いものばかり食べている偏った食生活を送っています。


前の記事:美味しくて安すぎるパン屋「ミルクロール」


『お得さ』を判断するポイント

これがお得な漫画本、水木しげる漫画大全集です。
黒と紫のグラデーションがシックでおしゃれ!
黒と紫のグラデーションがシックでおしゃれ!
同じ日に買った別の漫画と比べても、その厚さの違いが分かると思います。
黒と紫のグラデーションがシックでおしゃれ!このボリューム感!
黒と紫のグラデーションがシックでおしゃれ!このボリューム感!
確かに値段は本体価格1,900円と決して安くはありませんが、大きさ・ボリューム・読むのにかかる時間等を総合的に判断するとそこまで高い買い物でもないですよね?

逆に考えると、大きさやボリューム、読む終えるのに要する時間を鑑みれば『お得な本』を見つけることができるのではないでしょうか。

お得なものを求めるのは消費者として当然の欲求です。

ということで今話題の作品から4つをピックアップして検証してみました。
この4冊の話題作を検証します。
この4冊の話題作を検証します。

その1・お子さんを持つお母さんから支持される実話本、「ビリギャル」。

「ビリギャル」こと、「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」。

制服を着た女の子の不機嫌そうな表情が印象的なカバー写真を見れば、「あぁあれね!」とぴんと来る方も多いことでしょう。

20~30代くらいの若い男性、あとはおそらく中高生のお子さんを持つであろうお母さんが買っていくことが多い気がします。
ノンフィクション部門で大人気の「ビリギャル」。
ノンフィクション部門で大人気の「ビリギャル」。
学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話
(著:坪田信貴、出版:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)
単行本、321ページ
本体価格:1,500円
大きさ:縦18.6cm 横16.8cm 厚さ2.6cm
重さ:349g
文字数:およそ91,745文字
読書時間:1時間16分10秒
時間を測ってみたら
時間を測ってみたら
1時間16分。
1時間16分。
文字数が「およそ」というわりに妙に細かいのは、ランダムに開いたページの文字数を数え、総ページから目次や写真など文字の書かれていないページを差し引いたページ数をかけたものだからです。

今回は1ページ311文字、295ページで計算しました。
最初は一文字ずつ数えてたけど3ページで挫折しました。
最初は一文字ずつ数えてたけど3ページで挫折しました。
1秒当たり:0.328円
1ページ当たり:4.673円
1グラムあたり:4.298円
1文字当たり:0.016円

★「『何回言ったら分かるの!?』の答えは500回」と知りました。

その2・中高年からも厚い支持!「『自分』の壁」

「バカの壁」等の著作で知られる、解剖学者であり現代日本を代表する思想家のひとりでもある養老孟司氏の新刊、「『自分』の壁」です。

最近の新書では一、二を争う人気で、特に中高年の男性からの人気が高いように思います。
「○○の壁」シリーズ最新刊です。
「○○の壁」シリーズ最新刊です。
「自分」の壁
(著:養老孟司、出版:新潮社)
新書、224ページ
本体価格:740円
大きさ:縦17.2cm 横10.8cm 厚さ1.6cm
重さ:166g
文字数:およそ108,216文字(501文字×216ページ)
読書時間:1時間32分55秒
およそ1時間33分。意外と時間かかった。
およそ1時間33分。意外と時間かかった。
思想的な部分を理解しながら読む進めるのに意外と時間がかかったせいか、厚さのわりには読書時間が長くなりました。全体的に「ビリギャル」よりお得と言えますね。
1秒当たり:0.133円
1ページ当たり:3.304円
1グラム当たり:4.458円
1文字当たり:0.007円

★人間の色彩を感じる細胞が発達したのは、他人の顔色をうかがうためらしいです。

その3・ハリウッドで映画化したライトノベル、「All You Need Is Kill」

この度トム・クルーズ主演で映画化したというアメリカンドリームを体現したライトノベルですが、かれこれ10年ほど前の作品のようです。
関係ないけど、私の妹はトム・クルーズとジョニー・デップの区別が付きません。
関係ないけど、私の妹はトム・クルーズとジョニー・デップの区別が付きません。
All You Need Is Kill
(著:桜坂洋 出版:集英社)
文庫、276ページ
本体価格:580円
大きさ:縦14.8cm 横10.6cm 厚さ1.6cm
重さ:155g
文字数:およそ140,544文字(549文字×256ページ)
読書時間:1時間38分59秒
1時間39分。
1時間39分。
まぁライトノベルだしね…と少し侮っていたのですが、一気に読み切ってしまうくらい面白かったです。

『一気に読み切った』という感覚のわりに時間がかかってしまいましたが、SFという作品の性質上、見慣れない言葉が多かったせいかもしれません。
目は死んでいますが、夢中になって読みました。
目は死んでいますが、夢中になって読みました。
1秒当たり0.097円
1ページ当たり2.101円
1グラム当たり3.742円
1文字当たり0.004円

★十数年ぶりにライトノベルを読みました。

その4・本屋が今一番売りたい本!本屋大賞受賞「村上海賊の娘」

実は書店員なんですが、そんなに売りたいと思っていませんでした。
実は書店員なんですが、そんなに売りたいと思っていませんでした。
村上海賊の娘(上巻)
(著:和田竜、出版:新潮社)
単行本、474ページ
本体価格:1,600円
大きさ:縦18.8cm 横13.4cm 厚さ3.2cm
重さ:435g
文字数:およそ308,448文字(672文字×459ページ)
読書時間:4時間34分24秒
4時間34分。長い!
4時間34分。長い!
分厚いし文章も長いし、読んでも読んでも終わらないことに驚きました。
普段6~700円の文庫本を読んでいると1,600円の本は高いと感じてしまいますが、1冊でこれだけ長時間楽しめるならば、決して高い買い物ではないと思います。

また、文庫本を持ち歩くとカバンの中で表紙が折れたり角がくしゃくしゃになったりしがちですが、こちらの本だとそんな心配もありません。

旅行に持っていくにも安心の丈夫さです。

これからは、旅行用の本はこのサイズにしようと思います。
1秒あたり0.097円
1ページ当たり3.375円
1グラム当たり3.678円
1文字当たり0.005円

★作者の名前は「竜」と書いて「りょう」と読むと、最近知りました。
これらのデータをグラフにして表してみました。
重さ基準ではそれほど差はない。
重さ基準ではそれほど差はない。
読み終わり時間では差が顕著に。
読み終わり時間では差が顕著に。
文字数でも似たような結果。
文字数でも似たような結果。
全体的に見て、ノンフィクション「ビリギャル」はちょっと割高、文庫本「All You Need Is Kill」と本屋大賞受賞「村上海賊の娘」はいい勝負でお得だと言えそうです。
ページ当たりでは差が歴然。
ページ当たりでは差が歴然。
ここまでいい勝負をしてきた二冊ですが、1ページ当たりの価格でははっきりと差が出ています。

ということで、4つの項目のすべてでお得さを発揮した「All You Need Is Kill」を、この夏いちばんお得な本ということにさせていただきます。

ただ、総合的なお得さでは文庫本に敵いませんでしたが、大作をじっくり楽しみたい方や持ち歩いた時に本が折れるのが嫌だという方には「村上海賊の娘」のような大判の小説もおすすめです。

お得さの先に得たもの。

お得さを求めて普段読まないような本も読んだおかげで、少し賢くなれた気がします。

「ビリギャル」あたりは世間話のネタになるので、多少割高でも読んで損はないと思います。表紙のギャルは本人ではなく女子大生モデルだそうです。

「村上海賊の娘」は主人公がブスで粗暴で性格が悪い上にちょっと褒められたらすぐ調子に乗る人物で、自分を見ているようで心が痛みました。方向性は違いますが、イラっとする主人公として「赤毛のアン」と双璧をなすかもしれません。

(でも「村上海賊の娘」は好きだし「赤毛のアン」も何度も読み返すくらい好きです)。
全然内容に触れてませんけど、全部ちゃんと読みました。
全然内容に触れてませんけど、全部ちゃんと読みました。
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