特集 2014年7月17日

右耳に1匹、左耳に5匹。コオロギヘッドフォン

「虫の声2.0」
「虫の声2.0」
この写真にはおかしなところがある。
そう、CDを試聴をしているように見えるが、実はコオロギの音色を聞いているのだ。
父は数学教師。母は国語教師。姉2人小学校教師という職員室みたいな環境で育つ。普段はTVCMを作ったり、金縛りにあったりしている。(動画インタビュー)

前の記事:ラジコンを具にして、リアルおむすびコロリン


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ヘッドフォンが虫かごになっていて中にコオロギが入っている、というわけだ。
ヘッドフォンが虫かごになっていて中にコオロギが入っている、というわけだ。
何でそんなことになったのか説明させてもらいたい。

よく耳にする雑学で、西洋人は虫の鳴き声をノイズとしか感じられないというものがある。

日本人は虫の鳴き声を左脳で「言葉」と処理しているから、心地よく感じる…みたいなやつだ。

せっかくそんな機能が備わっているならば、使わない手はない。

そのような経緯で、虫の鳴き声をより身近に、よりスタイリッシュに聴くためこのヘッドフォンは制作された。
これさえあれは、どこでもの虫の音色が楽しめる。
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しかも、しかも、入れる生き物を変えれば、楽曲も変わる!
しかも、しかも、入れる生き物を変えれば、楽曲も変わる!
なんてファンシーな道具だろうか。どうです、羨ましいでしょう。

夏休みの自由研究にもぴったりなのだ。

作り方を簡単に説明させて頂きたい。
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まず虫かごを用意します。
まず虫かごを用意します。
100円均一で売っていた。両ハジをリューター切断する。。
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虫かごに穴が開いたので、プラ板で「フタ」を作る。
虫かごに穴が開いたので、プラ板で「フタ」を作る。
虫かごの穴に合わせてプラ板を切り抜く。

ホッドボンドでプラ板を虫かごに固定した。

虫の音色がよく聞こえるよう、中央に穴をあける。
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続いて、ヘッドフォンを用意。
続いて、ヘッドフォンを用意。
スピーカーをケーブルごとひきちぎる。ここは使わない。

ハンバーグセット頼んで、パセリだけ食べるみたいな贅沢さだ。

耳にあたるモフモフしたやつは使う。
虫かごをスプレー缶で黒く塗る。
虫かごをスプレー缶で黒く塗る。
これだけで一気にスタイリッシュになる。格子状の構造がメカメカしくていい。
プラ板の穴に、網戸用の補修シールを貼る。
プラ板の穴に、網戸用の補修シールを貼る。
コオロギの音色をより身近に感じるために必要な素材だ。

続いて、虫かごとヘッドフォン部分をつなぐ。
配管用の丸金具で、ヘッドフォンと虫かごを一緒に締め上げ、固定する。

冬場は虫かごの代わりに、肉マンなんかをはさみこむと、耳がほかほかになっていいかもしれない。

これで完成!
どうしよう。想像以上にかっこいいものができてしまった。
どうしよう。想像以上にかっこいいものができてしまった。
配管用の丸金具が、アクセントとして効いている。

ヨドバシカメラで3万くらいで売ってるヘッドフォンぽいぞこれ。
江戸時代に販売していたら、ひと財産作れたかもしれない。

ヘッドフォンはできた。残るは楽曲コンテンツだ。(虫のことです)

楽曲を求めて公園へ

鳴く虫といえば、セミ。
鳴く虫といえば、セミ。
虫とり網を片手に公園を歩きまわるが、いない。

おかしい。

台風が過ぎた直後だからか、セミの鳴き声が全くしない。
セミの抜け殻はたくさんあるのに!
セミの抜け殻はたくさんあるのに!
困った。これでは中身スカスカのヘッドフォン作っただけだ。
虫を…鳴く虫を探さねば…。

自分で見つけるのには、限界がある。
ネットで情報を漁る。偶然にもその日、レプタイルズ・フィーバーという爬虫類の販売イベントが近所で行われていることが分かった。
虫も売られているようだ。ちょっと行ってみよう。

会場についた。
が、カブトムシぐらいしかいない。

弱ったなぁと思っていたら、こんなものを見つけた。
餌用コオロギ…100匹。
餌用コオロギ…100匹。
袋詰めにしてコオロギが売られている。S・M・Lとサイズごとに売られているようだ。
こ、この中に100匹のコオロギ…。
100匹で1000円。高いのか安いのかもわからない。

袋を手にとり、そっと耳をあててみる。
カサコソカサコソ…。
100匹のコオロギがうごめく音とともに、リリリ…と鳴き声が漏れてくる。鳥肌が立ってしまった。

しかし、記事の締め切り的にはここで手に入れないと間に合わない。
えーい!家で飼ってるカエルの餌にもなるみたいだし、買っちゃうぞ。オラー!

リュックに100匹のコオロギをつめた。
帰りの電車の中で、リリリリリ…とかなりの音量で鳴き始めた。
意味あるのか分からないが、なんとなく優先座席から離れた。

家についたので、袋を開け、中身のコオロギをそっとプラケースへと出す。
あああ…
あああ…
プラスチックケースに次々と落ちてゆくコオロギ。
カツン、カツンという乾いた音が、一匹一匹、意外と重量があることを伝えてくる。

しばらくすると、脂ぎった茶羽根を振るわして鳴きはじめた。
これ、鳴くから許されてるだけで、ゴキブリと一緒なんじゃないか。

歌がうまいから、何かイケメン的な立ち位置にいるミュージシャンに近いかもしれない
だめだ。そんなこと言ってたらコオロギに失礼だ。

長時間狭い空間に入れておくのも可哀想である。
ささっとコオロギをヘッドフォンに詰めよう。
白菜も入れたら喜ぶかもしれない。
白菜も入れたら喜ぶかもしれない。
ぴょんぴょんと逃げ惑うのでなかなか捕まえるのが難しい。

なんとか詰め込んだ!と思ったら、虫カゴのちょっとした隙間に頭をグイグイねじ込んで、這い出てきた。ぬらぬらと黒光りした頭に、せわしなく開閉する口もと。

指に這い上がってきた瞬間、いつもよりワンオクターブ高い悲鳴をあげていた。

びっくりして虫カゴを落としてしまい、残りのコオロギも脱走した。
THE・悪夢
THE・悪夢
ゆっくりと息をはきながら、慎重に回収する。

なんとかコオロギをヘッドフォンに詰め込み、ガムテープで隙間を塞いだ。

これでコオロギヘッドフォンは完成だ。
Tシャツが汗でぐっしょり濡れていた。

装着してタワーレコードへ。

全然誰にも気づかれてないようです。
全然誰にも気づかれてないようです。
歩く振動に驚いているのか、コオロギはあまり鳴かない。しかし、カサコソをはい回る音がダイナミックに聞こえる。

いや、ちょっとダイナミック過ぎるかもしれない。
ぎょえー
ぎょえー
カサカサカサカサ…。

耳の穴の中を大量のコオロギが這っているような錯覚を覚える。
大げさに表現しているわけではない。
カゴの隙間から、コオロギの触覚と前足が耳にふれてくるのだ。

なんだこの臨場感は。
麻薬中毒者の禁断症状でこういうの聞いたことあるぞ。
コオロギのことを考えると、狭いヘッドフォン虫かごはここらが限界だろう。

なにより、僕も家に帰りたい。

臨場感がありすぎるのも問題だ。

だいたいこういうリアクションになります。
だいたいこういうリアクションになります。
このヘッドフォン、音の再現率とかそういう次元を超越している。
なぜなら、ヘッドフォンの中に本物がいるからだ。
構造的には、右耳にサイモン、左耳にガーファンクルがいるのと変わらない。

しかし、臨場感があればいいというわけでもないらしい。
実際にソフトタッチしてくるし、においもある。あと白菜もなんかくさい。

ヘッドフォンを外していても、カサコソ…という音がするたびに、コオロギが脱出してきたのでは!とビクついてしまう癖がついてしまった。

コオロギの音色を聴きながら、スタバにも行けます。 当分、カエルの餌には困らなさそうです。
コオロギの音色を聴きながら、スタバにも行けます。 当分、カエルの餌には困らなさそうです。
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