特集 2014年7月16日

動く歩道を歩く歩道

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動く歩道という設備がある。エスカレーターの水平移動バージョンみたいなやつで、Wikipediaでは「主として人間用の輸送機器」と書かれている。「主として人間用の輸送機器」ってかっこいい。

その動く歩道を僕はいつも「歩く歩道」と間違えて言ってしまう。歩道は歩くものだし、歩道自体は歩かない。ならば、一度歩く歩道を作ってみればわかりやすく区別出来るのではなかろうか。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

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歩く歩道の救世主

歩く歩道をずっと作りたかったのだけれど、なにぶん工作力が低いため歩く機構をどうすればいいかわからずにいた。
救世主。
救世主。
そんな時にタミヤのメカマンモスという商品がノッシノッシと歩くということを発見した。これだ。これを改造すれば歩く歩道が作れるハズだ。救世主は太古からやって来た。
電源の配線もすでに組まれてる。
電源の配線もすでに組まれてる。
配線の切り込みも入れていくれている。親切が行き届きすぎ。
配線の切り込みも入れていくれている。親切が行き届きすぎ。
メカマンモスを開封してみるとパーツが多くて「これ、作れるかなぁ…」と不安になったが余りにも行き届いた心遣いに恐縮する。高級な焼き肉屋で紙エプロンを付けてもらっている時みたいな気分になった。
不要部品が僕を惑わせる。
不要部品が僕を惑わせる。
が、それでもパーツが無い!ってなったり部品が組み合わさらない!と思ったりなどした。今後作る自分にアドバイス、「無いこと無いから」ちゃんと見なさい。むしろ不要なほどあるから。
歩いた!
歩いた!
なんとか組み上がったメカマンモス(歩けばいいのでマンモスの頭は付けていない)が歩いた。ちゃんと歩いてるっぽい歩き方をしていてうれしい。これで出来るぞ、歩く歩道が。

歩道も買った

歩く歩道の「歩く」部分は出来上がった。あとは歩道だ。
こんなのもあるんですね。
こんなのもあるんですね。
歩道についてもマンモスと共にバッチリ準備済み。今の世の中探してみたら予想以上に色々なものが売られている。歩く歩道に時代が味方したと言えるだろう。
あっ、これ、自分で着色しなきゃいけないやつだ…。
あっ、これ、自分で着色しなきゃいけないやつだ…。
開けて分かった、着色を自分でしなきゃいけないタイプ。着色によってかなり出来が左右される事になる…。これは大変なことになったぞ。

なんと、歩道がアマゾンで買えるらしい。
なんと、歩道がアマゾンで買えるらしい。
歩道のミニチュアのようなものがアマゾン買える。今の世の中探してみたら予想以上に色々なものが売られている。歩く歩道に時代が味方したと言えるだろう。
歩道セット
歩道セット
適当に買ってみたが予想以上にクオリティが高い。予想外に着色までされているので、なんとか歩道が作れそうな気がする。

歩道を作ろう

これは道路。
これは道路。
歩道パーツを使って歩道を作る。土台としての道路はダンボールに厚紙を貼り付けてパーツを配置していく。
事件性を感じる。
事件性を感じる。
配置を決めるために仮で置いてみたら人がバタバタ倒れていて事件性を感じる絵面になった。これも立てたらどうにかなるだろうか、接着剤でくっつける。
予想以上に歩道だ!
予想以上に歩道だ!
出来上がるにつれて醸し出される歩道感。すごい、予想以上に道路が、歩道が出来ている。これを歩かせれば歩く歩道と言うことが出来るのではないだろうか。
あれっ、かっこよくね…?
あれっ、かっこよくね…?
こういうことですな。
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世界の真理に近づいた

こういうの、見たことある。
こういうの、見たことある。
歩く歩道を作ろうとして意図した通りにに出来たはずだが、予想よりもかっこよく、しかも何となく見たことある感じに仕上がった。
これだ。これっぽい。(Wikipedia:アカシックレコードより引用)
これだ。これっぽい。(Wikipedia:アカシックレコードより引用)
何に似ているんだろう。と考えていて気づいた。昔のインドの宇宙想像図だ。地球の地面は象が支えているってやつだ。

昔のインド人に見せたら、歩く歩道じゃなく「宇宙」って答えるんだろうか。かっこいい、俺、宇宙作っちゃった。
宇宙だ。
宇宙だ。
この宇宙では天動説は採用されていないので太陽が動くのではなく、象が昼から夜、夜から昼に運んでいくのだ。こんな、徒歩っぽい感じで日が暮れるのか。なんだかロマンティックだな。

もっと歩く感が欲しい

歩く歩道を作るつもりがうっかりと宇宙の真理に近づいてしまった。宇宙の真理は高尚にすぎて歩く歩道感が低い。もっと、歩いてるっぽくしてみよう。
どうにかして脚を調達しました。
どうにかして脚を調達しました。
歩くといえば脚、ということで脚を調達した。メカマンモスの足を取り替えることによって技術はそのまま、人の脚で歩いてるっぽくなるはずだ。
これでいける。と、思う。
これでいける。と、思う。
メカマンモスを観察して付け替えていく。ビニールの脚が加工しやすく、意外と簡単に付け替えることが出来そうだ。
悪夢か。この回転でガリレオは天動説をひらめいたという。
悪夢か。この回転でガリレオは天動説をひらめいたという。
いい感じにハマったので試してみようと、動かしてみたら悪夢のような光景が広がった。メカマンモスが凄くデリケートなバランスの上に成り立っていたということにやっと気づく。タミヤすごい。

なんとか出来た

可能性を感じる。
可能性を感じる。
一旦悪夢が見えたが、目を覚ましてしっかり前を見るとかなり歩いているように見える(見た目だけで中身的にはさっきと同じ)。

これが出来れば歩く歩道になるハズだ。信じて進もう、自分の歩道を。
試行錯誤を繰り返し
試行錯誤を繰り返し
数々の失敗がついに実を結んだ。
数々の失敗がついに実を結んだ。
色々とやってみたが、メカマンモスの機構を出来るだけ崩さずに、外見だけ脚に入れ替えるという形を取って、ついに完成した。
メカ・歩行
メカ・歩行
これが歩く歩道の歩く機構部分、メカ・歩行だ。足元が華奢になった分、メカマンモスとの時よりも生まれたての子鹿みたいであるが歩行の仕組みは同一、安心のタミヤだ。
悪夢かよ。
悪夢かよ。
悪夢だ。更に闇の濃い悪夢が繰り広げられた。メカマンモスの足を付け替えるというのは相当罪深い事なのだろうか。中々に光が見えない。

ほんとに完成

義足感すごい。
義足感すごい。
無理やり脚を付けたために強度が弱くなってしまっていた。段ボールで補強し、再度脚を被せる形で付けていく。これでかなり安定するようになった。
出来た、歩く歩道だ。
出来た、歩く歩道だ。
今度は歩かせてみてもコケずに歩く。その姿はまさに歩く歩道。歩く歩道、ついに完成だ。
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お出かけの装いが必要だ

歩く歩道が完成した。折角だから歩く歩道を動く歩道の上で歩かせてみたい。動く歩道を歩く歩道だ。
ちょっとこれじゃはしたないですわね。
ちょっとこれじゃはしたないですわね。
歩く歩道のお出かけだ。が、裸足で出かけるのはレディーとして流石に憚られる。
一気に和らぐ異質感。
一気に和らぐ異質感。
と、いうことで靴を履かせる。するとさっきまでとは打って変わって普通に人の足に見える。むしろ美脚だ、美脚。ならば。
もう普通の光景。
もう普通の光景。
更にズボンも履かせてみた。するともう全く普通の光景。外出しても全くなんの問題もないだろう。
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いざ歩道

動く歩道へ行くために早起きをする。動く歩道は人を乗せるためのものであって歩道を乗せるためのものではない。歩道が歩いていたら迷惑になるであろうと、人がいない時間を狙って始発電車で向かう。
凄く足元を踏みしめている…
凄く足元を踏みしめている…
朝早く起きて準備をしていると、歩道も緊張しているのかグッと足元を踏みしめて動く歩道に向かう心構えをしているように見える。
歩いてる。確実に歩いているよ、歩道。
歩いてる。確実に歩いているよ、歩道。
最後の確認にともう一度歩かせる。よし、ちゃんと歩いてる。歩く歩道だ。歩く歩道の名を動く歩道から奪うんだ。行くぞ。
空いている。
空いている。
始発に乗って、一番近いと思われる動く歩道にやってきたらやはり朝一、電車が到着した直後以外はほぼ人通りなし。歩く歩道が動く歩道を歩くのにバッチリなシチュエーションだ。
心なしか躍動感に満ちているように思う。
心なしか躍動感に満ちているように思う。
ようやっとやってきた歩く歩道。待ちきれぬのか、今にも駆け出しそう。少し前までの悪夢から覚めて今はペガサスのように見える。なぜこいつは常に神話っぽいのだ。

翻弄される歩道

よし、行って来い、歩道。動く歩道を歩くんだ、歩道。
スイーッ
スイーッ
ああっ、なすすべもなく流されていく歩道。置いて電源を入れようとした所、そんな間もなく流されていく歩道。思っていた以上に動く歩道は強敵だ。
この角度、歩道でもなんでもないな。
この角度、歩道でもなんでもないな。
何とかして動く歩道を歩け。電源を入れて動く歩道の上に置いたら即座にハイヒールを一つだけ脱いで歩き去っていった。

なんだこいつは、シンデレラか。なぜにこんなファンタジックなのか。
誰も追っかけなさそう。
誰も追っかけなさそう。
なんとか歩く歩道を動く歩道上で歩かせることが出来た。動く歩道と歩く歩道、これで今後は間違うことは無いと思う。
歩く歩道、頑張ったな。
歩く歩道、頑張ったな。
最後に、何度もコケてもひたむきに頑張っていた歩く歩道にねぎらいの言葉をかけたい。お疲れ様でした、歩く歩道。

何度も悪夢が見えた今回の企画だけれど、最終的に歩く歩道が可愛く見えてきた。後ろ足を常に踏ん張っている感じが可愛い。

それもこれも、すべてメカマンモスありきである。ありがとう、メカマンモス。ありがとう、タミヤ。メカ歩く歩道が発売されることを心よりお待ちしております。
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